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トヨタ カムリ ハイブリッド “G パッケージ”新車試乗記(第644回)

Toyota Camry Hybrid “G Package”

(2.5リッター直4+モーター・317万円)

全車ハイブリッド化!?
「世界のカムリ」は、
ホームに錦を飾れるか?

2011年10月07日

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キャラクター&開発コンセプト

9代目カムリ(国内向け)は全車ハイブリッドに


新型トヨタ カムリ ハイブリッド
(photo:トヨタ自動車)

2011年9月5日に発売された新型カムリは、1980年に登場したFRの「セリカ カムリ」を初代とすれば9代目、1982年に登場したFFの「カムリ」から数えれば8代目に当たる。今回の新型は国内向けが全車ハイブリッドとなったのが大きな特徴だ。先代の場合、海外では純ガソリン車と併せてハイブリッド車も販売されていたが、日本では純ガソリン車のみだったので、今回はそれとは逆のパターンとなる。

FFミドルクラスセダンの国内市場は縮小傾向にあり、5年前に登場した先代ですら販売目標は月間1000台に過ぎなかったが、新型にいたっては月間500台に半減。世界市場に占める割合は1%にも満たない。たたし国内では今年で創立50周年を迎えたトヨタカローラ店の旗艦セダンとなるほか、同店の専売モデルとなる。

従来カムリの生産拠点は、米国、オーストラリア、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナム、中国、ロシアと世界中にあるが、国内向け新型の生産拠点は先代と同じトヨタ本社の堤工場になる。

カムリのミニヒストリー


先代カムリ(2009年モデル)

「カムリ」がトヨタ初のエンジン横置きFF車となって登場したのは1982年で(それまでは縦置きのターセル/コルサがトヨタで唯一のFF車)、世界的に見ればこれが初代カムリだ。これが1980年代から世界戦略車として世界中に輸出され、やがてトヨタの代表車種に発展。米国では9年連続(2002~2010年)で乗用車のベストセラーとなるなど、トヨタの最量販モデルとして大きな成功を収めた。1982年以降の累計販売台数は約1450万台で、世界経済が揺れ動いた過去5年間でも年間平均80万台ペースで生産されている。

一方、国内市場では国内向けの5ナンバーカムリが1998年に終了。代わって北米向けカムリがセプター、カムリ グラシアといった車名で投入された後、10年ほど前からカムリの名に戻っていた。日本でカムリと言えば5ナンバーの中型セダンというイメージがあるのは、1990年代に国内向けと海外向けで違うモデルだったからだ。

関連リンク
■米国トヨタ公式HP>カムリ(英語)

過去のトヨタ カムリ新車試乗記
■トヨタ カムリ G ディグニス エディション (2006年3月更新)
■トヨタ カムリ 2.4G (2001年10月更新)

価格帯&グレード展開

ハイブリッドセダン最安の304万~380万円。売れ筋は317万円


今回試乗した“Gパッケージ”。ボディカラーは全7色で、これはホワイトパールクリスタルシャイン

全車FFのハイブリッドで、グレードは16インチのスチールホイール仕様となる標準グレード(304万円)、17インチアルミホイール、革巻きステアリング、運転席電動シート等が付く「Gパッケージ」(317万円)、レザーシートやHDDナビ+地デジ(33万円相当)等を備える「レザーパッケージ」(380万円)の3種類。売れ筋は317万円のGパッケージで、今回試乗したのもそれだ。ナビやオーディオは、最上級モデルを除いてオプションになる。

 

こちらは新色のトゥルーブルーマイカメタリック。ハイブリッドらしい色だ

なお、同じトヨタのハイブリッドセダンであるSAIは338万~426万円で、つまりSAIよりボディサイズが二回りほど大きいカムリハイブリッドの方が安く、4ドアセダンのハイブリッド車としては現時点で国内最安になる。ただしSAIにはリモートタッチ付のHDDナビや地デジ、アルミホイールが全車標準になるので、それがない分だけ安いのも確か。

