キャラクター&開発コンセプト
凱旋帰国したイチロー? 世界を市場とするグローバルカー
カムリはヨーロッパなど世界中で販売されているクルマだ。よって今回の新しいカムリのキーワードは「ワールド・メジャー・カムリ」。イチローやシンジョーがメジャーリーグで活躍する昨今、ニューカムリでそれにあやかろうという気持ちがあるのかどうかは定かではないが、すでにアメリカでのカムリは、それに近い存在となっている。世界で最も競争の激しい市場であるアメリカで、カムリは乗用車部門・4年連続ベストセラーを続けているのだ。ライバルはかつてのタイトル・ホルダーであったホンダ・アコード、そしてフォード・トーラス。シェアを巡る激しい争いに勝つためには当然、アメリカ人により好まれるクルマ作りが優先されるわけで、歴代カムリの歴史はアメリカナイズの歴史でもある。
もっとも日本のカムリはアメリカのカムリとは違い、先代モデルの途中(2年前)まで国内専用モデルだった。そしてアメリカで販売されるカムリが日本では別の名前(セプター、あるいはカムリ「グラシア」)で販売されたのだが、先代モデル途中以降、すっきりと国内・国外統一のものとなっている。
価格帯&グレード展開
エンジンは2.4リッター4気筒のみ。スポーティな内装の「ツーリング」が設定された
カムリは、同じプラットフォームを持つ上級車のウインダム(V6・3リッター)との差別化を図るため、先代にはあったV6エンジンが落とされ、2.4リッター直列4気筒エンジン一本とされた。アメリカでは5速仕様もあるが日本では全車4速オートマチックとなる。2WDと4WDがあり、いずれもスタンダード仕様は2.4Gと呼ばれる。さらに豪華装備を持つ「リミテッド・エディション」があり、2WDにのみスポーティな内外装を持つ「ツーリング」がある。DVDナビゲーションシステムは「リミテッド・エディション」および「ツーリング」に設定。値段は225万円(2.4G・2WD)~292万円(2.4G リミテッド・エディション・ナビパッケージ)まで。
パッケージング&スタイル
上級クラスをしのぐ、文句なしに広い室内&トランク
言ってみればアメリカでは日本におけるヴィッツやカローラのような存在であるカムリだが、なにせ何事も大きい分にはOK! なアメリカ育ち。全長4815×全幅1795×全高1490mmと、クラウン・ロイヤルシリーズ(4820×1765×1455~1470mm)と比較すると特に全幅、全高において上回る立派な体格だ。先代カムリ(4800×1785×1420mm)と較べても全高で+70mmと、特に高さ方向での伸びが目立つ。ホイールベースも2670mmから2720mmへと拡大された。
体格の大きい欧米人(身長180cm以上)が4人ゆったりと座れることを目指したという室内は、日本人にはもちろん十二分な広さ。高くなった全高はヒップポイント(約560mm)とヘッドクリアランスに生かされる。閉所恐怖症の人には最適のセダンだろう。反面、ガランと広い、という印象もなくはない。
トランク容量は587リットルと、トヨタのセダン最大級クラス(ウインダムやプロナード、クラウンよりも大きい)をうたう。実際、横方向、奥行きとも車体のサイズをぎりぎりまで生かしたもので、アメリカ的1週間日用品まとめ買いにも不足はないサイズ。アメリカでは、ヨーロッパはもとより日本に較べても意外にステーションワゴンの需要は少なく、その分セダンのトランクスペースへの要求は高いと思われる。
良くも悪くもウインダム似の外装
前から見る限り、プラットフォームを共有するウインダム(ホイールベースも全く同じ)とはイメージもよく似ている。傾斜の大きいフロント&リアガラスを、伸びやかなラインでつなぐ手法は共通(ちなみにCD値は0.28)。フロントのデザインに関しても、グリルの形といい切れ長のヘッドライトといいそっくり。アメリカではグリルもしくはボンネットの上のバッジ(レクサス又はトヨタ)を見れば一目瞭然なわけだが、日本では同じトヨタバッジが付くから難易度はさらに高い。
