Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > ポルシェ 911 カレラ S (Type 997)

ポルシェ 911 カレラ S (Type 997)新車試乗記(第348回)

Porsche 911 Carrera S (Type 997)

(3.8リッター・5速AT・1311万円)

  

2005年01月08日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

初期型911への回帰

2004年8月25日に日本でも受注を始めた新型911(通称997:キューキューナナ)は、996の進化版。ボディ構造、エンジン共に大きな変更はないが、内外装デザインを一新し、かつて911の象徴だった丸型ヘッドライトも再び採用。997発売当初の996では「マイルドになりすぎた」と言われ、 996後期で迫力を増した走りにも、さらに磨きをかける。スタイルだけでなく、走りでも原点に立ち戻るモデルだ。

「911」を簡単におさらい

911シリーズは1964年の発売以来、「911」という販売上の名前を変えず何度かビッグチェンジしている。現在は通称「ナロー」と呼ばれているオリジナルモデルから、1974年に米国の安全基準をクリアすべく通称930(開発コード)にモデルチェンジ。1989年にはさらに衝突安全性や4WDの設定等を視野に入れた964に進化し、その後「空冷911」の最終進化型である993となった。

その後、ポルシェは低価格のボクスター(1996年発売)に続いて、水平対向エンジンを水冷化した新型911として996を1998年に発売。飛躍的に高まった生産性やカイエンの登場などで、ポルシェ社は一気に経営危機を脱出している。

価格帯&グレード展開

ボクスターの倍!

新型911は3.6リッター(325ps)の「カレラ」とパワフルな3.8リッター(355ps)の「カレラ S」の2 種類でスタート。価格はカレラ(6MT/5AT)が1046/1109万円、カレラ S(6MT/5AT)が1248/1311万円。カレラとカレラ Sで 200万円も違うことに注目。今後、いつものパターンで4WDのカレラ 4、カブリオレ、ターボ等が加わるはずだ。

消費税込みで軒並み1000万円を越えた911だが、ほぼ同時期にマイナーチェンジした新型ボクスター(986から 987へ開発コードが変わった)は569~728万円。つまり997の価格はボクスター2台分なのだ。確かにスペックには差があるが、いずれも水平対向6 気筒エンジンを乗員の後方に積むスポーツカーに変わりはない。ボクスターはそれだけお買い得と考えるか、911にはそれだけの価値があると考えるべきか…。

パッケージング&スタイル

基本は996のまま、丸目復活

ボディサイズは全長4425mm×全幅1810mm×全高1300mm。リアフェンダーが膨らんで約40mmワイドになったが、それ以外は996と大差ない。2350mmのホイールベースも含めて、基本骨格もパッケージングも同じだ。

原点回帰の象徴が、丸いヘッドライト。993を最後に途絶えていた丸目が、結局のところ復活した。シンプルな形状のライトユニットは日本の小糸製。996のヘッドライトは通称「涙目」、ひどい例では「つぶれた目玉焼き」と呼ばれたが、今思うとあれはあれでよくデザインされた、ある意味グッドデザインだったとも思える。

しかし、外装パーツはほぼ一新。エクステリアを担当したアメリカ人デザイナーのグラント・ラーソンが意図したイメージは、60年代の初期911(通称ナローモデル)という。ディテールはシンプルになり、見た目品質もぐっと上がった。ボディ後半に抑揚が生まれ、後ろ姿はかなり迫力がある。左右1本出しのカレラに対して、カレラSのリアマフラーには左右各2本出しの「フィニッシャー」が付く。

インテリアも一新

ダッシュボードの形状やドアアームレストなど、こちらも993以前に先祖帰りした。ポルシェをよく知るなら、質感が上がった内装や、洗練された収納式ドリンクホルダーに喜べるはずだ。

 

一方で、国産の高級セダンあたりを見慣れた人には、とても1000万円オーバーのクルマには見えないかもしれない。コストのほとんどはエンジンとシャシーがぶんどったと考えるべきか。個人的には、あちこちにあるアルミ調パーツやメタル調パネルが気になった。本物かどうか、つい確かめてしまう。