■カムリ ハイブリッド(標準グレード)   304万円
■カムリ ハイブリッド “G パッケージ”    317万円  ※今回の試乗車
■カムリ ハイブリッド “レザーパッケージ”  380万円

パッケージング&スタイル

デザインは米国向けとほぼ同じ


米国向けとは基本デザインは同じだが、バンパー、ライト類、フロントグリル等が異なる

見た目は割と中庸だった歴代カムリだが、「エモーショナル」を重視したという新型は、エッジのはっきりしたデザインに軌道修正。フロントバンパーは現行プリウスや次期レクサスGSのような立体的な形状だし、全体に前のめりに見えるところも隠し味。マークXにも負けないスポーティな雰囲気は、今までのカムリに無かったものだ。一方、好き嫌いを問わない無難なまとめ方は相変わらずトヨタ的で、Cピラーの形状はクラウンに似ていたりもする。

 

矢印がエアロスタビライジングフィン

空力デザインもプリウスほど目立たないが、そこかしこに採用。床下のフラット化は当然として、面白いのはボルテックスジェネレーター(渦発生装置)と呼ばれるF1譲りの処理。ドアミラーの付け根に「エアロスタビライジングフィン」と呼ばれる小さな突起があり、これによってボディ側面に渦が発生→流速が向上→左右から抑え込む力が発生→安定性が向上する、らしい。「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話だが、非装着車と比べると違いが体感できるとのこと。Cd値は0.28だ。

ボディサイズはクラウン並み

ボディサイズはデカイと言えばデカイが、現行クラウンや日産ティアナと大差なし。最小回転半径はFRであるマークXやクラウンの5.2メートルに及ばない5.5メートルだが、小回りもそう苦にならない。バックモニターは欲しいところだが、日本でも便利に乗り回せるサイズだ。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) ホイールベース(mm) 最小回転半径(m)
■トヨタ SAI 4605~4615 1770 1495 2700 5.2~5.6
■トヨタ マーク X 4730 1795 1435 2850 5.2
■トヨタ カムリ ハイブリッド 4825 1825 1470 2775 5.5
■日産 ティアナ 4850 1795 1475 2775 5.3~5.7
■トヨタ クラウン ※1 4870 1795 1470 2850 5.2

※1:クラウンはアスリート/ロイヤルサルーン/ハイブリッドの数値(4WD車やマジェスタを除く)

インテリア&ラゲッジスペース

ハイブリッド車らしさを一掃


左側の4方向ステアリングスイッチは「iPodなどの階層型メニューも快適にコントロールできる」とある

国内向け専用のインパネは見事に和風であり、見慣れたトヨタ風。黒基調の樹脂と水平基調のデザインは、これ以上ないほど手堅い雰囲気を漂わせる。

また何分にもプリウスやSAIのような先進性は積極的に打ち出さない、という方針のクルマなので、シフトレバーは一昔前のトヨタ車で定番だったジグザグゲート式となるなど「ハイブリッド車らしさ」を消し去ったところも画期的。ここだけ見たら20世紀のクルマだ。

 

メーターには回転計の代わりにハイブリッドインジケーターが備わる

またHDDナビはオプションなので、SAIやレクサス HS250hなどにあるリモートタッチはなく、純正HDDナビはタッチパネルで操作することになる。そもそも販売主力グレードはオーディオ「レス」だ。余計な機能は要らない、安い方がいい、AMラジオとカセットが聞ければいい、というユーザーにも対応するもので、これも新型カムリの特徴になる。

 

光が当たるとカーボン調であるのが分かる

要するに中身はハイブリッドだが、各種操作はガソリン車のまま。一見、時代に逆行しているようだが、考えようによっては「見た目はレトロ、中身は最先端」というもの。空調などの各種スイッチもシンプルで分かりやすく、中高年に優しい。

新しい工夫はあるが、コンサバに過ぎる


ステッチの色はブラウン

ただ、よく観察してみると、単にレトロなだけではない。例えばウッド調パネルに見えるのは、カーボン調パネルにブラウン系のクリア塗装を施したもので、「サイバーカーボン調パネル」と呼ばれる。またメーターカバーやダッシュボードにはレザー調のソフトパッドを張り、ステッチ(縫い目)をミシンで入れている。このクラスで本物のステッチを使うのは珍しい。

