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日産 シーマ新車試乗記(第165回)

Nissan Cima



2001年03月24日

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キャラクター&開発コンセプト

3度目の正直、「シーマ現象」再びとなるか?

日産の高級サルーンとして初代シーマが登場したのは1988年。時はそれまでの価値観が麻痺したバブル真っ直中。500万円という価格もさることながら、圧倒的なターボパワーと高級車としては斬新なフォルム、そして今までにない高級ドライバーズカーとしての訴求力が受け、高級車市場に新風を巻き起こした。それは「シーマ現象」と呼ばれるほどの絶大なものだったわけだが、2代目、3代目と代を重ねるごとにコンセプトが曖昧となり、不景気も災いして人気はジリ貧。高級車市場はトヨタ・セルシオの独り勝ち状態になってしまった。

そんな劣性を打破すべく、4代目となる新型シーマは「力(フォース)は我に」をキーワードに、初代シーマのDNAを踏襲しつつ、最新技術によって先進的かつ個性的なVIPカーへと進化した。自慢はそのパワフルさ。セルシオ+200ccの新開発4.5リッターエンジンのパワーはクラス最強。そんな非道徳的? なエンジンながら、クラストップの低燃費を両立している。この他、3リッターV6ターボも用意しており、駆動方式もFRの他、4WDを設定する。乗車定員は5名。なお、北米市場へは内外装、エンジンの仕様を若干変更してインフィニティQ45として発売される。

価格帯&グレード展開

性格を一番表しているのが中級グレード

グレードは4.5リッターモデルが下から「450XL(540万円)」「450XV(615万円)」「450VIP(695万円)」。この中でシーマのキャラクターを最も色濃く表しているのが「450XV」だ。マルチプロジェクターキセノンヘッドライト、8インチモニター+DVDナビ+コンパスリンク、17インチアルミなど、レーンキープサポートシステム以外のウリになるアイテムは全て標準装備されている。セルシオでいうところの「C仕様」にあたるグレードだ。

こうしたウリのアイテムを省略したのがベースグレード「450XL」だ。それでも高級車としての安全&快適装備は一通り揃っている。こちらはセルシオで言う「A仕様」という位置づけだ。

一方、最上級グレード「450VIP」は、後席の快適性を重視したVIP御用達のクルマで、セルシオでは「C仕様Fパッケージ」にあたる。後席のパワーシート、バイブレーター&ヒーター付きシート、リアサンシャード、リアドアオートクロージャーといった装備が加わる。タイヤサイズはベースグレードと同じ16インチとなるが、サスペンションにはアクティブダンパーを採用する。

価格は「450XL」が540万円、「450XV」が615万円、「450VIP」が695万円。セルシオと見事に一致する。なお、シーマの強みとなる4WDモデルは「450X(615万円)」「450VIP(691万円)」となる。

3リッターモデルは「300G(492万円)」、こちらはアリストの対抗馬になるだろう。

パッケージング&スタイル

21世紀の高級車は「グリルで勝負」ではなく「目で勝負」

ボディサイズは全長4995mm×全幅1845mm×全高1490mm。従来型比ではそれぞれ+25mm、+25mm、+45mm。幅がちょっと大きいものの、ほぼセルシオサイズと言っていい。全体のフォルムはセドリック/グロリアの「シャープ」に対し、シーマは「丸」。主な市場を日本にするか、北米にするか、という戦略の違いがこのデザインの違いから伺える。ちなみに北米仕様と日本仕様のシーマの外観上の違いは、バンパーの大きさとメッキパーツの有無。衝突安全基準の違いにより、北米仕様のバンパーは大型化のものが採用され、ゆえに全長は5mを超える。逆に日本仕様はどこからバンパーと呼ぶのか不明なデザイン。それを補うかのように全体を引き締める効果のあるメッキパーツが多用される。

押し出しを重要視する高級車のデザイン・セオリーのひとつが、フロントグリルをヘッドランプよりも上位に配する手法だ。シーマは逆にグリルを低い位置に構え、スポーティ&エレガントを強調。これはベンツSクラスと同じ手法。シーマがSクラスに似ているのはそのためだ。ドアミラーにウインカーを内蔵させたのもベンツのパクリ?。それでいてボンネットからルーフ、そしてリアデッキへと弧を描いて流れるラインは、どこかジャガー風だったりもする。

かといって個性は希薄になっていない。オリジナリティのあるスタイルと評価できるだろう。特に強烈な個性を醸し出す大きなファクターとなっているのが蓮根を輪切りにしたようなマルチプロジェクター・キセノンヘッドランプだ。キセノンライトをコンパクトにプロジェクター化し、7個に分割した新発想のライトで、明るさは通常のキセノンの1.7倍(ハロゲンの3.4倍)、世界一明るいと豪語する。対抗車に眩惑させないように光軸調整のレベライザーは付いているものの、調整はあくまでドライバーの判断にゆだねられる。いずれにせよ、昼でも夜でも目を引くライトには違いない。それに修理代のことを全く考慮していないのが、いかにもお金持ちのためのクルマらしいところ。