ステアリングは996ではテレスコ(伸縮)のみだったが、ついにチルト(上下)も可能に。以前のポルシェではチルトもテレスコも出来なかった。ドライビングポジションの自由度はかなり高くなり、ポルシェ初の可変ギアレシオを持つパワーステアリングはロック・トゥ・ロック:2.62回転と、よりクイックになった。

例のごとく、+2の後席は変化なし

後席は特に変更無し。あくまで補助席だが、手が届くので背もたれを倒しておけば荷物置き場として便利だ。純粋な2シーターは二人乗りということより、荷物を置く場所に困ることが多い。雨の日にフロントのトランクを開けるのは面倒だ。

スペアタイヤを廃止

アルミ製ボンネットの下にあるトランクの容量は135L。パンク修理キット(電動コンプレッサー+タイヤシーラント)を積んでスペアタイヤを廃して10kg軽量化し、以前より少し広くなった。小さめのボストンバッグも積むことができる。ラジエイターはトランクの左右、つまり前輪前方に振り分けて配置する。

基本性能&ドライブフィール

穏やかさと激しさ

メインで試乗したのはカレラ Sの5ATモデル。ポルシェ流に言えばティプトロニック Sだ。さて、いつも通り左手でキーを回してエンジンを掛けると、聞き憶えのある「ドドドドドー」というエンジン音。このあたりは大ざっぱに言っていつもの911。カレラ Sの3.8リッターエンジンは、従来の3.6リッターをボアアップして高圧縮比(11.3→11.8)を与えたもの。355ps、40.8kgのパワーで引っ張るボディは AT車で1500kgだ。

ゆっくり走る限りはトルクフルでまったく乗りやすく、すごく洗練されている。そしてアクセルを踏み込むと、今度はクォオーンという甲高い吸気音だけがリアバルクヘッドを突き抜けて室内に響く。この音のチューニングが巧妙だ。穏やかさ(消音、遮音)と激しさ(透過音)が意図的に演出されている。ここは996と違う部分。

街中では従順

スポーツカーとしては視点が高いせいか(それでも座面の基準位置は996より1cm低くなった)、街中での運転はまったく神経を使わない。ステアリングも重からず軽からず。ティプトロニックは2速発進となるので出足は特に鋭くはないが、2500回転くらいでも少しアクセルを踏み込むだけで、かなり加速してくれる。パワーがありすぎて、なかなか踏み込むチャンスがない。

サスペンションはそうとう固く、特にカレラSに標準の電子制御ダンパーであるPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント)を「スポーツ」にして車高を1cm下げると、並みの高剛性ボディではバラバラになりそうなほどハードだ。しかし、997のハーシュネス(突き上げ)の遮断はほぼ完璧で、これには驚いた。993以前はもちろん、996後期でも段差を越える時は容赦なくビシバシ来たものだが。カレラ Sの標準タイヤは19インチの超偏平、295サイズ(後輪)の超ワイドだが、乗り心地への悪影響はほとんどない。

ニュル7分台のフットワーク

郊外のワインディングでアクセルをもう少し踏み込んでみた。激しい走りではPASMは自動的にスポーツモードに切り替わる。ポルシェ初の可変レシオ式パワーステアリングを切ると、荒れた路面なのにスッとフロントが入る。そこから丁寧にアクセルを踏み込んだつもりでも、トルコンATのくせにドライバーに噛みつくようなレスポンスでグワッと加速体制に入る。パワーも凄まじいが、特にレスポンスが息をのむほど鋭い。高性能スポーツバイクのように、繊細なスロットルコントロールを要求するが、997では足の裏でそれをやる必要がある。アンダーステアが小さいので、ペダルを踏もうと思えば踏めそうなところがすごく誘惑的だ。カレラSの6MTモデルはニュルブルクリンクを7分59秒で走るらしいが、一体それはどんな走りなのだろうか。

