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ポルシェ ケイマン S新車試乗記(第415回)

Porsche Cayman S

3.4L・5AT・819万円

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_1-thumb.jpgありそで無かった
ミッドシップ+クーペボディ。
ポルシェ第3のスポーツカー
そのポテンシャルを検証する!

2006年05月20日

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キャラクター&開発コンセプト

量産ポルシェ初のミッドシップクーペ

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_2-thumb.jpg 2代目ボクスター(987型)をクーペ化したモデル、それが2005年に発表されたケイマンだ。ポルシェ社の位置付けでは「911カレラとボクスターの間に立つモデル」だが、水平対向6気筒のミッドシップ・クーペという構成は、いかにもレーシーで胸躍るもの。なにしろ同じ条件を持った市販ポルシェは、60年代にレースで活躍した904カレラGTSか、90年代に耐久レースを走った911GT1のみ。いずれもロードバージョンこそあるものの、最大の目的はレースで勝つことだった。914、ボクスター、そしてカレラGTもミッドシップ車だが、それらはオープンないしタルガトップボディとなる。よってケイマンは「量産ポルシェ初のミッドシップクーペ」と言えるわけだ。

車名の「Cayman」は中南米に生息するワニの1種。日本では通常カイマンと呼ぶが、ポルシェの場合は実際の発音に近いケイマンとなる。このワニは小型ながらしなやかさと俊敏な動きで獲物を捕らえるのが巧みだそうだ。なお、英語の辞書を見ると、カイエン(Cayenne=とうがらし)のすぐ下にCaymanがある。

価格帯&グレード展開

6MTで777万円、Tipで819万円

今のところ3.4 リッター(295ps)の「ケイマンS」のみで、6速MT(777万円)と5速AT<ティプトロニックS>(819万円)がある。MTは左ハンドルのみで、ティプトロニックは左右があるが、販売主力は左ハンドルのTipだ。欧州での発売は2005年11月から。日本でも受注は2005年から始まったが、実際のデリバリーは06年1月から。

911より300万円以上安く、ボクスターSより82万円高い

一方、気になる3.6リッター(325ps)の911カレラは1082万円(MT)/1145万円(AT)と、馬力は+30psだけにも関わらず、+305 万円/326万円も高い。1馬力あたり約10万円もの差額は、やはりそれだけ911にはカネが掛かっている、ということか。

もう一方のボクスターS(3.2リッター、280ps)は695万円(MT)/737万円(AT)と、オープン化に伴うコストで相殺するせいか82万円安いだけ(MT/ATいずれも)。ここは純粋に走りか、オープンか、という差だ。遅れて「S」のつかない素のケイマンも加わる予定で、排気量は素のボクスターと同じ2.7リッター(ただし馬力は+5psの275ps)と発表された。

パッケージング&スタイル

987ボクスターのコンポーネンツを流用

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_3-thumb.jpg 全長4340mm×全幅1800mm×全高1305mmは、当然ながらボクスターとほぼ同じ(全長で+10mm、全高で −10mm)。現行911(997型)比では全長こそ短いが(−85mm)、大差ないと言っていいだろう。987ボクスターのシャシーと外装パーツを流用しつつ、独特のファストバックスタイルに仕上がっている。

550LMがモチーフ

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_4-thumb.jpg リア・コンビ・ランプもボクスターからの流用。リアフェンダーにはミッドシップの証、エアインテークが付く。右側がエンジンルーム冷却用、左側が吸気用だ。縦に桟があるインテークデザインはケイマンS専用だが、これは1950年代のレーシングポルシェ「550LM(550スパイダーのクーペ版)」がモチーフだ。あまり著名なモデルではないので、気付く人は少ないのでは。しかし写真で見比べると、丸く盛り上がったファストバックスタイルも550LMとそっくりなのが分かる。

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_5-thumb.jpg ホイールベースは2415mm。エンジンがホイールベース内に侵入する分、911のリアシートがそっくり消え失せ、それでも足りず?65mm延長されている。Cd値は0.29(ティプトロニックはアンダーボディの形状が違うのか0.30)。120km/hでリアウイングが自動的にせり出し、80km/hで下降するのは、ボクスターや997と同じだ。