伝統や格式にとらわれない、御法度に挑む超モダンなインパネ

室内のデザインは開放感のある空間づくりが目を引く。シートやトリムの色はベージュもしくはクリーム。木目パネルは白木風。従来の高級車にありがちな重役室ムードの堅苦しさは一切なく、北欧のリビングのような雰囲気(オプションで重役室みたいな黒革仕様も用意されている)。こうした温もりを感じさせる豪華な作りの一方で、新しさを訴えかけているのがインパネだ。ナビやエアコン、オーディオなど、全ての操作系は最上部に集約され、上向き40度の角度を保ちつつ手前に突き出して操作リーチを最適化している。モニターを見ながら操作できるという発想は、プリメーラと同じ。スイッチなど実際に手に触れる部分にも質感が欲しかったところだが、単に豪華なだけでなく、先進性もアピールしたことは大いに評価できる。

いねむり運転もOK!? 先進ITS装備

新型シーマの商品企画の大きな柱のひとつがITSへの対応だ。中でもレーンキープサポートシステムは目玉商品。簡単に言えば、バックミラー裏に付いているCCDカメラで路面の白線を認識し、それを逸脱しそうになるとクルマ側がステアリングを修正してくれる、というもの。技術的には「クルマがステアリングを修正する」というのがミソ。これまでも車線逸脱を「警告」するシステムはあったが、クルマ自身が修正までしてくれるというのは、世界初。言うまでもないが「居眠り運転も大丈夫」という装置ではない。ステアリングから手を放せば逸脱するし、約100km/h以上の速度域では機能しない。価格は42万5000円。スゴイ技術だが、現状としてはそれだけの金額を投じる価値はないと思う。その他の装備としては、金属部分がないイモビライザー付きの電子キー、自動眩防ミラー、コンパスリンク&緊急通報システム、トランクオート開閉機構、リアドアオートクロージャーなど、高級車ならではのスペシャルアイテム盛り沢山。それでいてオーディオはカセットデッキも標準装備だったりする。オヤジが喜ぶツボを知っている!?

後部座席より運転席重視の室内

ボディサイズの拡大とともに居住空間のゆとりも向上したシーマだが、セルシオと比較すると若干タイトなのは否めない。数値上ではセルシオより長さで-80mm、幅で-5mm、高さで-10mmとなり、ホイールベースもまた-50mmとなる2870mm。しかもサイドウインドウの天地が狭く、包まれ感が強調される。しかしこれは高級車として必要十分以上の広さを確保した上でのタイト感であり、むしろシーマの個性をより引き出すための演出でもある。

基本性能&ドライブフィール

ホントは340馬力!?

シーマに搭載されるエンジンは3.0リッターV6ターボエンジン「NEO NQ30DET」と4.5リットルV8エンジン「NEO VK45DD」の2タイプ。前者はセド/グロと同じものでスペックは280馬力/39.5kgm。後者はかつての初代インフィニティQ45に搭載されていたエンジンの復活ではなく、三菱プラウディアと並ぶ世界最大排気量の直噴エンジンとなる正真正銘の新開発。今後、同社のプレステージカー、プレジデントにも搭載される予定なのだという。最高出力は280馬力/6000rpm、最大トルクは46.0kgm/3600rpm。最高出力こそ自主規制により4.3リッターV8エンジンのセルシオと引き分けとなるが、最大トルクは2.2kgm上回る。さらに直噴仕様ではない北米仕様になると200ccの差は歴然と表れ、340馬力/46.2kgmを誇る。また駆動方式はFRのほかにセルシオに設定されない4WDがあるのもシーマの強みだ。

評価すべきは単にパワーを追求したのではない、ということ。10・15モード燃費は10.0km/リッター。トヨタ・セルシオや同じ4.5リッターV8直噴のプラウディアの8.2km/リッターをも凌駕。高級サルーンとしては世界一の燃費性能だ。

宿敵セルシオに唯一劣る要素は排ガスレベルだけで、セルシオの★3つに対してシーマは★1つ。燃費がいいシーマ、排ガスがクリーンなセルシオ。という同じ優れたエコ性能でも、違う側面から追求しているのが興味深いところだ。

なお、足回りは前がストラット、後ろがマルチリンク。タイヤは225/55R17で、こっそりとオプションで18インチが用意される。

かつての低俗な走りから紳士的な走りに成長

試乗したのは4.5リッターV8を搭載する「XV」。もとは340馬力あったものをワザワザ280馬力に抑え、それでいてトルクはほぼそのままの46kgm。まさにトルクの塊といったところで、わずか2000回転で40kgm以上のトルクを発生する。

