Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > 日産 NV350 キャラバン ライダー プレミアム GX インテリアパッケージ

日産 NV350 キャラバン ライダー プレミアム GX インテリアパッケージ新車試乗記(第667回)

Nissan NV350 Carvan Rider Premium GX Interior Package

(2.0リッター直4ガソリン・5AT・288万3300円)

11年ぶりにモデルチェンジ!
シェア奪還を目指す5代目キャラバンは
男心をくすぐる乗り物だった!

2012年08月04日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

11年ぶりのモデルチェンジ。5代目の目標はシェアの奪還


日産 NV350 キャラバン(参考出品車)。東京モーターショー2011にて

日産キャラバンは1973年に初代が登場したワンボックス車。今回11年ぶりのモデルチェンジで登場した新型は5代目(E26型)で、車名は新たに「NV350 キャラバン」となった。NVとは日産のバン(Van)、350とは車両総重量3.5トンクラスを示す。2011年末の東京モーターショーで参考出品車として発表された後、2012年6月15日(ディーゼル車など一部モデルは7月13日)に国内で発売された。

 

新型NV350 キャラバン(photo:日産)

キャブオーバーである点や、フロントがダブルウイッシュボーン+トーションバー、リアがリジッドリーフというサスペンション形式は従来のままだが、先代にあったフロントノーズを廃止するなど、スタイリングはボクシーなものに一新。同時に荷室長も一気に250mm伸ばし、4ナンバー小型商用車でトップの3050mmとするなど積載性も大幅に向上している。ライバル車は言うまでもなく、2004年に発売され、今や市場シェアの8割を占めるという現行トヨタ ハイエース/レジアスエース。

 


新開発の2.5ディーゼルターボエンジン「YD25DDTi」
(photo:日産)

ガソリンエンジンは従来の2リッター「QR20DE」および2.5リッターの「QR25DE」を改良して継続。ディーゼルエンジンは新開発の2.5リッター「YD25DDTi」を採用。電制可変容量小型ターボチャージャー、パイパス機能付きEGRクーラー、商用車初のリーンNOxトラップ触媒などを採用した最新のクリーンディーゼルになる。変速機は5MTに加えて、全車にハイエースより1速多い5ATを採用。これらによって主要モデルはエコカー減税やエコカー補助金の対象になっている。また一部車種には商用車初のプッシュエンジンスタートやインテリジェントキーも採用された。

生産は日産車体九州で、国内の販売目標台数は月間2000台。発売から約1ヶ月後(7月18日時点)の累計受注台数は3倍の6000台を超えたとのこと。海外の一部地域でも販売される。

価格帯&グレード展開

販売主力は200万円台~300万円台前半


写真はバンはスーパーロング・ハイルーフ仕様。ボディカラーは新色の「タイガーアイブラウン」(写真)など全7色(photo:日産)

基本的には商用ワンボックスなので、用途に合わせて様々なボディタイプを選択できるが、大きく分ければ、まずバン(定員は3/5/6/9人)とワゴン(定員は10人)があり、さらにボディの長さでロング(全長4695mm、WB2555mm)とスーパーロング(全長5080mm、WB2940mm)、全高で標準ルーフ(全高1990mm)とハイルーフ(全高2285mm)がある。今のところ車幅は標準(1695mm)のみだが、2012年冬にはワイドバージョン(おそらく1900mm程度)も発売される予定。

 

こちらは10人乗りのワゴン(スーパーロング・ハイルーフ仕様のGX)、2×2×(2+1)×3の4列シートになる
(photo:日産)

エンジンは2リッター直4ガソリン「QR20DE」(130ps、18.1kgm)、2.5リッター直4ガソリン「QR25DE」(147ps、21.7kgm)、2.5リッター直4ディーゼルターボ「YD25DDTi」(129ps、36.3kgm)の計3種類。変速機は5ATの他、2リッターガソリンと2.5リッターディーゼルでは5MTも選べる。初期受注では2リッターガソリン(50%)と2.5リッターディーゼル(45%)がほぼ半分ずつになっている。

価格は仕様によってまちまちだが、例えば道具に徹した3人乗りルートバン・4ドア仕様の2リッターガソリン・5ATなら197万8200円。逆に快適装備をひと通り備えたプレミアムGX・5人乗りの2リッターガソリン・5ATなら262万円0800円、同ディーゼルなら321万7200円、さらに4WDにすると351万1200円という具合。2リッターガソリンとディーゼルの価格差は約60万円と大きいのが悩ましい。

