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トヨタ セルシオ新車試乗記(第144回)

Toyota Celsior

 

2000年10月20日

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キャラクター&開発コンセプト

高級車に必須の伝統を持たずして世界が認めた実力。わずか10年でその地位を不動のものに

日本車ではじめて世界が認めた高級サルーン「レクサスLS400」日本名セルシオがデビューしたのは'89年。そのクオリティや静粛性の高さは高級車メーカーの老舗、ベンツやBMWが震撼したほどで、特に品質とコストパフォーマンスを重んじるアメリカでは、「レクサス・クオリティ」という言葉が品質の高さの証明にまでなっている。新型キャデラック・ドゥビルなどはコンプレックス丸出しの作りとなったほど。

'94年に登場した2代目は、内容こそ文句のない仕上がりだったが、不景気真っ最中という経済状況もあって、コストダウンを強いられ、初代を少し改良しただけ、という負のイメージがまとわりついていた。このようなキープコンセプト路線は成功した高級車の宿命と思われたが、今回の3代目は違う。スタイリングの方向性からその内容まで大きく変えており、実に挑戦的。

「21世紀の最高級車の頂点のあり方の深求」を開発テーマとし、クルマの基本骨格となるプラットフォームを一新。さらに搭載されるV型8気筒エンジンの排気量を4.0リッターから4.3リッターへとアップさせ、海外名も「レクサスLS430」と改名された。

価格帯&グレード展開

旧型より選択肢が増え、価格は540~730万円。プライスバリューの高さはあいかわず

グレードは大きく「A仕様」、「B仕様」、「C仕様」の3つに分けられる。この3つのうちA,B仕様は一般的なコイルスプリングを採用するのに対し、C仕様にエアサスペンションが採用される。

A仕様は比較的装備のシンプルなベースグレードで、価格は540万円。B仕様はA仕様より上級な装備が与えらた中級グレードで、価格は590万円。この2仕様には足回りのセッティングをやや硬めに振ったヨーロッパ仕様の「eRバージョン」がそれぞれ25万円高、10万円高で用意される。

C仕様は基本的にB仕様と同等の装備。つまりB仕様にエアサスつくとC仕様となる。価格は25万円高の615万円だ。また、C仕様には後席の快適装備を充実させた「Fパッケージ」と、高級本革シートなど贅の限りを尽くした「インテリアセレクション」がそれぞれ50万円高で用意される。この2つのセットオプションを選んだ最上級グレード「C仕様Fパッケージ・インテリアセレクション」は730万円となる。

メーカーがあげたライバルはベンツS430、BMW740の2車種。いずれもセルシオのベースグレードよりもほぼ倍の価格だから、セルシオのコストバリューは相変わらず際立っている。なお、日産シーマはトヨタからはライバルとして名前があがらなかった。

パッケージング&スタイル

ウソでしょ? 驚異の空力、Cd値0.25を達成!

ボディサイズは全長4995mm×全幅1830mm×全高1470mm(エアサス仕様)。背が55mm高くなった他は旧型と同じサイズながら、ホイールベースが+75mmの2925mmとなり、前後のオーバーハングが大幅に短縮されている。そのスタイルは、基本こそ従来のセルシオを踏襲するも、2代目が登場したときとは比較にならないくらいのインパクトがある。これまで高級車に不可欠といわれていた“角”が削られ、全体的に筋肉質になった印象だ。

何より驚くべきはCd値0.25(エアサス仕様車。あくまで自社発表の数値)という驚異的な空力の良さ。なんと空力実験車みたいなあのホンダ・インサイトと同じ。量産サルーンとして空力を自慢していたベンツのSでも0.27。セルシオが0.25をはじき出せたのはボディの“上より下”に注目したから。つまりボディ底面。底面積の3分の2が真っ平らなカバーに覆われており、まるでフェラーリ。実際、覗いてみると、見事にフラット。開発陣によると、他のクルマもボディ底面を真っ平らにすれば空力を向上させることは確実なのだとか。マフラーの形状なども変えなくてはならないため、最大の問題はコストとのこと。

さらなる完璧クォリティへの挑戦は終わらない

によって頭上の空間も余裕を増している。ゆったりとした雰囲気は、ちょっとしたリムジン。ラゲッジ容量もガソリンタンク配置の見直しなどによって440リッターから573リッターへと30%以上大きくなった。

