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ケータハム セブン 160新車試乗記(第743回)

Caterham Seven 160

(0.66L 直3 ターボ・5MT・394万2000円)

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日英合作?のスポーツが
「軽の壁」をぶち破る!

2014年10月10日

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キャラクター&開発コンセプト

スズキ製エンジンを積む軽規格のセブン


ケータハム セブン160
(photo:Caterham Cars)

「セブン160」は、英国ケータハム社の「セブン」シリーズに、スズキ製の軽用660ccターボエンジンを搭載した軽規格のセブン。モデル名は、ケータハム流の命名法に基づき、車重1トンあたりの馬力、約160psから由来する(正確には80ps/490kgで、約163ps)。

プロトタイプの「セブン165」は、2013年9月にフランクフルトショーでデビュー。市販車であるセブン160の生産は、英国にて2014年2月にスタートした。つまり今回のセブン160は日本専用車ではなく、欧州市場でも販売される。

 

(photo:Caterham Cars)

当初、日本では軽の自主規制値である64psの「セブン130」として2013年12月1日に発表されたが、2014年4月1日には本国仕様と同じ80psの「セブン160」として再発表された。企画・開発は日本の輸入元であるケータハムカーズ・ジャパン主導で始まったという。

いずれにしてもセブン160は、全幅を1470mmにナロー化するなど車体寸法も日本の軽自動車規格を満たしており、ナンバーは黄色ナンバー。自動車税などの諸費用も軽乗用車(5ナンバー)と同じになる。

パワートレインは現行ジムニー譲り


(photo:Caterham Cars)

エンジンは現行JB23型ジムニーのK6A型ターボを採用。現行ワゴンR等と同じ最新のR06A型でないのは、縦置き用の5速ギアボックスやプロペラシャフト等の一式も流用するためで、リアアクスルはDA64型エブリイから流用する。これらは全てスズキから正式に供給される。

最高出力は軽の自主規制64psを上回る80psを発揮。車重は490kgなので、パワーウエイトレシオは約6.1kg/psとなり、0-100km/h加速6.9秒、最高速160km/hを誇る。しかし最大の魅力は、セブンならではの痛快な操縦性だ。ケータハム社ではセブン160を「初期セブンのパイオニア精神を体現」し、「低価格で、最も環境に優しいセブン」であるとしている。

日本では2014年9月時点で80台を超える受注があり、欧州でも税制などの点で有利な国・地域で人気があるため、すでに1年分のバックオーダーを抱えているという。

■過去の新車試乗記
ケータハム セブン ロードスポーツ 200 (2011年7月掲載)

 

価格帯&グレード展開

価格は394万2000円。ウインドスクリーンやヒーターも、オプション

セブン160の価格(消費税8%込)は394万2000円。“軽自動車”としては高いが、ケータハムの現行ラインナップでは一番安い。

5速MTのみで、14インチスチールホイール&タイヤが標準。ウインドスクリーン、ソフトトップ(幌)、ドアはセットオプションで24万9000円。また、ヒーターも5万8400円のオプションになる。

その他のオプションは、トノカバー(3万3000円)、スペアホイール&キャリア(8万6400円)、サーキットロールバー(5万7200円)、4点式ロードハーネス(3万1800円)など。上級モデルで選べて、セブン160で選べないのは、6速ギアボックスやLSDなどだ。

 

今回の試乗車はオプションのウインドスクリーン、ドア、ヒーター、レザーシート等を装着した仕様

ボディカラーも自由自在。標準は無塗装アルミボディに、ノーズコーンと前後フェンダーをブラック、レッド、グリーン、イエローのいずれかで塗装するものだが、オプションでボディ全体もペイントできる。最もマニアックなのは、無塗装アルミボディのヘアライン仕上げで、作業一式で43万2000円。

なお、ケータハムの現行ラインナップ(公道仕様)は、以下の通り。現在、上級モデルのエンジンは全てフォード製で、セブン250は1.6リッター直4“シグマ”エンジン(120ps)を、中間モデルのセブン350は2.0リッター直4“デュラテック”エンジン(175ps)を搭載。セブン480は240psの自然吸気2リッターを積む“最強の自然吸気セブン”で、0-100km/h加速3.4秒を誇る。また、CSR 300はプッシュロッド式フロントサスと独立懸架式リアサスを備えたSr.6シャシーになる。