試乗車のタイヤやブレーキは標準仕様だが、オプションでPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ、142万円)も選べる。これはイエローのブレーキキャリパーが目印だ。

ダッシュボードもほぼボクスターから流用

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_6-thumb.jpg ダッシュボードも987ボクスターの流用。メーターシュラウドの形状などは微妙に変えてあるが、操作系パーツはほぼ一緒。元々911(997型)のダッシュボードがベースなので、それと似た部分も散見される。

試乗車のエアコンは一見オートだが、実はマニュアル。普通の赤と青のダイアルが、液晶のバーグラフになっている。慣れればいいのかもしれないが、率直に言って使いにくい。空冷時代の911もそうだったが、ポルシェの空調コントロールはなぜか難解だ。オートエアコンは+8万円。

ミッドシップ車のあばたもえくぼ

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_7-thumb.jpg 2 シーター車で手荷物を置く時、使いやすいのがシートバックの後ろだが、ご覧の通り余裕はあまりない。一見、エンジン真上の「棚」が使いやすそうだが、実は着座した状態でここに手を伸ばすのは、かなり難儀だ。Bピラーの付け根にも容量4.5リッターの小物入れがあるが、これも実用的とは言えない代物。また、この角度から見ると、リアクォーターの視界が決して良くないのが分かる。クローズド時のボクスターと後方視界は大差ないと言っていいだろう。

などなど、いろいろ文句を書いたが、これらはミッドシップのスポーツカーでは珍しくない特徴。だからこそピュアな感じがするのだ。

巨大なリアゲート、スノボも積める荷室

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_8-thumb.jpg リアトランク容量は、サイドウインドウ下までで185リッター、ルーフまで満載すれば260リッターを確保。資料には「ダイビング機材やスノーボードを同時に積める」とある。エンジンの絶対高が低い水平対向ならではの芸当だ。スチール製のハッチゲートはダンパーストラットの耐久性が心配になるほど長くて大きいが(116cm×90cm)、おかげで開口部は広く、使い勝手は悪くない。ちなみにボクスターのリアトランク容量は130リッターだ。

またフロントのトランク容量はケイマン、ボクスターいずれも150リッター。過去のポルシェ911はここにスペースセーバータイヤを搭載してきたが、ケイマンは今の911やボクスター同様、スペアタイヤレスでパンク修理キット付きとなる。

オイルと冷却水用メンテナンスハッチがトランク内にあるが、それ以上の整備はリフトで上げて、ボディ下部から行う。ちなみに、ポルシェのリリースによると、2005年度にドイツのTUV(技術検査協会)が発表した「車齢2〜3年のグループで、最も故障が少ない車」の1位が先代ボクスター(986型)。2位はマツダ・デミオ、3位がアウディA4だ。使用頻度とメンテナンスへの気の使い方など、条件の違いはあるだろうが、ポルシェユーザーにとっては心強い調査結果だろう。

基本性能&ドライブフィール

回さなければ平穏。乗り心地もいい

試乗したのはティプトロニック(5速AT)。チルト&テレスコ付きのステアリングと、座面高がレバーで上下するシートのおかげで、ドラポジは大抵の体型と好みをカバーする。いつものポルシェ通り、左手でイグニッションを回してスタート。ウヮーンという迫力ある硬質なサウンドはポルシェならではだ。3000回転くらいまでなら特に緊張感も興奮もなく、平穏に街乗りできる。エンジン音量はけっこう大きいが、イヤな振動がないのはポルシェの良い所。長時間乗っても、音の割に疲労が少ないのはこのためだ。

サスペンションはボクスターS以上にハードな設定だが、ボクスター比で「曲げ」が2倍、「捻り」 2.5倍というボディ剛性のおかげか、乗り心地はとてもいい。ただ、そうしたスゴイ剛性が「ビシッバシッ」と体感として伝わってはこないのは、マニアにとっては物足りないかも。このあたりはオプションのPASM(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメント 27万円)や19インチタイヤ(27〜33万円)付きだと違ってくるようだ。

5200回転から激変

ケイマンSが本領を発揮するのはエンジンを5000回転以上回した時だ。インテークのフラップが全開になる5200回転あたりからいきなりグァーーン!と背中のすぐ後ろで大合唱が始まり、最高出力295psを発揮する6250回転を通り過ぎて、カットオフが働く7300回転直前まで一気に回り切る。この時のサウンドは987 ボクスターも相当の音量だったので、直接比べてみないとどっちがどうとは言えないが、いずれにしても静粛性よりスポーツカーらしい演出を優先したものだ。

