Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > シトロエン C4 ピカソ

シトロエン C4 ピカソ新車試乗記(第752回)

Citroen C4 Picasso

(1.6L 直4ターボ・6AT・357万円)

もっと個性を!
クルマのピカソが
退屈なミニバンクラスに
檄を飛ばす!

2015年01月23日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

7年ぶりのフルモデルチェンジ。5人乗りも導入


新型C4 ピカソ(左)とグランド C4 ピカソ
(photo:PCJ)

欧州では2013年に、日本では2014年10月25日に発売された「C4 ピカソ」と「グランド C4 ピカソ」は、5人乗りないし7人乗りのMPV(マルチパーパスビークル)。

いずれも2代目で(前身のクサラ ピカソから数えれば3代目)、7年ぶりのフルモデルチェンジだが、先代の5人乗りは日本では販売されなかったため、今回が初導入。また、3列シート・7人乗りの方は、これまで日本ではC4 ピカソと名乗っていたが、今回はフランス本国にならってグランド C4 ピカソと名乗るようになった。

 

(photo:PCJ)

共に、2013年に発表されたコンセプトカー「テクノスペース(Technospace) コンセプト」譲りの近未来的な内外装デザインを採用。さらに先進安全装備、優れたスペースユーティリティ、最新のパワートレイン(日本仕様は1.6Lターボ+6速AT)などを特徴としている。また、先代に引き続き、巨大なパノラミックフロントウインドウやパノラミックガラスルーフによる開放感ある室内もユニークな部分だ。

新世代プラットフォーム「EMP2」を採用


新世代プラットフォーム「EMP2」。一部フロアの変更によってホイールベースを自在に変更できる
(photo:PCJ)

プラットフォームは新型プジョー308(2013年~)と同じ「EMP2(Efficient Modular Platform)」を採用。これは従来の「PF2」および「PF3」を統合する新世代プラットフォームで、高張力鋼板、アルミ合金(ボンネット等)、複合素材(荷室フロアパン)の使用により、プラットフォーム単体で約70kg軽量化されたもの。グランドC4 ピカソの場合、車重は先代より50kg軽くなっている。

車名のピカソとは、もちろん20世紀を代表する芸術家パブロ ピカソ(1881~1973年)のこと。新型の日本発売日も、ピカソの誕生日である10月25日だった。ちなみにピカソはスペイン出身。C4ピカソもPSA(プジョー・シトロエン・グループ)のスペイン・ヴィーゴ工場で生産されている。

■参考記事
新車試乗記>シトロエン C4 ピカソ 2.0 エクスクルーシブ (2007年7月掲載)
新車試乗記>シトロエン クサラ ピカソ (2004年6月掲載)

 

価格帯&グレード展開

7人乗りは347万~378万円、5人乗りは357万円


C4ピカソ(5人乗り)。ボディカラーは全6色。写真はメタリック(4万3200円高)のルージュ ルビ
(photo:PCJ)

日本仕様は1.6L直4ターボ(165ps、240Nm)と6速ATのみ。5人乗りは上級グレードの「エクスクルーシブ」(357万円)のみで、7人乗りには標準グレードの「セダクション」(347万円)と「エクスクルーシブ」(378万円)の2グレードが用意された。

標準グレードでも装備は充実。バックモニター、360°ビジョン(前後左右4台のカメラで車両周囲を12インチスクリーンに投影)、フロント&バックソナー、パークアシスト(車庫入れや縦列駐車時にステアリング操作を自動で行う)、ブラインドスポットモニター(斜め後方からの車両接近をドアミラー内のLED表示で警告)、スマートキーは全車標準になる。

エクスクルーシブでは安全装備が充実


グランド C4 ピカソ
(photo:PCJ)