 

エアバッグは運転席ニーエアバッグを含めて計7個を全車に装備

ただ、率直に言えば、サイバーカーボン調パネルは色調や造形が地味すぎて、せっかくの素材感が生きていないし、レザー調ソフトパッドは見た目がいかにも単調。インパネ全体のデザインもややコンサバに過ぎる。レトロではなく、古くさいイメージになってしまったのは残念。

後席スペースは問題なし。座り心地は保留


Cピラーは少しジャマだが、乗降性は悪くない

トヨタの国内向けFFセダンでは最大クラスということで(米国にはこの上にトヨタブランドで最大セダンのアヴァロンがある)、後席スペースはまったく問題ない。クラウンやマジェスタに全く引け目を感じないレベルだ。ただ、予想に反して座面クッションは少々薄めに感じられた。座り心地については長時間乗らないと判定を下せないが、これまでのトヨタ製アッパーセダンのものとは作りが違う感じ。

荷室容量はハイブリッドセダン最大級。トランクスルーも初採用


後席の右側だけだが、背もたれを倒してトランクスルーが可能

荷室容量は440リッターとトヨタのハイブリッドセダンで最大級を確保。SAIでもゴルフバッグを4個収納できるとあったので、新型カムリハイブリッドでももちろん可能。ボディ後部に駆動用ニッケル水素バッテリーがあることを考えると、これは大したもの。

ちなみにFFベースのトヨタ SAI/レクサス HS250hは415リッター、FRベースのクラウンハイブリッドは376リッターに留まる。また純ガソリン車のマークXでも先代は437リッターだった(現行型は480リッター)。

 

ダンパーストラットの代わりにトランクリッドを支えるのは先代と同じトーションバー

フロアボードの底には車載工具、その下にテンパースペアタイヤを搭載
 

基本性能&ドライブフィール

システム出力205psで、かなりパワフル

新型カムリのハイブリッドシステムは、アトキンソンサイクルの新世代2.5リッター直4エンジン(エンジン型式は2AR-FXE)とモーターという組み合わせ。エンジンはSAIやレクサス HS250hの2.4リッター直4(2AZ-FXE)とは別物で、最高出力は従来の150ps(110kW)→ 160ps(118kW)へ、最大トルクは19.1kgm(187Nm )→21.7kgm(213Nm)に向上。一方、モーターは今までと変わらず、最高出力143ps(105kW)、最大トルク27.5kgm(270Nm)のままだが、システム出力は190psから205psに向上している。システム出力が136psのプリウスより、はるかに強力だ。

実際の感覚も数値通りで、普通にエコ運転する限りは、プリウスをうんとトルクフルにした感じ。またプリウスよりエンジンの存在感が大きく、その点ではよりガソリン車っぽい感じはする。とはいえEVモードをオンにすれば、プリウス同様に60km/hまでEV走行が可能だ。

    エンジン
最大出力(ps)
エンジン
最大トルク(kgm)
モーター
最大出力(ps)
モーター
最大トルク(kgm)
システム
出力(ps)
車重(kg) 10・15
モード燃費
(km/L)
JC08
モード燃費
(km/L)
トヨタ 3代目プリウス 99 14.5 82 21.1 136 1350 35.5~38.0 30.4~32.6
トヨタ SAI/
レクサス HS250h
150 19.1 143 27.5 190 1570~1640 23.0 19.8
トヨタ カムリ
ハイブリッド
160 21.7 143 27.5 205 1540~1550 26.5 23.4
 

さらにアクセルをグイッと踏み込めば、エンジンの唸りは高まるものの、エンジンとモーターのトルクがウワッと盛り上がり、メーカーが主張する「3Lクラスのガソリンエンジン搭載車に匹敵する動力・加速性能」を発揮する。特に登り坂では重力を無視するかのようにグングン上ってゆく。

ちなみに車重はこのボディサイズ+ハイブリッドシステムにして1540kgとかなり軽量。これはプリウスより200kgほど重いが、全長が20センチ以上短いSAIより30kg以上軽いレベルだ(装備の違いもあるが)。エコカーだと思ってなめていると、チギられる可能性あり。

グローバルカーらしい骨太感あり。ロードノイズは大きめ?