こういった触れ込みを鵜呑みにすれば、かなり刺激的な走りを期待してしまうところだが、実際はそうではない。最強のパワーをあえて隠すかのように、発進は紳士的な振る舞いをみせる。もちろん「もとは340馬力」もあるだけに、車重が1.8トン近くもあるとは思えない力強い加速はしてくれる。ただ、初代シーマのようにお尻を沈ませながらの暴力的かつ低俗な加速ではないだけだ。もちろんこの余裕にあふれた穏やかな加速は、21世紀に相応しい高級車を目指したうえの必然。ファイナルレシオをライバルに比べて極端にハイギアード化し、燃費を稼ぐ。過剰なトルクがあるシーマだからこそ成せるワザだ。

大トルクの本領は、高速巡航で発揮される。100km/h走行時で回転数は2000回転弱。この時点でほぼ40kgmのトルクが確保されているわけだから、アクセルをチョイと踏むだけで、間髪入れず好きな分だけの加速が得られるわけだ。

エンジンと同様に新開発された5速ATとのマッチングもよろしい。このATにはマニュアルモードも付いている。これはセルシオにはないギミックのひとつ。ただ完全固定タイプではなく、勝手にシフトチェンジしてしまうタイプなのが残念。だったらいっそうのこと自慢のエクストロイドCVTを搭載すればいいのにと思ってしまうだが、あれほど大トルクに対応といっておきながら、さすがに46.0kgmにもなると対応できないのだとか。

最近、高級車をはじめ採用の拡充が図られている横滑り防止機構(日産の場合VDCと呼ぶ)は、このシーマにも当然装備されるわけだが、特徴はキャンセルできることにある。電子制御に頼れなくなれば、必然的に基本性能としてスタビリティを高めなければならない。このあたりはシーマの実力を存分に味わってもらおうという日産の自信の表れと受け止めていいだろう。

乗り心地は文句無しに合格。ホイールベースが伸びたのにも関わらず最小回転半径は逆に0.2m小さい5.3mに収めたのもエライ。また静粛性に関してもセルシオにはわずかに及ばないものの、世界に十分通用するレベルには達している。足回りからの遮音性をさらに高めれば、上品なエンジン音がより際立つはずだ。気になったのは、シャープなハンドリングの割にパワステが軽いこと。高速でタイトなコーナーを走らせると、微妙な修正を強いられるためちょっと神経を使う。

ここがイイ

セルシオより明らかにスポーティーな走りが楽しめる。速さという点では差はないと思うし、何より巨体だから、スポーツセダン的な軽快さはないものの、固めの足回りと合いまって、高級車らしからぬ走っていて楽しい気分がある。セルシオが50代以上に似合うとすれば、シーマはもう10才若いオヤジに喜ばれそうだ。

セルシオも大型モニターなどインパネまわりの未来感は評価できるが、さらに一歩上をいくシーマのインパネは、高く評価できる。さらにインテリアのセンスもセルシオより10才若い。エクステリアも保守的でないだけに、購入層は広がり、結果的に販売数の増加に結びつく。絶対的に売れるセルシオに対する戦略としては正しい方向だろう。

ここがダメ

レーンキープサポートシステムとレーダークルーズコントロールによって、先行車の自動追尾運転が可能になるのだが、この素晴らしいシステムも、設定速度が100km/hまででは全く意味をなさない。現実のクルマの流れはそれ以上であり、120km/hあたりで設定できれば、かなり実用になるはずなのだが。

かつてのクルマは100km/hで警告チャイムが鳴ったりしたものだが、それもいつの間にか無くなった。カーナビディスプレイも運転に危険ということで、当初は見にくい下の方に移動させられていたものだが、いつの間にかシーマのようにもっとも見やすい位置に鎮座するようになった。メーカーは役所に気を使って、せっかくの新しいシステムを実用性のないものにして搭載し、やがてそれがなし崩しに本来の性能を取り戻していく。レーダークルーズコントロールもやがて120km/h設定が可能になるだろう。これは本当に無駄なことだ。

総合評価

シーマはいい、という人と、やっぱりセルシオでしょうという人に、世論は二分するはず。いや8:2位でセルシオの勝ちというのが妥当なところか。しかし、独走セルシオに対して、明らかなカウンターをあてたという点で、シーマの存在は高く評価できる。静に対する動という明らかに違うコンセプトは、クルマ好きには嬉しい。日産自身、セルシオにモロにぶつけず、ニッチなところを狙ったという自覚はあるはずで、結果として正面切るより台数が稼げればこれは大正解。トヨタ一辺倒になりがちな日本のクルマに対し、コンセプトとして別の選択肢を提供した日産の姿勢には大拍手だ。

同時にこれによって日産の存在意義、価値は大きく高まった。実際買わないにしても、あのシーマを作った日産という評価は、早くもプリメーラに現れている。今後のクルマにもこのテイストが生きるとすれば、大いに期待できるだろう。ダサイ日産車というイメージはもはやシーマにはない。現実の販売台数より、そうしたイメージ作りの成功こそが、シーマの意義だ。そしてこのイメージが早くリッターカーに表現されて欲しい。「ヴィッツしか選択肢がない」と嘆いている小型車ニーズは確実に存在している。

公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/CIMA/

 
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