セダクションとエクスクルーシブで大きく違うのは、先進安全装備の有無。後者にはアクティブクルーズコントロール(日本向けシトロエンで初)、ディスタンスアラート(30km/h以上の走行時に前走車との距離を監視し、必要に応じて警告する)、レーンディパーチャーウォーニング、アクティブシートベルト(運転開始時にシートベルトの張りを自動調整するほか、ディスタンスアラートやレーンディパーチャーウォーニングと連動してシートベルトを締め上げることで警告する)、バイキセノンディレクショナルヘッドライト、インテリジェントハイビーム(カメラで前方車両などを認識し、ハイビームとロービームを自動で切り替える)、自動防眩式ルームミラーが標準装備になる。モーターデイズ的にはエクスクルーシブがお勧め。

また、エクスクルーシブでは受注生産オプションでツートーンナッパレザーシートも選べる(5人乗りは36万円高、7人乗りは40万円高)。この場合はセットで、フロント電動シート&シートヒーター、アクティブランバーサポート、大型ヘッドレスト&助手席電動カーフレストもついてくる。

 

パッケージング&スタイル

デザインは5人乗りと7人乗りでかなり異なる

新型でまず印象的なのが、何となく深海魚風の個性的なフロントデザイン。一見フォグライトに見えるものはヘッドライトで、新しい意匠のダブルシェブロン(シトロエンのシンボルマーク)、フロントグリル、LEDポジションランプ(欧州仕様ではデイライト)が横一線の細いスリット上に並ぶ。なお、フロント部分は一見、5人乗りと7人乗りでほぼ共通に見えるが、燈火類を除けば共通パーツはほとんどない。

 

ボディ後半はまったく異なり、5人乗りはCピラーに「C」形状のクロームラインが入って凝縮感を強調する方向。一方、7人乗りの方は、ボディ後端のDピラーに「C」形状のつや消しグレーラインを入れて、逆にキャビンの広さを強調している。コンセプトは明快で、手法はシンプル。

超ロングホイールベースを採用


C4 ピカソ

5人乗りの場合、全長は4430mmとコンパクトだが、ホイールベースは先代(5人乗りと7人乗りで共通)より50mm伸びて、2780mmになった。さらに7人乗りの方は、ホイールベースが先代より110mmも長くなって2840mmに。要するに、いずれもロングホイールベース感が半端ではない。一方で、オーバーハングが先代より短くなっているので、全長はほとんど先代と変わらず。最小回転半径も5.7から5.5mに縮小されている(5人乗りは5.4m)。

 

グランド C4 ピカソ
(photo:PCJ)

このあたりは、名車DSを含めてシトロエンの伝統と言えるもの。DSのホイールベースは当時としてはぶっ飛んで長い3125mmもあった。そんなことを考えていると、DSベースのワゴン「ブレーク」や8人乗りの「ファミリアール」に似ているようにも思えてくる。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
メルセデス・ベンツ Bクラス (2012~) 4365~4440 1785 1545 2700 5.2
2代目シトロエン C4 ピカソ (2013~) 4430 1825 1630 2780 5.4
初代シトロエン C4 ピカソ (2007~2013) 4590 1830 1685 2730 5.7
2代目シトロエン グラン C4 ピカソ (2013~) 4600 1825 1670 2840 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

メーター類を大型ディスプレイでフルデジタル化


先代もデジタル式センターメーターだったが、新型はディスプレイを大型&高解像度化

先代ピカソのインパネも未来的だったが、新型はさらに未来感をアップ。ダッシュボード中央に高解像度12インチパノラミックスクリーンを配置。そのディスプレイを3分割して、速度計(デジタルとボビン式で表示)の他に、タコメーター、燃費計、お気に入りの写真などから2項目を表示出来る。また、標準装備のバックモニターや360°ビジョンの映像も、ここに表示される。

 

先代C4ピカソ(2007~2013年)のインパネ

さらにその下には、7インチのタッチ式カラーディスプレイを配置。ここには空調、オーディオ、各種車両設定の操作画面のほか、販売店オプションのSDメモリーナビ(パナソニック製)で地図も表示できる。ただし、ナビ画面の場所としては位置が低めだし、新型の場合、空調の温度調整はこのタッチパネルでしかできないので、ナビは社外品のものをどこか別に付けるという手もある。