人気の「ライダー」やLV(ライフケアビークル)も


こちらはオーテックジャパンが手がけるライフケアビークルの一つ「チェアキャブ」。クルマ椅子(1名から最大4名)、ストレッチャーで車両後部から乗り込める
(photo:日産)

昨今、この手のワンボックス車ではカスタムモデルも欠かせない。新型キャラバンでも日産の関連会社オーテックジャパンが手がけたメーカー純正カスタム車「ライダー」シリーズが用意されている。価格は229万8450円~377万3700円で(ベース車のおおむね15万7500円高)、専用フロントグリルやバンパーなどを装着したもの。さらに「インテリアパッケージ」装着車(10万5000円高)は、本革巻ステアリング、専用防水シート、LEDデイタイムランニングライトなどを装備。ボディカラーには特別塗装色としてブリリアントホワイトパールやエルグランドやセレナでおなじみのオーロラモーヴが用意されている。

また新型キャラバンをベースにした福祉車両も数多くのバリエーションが用意されている。日産ではLV(ライフケアビークル)と呼ばれるもので、こちらの製作・架装もオーテックジャパンが手がける。

パッケージング&スタイル

ハイエースに似るも、顔でオリジナリティを出す


試乗したのは専用フロントグリルやLEDランニングライト、エアロパーツなどが備わる「ライダー」

先代キャラバンでは衝突安全基準等の兼ね合いから、キャブオーバータイプのままノーズに短いボンネットが付いていたが、その分だけ荷室長は犠牲になり、ハイエースより20センチ短くなってしまった。新型はその反省を活かし、ハイエース同様のワンボックススタイルに回帰。荷室長も25センチ伸びて、ハイエースを5センチ上回った。限られた寸法の中で最大限の広さを求めればこういう形になる、とも言えるが、率直な話、ハイエースのデザインがカッコ良かった、ということもあるだろう。

 

とはいえ、そこはデザインの日産。随所に意地は見せている。フロントに日産車に共通するイメージのメッキグリル(アングルドストラットグリルと呼ばれる)を配置し、ヘッドライトも先代キャラバンの特徴を受け継ぐ釣り目で、日産車らしい顔に。またサイドパネルには一見ブリスターフェンダー風?のキャラクターラインと抑揚を入れて、ハイエースとの違いを出している。全体にクールで工業製品然としたハイエースに対して、ヨーロッパ調にエモーショナルなキャラバン、といったところか。

4ナンバー同士なら大きさはハイエースと互角。スーパーロングはかなり異なる


写真(試乗車)は標準のロング。

4ナンバー車の場合、ボディサイズは横並び。今回試乗したロングボディ、標準幅、標準ルーフの場合、全長は枠いっぱいの全長4695mm×全幅1695mm×全高1990mmで、ハイエースと10~15mm程度しか違わない。

一方、いわゆる1ナンバーのスーパーロングボディ同士で比べると、両者の外寸は大きく異なる。キャラバンの場合、スーパーロングの全長およびホイールベースはロングより385mm長いが、ハイエースの場合は685mmも長い。またハイエースには、キャラバンでは年末までおあずけのワイドボディ(全幅1880mm)があるのもポイント。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
日産 NV350 キャラバン
ロング・標準幅・標準ルーフ
4695 1695 1990 2555 5.2(2WD)
トヨタ ハイエース
ロング・標準幅・標準ルーフ
4695 1695 1980 2570 5.0(2WD)
日産 NV350 キャラバン
スーパーロング・標準幅・ハイルーフ
5080 1695 2285 2940 5.9(2WD)
トヨタ ハイエース
スーパーロング・ワイド・ハイルーフ
5380 1880 2285 3110 6.1(2WD)
 

インテリア&ラゲッジスペース

内装デザインはキャラバンがリード


水平基調ながら、エクステリア同様にエモーショナルな造形のインパネ。センターコンソールのトレーはテーブル代わりに使えて便利

最新モデルだけにインパネデザインはモダンで、明らかに現行ハイエースより新しく見える。ハイエースの場合はトヨタ車らしい安心感や取っ付きやすさが魅力だが、キャラバンの場合はもともと内装デザインが巧い日産だけに、質感の見せ方が巧いし、操作性や情報表示パネルなども今風。また商用車では初めてインテリジェントキーとプッシュエンジンスターターが採用されている。パーキングブレーキもAT車ではミニバンのような足踏み式に変更されている(MT車はステッキ式のまま)。