自動シフトアップをキャンセル

ティプトロニックSは通常、シフトレバーをM(マニュアル)モードに入れても自動シフトアップするが、今回の試乗車のように「スポーツクロノパッケージ」(ダッシュボード中央のストップウォッチが目印)付きなら、「SPORT」モードにすることで、スロットル制御マップの切り換えと同時に、自動シフトアップのキャンセルが出来る。サーキットやワインディングを攻める時には、やはりスポーツクロノはあった方がいいだろう。なお、PASM付きだと電子制御ダンパーの設定も変わるが、試乗車は未装着だった。

ミッドシップ VS. リアエンジン

操縦性はとても一般道で限界特性を見れるようなレベルではなく、濡れた路面でもかなりの速度で何事もなく走り、曲がり、止まってしまう。ミッドシップらしい素直な運動性は、エンジンを軸に思ったように曲がってくれると言う感覚。パワー感も過剰ではなく、このハイパフォーマンス車を乗りこなしている気分にさせてくれる。ただ、なぜかボクスターのような軽快感や低重心感は薄く感じられた。車重はボクスターSとほぼ同じだから(むしろケイマンの方が5kg軽い)、クローズドボディとオープンというボディ形状による錯覚だろうか。それは高速巡航でも同じで、このパフォーマンスであればもう少しどっしり感が欲しくなってしまった。速度を上げていくと高速「クルーズ」という感覚ではなく、少し緊張感を伴った高速「走行」という走りとなる。

911に肉薄するパフォーマンス

メーカー発表のパフォーマンスは以下の通り。

●ケイマンS(6MT/5AT)・・・・最高速:275/267km/h、0-100km加速:5.4/6.1秒
●911カレラ(6MT/5AT)・・・・最高速:285/280km/h、0-100km加速:5.0/5.5秒

価格だけでなく、パフォーマンスでも厳格に上下関係を守るのは、良くも悪くもポルシェの伝統だ。またリアサスがストラットで、マルチリンクの911よりもコーナリング限界は低いと言われており、事実ニュルブルクリンクのラップタイムでもケイマンはPASM・19インチ仕様で8分11秒であり、911 カレラSの8分5 秒に肉薄するも、一歩及ばない(及ばせていない)タイムとなっている。

ここがイイ

オープンが必要ないという人には待望の、ミッドシップクーペのポルシェが誕生したこと。前後トランクやハッチバックなど実用性が高く、しかも独自のスタイリングは素晴らしい。過剰すぎないパワー感とのマッチングも良いし、ミッドシップの運動性と運転の楽しさは格別だ。

マニュアルモードにするときはステアリングのボタンを押すだけ。いちいちシフトレバーにふれる必要はない。これはポルシェの良いところだ。

ここがダメ

クーペボディになったことで、比較の対象がボクスターではなく、つい911に向かってしまうこと。リアオーバーハングの地面すれすれにフラットシックスをぶら下げて、後輪を地面に擦りつけるようにトラクションさせて走るRRに比べると、同じ水平対向6発のミッドシップですら何となくトラクションがダイレクトに伝わらないという風に感じてしまう。ただおそらく同じ3.6リッターエンジンを載せると、ケイマンの方が速くなるはず。素性としてはケイマンの方が上だろう。

総合評価

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_9-thumb.jpg 「ポルシェAGはドイツ国内における2005年度の新車登録台数が前年度比2.1%増となり、新記録となる16,565台を販売」「ポルシェジャパンは2005年の新車登録台数が、1998年の営業開始以来初めて3,500台を突破し、3,572台を記録」といった具合に絶好調のポルシェは、ラインナップをどんどん充実させている。ボクスターがまだ登場していなかった10年前には、911一車種しかないというマイナーメーカーだったが、現在ではセダンこそないものの、SUVのカイエン、そしてケイマンという新型クーペを加えて4車種となり、しかもターボやカブリオレ、さらにはカレラGTといったスペシャルモデルまで入れれば、実に多くのモデルを用意している。噂ではスポーツセダンの投入もやがてあるようだ。ポルシェというブランドを十二分に活用し、充実したラインナップで数を売り、企業としての生き残りを図るという、ヴィーデキング社長のもくろみは今のところ順調だ。