試乗車のタイヤはBSのTuranza

プラットフォームは先代カムリベース。乗り心地はSAIほどスムーズではないが、グローバルカーらしい骨太感や大船に乗ったような安心感はある。

ハイブリッド車ゆえに遮音には気を使ったようで(エンジン停止状態と稼動状態を行き来するためノイズが目立ちやすい)、新型では風切り音を低減する高遮音性フロントガラス、ロードノイズ対策としてフェンダー裏のサイレンサー、ダッシュボードの防音構造を採用。ドア下のシール性も強化したという。

ただ、その中で気になったのは加速時のエンジン音、そしてロードノイズが大きいこと。路面によってはタイヤ(試乗車はBS トランザの215/55R17)の転がるゴロゴロ感が目立ち、広々としたインテリアに少々マッチしない感じがした。これに比べると、撮影で一緒に走らせたデイズの初代プリウスの方がロードノイズは明らかに静かで、乗り心地も滑らかだったくらいだ。

 

操縦安定性も、北米を想定して開発されたクルマらしく、100km/h+αまでの領域では問題なし。4輪の接地感はやや希薄だが、ガッシリしたボディと4輪ストラットの足回りに任せるようにして走れば、高速コーナーもシレッとこなす。また負荷を掛けても、電動パワステ、ブレーキ、駆動力の3つを制御するS-VSCが早期に介入して、事を荒立てずに収めてくれる。ただ、低・中速コーナーが続くワインディングでは、強力な駆動力や車重のおかげでプリウスより明らかにS-VSCの介入が早い。

航続距離はプリウスと同等?


これは高速巡行の直後。イグニッションを切るとエコ運転度の「評価」が出る

今回は借用期間が短く、いつもの試乗コースは走れなかったが、参考までに40kmほど一般道と高速道路を走った区間が13.8km/L。街乗りでは17~18km/L前後、高速80~100km/h巡航では20~22km/L前後だった。一般道での燃費はプリウスに負けるが、高速燃費、特にハイペースで走った時にはエンジンをぶん回さなくてもいい分、互角かも、という印象。

JC08モード燃費は23.4km/L。これは現行プリウスの30.4~32.6km/Lには届かないが、ボディサイズが一回り小さいトヨタ SAI/レクサス HS250hの19.8km/Lを上回る数字。指定ガソリンはもちろんレギュラー。

またタンク容量は65リッターとプリウス(45リッター)の1.4倍以上もあるから、航続距離は同等か、それ以上だろう。

【おまけ】 カムリ ハイブリッド試乗900km! その燃費は?

カムリ ハイブリッドを4日間、約900km試乗してみた。カムリ ハイブリッドというクルマは、日本市場では完全に熟年層向け商品とされている。実際、60歳過ぎの人が急に乗ったとしても、戸惑うのはボタン式スターターと、セルとアイドリングの音がしないことくらい。ゲートの切られたシフトレバー、アナログなメーター、オーソドクスなインパネデザインといったあたりは、昔から見慣れた風景ですぐ運転できるだろう。センターメーターのプリウスとは大違いである。

外観もまたオーソドクスなセダンだ。ちょっと4ドアハードトップ風のスタイリッシュさで、昔風のカッコ良さがある。いかにも飾りましたという感じのメッキパーツも多い。

こういった内外装に最新ハイブリッドシステムを組み合わせて、今や一つのブランドといってもいい「ハイブリッド車」へ熟年を無理なく導こうというのがカムリだ。オヤジだって流行りの「ハイブリッド車」というものに乗りたいが、普通のセダンで、普通の操作系というクルマがないという声は確かにあり、そんな隙間に投入された商品ということになる。