■Seven 160   0.66L 直3ターボ(80ps) 394万2000円
■Seven 250    1.6L 直4(120ps)    475万2000円
■Seven 350    2.0L 直4(175ps)    583万2000円
■Seven CSR 300 2.0L 直4(175ps)    691万2000円
■Seven 480    2.0L 直4(240ps)    777万6000円

 

パッケージング&スタイル

ボディサイズは原点回帰

今どきの軽よりはるかに小さいセブン160。全長は他のセブンと同じ3100mmだが、これは今の軽規格(3400mm未満)よりずっと短い。また、全高に至っては1090mしかない。

全幅は、現行セブンで一般的な1575mmから、専用のフロントサイクルフェンダーとリアフェンダーを新規で起こし、軽規格枠内(1480mm未満)の1470mmに収めている。フロントトレッドはもともと狭いため、フロントのダブルウイッシュボーン サスペンションは従来通りでOK。リアはエブリイ譲りのアクスル一式を流用するため、ちょうど軽の枠に収まった格好。

 

マフラーはサイド出しで保安基準をクリア。ハイマウントストップランプはロールバーに装着

ただ、ロータス セブン(ケータハム セブンの原型)も初期モデルの全幅は1400mm前後しかなく、タイヤも細かったから、その意味ではセブン160で原点に戻ったとも言える。

ボディ構造は従来通り、スチール製パイプフレームにアルミパネルを貼ったもの。いたってシンプルだが、少量生産向きだ。

 

全長3100mm×全幅1470mm×全高1090mm、ホイールベース:2225mm

ドアを外した状態。乗員は後輪の直前に座る形になる

ドアを装着したところ。この状態がセブンで一番快適
 

インテリア&ラゲッジスペース

乗り降りや眺めは、いつものセブンと同じ


ウインドスクリーンはオプション。標準仕様は風を跳ね上げる「エアロスクリーン」のみ

ステアリングとシートを踏みつけないように、アルミパネルをまたいで左足、右足、お尻の順で運転席に体を滑り込ませるのは、これまで通り。オープン状態なら大変ではないが、幌を閉めていると、どうやって乗ったらいいかそうとう悩む。

ドアは蝶番に上から差し込まれているだけなので、簡単に脱着可能。閉める時は、スナップボタンで止めて終わりだ。鍵なんて、もちろんない。ドアを外したまま走行することもできる。

 

試乗車はオプションのレザーシート付

コックピットに収まってしまえば、意外と快適。シートは前後スライドが可能で、身長165センチ程度でも一番前に出せば、ペダルに何とか足が届く。なお、フットルームは狭く、乗り降りの際に内装を傷つける可能性があるので、ソールの硬い革靴やハイキングブーツは不可だし、だからと言って裸足もノンサーボのブレーキペダルを踏み切れないのでNG。細めのスニーカーやドライビングシューズが良い。

 

燃料計、水温計、油圧計、各種シーソースイッチ、タンブラースイッチが並ぶ。キーはダッシュボードの下に差す

ウインカーは、ダッシュボード上のタンブラースイッチで行う。手が届きやすいので、割とすぐに慣れる

モトリタ製の超小径ステアリングの奥に速度計(260km/h)、回転計(8000rpm)を配置
 

基本性能&ドライブフィール

「軽に乗っている」感がない


エンジンとミッションはスズキ製だが、インタークーラー、オイルパン、ECU制御マップなどはケータハム製になる

試乗したのは、9月にやっと日本上陸した量産初期ロットの一台。前述のような手順で運転席に体を滑り込ませ、ダッシュボード中央下のキーをひねり電源をオンにすると、イモビライザーの赤い表示灯が点滅。それが消えるのを待ってキーをさらにひねると、キュキュキュ、グオンとK6A型エンジンに火が入る。エンジン本体やサイドマフラーから放たれるサウンドはけっこう大きめで、意外や軽っぽくない。ジムニーっぽいと思ったのは、スロットルを煽った時の重々しいレスポンスや、回転落ちの遅さくらいだ。