初心者にはやはり険しい面も

逆に言えば、雑なコントロールやわずかなミスにいちいち反応してくる手強いクルマだ。素足で走っているようにインフォメーションもバンバン入ってくるので、一般的なドライバーがリラックスして速く走るのなら、他にいい選択がいくつかあると思う。さらにアクセル次第で挙動が変わる911らしさも、意図的?と思えるほどしっかり感じられる。とにかく平常心を保って走るだけでも、尋常じゃない速さなのは確かだ。いざという時は PSMが介入してクルマの安定を取り戻してくれるはずだが、一般道でそこまで行くことはまずない。

気になったのは、ティプトロが2速で吹けきると3速に自動シフトアップしてしまう点。そこでシフトダウンのため例のボタンを押したいのだが、ステアリングが回ってしまう山道では、やはりやりにくい。以前のティプトロのように、シフトレバーでもマニュアルシフトできる方が山道ではベターだ。それからニュルで8分切れなくていいから、もう少し段差を滑らかに越えて欲しい気もした(試乗車の走行距離が3000km程度で馴染んでなかったせいかもしれない)。

刺激的でも疲労は少ない

911の性能を一般道で味わうにはやはり高速道路がいい。クァーンという吸気音とともに望み通りの加速をしてくれるし、疲れたらトップギアで巡航するのも安楽だ。かなり固い足だが、ピッチングはまったくない。高性能セダンのような平穏さはないが、エンジンを回さなければ、助手席の女性からも不満はないだろう。刺激的なのに疲労は少ない、というGTスポーツらしい性格だ。最高速度(メーカー発表値)はティプトロでも 285km/h(6MTは293km/h)だが、最高速を競わなくてもそれなりの緊張感が味わえるのはポルシェの良き伝統であり、国産高性能車にない(目指してない?)ものだ。

ここがイイ

何といってもルックス。ナローポルシェをイメージしたというフロントフェイスは、ポルシェ好きのツボにはまるもの。 996時代の8年間、どうしても欲しい気持ちにならなかった水冷ポルシェが、一見して欲しくなった。デイズではご承知の通り911DAYSと言うポルシェ専門誌を発行しているが、この雑誌関係各位においてもデザインはおおむね好評。もちろん一般のユーザーもけして悪くは見ていないよう。ヒットしそうだ。

インテリアも完全に先祖帰りした。993までのデザインモチーフを生かしたもので、964と乗り換えても全く違和感がない。現代のインパネとしてはかなりレトロだが「やっぱりポルシェはこれ」。ドアの内張までよく似ているがドアオープナーは964と位置が違うので、ついつい旧位置を手探りしてしまったほど。

このように内外装の印象はミニやビートルのようなパイクカーといってもいいが、これはけして悪いことではない。このルックスなら誰が見てもポルシェ(911)なのだから。さらに走りの印象までかなり昔の911風になっている。996でモダンでラグジュアリーな路線となった911が、シャープな切れ味のスポーツカーとして戻ってきたわけだ。完成度の高さを洗練された古さで包み込んだ997は、「最新は最良」と素直にいえる911だ。

ここがダメ

デイズでは絶賛しているが、人によっては「度が過ぎた演出」「売るためのあざとさ」「進化がないパイクカー」といった意見もある。996が実際にはかなり売れていたわけで、「それなりの成功車両を否定するようなモデルチェンジのありかたは、いかがなものか」言うシビアな意見もあった。確かに996は空冷から水冷へ変え、メカもデザインも全て一新した志のはっきりしたモデルだったが、997は昔っぽくお色直ししただけともいえる。

レザーパッケージ仕様の内装はステッチの効いた革が絶妙で、価格相応のゴージャス感があるものの、ノーマル車両の内装質感はとても価格相応とはいえない。またノーマルシートでは前後方向の高さ調整がうまくできず、もう一つポジションが決まらなかった。