 

前席に乗り込む際はアシストグリップが必須。つまり両手がふさがっていると乗れない

前席シートなどの作りもキャラバンの方が乗用車っぽく見えるが、乗降性に関しては五十歩百歩で、乗り比べない限りは大差ないのでは。アシストグリップを持って体を引き上げないと運転席や助手席に乗り込めないのは相変わらず。降りる場合も、多少「飛び降りる」感じになる。膝が弱い人は要注意。

なお、試乗車は「ライダー」専用のセットオプション「インテリアパッケージ」装着車で、専用本革巻ステアリングや専用防水シート(セルクロスなどの防水・透湿素材を採用)などを装着したもの。

 

商用車では初のインテリジェントキー&プッシュエンジンスターターを採用

メーター内には平均燃費や航続可能距離を表示する情報ディスプレイを配置
 

AT車のパーキングブレーキは足踏み式になった

シートリフターやテレスコは無し。エアバッグは運転席のみ全車標準になる
 

後席サイドウインドウは横スライド式。開口部は広くないが、何となく楽しい

後席の座り心地はまずまず。後席3点式シートベルト(左右席)は全車標準
 

「プレミアム GX」の場合、最大荷室長はクラストップの3050mm、荷室高は1325mm

後席はクラス初の5:5分割可倒式。タンブル格納でコンパクトに畳める。

スペアタイヤは当然ながら吊り下げ式
 

基本性能&ドライブフィール

街乗りなら2リッターでも不足はないが


エンジンはカーペットをめくってロックを外し、助手席を後ろに跳ね上げると現れる

試乗したのは販売主力グレードの一つである「プレミアム GX」をベースにした純正カスタム車「ライダー」。ノーマルと違うのは内外装デザインのみで、走りに直接関係する部分はベース車と同じになる。価格は288万3300円(販売店オプション含まず)。

新型キャラバンの売りの一つは最新の2.5リッター直4ディーゼルターボ「YD25DDTi」だが、試乗車は2リッター直4ガソリンの「QR20DE」搭載車。さっそく左手で始動ボタンを押して、と言っても、実は慣れるまでは右手が宙をさまよったり、左手でハザードボタンを押しそうになったりするのだが、とりあえずエンジンを始動。足踏みでパーキングブレーキを解除して走り出す。

走り出すと、まず目線の高さが印象的。対向車のトラックやバスの運転手と目が合うので、思わず会釈しそうになる。

 

2リッターガソリンエンジンは最高出力130ps/5600rpm、最大トルク178Nm (18.1kgm)/4400rpmを発揮。ショートストローク型ながら、低速トルクたっぷり型でもあり、1810kgのボディを「ブワァァァァ」というディーゼルチックな音と共に軽々と動かす。またハイエースよりも1速多い5速ATは粛々と、そして滑らかに変速する。街中で足として使う場合、そして積載量が多くない場合は、これでOKかも、と思わせるパワー感はある。ただ、アクセルを深く踏み込み、6000回転までグォォォォと回したとしても、思ったほど加速はしない。パワーウエイトレシオは現行マーチの約12kg/psを下回る約14kg/psだから、まあ仕方ないところか。

 

ATは全車5速。シフトレバーはODオフボタン付で、ゲートは「P-R-N-D-3-2」とシンプル

とはいえ、試乗車でも最大積載量は2名乗車時で1000kgあるわけで(5名乗車時なら850kg)、それなりに荷物を積んだ状態を考えると、やはりトルクのある2.5ディーゼルターボが気になるところ。そちらは最高出力こそ2リッターガソリンとほぼ同じ129psだが(ただし3200回転で発揮)、最大トルクはちょうど2倍の356Nm(36.3kgm)を1400~2000回転という極低回転で発揮する。ただし車両価格は60万円ほど高くなるし、静粛性や振動もどうなのか気になるところ。

乗り心地はほぼ想定通り

標準のロングボディなら、最小回転半径は5.2メートルとコンパクトカー並みなので、ノーズを奥まで突っ込んでからステアリングを切る「ワンボックス乗り」をすれば、路地裏の曲がり角でも切り返しなしで抜けられる。乗り慣れないとノーズの短さを有効に使い切れないが、フロント部分には鏡もあるし、このあたりは慣れ次第だろう。ここはハイエースも同じ。