 

かつてスズキ軽の大半を支えたK6A型エンジン(今はジムニー、エブリイ、キャリイ等のみ)。直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ、ボア×ストローク:68.0×60.4mm

ジムニーと同程度に軽いクラッチペダルを離すと、セブン160は軽々と動き出す。気難しさはまったくない。ステアリングはもちろんノンパワー、いわゆる“重ステ”だが、据え切りでも全く重くなく、むしろ飛ばした時の方が重さを感じる。ロックtoロックは約1.8回転とのこと。

5速MTのシフトレバーは、ジムニー用のシャフトを切り詰めているため、シフトストロークが異様に短く、操作力も重め。シフトストロークの短さで定評のあるモデル(例えばホンダ ビートやS2000、マツダ ロードスターなど)と比べても短く感じる。ただし、ゲート感覚は明瞭で、今回の試乗中にもミスシフトは一度もなかった。

車重はジムニーの半分。カプチーノより200kgも軽い


運転席からでもサイクルフェンダーの動きがよく見える

エンジンは2000回転でも粘るが、自然と3000回転以上をキープすることに。そのあたりの中回転域では、トルクフルで非常に乗りやすい。660ccの非力感はなく、走りだした瞬間から“軽”であることを忘れる。

エンジン、ミッション等は現行JB23型ジムニー譲りで、リアアクスル一式はDA64型エブリイ譲り。5速MTのギア比も、ジムニー/エブリイと全く同じだ(1速5.106、2速3.017、3速1.908、4速1.264、5速1.000)。ただし、最終減速比はジムニー/エブリイの4.300では低すぎるだろうとのことで、3.909のファイナルをスズキが用意してくれたらしい。どうやら、何かの輸出モデル用のファイナルギアを復刻生産したようだ。

 

タイヤは155/65R14と細め。伝統の英国Avonだが、ごく普通のZT5というコンパクトカー用タイヤ

最高出力は本来の64psから80psに25%アップ。最大トルクは107Nm (10.9kgm)。3000~4000回転くらいのトルクフルな感じはジムニーに似ているが、速さはもちろん段違い。なにしろ車重はジムニーの半分しかなく、バブル期の軽スポーツ「ABC」3兄弟(AZ-1、ビート、カプチーノ)で一番軽量だったカプチーノ(690~700kg)と比べても200kg、つまり大人3人分も軽い。

パワーウエイトレシオはトヨタ 86(6.2kg/ps)と同等の6.1kg/ps。また、0-100km/h加速は86(6MTで7.6秒)を上回る6.9秒を誇る。まぁ実際には、そこまでの体感的な速さはないが。そもそも風の巻き込みがほとんどないドア装着状態で走っても、スピード感は「普通のクルマ」に比べて尋常ではなく、少なくとも公道では、常識的な速度で満足できてしまう。

ドア無しで走るとノーヘルバイク状態

5速トップでの100km/h巡航は、約3600回転くらい。軽でおなじみの140km/h速度リミッターはなく、最高速は160km/hとのこと。そこまで出すと、風の巻き込みとか、どうなっちゃうんだろうか。

それでも、ドアを付けた状態なら100km/hでも意外に穏やかなもので、けっこう快適。逆にドアなしで走った場合は乱流が激しく、風切り音や排気音が暴力的に高まり、非常に疲れる。まさにノーヘルでバイク状態。ドア無しで高速道路を走るなら、最低でもゴーグル、出来ればシールド付のヘルメットが欲しい。

なお、オプションでビニール製の幌も装着できるが、なるべく雨の日には乗りたくないもの。天候を選ぶところは、オートバイに近い。

フロントは軽快。路面のギャップは苦手

ハンドリングに関して、まず何より楽しいのは、フロントの軽快な動き。小径ステアリングを45度ほど切ると、目の前に見えるサイクルフェンダーが動き、続いてノーズがスーッと、あるいはズワっとインを向く。これはセブンならではの面白さで、何度やっても飽きない。また、セブン160の場合はエンジンが軽く、タイヤが細い分、フロントの動きはより軽快かも。

