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スズキ セルボ T / TX新車試乗記(第443回)

Suzuki Cervo T / TX

(0.66Lターボ・4AT・114万2400円/124万7400円)

懐かしい車名と共に
斬新なスタイルをまとって
スズキの軽スペシャリティが
帰ってきた!

2006年12月09日

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キャラクター&開発コンセプト

MRワゴン系がベースの軽スペシャリティ

2006年11月7日に発売されたセルボは、スポーティで上質なスタイルを備えた軽のスペシャリティモデル。シャシーやパワーユニットは現行ワゴンR/MRワゴン系をベースとし、軽自動車らしく実用性や経済性にも配慮している。目標販売台数は月間5000台だ。

8年振りに復活した「セルボ」

1977年登場の初代セルボ(イタリア語で牡鹿を意味する)は2ストロークの550cc・3気筒をリアに搭載した当時随一の軽スペシャリティ。360cc時代のフロンテ・クーペから基本的なスタイリングを受け継いでいた。2代目から4ストロークのFF車となり、派生車種として2人乗りピックアップの「マイティボーイ」を生んでいる。3代目(1988年)を経て、4代目で660ccの「セルボ・モード」(1990年)となり、軽規格が改正された98年から途絶えていた。今回は開発時の呼び名がそのまま採用されて、セルボの名が復活したという。

価格帯&グレード展開

NA(103万7400円)と低圧ターボ(114万2400円~)

自然吸気エンジンの「G」(103万7400円)、および低圧ターボの「T」(114万2400円)と「TX」(124万7400円)の3グレード。全車4ATで4WDもある。ダイハツ・ソニカ(118万6500円~141万7500円)より20万円ほど安いが、装備は負けていない。お勧めはターボの「T」、あるいはもう10万5000円出してオートエアコン、6スピーカー、アルミホイール標準の「TX」だ。

パッケージング&スタイル

欧州車風のデザインをまとう

軽のスタイリングで要(かなめ)となる全高は1535mm。ワゴンRやMRワゴンより10センチほど低く、ラパン(1505mm)やスバルのR2(1520mm)とほぼ同じ。ソニカ(1470mm)よりは背が高い。ホイールベースはスズキの軽(FF車)でおなじみの2360mmだ。ロングホイールベース化に熱心なダイハツ(現行ムーヴは2490mm)と対照的だが、要するにこれで十分と考えているのだろう。

スズキ社内で行なったというデザインは、抑揚豊かなラテン系。最上級グレードのアルミホイールはアルファロメオやランボルギーニが好んで使う円をモチーフとしたものだ。切れ長のヘッドライト、彫りの深いキャラクターラインなど、複雑な面と線が交錯する。新色の「ビーナスゴールドメタリック」ほか、パープルやグリーンなどボディカラーも奇抜だ。

S字曲線、「エピ」シボ、メッキ

S字状の曲線を描いたダッシュボードはスマートの影響か。張り出した助手席側のダッシュボード上段にはCDが9枚、下段にはティッシュが入るグローブボックスが備わる。表面にはルイ・ヴィトンのエピ風のシボ(エピは仏語で「(麦の)穂」を意味するが、スズキはリーフシボと呼ぶ)が付き、その上に黒味がかったメッキモール、シートには青い光沢のある生地が張られる。軽ばなれしたシックな雰囲気は、外観ともマッチしている。

ターボモデルのオーディオはブルートゥース対応のハンズフリー機能を標準装備。ドアロックの施錠・解錠、エンジン始動が可能なキーレススタートは全車標準だ。

後席や荷室はシンプル

ヘッドレストが備わる後席の座り心地は可もなく不可もなく、といったところ。5:5分割で畳めるが、MRワゴンのようなスライド機能は無く、ワゴンRのような背もたれ連動の座面沈み込み機能も無い。特に実用性が低いわけではなく、軽量化にもなるから、これはこれで構わないだろう。

基本性能&ドライブフィール

文字通りマイルド

スズキ本社のある浜松周辺で試乗したのは、上位2グレードの「TX」と「T」。いずれもマイルドターボ(60ps、8.5kg-m)で、タイヤも同じ165/55R14のBSポテンザだ。違いはアルミホイールやエアロパーツの有無、エアコンがオートかマニュアルかというぐらいだ。意外にもスズキ初というシーケンシャルモード付き4AT(スイフトなどはジグザグゲート式だ)も共通。今回は試乗しなかったが、自然吸気エンジン(54ps、6.4kg-m)の「G」は普通のゲート式4ATで、タイヤも155/65R13と1サイズダウンされる。