試乗では最初に100kmほど、市街地を足代わりにしてチョロチョロ走り回ったところ、平均燃費計は11.1km/Lを示した。それから高速道路を50kmほど走ったりして、合計180kmを走ったところで見ると12.8km/Lに上昇。

そこでいったんリセットし、満タン給油して、その後は高速道路を中心に720kmほどを走った。最初は燃費を考えずにとばしたところ、300kmほどは15.2km/Lを表示。燃費計をリセットして今度はクルーズコントロールを使い100km/h設定で100kmほど走ったが、16.4km/Lしかでない。前のクルマに追いついての減速、そこからの加速、上り下りの勾配では、車速を維持しようとクルーズコントロールはそれなりにエンジンを回すので、どうしてもこれ以上伸びなかった。試してないが80km/hで設定すればもっとよくはなるだろう。ただ、それは今の高速道路の流れの中で、あまり現実的ではない。ヘタをすれば渋滞のきっかけにもなりかねないと思う。すべての区間で3車線あればいいのだが。

その後の300kmほどはメーター上のECOの範囲をできるだけキープするようアクセルで加減して走った。加速でもアクセルを深く踏まず、とにかくECOに収まるようにじわりと踏んだ。ただし、低速走行をしたのではなく、それなりにとばしたのだが、それでも17.4km/Lまで平均燃費計の数字は伸びた。

とにかくガソリンを使うのは加速時で、たとえ速い速度であっても減速と加速を繰り返さない限り、燃費はよい数字となる。平均車速では前半の300kmと後半の300kmはあまり変わりないと思う。最初は加速時にアクセルを踏み込むことが多かったが、最後はじわりと踏んで加速したわけだ。

混雑した道路ではどうしても加減速のために燃費が悪化し、たとえそこそことばしたとしても、加減速が少なければ、燃費はクルーズコントロールを使うより、いい数字が出るということになる。とにかくアクセルワークが燃費のキモであることを再認識させられた試乗だった。

なお、この距離を走って実感したことは、たいへん疲労感が少ないクルマであることだ。十分なパワー感があるため、制限速度範囲であれば余裕があるクルージングとなる。そしてその速度域なら静粛性も高く、むろん直進性にも不満はない。何よりシートがよかった。腰をバックシートに押しつけ、背筋を伸ばして座る姿勢を取るのだが、こうした姿勢であれば全く疲れを感じさせないシートだった。試乗車は最高級グレードだったため、電動革シートで、ランバーサポートもついていたが、それを差し引いても十分なシートだと思う。

ただ一つ不満だったのは、オプションで装着されていたカーナビの地図が最新でなかったこと。名古屋は今年3月に名二環という環状自動車道が開通したが、この道がまだ入っておらず、走り慣れていない当方は見事に入り損ねてしまい、一般道をぐるぐる走って、かなりガソリンを無駄にしてしまった。熟年層でも使いやすいオーソドクスなカーナビだと思うが、地図のバージョンアップなどの作業は熟年層には難しい。そういう部分こそ自動で更新する通信型のナビの方が熟年層に優しいと思うのだが。

ということで、後半700kmの満タン法での燃費は14.53km/Lとなった。いつも使っている初代プリウスだと18km/Lくらいだから、車格から考えれば全く不満はない。もっともっとエコランをすればさらによくなるのだろう。今回の数字は、要するに誰でも最低これくらいの燃費は出せるという目安にしてもらえると思う。(水野誠志朗)

ここがイイ

国内向けの明確な商品企画。ゆとりのある動力性能。後席、トランクの広さ

グローバルカーであるカムリをベースとしながら、国内向けでははっきりと中高年向けのコンサバセダンに作りかえ、しかもハイブリッド専用車としたという割り切った商品企画。こうして製品になってみると何ということはないが、思いついて実行したのはなかなかのもの。すでにプリウス、SAIといった先進的なハイブリッド車があるがゆえに出来たことでもあり、その意味でもトヨタでしかできなかった商品。