一方、160独特のところは、リアの動きが意外に重々しいこと。基本的にはステアリングを切って切って曲がっていくアンダーステア傾向で、上手な人がサーキット等で乗らないとスライドには持ち込めなさそう。ブレーキを遅らせてもリアが出る素振りはなく、むしろフロントがロック気味になり、アンダーが強まる。逆に言えば、スピンしそうな気配はなく、かなり安定サイド。

 

なお、ホイールベースは他の現行ケータハムと同じ2225mmで、トレッドとの比率から言うと、かなりロングホイールベースであるのもハンドリングに影響しているはず。ちなみにカプチーノはたった2060mm、初代NA型(ユーノス)ロードスターでも2265mmだ。

また、途中、2名乗車でワインディングを走ってみたら、車体が落ち着き、トラクションもかかって、より楽しく走ることができた。前後重量配分は49:51(240kg+250kg)とのことだが、もう少しリア寄りの方が、あるいは前後にもっと荷重が掛かった方がバランスがいいのかもしれない。

 

フロントはケータハム製のダブルウイッシュボーン。ダンパーはビルシュタイン製

少し気になったのは、ギャップへの対処。フロントはさすがケータハム自慢のダブルウイッシュボーンで、まったく問題ないが、リアは一瞬鋭く突き上げたりしてドキッとする。リアサスは現行セブンで主流のド・ディオン式リジッドではなく、エブリイ譲りのライブアクスル・リジッドになる。

ブレーキはノンサーボ(真空倍力装置なし)で、フロントがAP製キャリパーのディスク、リアはドラム。普通に走る限り、問題なく止まってくれるが、さすがにサーボ付のような初期制動力はなく、下り坂などでブレーキが遅れた時にはドキッとする。また、タイヤが155/65R14と細い上、フロント荷重が小さいせいか、けっこうロックもしやすい。もちろん、ABSなんてものはない。

燃費はかなり良さそう


タンク容量は36リッターと大きい。指定燃料はオクタン価95+以上ということで、プレミアムになる

今回は試乗燃費は取っておらず、JC08モード燃費も未発表。そこで参考ながら、同じK6A型ターボエンジンを積むスズキ車のJC08モード燃費を見てみると、現行JB23型ジムニーの5MT車(車重980~990kg)は14.8km/Lで、DA64型エブリイの2WD・5MT(車重930kg)は16.4km/Lだ。

また、同じくK6A型ターボを積む後期型カプチーノ(EA21R型、1995~98年、車重690kg)は、10・15モード燃費で20.0km/L。セブン160の場合、空気抵抗は大きいが、車重が490kgと超軽量な上、パワステやエアコンもないので、実用燃費はかなり良さそうだ。

 

ここがイイ

軽自動車感のない初めての軽スポーツ

軽らしさを感じさせない乗り味。運転席に座った瞬間から軽自動車に乗っている感がなく、走り始めると「軽」ではなく、「セブン」に乗っている感がさらに強まる。軽自動車という感じがしない初めての軽自動車。

ドアを装着して走れば、かなり快適と言っていいこと。ドライバーに牙を剥くほどのパワーもないから、安心感もある。そして燃費もいい。車両価格はそれなりにするから、エントリーモデルというよりツーリングに気楽に行けるセブンという感じか。

スズキの量産エンジンを使うという商品企画としての面白さや将来性。日本人にとっては、まさに身近なエンジンであり、スズキ製そのもののパワートレインに関しては、全国津々浦々のモータースでもメンテナンス可能だろう(専用のダイアグによる故障診断などディーラーでしか出来ない部分はあるが)。

そしてなんといっても、プリミティブなスポーツカーらしさ。ドアを外して乗った時のむき出し感、カートのような低さ、重くダイレクトなステアリング。決して簡単ではない操作が、走る実感をバイクのように否応なしに押し付けてくる。これはセブンだけが残している「クルマの本質」という部分だろう。

