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メルセデス・ベンツ CLS 350新車試乗記(第392回)

Mercedes-Benz CLS350

(3.5リッターV6・7AT・850万5000円)

2005年11月19日

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キャラクター&開発コンセプト

メルセデスの新型「クーペ」

CLSの原型は2003年のフランクフルトショーで発表された4ドアクーペのコンセプト「ヴィジョンCLS」。この時点ですでに完成度は高く、2004年のジュネーブショーで正式に発表された。メカニズム的には、現行Eクラス(W211型)をベースにスタイリング変更したもので、日本ではお馴染みの、というより、90年代に葬り去られた車型「4ドアハードトップ(4HT)」が、真面目なメルセデスから復活したというところが少々皮肉だ。もともと欧州には、4人乗りの大型クーペというジャンルがあり、今回はそれを4ドアで作ってみました、というのが本来の経緯のようだ。現に海外のメルセデス・ベンツではCLSを「Saloon」ではなく「Coupe」と称している(日本では特に明記なし)。

メカニズムはほぼEクラス

日本での発売は2005年2月4日。特徴は見ての通りの流麗なボディスタイルで、中味に関しては現行Eクラスと異なる部分は少ない。エンジンは新世代の3.5リッターDOHCエンジンを搭載し、350と500には7速AT「7G-TRONIC」を採用(CLS 55AMGは5AT)。完全にセパレートの後席で4人乗りとするなど、全体にパーソナルかつスポーティな仕立てになっている。

価格帯&グレード展開

850万5000円からスタート

日本導入モデルは3種類で、以下の通り。
・「CLS 350」3.5リッターV6(272ps、35.7kgm)+7AT(850万5000円)
・「CLS 500」5リッターV8(306ps、46.9kg-m)+7AT(1029万円)
・「CLS 55 AMG」5.4リッターV8スーパーチャージャー(476ps、71.4kg-m)
+5AT(1396万5000円)

全車で4輪のブレーキを電子制御するSBC(センソトロニック・ブレーキ・コントロール)やDVDナビを、スポーツパッケージを除く全車でAFS(アクティブヘッドライト)を標準装備。オプションでミリ波を使ったレーダークルーズ「ディストロニック」(21万円)を用意する。

導入から9ヶ月後の11月7日には、特別限定車「CLS 500 デジーノ(designo)」(1180万円)を国内200台限定で発売した。外装にAMGのエアロパーツ、外装色に見る角度で色合いが変化する「デジーノ・ミスティック・ホワイト」を採用。内装にナッパレザーと専用ウッドパネルを使う。

パッケージング&スタイル

Eクラスベースながら非メルセデス的

ボディサイズ(カッコ内はE350比)は、全長4915mm(+95)×全幅1875mm(+55)×全高1405mm(-30)。数字的に特に背が低いわけではないが、ボンネットからトランクまでノッチ無しで連続させるなど、デザイン的な工夫が低さを強調している。写真だと広角レンズを使ったように膨らんで見えて、実際のスタイルが分かりにくい。

ホイールベースはEクラスと同じ2855mm。ウエストラインと並行するキャラクターラインが非メルセデス的。クルマに興味のない人でもバッジを見ればあのベンツだと分かるが、一体どんなクルマで、いくら位するのか見当がつかないのでは。

英国調あり、電気仕掛けあり

大きな一枚物のウッドパネルを使い、いつものメルセデスとは雰囲気が違うインパネ。シフトレバー周辺のデザインやシートに、ジャガー風の意匠を使う。電気仕掛けのオーディオカバー、ナビのモニターが上下にスライドして開くMD・DVD-ROMスロット、軽い操作感のスイッチ類などは、まるで日本車みたいだ。センターコンソールの小物入れカバーは冷蔵庫みたいな両開き式で、運転席からでも助手席からでも使いやすい。

ボディの見切りは意外に悪くなく、大きさを感じさせない。ただし、フロントウインドウの傾斜は強く、Aピラーは駐車場から道路に出るときなどに、横方向の視界をさえぎる。前席シートには被追突時のムチ打ちを防止する「ネックプロ」アクティブヘッドレストが付く。

2人掛けのリアシート

2人掛けでスペシャル感のある後席。着座位置はEクラスより若干低いが、きちんとした姿勢で座れるし、座り心地も良い。サイドウインドウが小さいので景色を楽しむには不向きだが、守られ感はある。身長180センチ以上のスタッフからは、髪の毛が天井に触れると指摘があった。