パワートレインはMRワゴンなどと共通で、街乗りでの印象にもそれと大差がない。ターボの過給はその名のごとくマイルドに立ち上がり、予備知識が無ければターボかどうか、気付かない人もいそうだ。もちろん、十分なトルク感とまずまずの静粛性はターボならでは。静粛性といえば、かなりしっかり遮音がなされているようで、印象としては静かな軽といえる。

フロントスタビライザーや若干クイックなステアリングギア比、ウレタン製バンプストッパーなどを採用した足回りは、キビキビした走りや突き上げ感のない乗り心地を狙ったようだが、いずれも微妙なチューニングレベルの話ではある。軽自動車としては重心も低めで、操縦性は悪くない。タイヤも立派なサイズや「ポテンザ」という名前が期待させるほどハイグリップではなく、バランスの良さを狙ったものだ。

4速トップはオーバードライブ

100km/h巡航は4速トップで約3300回転と、2002年に試乗したラパンターボ(60ps、4AT)の約3900回転より15%ほど低い。ただし、セルボのギア比はワゴンR(2003年)や現行MRワゴン(2006年)と全く同じなので、オーバードライブ的なトップのギア比は、何も今に始まったことではない。新型ムーヴのターボ・CVT車は100km/h時に3000回転ほどだったが、このギアリングなら4ATでも特に見劣りはなし。最高速はリミッターの効きが緩やかゆえ(ウエイストゲートバルブの制御で、過給圧を落とすタイプだ)、140km/hのメーターをやんわりと振り切る。その速度域だとさすがに風切り音は高まるが、直進安定性はまったく問題ない。

ここがイイ

スタイリングは好みが分かれるところだが、限られたサイズの中でよくできていると思う。フロント、リア共に斜め7:3の角度はかなりカッコ良く、タイヤとホイールハウスの隙間をもう少し詰めるとか、更に大径のホイールを履くとかすれば、もっと良くなるはずだ。

ブルートゥースハンズフリー機能を上位2グレードに標準装備としたことは素晴らしい。対応する携帯電話がいま一つ普及していないという問題はあるが、5500円のケーブルを買えばブルートゥースでなくても使える。また、キーレスリモコンや消臭天井も標準化されているのがいい。

背の高さがあるので、荷室はかなり大きめ。4人が座っても荷室はそこそこ確保されている。また室内騒音が低めなのも同乗者には喜ばれそう。スズキ初のマニュアルモードATも、ないよりはあった方がいい。これら充実の内容でありながら軽の本分をわきまえた価格設定が維持されているのがイイところ。

ここがダメ

ノーマルボディに比べて、エアロパーツをつけた「TX」はシンプルなイメージを損なう感じがする。デザイン的にきついのはリアビューで、縦横比がやはり縦長なために、どうしても落ち着きがなくなるのは軽の幅の限界か。大きなフロントグリルはターボ冷却のために致し方ないかもしれない(ボンネットにエアスクープがない)が、もう少し小振りなグリルになると、よりかっこよくまとまっただろう。また、フロントグリルにある幅10センチはあろうかというメッキバーも大きなグリル隠しのために存在しているよう。黒でなく、ボディ同色のグリル桟にするとかなり印象が変わるのでは。またパワートレーンやシャシー性能など、ハードウエア的に特筆すべきものがないのも確か。走りはそう面白いものではない。

キーレスのリクエストスイッチが丸いドアノブ(MRワゴンと共通)の下方についているのだが、ボタンを押す操作とノブを引く操作との流れがいまいち良くない。位置は再考を要するだろう。最近シトロエンなども使っている内装シボだが、革を模したものがシボという固定概念があると、なんだか違和感があって落ち着かない。