ただ、キャビンがボディの前端にあるおかげで、運転席から振り返るとバックドアの位置ははるか遠くに感じられる。全長の割に小回りも効くので、内輪差にも要注意。特に全長が5080mmもあるスーパーロングの場合は、運転に独特の注意が必要だと思う。

 

バンのタイヤは195/80R15のLT規格(ライトトラック用)。指定空気圧は前輪3.5kg、後輪3.0kg(積載時は4.5kg)

乗り心地に関しては、期待通り悪くないが、期待を上回るほど良いわけでもない。サスペンションは従来通り、フロントがダブルウイッシュボーンとトーションビーム(車体後方に長々と伸びる)、リアはリジッドにリーフスプリングという昔ながらの形式で、ここもハイエースと同じ。スプリングにコイルを使わないのは、サスペンションをコンパクトにするためと、乗用車とはケタ違いの積載重量に対応するため。積載重量は最大で1.2トン超、車両総重量は3トンを優に超えるので、コイルでは対応が難しい。

そんなわけで、スムーズな路面での乗り心地はSUV風でもあって、意外に快適だなぁとも思うのだが、大きな段差やうねりが現われると、かなり大きめの上下動が生じたり、鋭い突き上げが入ったりする。ただ前席に限れば許容範囲で、静粛性もそんなに悪くない。問題は後席で、後方からノイズが侵入してくるなど静粛性は前席に比べて悪く、前席乗員との会話もままならない。また路面からの直接的なショックも、やはり商用車レベル。この点は今どきのミニバンに敵わない。

山道では速くはないが、無難に走る。前席なら高速巡航も快適

ワインディングも走ってみたが、基本的には何事もなく、無難に走ってしまう。というか、ステアリングを切っても大してボディは曲がらないし、この2リッターガソリンの場合は、どうこうなるほどのパワーもない。むしろコーナーやレーンチェンジでもグラグラ感がないのは、一昔や二昔前のワンボックスから大きく進化しているところ。ESPはオプションでも用意されていないが、ヒヤッとすることや唐突な動きはなかった。ワークホースとしては正しい姿。

高速走行時の安定性もまずまず(試乗時に横風などは皆無だったが)。後席はそうとうノイジーだが、前席はデートにも十分使えそうなくらいの乗り心地や静粛性が保たれる。試乗した2リッターガソリン・5AT車の場合、100km/h巡航時のエンジン回転数は5速トップで約2700回転、4速で約3200回転。やはり高速道路でも大して加速はしてくれないし、燃費も極端に悪くなりそうなので、飛ばす気にはならない。最高速はパワーウエイトレシオや空気抵抗の大きさから考えると頑張って160km/hくらいか。

なお、2リッターガソリン・5AT車の最終減速比は4.111だが、2.5リッターガソリンや同ディーゼルターボの場合はこれが3.700まで下がるので、エンジン回転数は1割ほど下がるはず。

試乗燃費は7.1~8.3km/L、JC08モードは9.7km/L

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が7.1km/L、空いた一般道を無駄な加速を控えて走った区間(約30km)が8.3km/Lだった。また100km/h巡航時の燃費は10km/Lに少し届かなかったが、80km/L巡航なら確実に10km/L台に乗せられそうな感じ。逆に街中で撮影などのために移動していた時の燃費は5~6km/L台だった。いずれもエアコンはオンで、一名乗車・空荷時のもの。

なお、JC08モード燃費は以下の通り。

・2.0ガソリン・5AT(試乗車)・・・・・・・・・・・・・・9.7~9.9km/L(5MTは10.2~10.4km/L) ※2WDのみ
・2.5ガソリン(スーパーロングボディ)・5AT・・・・8.7~9.1km/L ※2WDのみ
・2.5ディーゼルターボ・5AT・2WD・・・・・・・・・11.8~12.4km/L(5MTは13.0~13.2km/L、4WDは11.4~11.6km/L)

なお、上のJC08モード燃費と現在の燃料価格(全国平均でレギュラーガソリンは約135円、軽油は約115円)で10万km走行あたりの燃料コストを計算してみると、2.0ガソリンの場合は仮に燃費8km/Lで計算して約170万円、2.5ディーゼルの場合は燃費10km/Lで計算して約115万円となり、その差は約55万円になる。2.0ガソリンと2.5ディーゼルの車両価格差は約60万円なので、10万km走れば元は取れそう。