後席ヘッドレストはドライバーが遠隔操作で畳めるもので、リアブラインドも電動だ。エアバッグは計8個で、後席パッセンジャーは左右ウインドウバッグとサイドエアバッグで守られる。

容量はあるが天地の浅いトランク

荷室容量は495リッターで、数字的にはEクラス(520リッター)より5%ほど狭いだけ。しかし開口部は小さく、天地も狭い。買ったばかりの箱に入ったコンピューターや家具みたいに嵩張るものは積めない可能性大だ。トランクスルー機能も備わらない。

基本性能&ドライブフィール

新世代V6+7ATで軽快に走る

試乗したのは3.5リッターV6搭載のCLS350。全長4.9メートル、全幅1.9メートル弱のボディといい、このスタイルといい、取り回しに気を使いそうだが、走り出せばEクラス同様、実に運転しやすい。最小回転半径はFR車らしく5.3メートルと小回り抜群。これはベース車のEクラスや5ナンバーの国産FFミニバン(ウィッシュやステップワゴンなど)と同値だ。

走りも見事にストレスフリーで、軽快だ。特に新世代のV6エンジンと7AT(すでにメルセデス各車に搭載)がいい仕事をする。1.7トンに3.5リッター(272ps、35.7kg-m)とは思えないほど加速が小気味良いのは、80km/hで早くも3速に入ってしまうギアリングのせいだろう。マニュアルモードで回した時の音もいいし、変速ショックも小さい。UK仕様のカタログから拾った同モデルの最高速はリミッターが働く250km/h。過剰なパワー感がないだけで、それ以外はあらゆる点で十分な性能だ。

快適性も操縦性も350で十分

350の標準仕様にエアサスは備わらないが、乗り心地はまったく問題ない。荒れたアスファルトでタイヤが多少ゴロゴロ唸るが、タイヤがオプションの前245/40R18、後275/35R18の極太扁平であることを思うと不満はない。これは後席でも同じ感想を持った。この点でも350の標準仕様で十分という印象を持った。

ハンドリングもなかなかいい。オーバーハングにぶら下がる2気筒分が無いおかげで、V8よりすっきり鼻先が軽い。パワステはクイック過ぎず、ダル過ぎず。ごくごく自然な感覚で、素直にコーナーを曲がっていく。ものすごい剛性感やシャープさで超ハイスピードに誘うタイプではなく、チョイハイスピードでちょうどいいタイプ。気になったのは、太もも下のサポートがまったくユルく、コーナリングで体が沈んでしまうことくらいだ。

ところでCLSには全車に、ロービームとハイビームをステアリング舵角と車速に応じて、左右で最大12度動かすAFS、メルセデス言うところのアクティブライトシステムを装備する。これの動き方はかなり控えめだった。体験した中で最も派手に動くシトロエンC4/C5後期型に比べると、非AFS車かと思ったくらい。その代わり、というわけではないだろうが、40km/h以下ではウインカーやステアリング操作に連動してコーナリングランプが点灯する。

ここがイイ

何といってもスタイリング。頑固なメルセデスファンからは苦情が出るやもしれないが、いつも言うようにクルマはスタイリングが命。特にこのクラスともなれば、走りに大きな不満があるはずもなく、となれば、カッコよくてなんぼ、と言うことになるだろう。とにかく劇的に存在感がある。たまたま新型SLと平行して走ることになったが、カッコ良さの支持率はこちらの方が高いと思った。

そうしたカッコ重視のスタイリングだが、大柄なドイツ人ならいざ知らず、平均的な日本人なら4人で乗ってもそう不満がない居住空間を確保している。内装の質感には賛否両論あるかもしれないが、最新のマスプロ高級車としては及第点だろう。カーナビはパナソニック製のようだが、アウディやBMWのような操作系のギミックもなく、ごく普通に使える。音声操作もそこそこ実用的だった。3連メーターのセンターにある丸いディスプレイはカーナビに連動していて、道路案内中の曲がり角では進行方向を示す矢印が表示されるなど、様々な情報が得られる。オプションではミリ波レーダーによる先行車追従システム「ディストロニック」(21万円)も用意される。日本車のような最高スピード制限はないはずだから実用的だ。オプション価格もそう高くないのでぜひ装備したいところ。こうしてみるとトヨタ車並のハイテクカーでもある。