ハンズフリーやキーレススタートを標準でつけるのであれば、もうETCだって標準化してもかまわないのでは。オプションカタログで見るとハンズフリーシステムが1万7900円、ETCの廉価機が1万6200円と、ETCの方が安い。ETCはポイント登録すれば走行代金が割引されるのだから、金銭的には更にメリットがあるだろう。ハンズフリーは昨今の情勢を見る限り、有った方がいいが、キーレスはリモコンキーさえ有ればなくても大きな不便はない。逆にETCは今や「ないと不便」というところまで来ていると思う。ETCの標準装備はぜひこうしたスペシャルモデルからやってもらいたいものだ。ETC取り付け用のインパネアンダートレイまで用意してあるのだから。

総合評価

セルボはスズキのスペシャリティーカーに代々つけられた名前だ。まずセルボと言えば、思い起こされるのはフロンテクーペのワイドバージョンともいえる初代。マイクロスポーツカーとして評価の高かったフロンテクーペをワイドトレッドにしたのだから、そして排気量もアップしたのだから、自動車のセオリーからいけば素晴らしいスポーツカーへ進化するのが当然。しかし現実には排気ガス規制の影響も受け、マイルドなタウンカーになってしまった。360ccで最高40馬力までいったエンジンも28馬力にダウンし、内装も赤いチェックのシートで、婦女子仕様になったことを当時残念に思ったものだ。

2代目のセルボもやはり婦女子仕様で、特にクーペのわりに妙に広いサイドウィンドウには違和感があった。窓を小さくすれば引き締まったはずだが、どうにも開放的すぎた。スタイリング的にはまだ初代の方が良かったのだが、この2代目をベースとしたマイティボーイというスモールピックアップトラックが、すこぶるいいスタイルになったのは皮肉なところ。完全に若い男性向けのモデルで、空荷だとポンポン跳ねる板バネリアサスによる乗り心地の悪さには閉口した(胃下垂になりそうだった)が、軽量感があって楽しいクルマだった。

初めて電動パワステを採用した3代目も婦女子仕様で、一番印象が薄いモデル。デザイン的にもかなり変なカタチで、女の子におもねっている感じもあって、クルマ好きには見向きもされなかったものだ。しかし90年代に入って登場した4代目「セルボ・モード」はバブルの影響もあっていわゆるハイグレードな軽となり、プレーンな外装と質感の高い内装により、男性側にシフトしたモデルとなった。4気筒エンジンとターボという組み合わせは走りの面でも軽を意識させないもので、足回りも素晴らしい出来だった。ただし時代はバブルの余韻の中、男性が軽に乗ることはあまり考えられなかった。その後、男性でも乗れる軽としてミニバン型のワゴンRが登場することで、ますます影が薄くなってしまい、ネオクラシックバージョンとしてあだ花を咲かせたあとは消滅の憂き目となった。

新しいセルボはこの4代目のスタンスを復活させようというものだと思う。婦女子に限らず男性でも乗れる軽。安くてチープではなく、上質さを保ったコンパクトカーとしての軽だ。現実的には女性が乗ることが多いと思うが、新型セルボの、特にシルバーあたりのボディ色なら「ダウンサイザー」が乗れると思う。三菱「 i 」まではいかないが、軽をある程度意識させずに乗ることができるクルマだ。このようにセルボという名である以上、このクルマがフロンテクーペではなく、初代セルボの系譜となるのはいたしかたないところ。クルマ好きとしては日本3位の自動車メーカーに成長を遂げた「偉大なる中小企業」のスズキに、ぜひフロンテクーペあるいはカプチーノの系譜を復活させてもらいたいもの。新型フロンテクーペの登場を夢見つつ、まずはその一歩手前のモデルともいうべき新型セルボの売れ行きを見守りたい。

試乗車スペック
スズキ セルボ T / TX
(0.66Lターボ・4AT・114万2400円/124万7400円)

●形式:CBA-HG21S ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1535mm●ホイールベース:2360mm●車重(車検証記載値):810kg(F:-+R:-)●乗車定員:4 名●エンジン型式:K6A●658cc・直列3気筒・DOHC・4バルブ・横置●60 ps( 44 kW)/6000rpm、8.5 kg-m ( 83 Nm)/3000rpm ●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30L●10・15モード燃費:19.8 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:165/55R14( BRIDGESTONE POTENZA RE030 )●試乗車価格:114万2400円/124万7400円( 含むオプション:- ) ●試乗距離:約 - km ●試乗日:2006年11月

公式サイト http://www.suzuki.co.jp/dom4/lineup/cervo/index.html

 
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