なお燃料タンク容量は全車65リッター。ハイエースより5リッター少ない分は、「クラストップレベルの低燃費」でカバーということか。ハイエースの場合、2リッターガソリンのJC08モード燃費は5MTだとキャラバンと同じ10.2~10.4km/Lだが、4ATだと9.2km/Lで5%ほど落ちる。

ここがイイ

スタイリング。運転感覚や目線の高さ

スタイリング。キャブオーバーワンボックスの王道を行くスタイリングで、もちろん荷室もライバル以上。それを助ける後席背もたれの5:5分割可到も相当便利なはず。後席といえばスライド窓はこれまた便利だ。荷室ホイールハウス上面が平らなのは良い工夫。前席センターコンソールの後部がハンバーガーテーブルになるのも、利用者のことをよく考えた装備だ。

男っぽい乗り味。車両価格は200万から300万円台までと意外に高いが、それは1トン前後にも及ぶ荷物を安全に運び、何十万km走っても壊れないためのヘビーデューティな作りゆえ。普段、乗用車ばかり乗っている身からすると、軍用車のような質実剛健すら感じられてしまう。ハイエースと共に、クルマは道具である、ということを痛感できる一台。

目線の高さ。SUVでもかなり高いが、全高が2メートル近い商用バンの着剤位置とアイポイントはそれとは別格。大型トラックにこそ負けるが、大型バスや小型トラックとは同等。それ以外のクルマはほとんど見下ろせる。スカイツリーじゃないが、高いところからの眺めは気持ちいいもの。

現行ハイエースに対して明らかに上回るのはATが5速であること。またバックビューモニターをメーター内に追加できるのも、ナビレスを考えた場合にはありがたい。

ここがダメ

運転席のポジション自由度。後席の快適性など

いたし方ないのだが、やはり運転席シートやステアリングの調整幅は少ない。小柄な人が適切なポジションをとると、シートが前に出て足元のスペースがミニマムになってしまう。

カッコ良さやリセールバリューを思うと、ついミニバン代わりに買いたくなるが、後席の快適性(乗り心地と静粛性)はやはり商用車の域を出ない。家族優先なら、やはりミニバンが無難な選択。

プレミアムGX(と10人乗りワゴンのGX)に装備されるエンジン始動ボタンは、左手で押すことになり、またステアリングの裏を覗きこまないとボタンが見えないので、最後まで慣れなかった。もう少し直感的に操作できる方がいいのでは。またドアを施解錠する時のアンサーバック音は、気のせいか通常より大きめで、深夜の住宅地では近所に気を使ってしまう。通常のキーレスであれば、ディーラーに頼んでアンサーバック音は消せると思うが、インテリジェントキーの場合はイグニッションの切り忘れ警告音などを残す必要があるので難しいかも。

総合評価

走らせているとなぜか楽しい

青い空、灼熱の太陽。夏だ、海だ、キープオントラッキン、というわけで、この季節に最も似合うのはワンボックスである、というのは70年代、80年代に青春を過ごした人だったら共感いただけるのではないだろうか。クルマにいろんな物を放り込んで、あちこち出かけた夏の日。サーフボード、バイク、楽器、キャンプ用具にマリングッズなどをどんどん放り込み、高速道路ではなく一般道(下道っていう言葉は全国に通じるのか?)を、トロトロと何十kmも走るというシチュエーションには、コジャレたクルマは似合わない。ワンボックスなら車中泊だってできたし、まさに相棒だったのだ。高い運転席へグリップを握って滑り込み、尻の下の非力なエンジンを叱咤激励し、視点の高さを楽しみながら、夕日と共にどこまでも走る……。

そんな記憶のせいか、ワンボックスはただ座るだけで、なぜか頬が緩む。乗用車とは何一つ比較にならないが、走らせているとなぜか楽しいのだ。それは新型キャラバンでも同じ。この広い荷室に何を載せようか、このクルマをどう使い倒してやろうか、と思うとワクワクしてくる。今の若い人達の多くが、そんなクルマの楽しみ方を知らないとしたら残念だし、クルマ業界にとっても不幸だ。