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インパネはオーソドックスなデザインながら、ナビを上方に配置するなど視認性の向上が図られている。このあたりはベンツより上出来。目新しい装備としては、キーレスシステムを実現したスマートキー、コンフォータブルエアシートと名付けられた発熱&冷却機能(シートを温風冷風が通る)を内蔵した快適革シート、事故時の緊急通報システムヘルプネットあたり。またパワーシートに座面の長さ調整が加わり、ホーム用オーディオの世界最高ブランドである「マークレビンソン」製(←マッキントッシュの比じゃないらしい)が設定された。レーダークルーズコントロールにブレーキ制御が加わっているし、ETC(自動料金収受システム)のコントロールユニットも設定された。21世紀の最高級車らしいデジタル機器満載の内容となっている。

これだけの機能・装備を満載しながらも、その操作スイッチは実にシンプルにまとめたのも評価すべきポイントで、非常に良く練り上げられた使いやすいインターフェイスといえる。オヤジ向きの使いやすさだ。

質感の高さには毎度感心させられるが、今回も進化の手を緩めていない。旧型のようにコスト削減の気配を微塵も感じさせず、新車の臭いからして“超一流”なのだから、参ってしまう。本革の風合いも非常によろしく、お約束の木目パネルは、もちろん“木目調”でなく“本木目”。指紋すら付けたくなくなる。さらにクラウンのようなダンナ臭さをあまり感じさせない。これも今度のセルシオの魅力だ。

興味深かったのは、オプションのスマートキーシステムだ。キーを身に付けていれば、クルマに近づいただけでドアミラーに仕掛けられた足元ライトが点灯し、ドアノブに触れただけで解錠する。外側のドアハンドル周りには磁気が発生しているらしい。さらにエンジンもキーを差し込む必要がなくそのままキーシリンダーのスイッチをひねればかかる。これはメチャ便利だ。ただ、施錠・解錠からエンジン始動までのチャートが慣れるまではやや複雑に感じられ、使い方を一歩間違えるとセキュリティシステムのアラームが鳴り響く恐れもあるらしい。このキーはトヨタホームの玄関の鍵とも連動させることができる。いよいよ家とクルマをセットで買わせるトヨタ商法が始まった!?

基本性能&ドライブフィール

大排気量エンジンで、ハイブリッドカーと同じ低排ガス性能を実現

搭載されるエンジンは新開発4.3リッターV型8気筒のみ。従来の4リッターエンジンのボアアップ版で、その改良・変更部位は多岐にわたる。これに旧型同様の5速ATが組み合わせられる。 スペックは280馬力/43.9kgm。旧型に比べ最大トルクが2.9kgmアップとなっており、その発生回転数も4000rpmから3400rpmに下げられている。つまり+300ccの狙いは、低中速域のトルク増大によるドライバビリティの向上だ。しかもプリウス、ブルーバードに継いで、平成排出ガス基準値を75%低減した「超-低排出ガス(★3つ)」認定まで取得しているのだから、さすがスゴイというほかない。さらには排気量アップや車重が30kg増えているのにも関わらず、10・15モード燃費は8.2km/lと現行型と同じ。空力特性が向上しているので、高速燃費は逆に良くなっていると思う。

足回りは新設計の4輪ダブルウィッシュボーンを採用する。基本設計はマジェスタやアリストを受け継いだもので、軽量化、専用チューンなどの改良が図られている。また、旧型と同じく、A仕様、B仕様のコイルバネに対して、C仕様にはエアサスペンションが採用される。タイヤサイズは225/60R16で、eRバージョンは225/55R17。最小回転半径は旧型比-0.1mとなる5.2m。マークIIよりも優れた小回り性能を実現している。

静かで安定していて速いが、パワフルに感じられず、コーナリングも楽しくはない

今回試乗したのはエアサスが採用されているC仕様。

世界一とも謳われる静粛性の高さはさすがに評価できるもの。アイドリング時はほとんど無音に近く、エンジンが回っていると実感できるのは3000回転あたりから。そこから上はいくら回しても、うるさくならなず、何キロ出そうが、風切り音がわずかに増すだけ。でも、ここまで静かだと、逆にポワーンと耳鳴りに近い音が聞こえたり、段差を乗り越えた音、はたまた隣のクルマが出す音など、一般のクルマでは気にならない音が耳に入ってくるのだから始末が悪い。世界一静かなのかもしれないが、逆に世界一快適とは言い難いかも。