中高年向けコンサバセダンには贅沢とも言えるパワフルなパワートレイン。モーターによるアシスト感が強く、2リッタークラスの国産ガソリン車にない余裕がある。また後席はもちろん、トランクも十分に広い。もはや購入を躊躇させる要素はボディサイズくらいか。

ここがダメ

内装のデザインセンス。ハイブリッド車としては物足りない静粛性

とはいえ、インテリアのデザインはもう少し何とかならなかったものか。内装のデザインセンスや質感は、レクサスを含めてトヨタ車の大きな課題だと思う。

ハイブリッド車としては少し物足りない静粛性。加速時のエンジン音やロードノイズはもう少し抑えたいところ。またタイヤのグリップ感ももう少し欲しい。

総合評価

ハイテクなのにローテクを装う

誰もが、そしてトヨタ自身も日本ではたいして売れないと思っているカムリ。どうやらトヨタは広告を打つ気もないようだ。そのため発売されてもテレビCM等で全く見かけることがなく、ターゲットである中高年はこのクルマの存在を知るよしもない。まずここが問題。

とはいえ販売の現場では売る気満々ゆえ、営業活動にせいを出している。名古屋ではディーラー自らがホテルイベントやらスポーツ紙への全面広告やらを行った。人気が今ひとつのSAIよりも相当こちらに力が入っているようだ。カローラユーザーを中心に、まさに「手売り」で販売を続けており、立ち上がりの結果は上々と聞く。だってこのクルマ、長年のカローラユーザーが最後のクルマとするには実にふさわしいからだ。40余年の車歴をこのクルマで終わらせるのは、ある意味幸せだと思う。ついに最先端ハイブリッド高級車に乗れるのだから。

 

何しろこのクルマ、ハイブリッドなのに操作が簡単である。というか、今までのクルマと全く変わらない。シフトレバーの形状からインパネの造作、メーターの見え方まで、これまでのトヨタセダンそのもの。プリウスのような電子制御のセレクターではないし、パソコンすら触らない中高年にとってはワケのわからないカーナビ操作用のコントローラーも無い。始動こそボタン式だが、10年落ちのカローラ、もしくは旧カムリから乗り換えても、何の違和感もないはず。ハイテクなのにローテクを装うという、大変珍しいクルマだ。試乗車に至ってはナビもオーディオも「レス」のままだった。

ハイブリッド車でナビレスというのは貴重な経験。何かが足りない感で最初はちょっと淋しい感じがしたが、実売1万円のステレオと5万円の最新PNDをつければ、あるいは最新スマホ一本ですべて済まそうという人には自由度が高いし、また無駄なお金を払わなくてすむ分、むしろこの方がいいかもと納得。駆動系はハイテクだが、通信系はローテクどころか「無し」というのは、スマホが急速に普及し始めた今、これからのクルマとしてアリだと思う。来年からソーシャルネットワークサービス「トヨタフレンド」を推進したいトヨタとしては許しがたいことだろうけれど。まあ、トヨタフレンドも全ガソリン車に対応してスマホアプリにでもすれば、中古車にだって対応できるはず。そうなれば逆におもしろいのだが。

マイノリティではなく、マジョリティのためのクルマ

さてカムリに話を戻そう。走りの方も驚くほど普通。確かに積極的にエコ運転したり、逆にエンジンとモーターをフルに使うような走り方をすればハイブリッドらしさがあるのだが、そのどちらでもない普通の走り方ではガソリン車とあまり変わりない印象。これまでも低回転でおとなしく走っていただろうカローラの人にとっては、大きな違和感はないだろう。またハイブリッド車特有の高い静粛性もなく、それなりの走行音のあることがかえって普通な感覚で、これまた違和感がない。グローバルレベルでは高級車の条件を満たさないものの、車格なりのトヨタ的高級感もあるから、まあ十分満足できるだろう。