また、新型では、先代で採用されていたユニークなセンターパッド固定式のステアリングが廃止され、一般的なステアリングに変更された。デザイン的には残念だが、こちらの方がステアリングスイッチやパドルシフトの操作性は良い。従来タイプはリムから完全に手を離さないとスイッチに指が届かなかった。

 

そして眼前にはスーパーパノラミックフロントウィンドウが頭上まで伸び、その後ろに巨大なパノラミックガラスルーフ(電動シェード付)が広がる。そしてAピラーは松葉のように細い2本で側方視界もいい。日差しを遮りたい時のシェイドやサンバイザーも工夫されている。視界の良さでは、市販車ナンバー1では。

 

ホイールベース延長で足もとが広くなった


シトロエンゆえフロントシートは立派。ポジション調整もお好み次第

延長されたホイールベースにより、室内空間は先代よりもアップ。5人乗りでも7人乗りでもシートは全て独立式で、後席(2列目)は3座それぞれで前後スライド、リクライニング、タンブル格納が出来る。さらに助手席の背もたれも前に水平に倒すことも可能。どのシートも前後スライド位置さえ適切なら、ヘッドレストを外さずワンタッチで格納できる。

 

5人乗りの荷室容量(後席使用時)は537L。床下にテンパースペアを搭載。助手席まで倒せば最大2.5mの長尺物が載る

後席は3座独立式で、それぞれ可動する。折畳式テーブルや、足もと床下に収納(靴入れ?)がある
 

7人乗りの荷室容量は645L~最大2181L。助手席まで倒せば2.75mの長尺物が載る
(photo:PCJ)

7人乗りはホイールベースが110mm延長され、特に3列目のフットルームが広くなった
(photo:PCJ)
 

基本性能&ドライブフィール

さらに完成度が高まった1.6ターボと6AT

試乗したのは5ドア。エンジンはストップ&スタート機構(アイドリングストップ)が付いた改良型の1.6Lツインスクロール直噴ターボ。最高出力は先代比で9psアップの165ps、最大トルクは240Nm(24.5kgm)。トランスミッションは先代の6速セミAT「EGS」に代えて、第3世代のアイシンAW製6速トルコンAT、「EAT6」(Efficient Automatic Transmission)が採用された。1.6Lターボ+6ATという組み合わせ自体はDS4、DS5、C5と同じだが、中身は最新バージョンになる。

ステアリングの右奥に生える細いシフトレバーをつまんでDを選択し、発進。パーキングブレーキは先代からすでに電動になっていて、操作しなくても自動的に解除される。走りだすと、最近のメルセデス・ベンツみたいに、例のアクティブシートベルトが自動的にシートベルトを締めあげて、テンションを調整する。

 

走り出しはトルクフルかつスムーズ。ターボラグは皆無で、アクセルを踏めば即座にグゥーンと力強く加速する。1.6Lターボとしては、かなりトルクフルで、街乗りでは1500~2000rpmくらいで不足なく走る。車重も5ドアだと、1480kgと軽い(7人乗りは1550kg)。

交差点で止まれば、ほぼ確実にアイドリングストップする。ただし停止時間は短めで、信号が青になる前にエンジンが掛かってしまうことが多かったが、この方がスムーズに発進できる。

重厚な乗り心地に感心


タイヤはシトロエン定番のミシュラン(エナジーセイバー)。サイズは205/60R16と大人しいが、よくグリップする

足回りはもちろんハイドロではなく、一般的なコイルスプリングと油圧ダンパーの組み合わせになる(先代の7人乗りはリアがエアスプリングだったが、新型では廃止された)。それでも乗り心地はこの5人乗りでもかなり重厚。荒れた舗装路でも、ゴトゴトいうだけで涼しい顔で走り抜け、大きな突き上げは足回りをブルンと振動させて吸収する。先代で時に気になったピッチングは見事になくなった。

いわゆるふんわり系の乗り心地ではないが、フラット感や頼もしさは「こんな風に出来るのか」と思わず感心してしまうレベル。また、ワインディングでもその気になれば、なかなか速い。強引なことをしない限り、妙な挙動が出たり、ESPが介入したりすることはない。