ここがダメ

冷静に考えると、軽である必然性が弱い

冷静に考えれば、車両本体の400万円に、もう100万円出すと1.6リッターの普通車セブンが買えるわけで、「セブンだけど軽」という心情的な気楽さ、面白さ、家族など周囲へのエクスキューズが、選ぶときの理由として大きいクルマではある。

試乗車はドアを付けた状態で走ると10月初旬の涼しい日でも、走行中はかなり暑くなった。ヒーターに温度調整などというものはなく、基本的にオン/オフしかないが、オフにしても中のフラップが閉じるわけではないので、ヒーターコアの暑い空気が走行風に押されて車内に入ってきてしまうようだ。おそらく冷却水がヒータコアへ循環しないようにすれば(室内に開閉弁があるらしい)、大丈夫だと思うが。

ものすごく面白い反面、昨今のよく出来たスポーツモデルと比べると、走りはかなり体育会系。昨今のクルマをテニスとするなら、試乗車の場合はラグビーとかだろうか。か弱い男子や婦女子にはとても薦められない。

総合評価

30年前のリベンジ?

もう30年ほども経つだろうか。愛知県は知多半島の付け根にある東海市に、ある中古車屋さんがあったが、当時そこの社長はなかなかのやり手で知られていた。その頃、はっきりとは覚えていないが、その店がホンダディーラーになった頃だったと思う、50ccミニカーがブームになり、社長は一台のミニカーを作った。それは“スーパーセブン”そっくりの50ccミニカーだった。もちろんロータスやケータハムのライセンスはないが、それはまさにセブンの雰囲気を伝えるマシンで、知り合いがその広報をしていたこともあり、当時取材に行った記憶がある。残念ながら乗った記憶はないのだが、カッコよさはなかなかのものだった。当時は本物のセブンなど高嶺の花というか、若造には現実感のない乗り物だったが、これなら買えるかも、なんて思ったりしたものだ。このクルマが何台売れたのか、儲かったのか、あるいは損したのかは知らないが、そんなクルマが30年も前に愛知県で作られたのだった。

当時、富山県の光岡自動車も、同じようなクラシックスタイルの50ccミニカーを作っていたが、それから10年ほどたってミツオカはセブンそっくりのゼロワンを作り、国内10番目の自動車メーカーとなってしまった。オロチなど、ミツオカのその後はよく知られているが、この50ccケーターハムを作った会社がどうなったかはあまり知られていない。いや、実はものすごく知られている。この会社こそ独立系のホンダ販社「ホンダベルノ東海」で、後に現在の上場企業「VTホールディングス」となった。その社長が今も現役GT300クラスレーシングドライバーでもある高橋一穂氏であり、高橋社長が若き日に作ったのが、50ccのセブンだったのだ。

 

VTホールディングスはホンダ、日産、フォードといった数多くの国内ディーラーを始め、海外でのディーラー展開や中古車輸出、ロータスやノートン(2輪車)の輸入元、レンタカーから不動産までと多角的にビジネスを展開している。名古屋界隈では、ここ30年で最も成功した自動車販売業者と言える会社だ。

さて、ケータハムの輸入元であるケータハムカーズ・ジャパンは、セブン160の開発に大いに関わったという。しかし小さな会社では、金ばかり食う車両開発など簡単にできるわけもない。これを支えたのが親会社の理解だろう。ケータハムカーズ・ジャパンはエスシーアイという会社で、そしてこの会社はVTホールディングスの100%出資子会社である。これで見えてくるものは…、セブン160こそ、高橋社長による30年前のリベンジ、そしてトップダウンで作られたもの、なのではないか。あくまで想像だが、そんなふうに思えてくる。

スズキにとっても格好の実験素材

もちろん、動力部分を供給しているスズキもまた、たいしたもの。鈴木修会長以下、いい意味で中小企業魂があるスズキゆえに、こういうことができたのだろう。また、スズキ自身も本当はこういう軽スポーツを作りたいのではないだろうか。もちろんビジネスとして難しいのは分かっているが、そんな気持ちが裏に隠れたトップダウンがここでもあったのではないか、などとこれまた想像してしまう。