それでいてガソリン代は同クラスのセダンと比べて半分ですむ。例えば実用燃費が10km/Lのカローラで月1000km走れば、リッター140円で1万4000円。これが15km/Lは走るだろうから、月のガソリン代は1万円を切る。年間では5万円も安くなるから、自動車税がタダみたいなものだ。車両価格はカローラより確かに高いが、今なら減税も使えそうだし、高級車でも安く乗れる。地球環境のことなどあまり気にしない人でも、これなら選びたくなるだろう。

 

とにかく誰も彼もが未来的なハイテクカーを求めているわけではない。日本の中高年もそうだし、北米のマジョリティもそう。いや世界のマジョリティもまだそんなところだ。そこに投入されたカムリは普通のクルマを装いながら、中身はプリウス同等。燃費のいいクルマは世界の誰もが欲しいから、やがてはすべてハイブリッドへ、という流れは止められない。ヒュンダイにはまだ真似できない、これぞ日本だけが作れる企画商品だ。こういうクルマこそ真の「日本車」だと思う。エンスー(マイノリティ)と金持ち(人口の数%?のマイノリティ)には好まれない、世界中の普通の人のためのクルマだ。

となれば日本でもっと売ろうとしても良さそうなものだが、価格は北米と比べてかなり高く、前述のようにあまり売る気のないマーケティングとなっている。北米では2万5900ドルからあり、75円換算したら200万円を切ってしまう。物価相応で考えて1ドル100円で換算してみても、日本では50万円くらい高い計算だ。一見ではSAIより安いが、装備を充実させて比べてみると一回り小さなSAIより高くなるから、結局トヨタのヒエラルキーを守った、ちょっと高めの値付けがなされたと考えるべきだろう。また生産上、やはり今はこのクルマばかり売れ過ぎては困るという事情があるのかもしれない。アメリカ並みの値付けだったら逆に爆発的に売れそうだから。

 

ということで、乗ってみると「よくできたトヨタ車」という印象に終始してしまうカムリ。ハイテク感のあるトヨタ車だったら積極的に評価したところだが、カムリはあまりにコンサバゆえ、とても欲しいという気にはなれなかった。それでも今後ミニバンからセダンに乗り換えたいという人は、けして少なくない。今、日本の3ナンバーセダンで月に1000台以上売れるのはクラウンとマークX、そしてSAI くらいだが、やがてこのクルマはその一角に食い込む、あるいはクラウンに次ぐ売れ行きになるのではないか。そしてこういうハイブリッド車なら、セダンの復権はあるのではないか。もはやセダンがスポーティである必要はなく、実用域での経済性こそセダンのあるべき姿。トヨタは国内全セダンのハイブリッド化を急ぐべきだ。カムリはそんなセダンの今後の姿を先取りしていると思う。まあ、クルマ好きとしてはカムリ グラシアのようなワゴンがあったら、と思ってしまうのだが。


試乗車スペック
トヨタ カムリ ハイブリッド “G パッケージ”
(2.5リッター直4+モーター・317万円)

●初年度登録:2011年9月●形式:DAA-AVV50-AEXNB(G) ●全長4825mm×全幅1825mm×全高1470mm ●ホイールベース:2775mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1540kg(-+-) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:2AR-FXE ●排気量・エンジン種類:2493cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:90.0×98.0mm ●圧縮比:12.5 ●最高出力:160ps(118kW)/5700rpm ●最大トルク:21.7kgm (213Nm)/4500rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/65L

●モーター形式:2JM ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター) ●定格電圧:-V ●最高出力:143ps(105kW)/-rpm ●最大トルク:27.5kgm(270Nm)/-rpm ●バッテリー:ニッケル水素電池

●システム最大出力:205ps(151kW)/-rpm ●システム最大トルク:-kgm(-Nm)/-rpm ●10・15モード燃費:26.5km/L ●JC08モード燃費:23.4km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マクファーソンストラット+コイル ●タイヤ:215/55R17 (Bridgestone Turanza ER33) ●試乗車価格:-円 ※オプション:パール塗装 3万1500円 ●ボディカラー:ホワイトパールクリスタルシャイン ●試乗距離:-km ●試乗日:2011年9月 ●車両協力:トヨタカローラ名古屋株式会社

 
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