キャラクター&開発コンセプト
累計台数1600万台の超グローバルカー
初代シビック(SBI型)は1972年に登場。翌年の低公害エンジン「CVCC」搭載車が米国マスキー法を世界で初めてクリアし、その名を一気に高めた。その後も2代目スーパーシビック、3代目ワンダー、4代目グランド、5代目スポーツ、6代目ミラクル、7代目(特に通称名なし)と進化。累計生産台数は1600万台に及び、生産拠点は世界13ヶ国に及ぶという。
8代目シビックはセダンのみに
2005年9月22日に発売されたのが今回の8代目シビック。同時にシビックハイブリッド(11月22日発売)も2代目となった。最大の変更点はシビックの代名詞でもあったハッチバックの国内導入が見送られ、セダンだけになったこと(これを機にフェリオの名も消滅)。横幅もついに3ナンバーサイズになった。
新開発1.8リッターi-VTECエンジンは2リッター並みの加速と10・15モード燃費17.0km/Lを謳う。一方ハイブリッド車は初代シビックハイブリッドの進化型となる「3ステージi-VTEC+IMA」で10・15モード燃費31.0km/リッターを達成した。
月間目標台数はシビックが2000台、シビックハイブリッドが500台の計2500台。ハイブリッドの生産は鈴鹿製作所(三重県)で行われ、北米を中心に世界19ヶ国で販売される。
価格帯&グレード展開
シビックも200万円カーに
通常のシビックは全車1.8リッター(5AT・5MT)で187万9500円~214万2000円。シビックハイブリッドは219万4500円~236万2500円。かつて、6代目あたりまでは100万円前後のエントリーモデルが隠れた人気グレードだったシビックだが、今やそのクラスはフィットがカバーする。
オプションはIHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロール)+CMS(追突軽減ブレーキ)のセット(26万2500円)、HDDインターナビ(24万1500円~)、スマートキー(7万3500円)など。
パッケージング&スタイル
シビックもついに3ナンバーへ
ボディサイズは全長4540mm×全幅1750mm×全高1440mm。ついにシビックも3ナンバーか、と感慨深いが、同クラスのVWゴルフの大型化を思えば、これも世の流れか。ホイールベースはセダンでは1991年発売のシビックフェリオ(EG型)から続いていた2620mmが久しぶりに延長されて2700mmに。
フロントウインドウを思い切り前進させた典型的なモノフォルムを採用。シビックセダンの主力市場となる北米で好まれる「未来的」スタイルとなる。ボディサイド下の3角断面のキャラクターラインが面白い。欧州で主力となる5ドアハッチバックはこれとまったく違った斬新なものが用意される。
シビックハイブリッドには、空気抵抗の少ない専用軽量アルミホイールやフロントエアスポイラー、トランクスポイラー、アンダーカバー、バッジが付く。シビックユーザーか関係者でもない限り、一目でハイブリッドと見分けるのは難しい。
未来的なインストルメントパネル
インパネのデザインは掛け値なしに未来的だ。デジタルのスピードメーターを視線移動の少ない最上段の一番深いところに配置。左右360mm×上下350mmの楕円ステアリングの間から、大径タコメーターを主とした他のメーター群が見える。こうした計算ずくの視認性を確保するため、ステアリングのチルト/テレスコピックやシートのハイトアジャスターなどでポジションの微調整が可能になっている。ハイブリッドでは水温と切り替え式の瞬間燃費計やモーターのアシスト/バッテリーのチャージ状態が分かるメーターが付く。室内の写真はすべて普通のシビック(1.8GL)のもの。
奥行きのあるダッシュボードや室内幅の余裕もあって、広々感は抜群。ステアリングやスピーカーカバーの細かく穴が開いたメッシュ状の仕上げも面白い。低反発クッションを使用したシートはアコード並みに座り心地が良く、アクセルペダルはオルガンタイプだ。足元にセンタートンネルのない後席は抜群に広く、明るい内装色で居心地も良い。
ハイブリッドはトランクスルーせず
トランク容量は438リッターで、通常のシビックではトランクスルーも可能だ。ハイブリッドは背もたれの後ろにIPU(インテリジェントパワーユニット)があるのでスルーしないが、容量は先代ハイブリッドより広い350リッターを確保。
基本性能&ドライブフィール
「賢い」新開発パワートレイン
まずは通常のシビック(1.8GL)に試乗。新開発の1.8リッター・チェーン駆動SOHCエンジン(140ps、17.7kg-m)は新しいi-VTECシステムを搭載。電子制御スロットルの採用と合わせて、主にクルーズ走行時の燃費を改善したという。馬力よりも実用燃費優先のユニットだ。実際、ホンダ車が得意とする高回転でのパワー感は控えめ。5ATの巧みな変速によって燃費の良い低回転を使うインテリジェントな性能が印象的だ。
クイックな電動パワステ
ねじり剛性を約35%高めたボディと締まった足回りで、走りはシビックらしく軽快。乗り心地は固めだ。低速ではもう少ししっとり感が欲しいが、これはもっとハイスピードを想定してのことだろう。フロントの接地感は薄めだが電動パワステは妙にクイックで、山道で飛ばした時は少し慣れを要した。いわゆる回頭性の高いクルマということになり、リアのスタビリティも高いが、なぜか飛ばして楽しいクルマではなかった。