高速道路での100km/h巡航は2000rpm。この時にも充実感があり、急かされることなく運転できる。静粛性は高く、乗り心地もいい。

先進安全装備も独自路線

ミリ波レーダーを使ったアクティブクルーズコントロールは、40km/h以上でセット可能。車速制御は主にアクセルとエンジンブレーキで行なわれるため、大きな減速が必要な時には音や光で警告だけして制御を解除してしまう。これは基本的には「ドライバーがちゃんと前を見て、運転してください」ということで、特に気にならなかった。よく出来たレーダークルーズコントロールでも、多かれ少なかれ状況に応じてドライバーのアクセル操作やブレーキ操作が必要とされるわけで。

夜間走行中に感心したのは、バイキセノンディレクショナルヘッドライトの明るさと、インテリジェントハイビームの自然な切り替え。特にインテリジェントハイビームは、これまで試した同種のもので最も違和感がない上に、ライト操作レバーを引けばすぐにハイビームに切り替えられるのが良い。他社もこういう風にしたらと思う。

試乗燃費は10.6~12.8km/L。JC08モード燃費は15.1km/L


指定燃料はもちろんプレミアム。タンク容量は57L

今回はトータルで約250kmを試乗。車載燃費計による試乗燃費は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約80km)が10.6km/L、それとは別に一般道を走った区間(30km)が11.7km/L、一般道を大人しく走った区間(60km)が12.8km/Lだった。また、信号のない空いた一般道なら、14km/L台を維持できそうだった。JC08モード燃費は15.1km/L(グランドC4ピカソは14.6km/L)。

 

ここがイイ

視界の良さ。内装デザイン。乗り心地。パワートレイン。ライティングシステム。アクティブシートベルト

スーパーパノラミックフロントウインドウとパノラミックガラスルーフによる圧倒的な視界と開放感。相変わらず、Aピラーも細く、死角が少ないのは、他メーカーももっと見習うべき。

より未来的になったインパネのデザイン。ダッシュボード中央上部の12インチパノラミックスクリーンに3項目を表示し、その下の7インチディスプレイに様々なものを表示できるというのは、ある意味で理想的。また、ワンタッチで着脱できるセンターコンソール小物入れや、助手席まで畳めるシートアレンジなど、使い勝手もいい。

シトロエンと言えば乗り心地で、これも期待通り。一般的なバネサスなので、C5のようなハイドロ感はないが、ドイツ車とも明確に違う、重厚で懐の深い乗り心地がある。

エンジンは全域でトルクフルで、街乗りでは自在に走れるし、特に中間加速は速い。そしてアイドリングストップ機能も備わり、燃費もいい。足回りもいいからワインディングや高速道路も速い。パワー不足は感じないと思う。

 

新採用のインテリジェントハイビームは、他社の類似システムより適切にハイ/ローを切り替えてくれるし、レバーを引けばすぐに任意でハイビームに出来るのが良い。また、PSAが得意とするバイキセノンディレクショナルヘッドライトは照射範囲が適切で、とても明るい優れもの。流行りのLEDヘッドライトではないが、夜間走行が多い人にはお勧め。

上級グレードのエクスクルーシブは、安全装備がほぼ全部載せ。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)こそないが、それ以外はひと通り揃っている。中でもいいと思ったのは、レーンデパーチャーウォーニング(車線逸脱警報)が、一般的なピーピー鳴るアラーム音ではなく、シートベルトの引き込みで行われること。アラーム音は時々切りたくなるが、シートベルト振動式だとそうはならず(これは発見)、同乗者に警告音を聞かれることもない。他社では以前からあるものだが、なかなか良いものだと思った。

ここがダメ

3座独立ゆえの後席シートの小ささ。アイドリングストップからの発進など

このクラスの欧州車では、後席を独立3座とすることが多いが、日本的な感覚ではベンチシートの方が使い勝手はいいと思う。シートそのものも小さめだから(先代ピカソと比べると若干改善されているようだが)、一人しか座らない場合はなんだか損した気持ちがしてしまった。考え方の違い、使い方の違いだろうが、選択できたらなお良かった。