ワンボックスはこのスタイルが正解

ところで先代のキャラバンが今ひとつ売れなかった理由、それがそのスタイリングにあったことは間違いない。ノーズが出っ張ったデザインになった時点で、記憶にあるワンボックスや軽トラとは違う、なんだかカッコ悪い乗り物になってしまった。ワンボックスの、あのスタイルが特にカッコいいわけではないが、あのスタイルこそがワンボックスとして違和感がないのも確か。むろん商用車としてシビアに見た場合、荷室長などがライバルに負けていたことも大きかったと思う。しかしそれよりもやはりルックスだ。現実的には、例えばサーファー上がりの内装屋オヤジなどが仕事に使うクルマなのだから、かっこ悪いのは困るのだ。

新型キャラバンはちゃんとワンボックスのイメージそのもののスタイリングだから、その点、文句なし。欲を言えば、さらに先進的なスタイリングを打ち出してもらいたかったが、今回はそこまで冒険を犯す必要はなかっただろう。ワンボックスはこのスタイルが正解。その上でクルマとしての出来を見れば、現時点でライバルに勝る点がいくつもあることは間違いない。ATだって5速だ。やがてライバルもフルチェンジで追いついてくるはずだが、万が一、スタイルを妙に先進的なものに変えてしまったら、その後キャラバンがシェアを伸ばし、今とは立場が逆転する可能性だってあるだろう。

素晴らしきガラパゴス商品

試乗車が2リッターガソリンだったので、もうちょっとトルクがある方がストレスがないのでは、と思ったが、パワーがないのも、それはそれで昔からのワンボックスみたいだから、文句は言うまい。その代わり、軽量エンジンがもたらしたであろう、ワインディングでの(商用車としては)びっくりするほどの安定感は、ワンボックスのイメージを一変させるもの。こんなにアイポイントが高いのに、普通の速度域ならほとんどワンボックスを意識することなく走れる。DAYSでまだ使っている初代ステップワゴンより、ある意味で断然いい。また高いアイポイントのせいか、高速道路をトラックに乗っている気分で90km/hで走ることも案外気分がいいことに気づいた。飛ばさなくても気分がいいクルマは久々。それでも、ここ一発の加速が必要な時には、ひと昔前のガラガラうるさいディーゼルターボの素晴らしい動力性能を思い出し、やはりキャラバンもディーゼルターボが本命だろうと思った。10万kmで廃車にすることなど絶対にありえない類のクルマでもあるし。昔乗っていたポンコツワンボックスは、普通に20万km走っていたものだ。

 

キャラバンは4ナンバーという决められた枠の中で最大のスペース効率を目指す、という命題があったゆえにできたクルマだ。軽自動車と同様で、枠が決まっていて、その中で最高のものを作るという日本的なモノ作りの典型だろう。キャブオーバーワンボックスと軽自動車は同じ発想の商品であり、それゆえ、日本だけの素晴らしきガラパゴス商品として成長し、完成している。そして途上国を中心に海外でも、このガラパゴス商品はけっこう人気がある。ハイエースが盗難車や中古車のランキングで上位であるのは、海外での人気がその原因の一つ。丈夫で広くて使いやすいというクルマの原点があるからだろう。こいつを自分で改造してライトキャンパーにし、気ままに全国各地へ旅立ってみたい、などと思ったが、昨今の若者はそんなことを考えたりはしないのだろうか。いや、アクティブな若者はまだまだ多いはず。ぜひこのクルマで「熱い夏の日」を駆けてもらいたいものだ。

 

試乗車スペック
日産 NV350 キャラバン ライダー プレミアム GX インテリアパッケージ
(2.0リッター直4ガソリン・5AT・288万3300円)

●初年度登録:2012年6月●形式:CBF-VR2E26
●全長4695mm×全幅1695mm×全高1990mm
●ホイールベース:2555mm ●最小回転半径:5.2m
●車重(車検証記載値):1810kg(1060+750) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:QR20DE
●排気量・エンジン種類:1998cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・縦置
●ボア×ストローク:89.0×80.3mm ●圧縮比:9.7
●最高出力:96kW(130ps)/5600rpm
●最大トルク:178Nm (18.1kgm)/4400rpm
●カム駆動:タイミングチェーン
●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/65L
●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:9.7km/L

●駆動方式:後輪駆動(FR)
●サスペンション形式:前 ダブルウィッシュボーン+トーションバー/後 リジッド+リーフスプリング
●タイヤ:195/80R15(Yokohama JOB RY52)
●試乗車価格(概算):-円  ※オプション:- -円
●ボディカラー:ブリリアントホワイトパール
●試乗距離:200km ●試乗日:2012年8月
●車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

最近の試乗記一覧