100km/h巡航は2000回転ほどで粛々と走行し、リミッターが作動するまで特に快適性も安定性も損なわず速度を上げる。アコードのような抜群の高速性能は備えていないが、シビックとして考えれば素晴らしい性能だ。150㎞/hの巡航は楽々。実用上の不足はまったくない。
エンジンが主役のシビックハイブリッド
後日試乗したシビックハイブリッドは、1.3リッター・2バルブの直4エンジン「3ステージi-VTEC」(95ps、12.5kg-m)と補助動力モーター「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」(20ps、10.5kg-m)を搭載したもの。システム全体の出力は未発表だが単純に合計すれば115ps、全体のトルクは発表値で17.0kg-mとなる。車重は主にバッテリーで60kg増えて1300kgだ。
ちなみに2代目プリウスは1.5リッターエンジン(77ps、11.7kg-m)とモーター(68ps、40.8kg-m)の組み合わせで、システム全体は82ps(時速85km以上)と48.7kgm(時速22km以下)。車重は装備を揃えると同じ1300kg。数字で見る限り、ホンダではエンジンが主役なのに対して、プリウスでは強力なモーターが主となる。
普通のガソリン車に近い
それを表すように、シビックハイブリッドのドライバー正面には、トヨタにはないタコメーターがドーンと鎮座する。イグニッション部分をひねるとエンジンが掛かり、タコメーターでもそれが分かるのは便利だ。モーターのみで発進可能なプリウスと違って、シビックではブレーキを離した瞬間にエンジンが掛かり、電子制御クラッチの擬似クリープによって発進する。
モーターのアシストによって力強い加速が可能なシビックだが、基本的にはエンジン主体の走り。急な加速時を除いて、CVTは走行中ほとんど2000回転くらいにエンジン回転を抑えて燃費を稼ぐ。モーターだけで走るプリウスに対抗すべく、新型シビックハイブリッドは低速での一定走行に限り、モーターのみの走行も可能となったらしいが、今回の試乗では残念ながらはっきり体感するチャンスは訪れなかった。一方で、ドライバビリティや回生ブレーキのフィーリングに違和感はなく、その意味でも普通のガソリン車に近い。
10・15モード燃費はプリウスの約1割増
シビックハイブリッドの10・15モード燃費は28.5km/L(MX=試乗車)~31.0km/L(MXB)。今回は160kmほど走って、普通の街乗りで13km/L台は確実、街乗りのエコランで17km/h台というところだった。高速道路でオプションのIHCC(インテリジェント・ハイウェイ・クルーズコントロール)をフルに使えば10・15モード燃費に迫ることも可能か。参考までにプリウスの10・15モード燃費は30.0km/L(ツーリングセレクション)~35.5km/L(S)と1割ほど優れる。
ここがイイ
世界で売る基幹車種とは言え、短い期間で再び新開発されたエンジンの完成度。走りに関してはさすがホンダの面目躍如。インテリアの質感や作り、そして広さ。ここはプリウスに対してもリードする。トランクも広い。
このクラスでも、ミリ波レーダーによるいわゆるレーダークルーズ(ホンダにおけるIHCC)やいわゆるプリクラッシュセーフティ(同じく追突軽減ブレーキ=CMS)が装備できること。特にレーダークルーズは高速道路でのエコランに必須とさえ言いたいもので、ハイブリッド車との相性がいい。さらにはエアコンまで音声操作ができるインターナビプレミアムクラブ対応カーナビもあって、ハイテク満載(がオプションで可能)。
従来ホンダのスマートキーは遠ざかると自動的にロックだったが、シビックではドアノブのタッチスイッチに触れてロックする方法に変わったこと。この方が安心感がある。
ここがダメ
通常モデルは、資料をよく読むとすごい技術のてんこ盛りだが、一般のユーザーには今ひとつその凄さが伝わらないこと。トヨタが既存ユニットの使いまわしで効率よく作っている状況を見ると、その技術への執着はマニアックとさえ言いたくなる。それがホンダのイイところでもあるが、技術オタク、ホンダファン以外にあまり関係ないと言われれば、そのとおり。そこが辛い。
ハイブリッドでは、トヨタに遅れをとっているといわざるを得ない。500台の販売目標は、技術のアピールという数字だろう。走りも見た目も普通のガソリン車っぽいから、やはり一般ユーザーに今ひとつアピールしない。また急な坂道で止まると時に後ずさりすることがあり、ドキッとさせられた。ブレーキを外せばエンジンがかかり半クラッチ制御されるが、トルコンほどクリープ力がないので急勾配ではずるずる下がる。
ハイブリッドでは回生ブレーキを踏ませるためか、いわゆるエンブレがきかない。例えば60㎞/hでアクセルから足を離すと通常のガソリン車のような減速がされず、ブレーキを踏まない限り車速はごくゆっくりとしか落ちていかない。ここはプリウスも同様の傾向があるが、乗っていて違和感があるところ。コーナリングでもエンブレで速度を調整することができないから、進入速度が出過ぎて「オッ」となることも。それからどこかから時々ミューンというような異音?が聞こえてくる。マナーモードにした携帯電話の振動のような感じがして、あわてて携帯を探してしまった。
総合評価