とは言え見慣れてくると、ウインダムの方がより彫りの深い造形であることが分かる。なにしろ約100万円も差があるのだから、ウインダム/レクサスES300・ユーザーとしては少しぐらい違ってもらわなきゃ困るというところ。
もっとも、ウィンダムはアメリカではレクサス・ブランドで売られる「高級車」であるから、カムリがそれに似ているのはカムリの購入を考える側してみれば悪い話ではない。この辺りはたまたま似てしまったというよりは、確信犯的なものを感じる。
一方、リアはウインダム/レクサスES300がレクサス・ファミリーの一員であることを感じさせる端整な横長のランプが付くのに対して、カムリは半円状のものとなる。サイドビューではリアドアとホイールハウスのラインが、カローラやマークⅡ同様、ホイールハウスに沿わないものとなっている。
総じてカムリのエクステリア・デザインはよりスポーティで、スタイリッシュ、そして(レクサスのイメージをほどよく生かした?)高級感のあるものになったと言える。とは言えアメリカではライバルのトーラスや、先頃アメリカにおいて大胆なデザインでデビューした日産の新型アルティマなどを見ても、スタイリングで新しさを出すことはこのセグメントにおいてかなり重要視される(その辺りは日本のリッターカークラスと似ているかもしれない)。そういった中で、やや斬新さに欠けるこのカムリが米国でどのように受け入れられるかは興味のあるところだ。
アメリカ育ちを隠せないインテリアのクオリティ
インテリアは先代に較べて大幅に洗練されたものとなった。オーディオ・ナビゲーション、エアコンディショナー系のコントロールがより上方に配置されて視認性が向上した他、スイッチのデザインや配置などもより分かりやすく整然としたもになった。特に「ツーリング」の黒系内装にメタル調のインストルメントパネル&パネルは目新しく、カムリのエクステリア・デザインには比較的合っているように思える。
しかしクオリティに関してはトヨタのミッドサイズ・サルーンとして考えると、全体の印象として物足りなさが残る。日本仕様は、プッシュ式ヒーターコントロールや木目/メタル調パネルが奢られた豪華仕様。とはいえ高級車を標榜してはいるが、実はアメリカにおける量販車だということがそこはかとなく感じられるのだ。知識としてそういうことを知っているからよりそう感じる、ということもあるのだが、トヨタの高級車としてはそこそこだなあ、という印象は、誰が乗っても持つと思う。むろん、ウィンダムのような高級感があっては、クラス分けが難しくなってしまうから当然ではあるのだが。
実際、インテリアに関してはウインダムとの差は歴然としている。ウインダムの、広さよりも包まれ感を重視したインテリア(例えば乗員側にぐっと張り出したレザー張りのドアアームレスト、緻密な作りの大型センターコンソール、分厚くホールド感のあるシート)、さらにインストルメントパネルのオプティトロンメーターを見た後では、カムリの内装はかなり平板に見える。実際、エンジンよりもこういった目に見えるところの方が、ウインダムとのグレード感の差を感じるのだ。
基本性能&ドライブフィール
何もかもリファインされており、アメ車的大らかさに満ちた走り
乗車は2WDの2.4G「リミテッドエディション・ナビパッケージ」。木目調パネルがあしらわれたベージュ系のインテリアを持つ。メタル調内装の「ツーリング」に較べると、明るくてアットホーム。コンソール中央部に大きな物入れ(蓋を開けると灰皿)があり、カーナビも見やすい。が、個性は希薄で、クルマを降りた瞬間、どんな内装だったか忘れてしまうタイプ。