アイドリングストップから発進する際、ブレーキを離してエンジンが始動した瞬間に小さなショックが発生すること。日本車のアイドリングストップの出来を考えると、もう少し改善できると思う。

ヒーター(暖房)がよく効くのはありがたいが、エアコンをオートにすると、23度くらいに設定しても相当暑くなること。少なくとも暖房はオートではなく、マニュアルモードの方が良さそうだった。で、温度調整しようとすると、7インチタッチスクリーンの表示を空調操作画面に切り替えるのが少し面倒。これはもちろん、常に空調操作画面にしておけば良いのだが。

総合評価

長年のシトロエン好きとしては

長年のシトロエン好きを自負する身として、誤解を恐れず言えば、もうこのクルマ関しては残念としか言いようがない。先代C4ピカソは相当に変なクルマで、さすがシトロエンと溜飲が下がったものだが、ここに来て、たいして変じゃなくなってしまったからだ。

基本的なコンセプトは先代通りで、それを正常進化させたのが今回のモデルだ。ミニバン、モノスペース車としての使い勝手の良さは変わらず、軽量化、ボディ剛性アップ、エンジンやATの進化、燃費の改善、そして先進安全装備といった点で、クルマとしては明らかに進化している。しかし、リアのエアサスがなくなって乗り心地はかなり普通になったし、インパネ左右に分けて配置されていた空調操作パネルはなくなったし、何より変だった固定式のステアリングセンターパッドは、普通にくるくる回るタイプになってしまった。ブレーキタッチも例のシトロエン風カックンブレーキではなく普通。新旧2台並べてどちらか選べと言われたら、迷わず旧型を選びたい。それがシトロエン好きというものだ。

 

そうなのだ、けっきょくシトロエン好きは古いものが好きなのである。今から30年も前にBXが新車だった頃はGSが良かったものだし、トップエンドのCXから見ればやはりDSだ。当時も、新しいシトロエンより古いシトロエンのほうが味がより濃く、シトロエン好きは憧れたもの。へたをするとDSよりトラクシオン・アバンだったりするかもしれない。

BXの登場から30年以上が過ぎても、まだそんなことを言っているのがシトロエン好きというもので、実際そのBXには今でも100万円以上の中古価格が付いている。ある意味、どうしようもない、完全に病気、頭がオカシイw と自虐的になってしまう。そこで新しいC4ピカソを見れば、もはや誰でも乗れる普通のクルマになってしまっている。しかしまあ、そのセリフはBX(の特に後期物)の時にも散々言われたのだが。

「シトロエンの乗り味」はちゃんとある

ではこのクルマはダメなのか。否、まさにシトロエンとしか言いようがない個性はやはり強く、マニアにとっても今だ素晴らしいクルマだと思う。確かにいくつかの部分は普通になったが、まず肝心な、あのシトロエンらしい柔らかな乗り味は、このクルマでもキープされている。正統派のクルマと比べると、ロールやピッチングと言ってもいいような先代の動きはもはやないが、イメージの中のフランス車を十分体現していると思う。フランス車を乗り比べてみれば、やはりフランス車らしさでは今もシトロエンが一番だ。そんなシトロエンの乗り心地を生み出していた、いわゆるハイドロのサスペンションは、メンテナンス性や重量、コストなどの点でメリットは少ないから、今後消え去るのは致し方ないところ。しかしあの乗り心地は、このバネサスでもかなりのところまで再現されているのがありがたい。どんなクルマとも違う「シトロエンの乗り味」がこのクルマにはちゃんとある。それはドイツ車や日本車に慣れた人には明らかになんだか変な乗り心地、というもの。ではあるが、その違和感はそうとう少なくなった。