むろん担当者レベルでは大変な努力があったはずだが、今回はトップが理解しているからこそ、こんな夢のようなクルマが出来上がったわけだ。しかも自主規制である64psの壁が、例外的にせよ破られた。もうちょっとパワーを出せたら軽自動車はすごいものになるとは思っていたが、それをこのクルマは実際に思い知らせてくれる。まったく軽自動車らしくないパワー感は、もちろん車重の軽さも効いているわけだが、スポーツカーとして不満のないところでは。また、セブン160はスズキにとっても格好の実験素材になるだろう。このエンジンで往年のフロンテクーペあたりをリメイクしたら、それこそもう即買いなのだが。

そんな奇跡のように出来上がったセブン160だが、価格ばかりはいかんともしがたい。庶民には手が出しづらい軽自動車だ。とはいえ、ちょっとしたお金がある人なら、案外高くないのかもしれない。お金持ちはシビアだから、あまり乗らない普通車の維持費はすごい無駄に思えるはず。しかしセブン160はなんといっても軽自動車だから、維持費はお金持ちにとってゼロにも等しい。という意味で、まさに「おもちゃ」として買えるだろう。庶民には高値だが、お金持ちにとってはおもちゃ。それによって成り立つ、これがセブン160というクルマだ。

かくして庶民には高すぎるこの価格も、それゆえこのクルマが経営的に成立するとしたら、悪い話ではないと思う。量販で採算がとれるとも思えないコンセプトだし。お金持ちはぜひ買って、いずれ庶民のために手放してもらいたいものだ。

ベーシックな軽スポーツぞ、い出よ

50ccのセブンが作られた時代から、軽という絶対的な大衆車にスポーツカーがあったらいいなと思ってきた。それこそがスポーツカーの大衆化だ。バブルの頃、ホンダ ビート、スズキ カプチーノ、マツダ AZ-1というクルマがあって、そんな夢が実現してきたと舞い上がったが、結局のところ後継車はないまま。しかしこれらは今も根強い人気がある。

それを受けてか、最近は軽のスペシャリティがやっと出始めた。先日乗ったダイハツ コペンあたりはいいセンを行っているし、まもなく新しいホンダの軽スポーツも出る。とはいえ、それらはセブン160ほどではないが高価で、そこがちょっと残念だ。つまりは、あまりお金のない老いも若きもが、クルマの楽しさを味わい尽くせる、量産型で安価、ベーシックな軽スポーツぞ、い出よ、ということ。もちろんそこには80ps程度のエンジンを願いたい。「こういった楽しいクルマをスズキやホンダあたりが作れないものなの」というレーシングドライバー高橋社長からの密かなメッセージが、セブン160には込められているのかもしれない。むろんこれも想像だが。

 

試乗車スペック
ケータハム セブン 160
(0.66L 直3 ターボ・5MT・394万2000円)

●初年度登録:2014年9月 ●形式:- ●全長3100mm×全幅1470mm×全高1090mm ●ホイールベース:2225mm ●最低地上高:100mm ●最小回転半径:5.25m ※参考値 ●車重(車検証記載値):490kg(-+-) ※参考値 ●乗車定員:2名

●エンジン型式:K6A ●排気量・エンジン種類:658cc・直列3気筒DOHC・4バルブ・ターボ・縦置 ●ボア×ストローク:68.0×60.4mm ●圧縮比:- ●最高出力:58.8kW(80ps)/5500rpm ●最大トルク:107Nm (10.9kgm)/3400rpm ●カムシャフト駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:RON95+(プレミアムガソリン相当)/36L ●JC08モード燃費:-km/L

●駆動方式:FR(後輪駆動) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン+コイルスプリング/後 マルチリンク ライブアクスル(5リンク リジッド)+コイルスプリング ●タイヤ:155/65R14(Avon ZT5)

●試乗車価格(概算):458万3600円 ※オプション:ウインドスクリーン・ソフトトップ&ドア 24万9000円、レザーシート 9万6600円、ヒーター 5万8400円、ソリッドペイント 23万7600円 ●ボディカラー:ケータハム レーシンググリーン

●試乗距離:約-km ●試乗日:2014年10月 ●車両協力:ACマインズ(愛知県岡崎市)

 
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