車種は増えてきたが、これまではポルシェ内で車種がバッティングするようなことはなかった。カイエンが欲しいと思う人には911は比較対象にならないわけで、今回のケイマン投入まではある意味、平和なラインナップだったわけだ。ところがケイマンは 911とかぶる。エンジンの搭載位置は大きな差違だが、スポーツクーペという意味では同じだし、サイズもほとんど変わらない。いざとなれば4人乗れるというのが911のメリットだが、これは誕生以来の伝統にすぎず、スポーツクーペとしてはそうたいして意味のあることではない。911(クローズトボディ・リアエンジン・スポーツクーペ)とボクスター(オープン・ミッドシップ・ライトウェイトスポーツ)は明確なキャラクターの差があったが、911とケイマンにはそこまでの差がない。911より300万円以上安いから、911の販売に影響があるのではないか、と心配するのも当然だろう。

しかしポルシェはここに明確な車格の差を打ち出した。排気量の差はもちろん、ケイマンは最高速で 911より10km/h遅く、0-100km/hも0.4秒遅いとされる。そのほかインテリアの高級感も、ボディの剛性感も、乗れば確かに911とは異なっている。まるでトヨタ車のような明確な差別化が意図的になされ、ポルシェヒエラルキーが守られるようになっているわけだ。

とはいえ絶対性能から考えれば割安感十分。どうせ最高速など出せっこないのだから、その差はないに等しい。実用的で一級品のスポーツカーを買うという意味では、ケイマンのお得さが光る。スタイリングもある意味見慣れた、あるいは意図的に昔風の911 (997)と比べれば、新鮮そのもの。ある意味、すごくモダンでカッコいいと思う。「ボクスタークーペではなくケイマンである」と言い切れるだけの独自性を持っているのだ。試乗時は雨だったが、クーペモデルだけに何ら気後れすることもない。

昨年、987ボクスターに乗ったときに「オープンでこれだけいいのなら、クローズドボディだともっとすごいだろう。ボクスターがいくらボディ剛性を上げても、やはりクローズドボディにはかなわない」と書いたが、その期待に違わぬハイパフォーマンスをケイマンは持っている。ただボクスターより軽快感が薄れたように感じるのは、前述のようにクローズドボディ化の功罪というところか。

http://www.motordays.com/newcar/articles/caymans20060520/pic/photo_10-thumb.jpg このようにボクスターのクーペなのだから、ボクスターよりここがいいと比較すべきなのだが、つい911を引き合いに出してしまうのは、登場モデルがハイパフォーマンスのケイマン「S」だからだ。ポルシェの場合、まずベーシックなモデルを出し、その後にハイパフォーマンスモデルを出すことが多いが、ケイマンはまずSを出して、911を出し抜くモデルではないという区別(ヒエラルキー)を宣言した。しかし、それゆえよけいに911と比較したくなってしまうのだ。しかし当然ながら911を超えているはずはない。300万円以上の価格差があるのだから当然だろう。やがてSではなくベーシックなケイマン(3リッターエンジン? 価格は650万円前後?)が登場するはずだが、それこそが911と400万円以上の価格差がある安価なミッドシップクーペ本来の姿なのかもしれない。

試乗車スペック
ポルシェ ケイマンS
(3.4L・5AT・819万円)

●形式:−●全長4340mm×全幅1800mm×全高1305mm●ホイールベース:2415mm●車重(車検証記載値):1410kg(F:−+−) ●乗車定員:2名●エンジン型式:−●3387cc・水平対向6気筒・DOHC・4バルブ・縦置●295ps(217kW)/6250rpm、 34.7kg-m (340Nm)/4400-6000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/64L●10・15モード燃費: 7.9km/L●駆動方式:後輪駆動(ミッドシップ)●タイヤ:前235/40ZR18、後265/40ZR18(Michelin Pirot Sport)●試乗車価格:832万5000円(含むオプション:スポーツクロノパッケージ 13万5000円)●試乗距離:−km ●試乗日:2006年5月

公式サイト http://www.porsche.co.jp/cayman/caymans/default.htm

 
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