運転席に座れば、シートはやはり柔らかい。先代から採用されたパノラミックフロントウインドウは健在で、そこからの眺めは初めて乗る人からすれば変そのもの。また、コラムから生えるシフトレバーは往年のDSをモチーフにしたものと言うより理想的なシフトスイッチとして評価したい。そして上下2つの液晶ディスプレイによる斬新なセンターメーターや操作パネルなど、まあ、これだけで「何だこのクルマは」となるはず。なんとか操作系を理解して走りだしても、アクティブシートベルトが頻繁に締め上げ動作を行うなど、クルマの方からインフォメーションを伝えてくるし、なんだか変なクルマに乗っているという感じはずっとついて回るのだ。

 

しかもそれらの変なところが、実は先進的であるところがこのクルマの素晴らしいところ。例えば電子制御式のコラム式シフトレバーやアクティブシートベルトなどはまさにそうだが、このあたりは最近のメルセデス・ベンツにも通じるところであり、高級車の王道たるメルセデスと、その対極にあるシトロエンのミニバンが共通しているというのも面白い。また、夜間、ヘッドライトの光軸が左右に動き、照射範囲を変えるというアイディアも、DSやSMですでに採用されていたもの。DS誕生から60年経っても多くのクルマでまだまだ標準にはなっていない。

もっと一般的な話をすれば、何よりスタイリングが変だ。オーバーハングが切り詰められたことで、先代C4ピカソよりも変なカタチだった初代クサラピカソのイメージに近くなった。客観的にはカッコ良くない。カッコよさというのは、「カッコイイと誰もが考えるカタチに近い」ということだから、その点で多くの人は「何だこりゃ」と思うだろう。これもシトロエンの伝統通りではあるが。

覚悟して個性を貫きたい人に

こんな変なクルマが作られ、結構売れるフランスは、個人主義が徹底した社会のようだ。先日のテロにも屈しなかった編集者たちは、その個人主義に殉教したとも言える。人がなんと言おうと我ゆかんという考えが生きているから、こういうクルマでも売れるのだろう。そしてそういう人が欧州には一定数存在しているから、シトロエンもこういうクルマが作れるわけだ。もちろんPSAとしてはまずプジョーというブランドがあるゆえに、ビジネスとして、バリエーションの一つとしてこういうクルマも販売できる。ただ、シトロエンでは今後DSシリーズをブランド的に独立させる方向にあり、それは日本のシトロエン好きとしてはどうかと思う。変なクルマはDSブランドになり、シトロエンブランドは普通のクルマになってしまうと、シトロエンというブランド価値が落ちてしまいかねないのでは、とちょっと危惧してしまうのだが、いかがだろう。

しかしまあ、なかなか現在の日本社会で個人主義を貫くのは難しいものだ。また日本の個人主義はインディビジュアリズムでなく、エゴイズムにもなりがちだ。そんな中で個人主義を唱えるのには、覚悟が必要だろう。シトロエンに乗ることも下取りが今ひとつという点では覚悟が必要。覚悟して個性を貫きたい人のパートナーがシトロエンだ。共に理解されにくい未来への提案を載せて走り続けていく。でも実際にはそんなカッコイイものではないのであるが。

 

試乗車スペック
シトロエン C4 ピカソ エクスクルーシブ
(1.6L 直4ターボ・6AT・357万円)

●初年度登録:2014年11月 ●形式:ABA-B785G01 ●全長4430mm×全幅1825mm×全高1630mm ●ホイールベース:2780mm ●最低地上高:135mm ●最小回転半径:5.4m ●車重(車検証記載値):1480kg(930+550) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:5G01 ●排気量・エンジン種類:1598cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴・ターボ・横置 ●ボア×ストローク:77.0×85.8mm ●圧縮比:-
●最高出力:121kW(165ps)/6000rpm ●最大トルク:240Nm (24.5kgm)/1400-3500rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/57L
●JC08モード燃費:15.1km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイルスプリング/後 トーションビーム+コイルスプリング ●タイヤ:205/60R16(Michelin Energy Saver)

●試乗車価格:-円 ※オプション:メタリックペイント 4万3200円 ●ボディカラー:ルージュ ルビ

●試乗距離:-km ●試乗日:2015年1月 ●車両協力:シトロエン名古屋中央(株式会社渡辺自動車)

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
シトロエン名古屋中央

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