デザイン上一つ問題なのは、フロントナンバープレートがなぜか少し上を向いていること。出っ歯みたいで見苦しいのはなんとかならないものか。

総合評価

乗り心地がよくなったと言われる997だが、最初に乗ったカレラは思いのほか足が硬めに感じられた。同時に乗った 996の方がしなやかに感じられたほど。PASM未装着でもあり、走行1000kmほどの新車だったため、新車特有の固さがあったのだろう。次に乗ったカレラ Sはそれに輪をかけて硬い。PASMをスポーツに切り替えるとサーキット仕様とも言うべきさらなるハードさに。もしかすると試乗車固有の問題なのかもしれないが、この固さは街乗りにはつらい。ただし、その分スポーツカーに乗っているという感覚は996よりずっと上だ。

ワインディングでの挙動は、「アクセルで向きを変える」911らしいもの。アクセルオンでアンダー気味に、アクセルオフでオーバー気味に挙動が変わる。ナローから964あたりまでのモデルと比べれば安定感は素晴らしく、危なげない。さらに最終的にはPSMがあるから心理的にも安心感が高い。いわゆるポルシェ乗りでなくともポルシェ911らしい挙動を楽しんで走れるはず。このあたりの演出は見事だ。

元々ポルシェ911は、4シーターでもあり、街乗りからスポーツ走行までを一台でこなせるクルマとして誕生している。先代では街乗り的傾向を強めたため、スポーツ派911乗りから反発を受けたが、結果としてより多くのポルシェユーザーを獲得したことは間違いない。にもかかわらず997では一転してスポーツ性を強めてきたが、これはカイエンの存在、そして噂されるセダン? の登場を考慮してのものだろう。これらがあることによって997は4人でも乗れるスポーツカーと言う本来の姿に戻ることができた。ただ、ミッドシップのピュアなスポーツカーであるボクスタークーペの素晴らしい完成度が報道され始めた今、911の今後のあり方には一抹の不安を感じなくもない。今後、もう一歩スペシャリティ感を高めてカレラGTに肉薄するのだろうか。997に乗って998?がどんなものになるのか、を考えるというのも何だが、今後の911のスタンスを気にせずにいられない。

モーターデイズ的には、996がラグジュアリー、997がスポーティとなったことがわかった今、今後911というクルマはネオレトロな雰囲気を残しつつ、楽で快適な街乗りからハイスピードサーキット走行までをシームレスにこなせる、真のスーパーカーとなってもらいたいと思う。何といってもポルシェはマニュアルAT「ティプトロ」を'89年に世界で最初に採用したメーカーだ。それもスポーツカーである964に(今回の試乗でもティプトロに乗ったが、へたなマニュアル乗りより、よほど速く走れるし、ドライビングの楽しさもある)。この時、ポルシェは同時に4WD(カレラ4)も出して、4WDとマニュアルATという理想を提案している。世界で唯一のリアエンジンクーペと言う個性を残しつつ、レトロな雰囲気とハイテク(ITS系の装備を含む)を満載した4WDクーペが911の理想だろう。いや、これはもしかすると、いずれ登場する997カレラ4のことかもしれない。こういうモデルが続々追加投入されるのが911というクルマのおもしろさ。ネタは尽きない。

蛇足だが、報道によればポルシェはトヨタのハイブリッド技術をカイエンに載せるという。997でも日本(特にトヨタ系)のメーカーの部品をどんどん取り入れている。そこでモーターデイズ的には、トヨタのハイテク(ITS)技術をポルシェにどんどん搭載してもらいたいと願う。レーダークルーズコントロールのついた911で、第2東名を走ってみたいものだ。

試乗車スペック
ポルシェ 911 カレラ S (Type 997)
(3.8リッター・5速AT・1311万円)

●形式:ー●全長4425mm×全幅1810mm×全高1300mm●ホイールベース:2350mm●車重(車検証記載値):1500kg (F:560+R:940)●乗車定員:4名●エンジン型式:ー●3824cc・DOHC・4バルブ・水平対向6気筒・縦置●355ps(261kW) /6600rpm、40.8kgm (400Nm)/4600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L●10・15モード燃費:7.2km/L●駆動方式:後輪駆動(RR)●タイヤ:F:235/35ZR19、R:295/30ZR19(Michelin Pirot Sport)●価格:1311万円(試乗車:ー円 ※オプション:ー)●試乗距離:約150km

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

最近の試乗記一覧