今回はセダンしか国内には投入されないシビック。初代に乗った団塊世代を初め、40代以降の人にとってはさすがに今さらハッチバックでもないだろうから、セダンだけでもいいのかもしれない。ということで乗りこんでみると、上下2段のメーター、楕円でスチール風の飾りが入ったステアリング、妙に短いサイドブレーキレバーなどにギョッとするに違いない。それにはもちろん慣れるが、このあたりが気に入るという熟年層は少ないだろう。
様々なインテリジェント機能がシビックのような大衆車(古い言葉だ)にまで搭載されるようになったのは素晴らしいことだが、熟年が使いこなせるとはとても思えない。もちろんつけなくてもいいのだが、それだとちょっとスポーティーな普通のセダン。特にエクステリアデザインは好みが別れそうだ。
ではこの斬新さ、スポーティーさを若い層に売ろうとしても、ホンダには多くのミニバンがあり、実際に家族がいればミニバンの方が圧倒的に便利だとホンダによって知ってしまった世代には、なかなか気に入ってはもらえないだろう。日本での目標販売台数が2000台で、好調であるべき発売一ヶ月の初期受注でも約2000台だから前途は厳しそうだ。全てを新しくし、実際、前代より遙かによくなったと思うが、それが消費者の心をときめかせるところまでゆかないのが、昨今のクルマ販売の難しいところだ。
という感想を持ちながらハイブリッドに乗ったのだが、これはなかなか慎み深い未来カーだった。先代どおりの地味さは、プリウスのような「ハイブリッドに乗っています」感がなくていい。ハイブリッドには乗りたいのだが、デカプリオが宣伝するような「環境派」はどうも、というというひねくれた人は、月に500人(目標販売台数)くらいはいそうだ。価格は先代がノーマル車の60万円アップだったが、今回は30万円アップと素晴らしく安くなっている。
何よりハイブリッドに乗ると、メーターの斬新さも、さもありなんと思うし、様々なインテリジェント機能が装着されてもいて、なるほど、これぞ未来のクルマだと実感できる。プリウスにはレーダークルーズやプリクラッシュは用意されていない。これらが全部あってこそ未来カーだと思うのだが、シビックにはナビを含め全て用意されていた(実際に買った人の装着率も立ち上がりでは12%あったという)。これは素晴らしい。プリウスほどモーターだけで走らない分、乗っていて未来感が少ないのは残念だが、ワインディングを走れるだけのスポーティーさはちゃんとあるし(タイヤがプアなのは残念)、広さなどセダンとしての使い勝手ではプリウスよりこちらの方が上だ。
シビックはガソリンだと普通のセダンだ。しかしハイブリッドになると「未来の普通のセダン」になる。20年ほど先には、こんな大衆車や営業車がいっぱい走っているのだろう。未来を先取りしたという意味ではなかなか画期的な存在だ。ハイテク好きのデイズとしてはこのクルマを絶賛しないでどうする、と思う。そしてさらにクルマ好きをも唸らせるハイブリッドをホンダには早く作ってもらいたいものだ。レクサスによってトヨタが一歩先んじる「走りのハイブリッド」の世界へ、ホンダパワーが斬り込んでいくのを応援したい。
試乗車スペック
ホンダ シビック 1.8GL
(1.8リッター・5AT・206万8500円)
●形式:DBA-FD1●全長4540mm×全幅1750mm×全高1440mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1240kg(F:770+R:470)●乗車定員:5名 ●エンジン型式:R18A●1799cc・SOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●140ps(103kW)/6300rpm、17.7kgm (174Nm)/4300rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/50L●10・15モード燃費:17.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:205/55R16(DUNLOP SP SPORT 2050M)●試乗車価格:-円(含むオプション:ー)●試乗距離:130km
ホンダ シビックハイブリッド MX
(1.3リッター+モーター・236万2500円)
●形式:DAA-FD3●全長4540mm×全幅1750mm×全高1435mm●ホイールベース:2700mm●車重(車検証記載値):1300kg(F:780+R:520)●乗車定員:5名 ●エンジン型式:LDA●1339cc・SOHC・2バルブ・直列4気筒・横置●95ps(70kW)/6000rpm、12.5kgm (123Nm)/4600rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/50L●モーター形式:MF5●交流同期電動機(薄型DCブラシレスモーター)●定格電圧:158V●20ps(15kW)/2000rpm、10.5kgm (103Nm)/0~1160rpm●10・15モード燃費:28.5km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:195/65R15(DUNLOP SP31)●試乗車価格:-円(含むオプション:ー)●試乗距離:160km
公式サイトhttp://www.honda.co.jp/CIVIC/