2.2リッターから2.4リッターになった新しい4気筒エンジンは、200cc排気量が増えた分、パワーは140ps/5600rpmから159ps/5600rpm、トルクは19.5kg-m/4400rpmから22.4kg-m/4000rpmに向上。トップエンドのパワーと中低速トルクが強化された。実際、ドライブしてみても文句の付けようがない。静粛性も滑らかさもトルク感も十分にあり、スロットルを踏み込めばレッドゾーン手前の6000回転までスムーズに回り切る。4速オートマチックの変速マナーも完璧で、1気筒辺り600ccとトルク重視のエンジンとの相性もいい。10・15モード燃費も11.0km/lと優秀。排気量アップしながら先代より0.8km/l向上している。
乗り心地に関しても、十分に滑らかで快適。最近のトヨタ車の多くに採用されているH∞(インフィニティ)-TEMS(アクチェエイター内蔵のショックアブソーバーの減衰力を電子制御でコントロール。4段階で調整可能)はカムリの場合、最もハードな設定で常識的な固さという感じ。ソフトに設定しておくとアメ車的な「ブワン」としたソフト感が満喫できる。この乗り心地にはアメリカンベストセラーカーの味が垣間見れる。
コーナーでもこの柔らかい足のまま侵入すると、アメ車的なロールを見せるため、とばす気にはなれない。ただ高速では柔らかさが気にならず、適度な乗り心地が快適であったことを報告しておく。速度規制の厳しいアメリカで必要とは思えないが、150㎞/h巡航はたいへん快適だった。
裏を返せばカムリの評価が難しいところは強い個性に欠ける点だ。デザインにしてもドライブ・フィールにしてもクルマを降りたハナから希薄になってしまう。勉強もスポーツもよく出来たのにどうしても顔と名前が思い出せない同級生という感じ。しかし快適・便利だからと言って退屈・平凡である必要はない。アメリカでのホンダ・アコードやニッサン・アルティマ(もしくはマキシマ)が付け入る隙はそこにあり、実際ライバルメーカーはそういったクルマ作りを試みている。とは言えトヨタとしては、スポーティなクルマがお好みなら、アルテッツァ/レクサスIS300やウインダム/レクサスES300、その他いろいろありますよ、ということなのだろう。
ここがイイ
マルチインフォメーションディスプレイがカーナビの上にあり、外気温や燃費などが表示されるのは便利。使いやすく見やすい位置のカーナビもよろしい。一時、行政指導でカーナビ位置が下げられるという話があったが、どうやらその影響はなさそうだ。 超低排出ガス(★三つ)というのも重要なところ。
ここがダメ
ごく普通のセダンとしては文句なし。ただ、背こそ高いものの、こうした日本の伝統的ハードトップ風のボディデザインが、今頃になってアメリカ人に受けるスタイルだと言われると、心中複雑なものがある。ワイルドスピードという映画では日本のクーペがバカウケしていたし、中流(あるいはそれ以下)のアメリカ人の感性は、かなり日本的なのだろうか。 あとは強いて言えば、クルマ好きが楽しめるクルマでないことか。
総合評価
クルマ自体の個性はあまりないのだが、それが逆にトヨタのセダンの中では出色の個性となっている、というのはシニカルすぎる? 日本向けに高級風味で仕立てられたアメリカの大衆車であり、たいへんアメリカ的な大らかさが味となるクルマで、その意味ではトヨタセダンのラインナップの中では個性的とも言える。アメリカで年間50万台(全世界では60万台)売ろうというのに、日本ではわずかに年間1万8000台が目標であり、日本のトヨタセダンの中でのニッチ商品ともいえそう。
こういう商品を追加することで、月販13500台程度の日本のミディアムハイクラスセダン市場では、トヨタのシェアはいよいよ2/3をおさえることになった。反面、肝心のアメリカ市場では、景気の悪化とテロの影響で今後の見通しは不透明となっている(それでも今年8月は旧型が34000台も売れているのだが)。そんな中でのニューカムリの船出はかなり厳しいといえそうだ。「100カ国以上で売る」という部分でそれをフォローしていくことも、今の世界情勢ではなかなか困難。クルマは基本的には平和産業だ。現在行われている戦争の早期終結を望む。
公式サイトhttp://toyota.jp