+300ccの排気量によって、よりトルクフルになったことも今回、大きく変わったところだ。アクセルペダルを踏み込んだ直後こそ、あくまで高級車らしく穏やかなのだが、その後の加速は、明らかに旧型以上の力強さがある。回転フィールの滑らかさはいうに及ばず、レッドゾーンの6000回転付近までキッチリ、パワーの伸びが持続する。ちなみにメーカー発表によるLS430の0~60マイル加速(ほぼ0~100km/h加速)は6.3秒。車重がほぼ一緒のベンツS500でさえ6.5秒。といえば、その速さは想像できるのでは。とはいえ、あまりに室内が静かで走りに現実感がないため、パワフルには感じられないのが不気味。もっとパワーが欲しくなってしまった。

また、ペダルの踏み込み量が国産の高級車としては珍しく大きいのも新型の特徴。踏み込み量に応じた加速をしてくれる、だからルーズな運転にならない。これはいい。手応えのあるパワステと相まって、積極的に走りたくなる。走りの質感は3代目にしてはじめてドイツ車に近づいたという印象だ。むろん高速ではメーター振り切るまで何事も起きない。250km/h巡航可能なクルマを作ったわけで、およそ日本では文句のつけようがない。トヨタのある首脳はかつてオフレコで、日本の高速道路の速度制限が低すぎるといっていたが、このクルマに乗ればその意図する意味は分かるだろう。

乗り心地はどうか。エアサスというと一般にフワフワした印象を持たれていると思うが、新型のセルシオは違う。路面から受けるショックだけを吸収する感じで、可能な限り平行な姿勢を保ってくれる。特に大きな弧を描くようなカーブでは、その効果は絶大。ブレーキング時の姿勢もしかり。ただ、それゆえにクルマの挙動がつかみにくいのも確か。高速でワインディングをぬけようとすると、右、左と終始ステアリングの修正を強いられ、ちょっとヒヤッとさせられるケースがある。そのためにVSCがあり、そういうシチュエーションで走らせるクルマでないのは十分承知だが、世界一を目指したクルマということで厳しい指摘をすれば、細かい改良の余地はまだ残されているようだ。まあ、走りを楽しみたいならエアサスでなくeRバージョンを買え、ということだろう。

ここがイイ

ひとつずついこう。まずスタイリング。ジャパンオリジナルでそこそこ威圧感もあり、Sクラスより存在感は高い。旧Sクラスからの乗り換えなら新Sクラスよりこちらを選ぶ人も出てきそう。次に静粛で快適で広い室内。これはもう文句なし。冷たいエアが噴き抜ける革シートも素晴らしい(確かサーブに同様の装備があった)。また空力からくる燃費の良さ、排気のきれいさ。これまた文句なし。さらにスマートキーなど様々なエレクトロデバイスの充実ぶりとそれらの使いやすさ。21世紀にはこれらが一般車両にも搭載されるようになるだろう。

ここがダメ

スタイリングではどうしてもリアドアのライン(カローラからマークIIまで皆これになった)がなじめない。乗りやすいことは確かなのだが。またコーナリングはかなり辛いものがあった。快適性とのトレードオフなのだろうか。後はスマートキーのロックボタンがわかりにくいこと。上下に二つロックと解除のボタンがあるが、慣れれば上がロックだと分かるものの、サイズや手触り、色を変えるなどしてロックしやすくして欲しいところだ。あとはリアアームレストのフタの裏がプラスチッキーなのがちょっと手抜きに感じられた。

総合評価

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ホントに文句なしのクルマで、どうもすみませんというしかない。もちろん、もっとパワフルで(V12を積むとか)、もっとスポーティ&アグレッシヴで、センターメーターなどを使った全く新しい高級車のインテリアの提案があったりすればスゴイとは思うが、もういいでしょう、これで。4代目はさらにデジタルデバイス&対環境対策が加わる方向に行くことは確実で、ガソリン車としての機能は、この3代目で「上がり」でしょう。これからはハイブリッドの高級車、燃料電池の高級車、新しいデザインの高級車、デジタル武装の高級車は考えられても、ガソリン車としての部分ではもうこれ以上のものをつくることはあまり意味がないようにすら思える。買う方も「上がり」のつもりで買わないと、買った後でほかのクルマに目移りしても、そのクルマはおそらくセルシオ以下のはず。 ところでひとつだけおもしろい部分を発見。ボンネットの内側がボディ色に塗装されていない。コストダウンの一手段だと思うが、中古になってから事故車を見分けるいいポイントになりそうだ。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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