動力性能は350でも十分、と言うより、これくらいの方が一般道でエンジン回転を楽しめる。ノーズの軽さもあって、軽快なハンドリングで7速をマニュアル操作し、エンジンを回して遊べるのはクーペらしくていい。乗り心地もいいから街乗りが楽だし、それでいてワインディングでもそれなりに楽しめる。全体のバランスがすごくいい、と感じた。

ここがダメ

まあまあ不満がないというカーナビだが、ディスプレイ左右脇にある都合10個のボタンを使うのはやや面倒。せっかくのパナソニック製なのだから、タッチパネルを望みたい。また、スポーツパッケージにあるステアリングシフトはクルマの性格を考えると標準装備にすべきだろう。

ヘッドクリアランスを稼ぐためか、かなりヒップが落とし込まれた姿勢となる後席だが、やや背中が立ち気味の乗車姿勢となり人によってはもう少しシートバックの角度を変えたいと思うだろう。

総合評価

デイズのスタッフは最近、古いベンツ好きが多い。W124の500E、W210のAMG E50、W202のC240ワゴンといった古き良き?ベンツに乗っている。これらと比較すると2000年以降にでてきたメルセデスは、まるで趣を異にする。かつての堅いシートやドアの音にこだわる人にとって、CLSはちょっと許し難いクルマのようだ。もちろん「男の4ドアセダン」ではなく、「軟弱なクーペ風」のスタイリングにもひとこと言いたくなるらしい。しかし、実際のところ、現在のメルセデスはこうなのである。その乗り味は例えばトヨタにも近いし、その装備品もまたトヨタに近い。

ベンツの場合、ドイツのメルセデス・ベンツでなく世界のダイムラー・クライスラーになったとき、クルマ作りは劇的に変化した。CLSはその象徴ともいえるクルマだろう。クライスラー・セブリング/ダッジ・ストラトス、いや300Cとかダッジ・マグナムなどにも通じる、マッチョなカッコクルマ路線のメルセデスバージョンで、主要な市場である北米はもちろん、日本での拡販を目指したもの、といえる。質実剛健で頑固なドイツ製品ではなく、世界企業としての生き残り商品なわけだ。まもなくBクラスなども登場するメルセデスブランドのラインナップはCLSのようなクルマまでを内包し、膨張を続けている。スマートを含めば軽自動車クラスまでを持つフルラインナップメーカーだ。そうすることで企業としての生き残りと成長を維持していこうという戦略だったわけだ。

つまり、高級車メーカー(あくまでイメージ)か、トヨタのような大衆車メーカー(これもまたあくまでイメージ)か、という違いはあるものの、かつての日本メーカー並の北米市場攻勢をかけるうえで、マーケティングが生み出したクルマがCLSと言うことになる。それは皮肉にも、かつて日本車がマーケティング主体で生み出した4ドアハードトップ(4HT)と同じ方法論となった。ハードウェアはそこそこに、ソフトウェア(この場合はスタイル)で勝負、これはまさに4HTと同じ。むろん、そこそことはいえ、ハードウェアはかつての日本車とは比較にならず、まったく不満のないものなのだが。CLSはEクラスのハードトップ、カリーナに対するEDみたいなものだ。

そうして拡販を続けていく路線は現在重大な局面に来ている。今年前半は販売が落ち込んで営業赤字になったメルセデスベンツ部門。三菱を切り離し、ヒュンダイも手放すというダイムラー・クライスラーの苦境。最大の重荷はクライスラーかもと思う人は多いが、さすがにそれを切り離しはしないだろう。しかしシュレンプ会長が去ったあと、クライスラーを立て直したツェッチェ会長の舵取りがどうなっていくかはわからない。今後ベンツブランドは昔のベンツの作りに戻るのだろうか。過剰なまでの品質、シャシーはエンジンより速くという伝説の復活があるのだろうか。

いや、おそらくそれはないだろう。すでにクルマは次の次元へ進んでいる。古き良きガソリンエンジン、古き良き機械式の操作系、そういったものへ期待は単なるノスタルジーに過ぎない。電動パワステ、ESP、ドライブ・バイ・ワイア、やがて来るハイブリッドといった否応ない技術の進化が、結果としてトヨタ車にも近い乗り味を、メルセデスにも与えることになる。そうしたクルマになった場合、競争力はブランドとカッコ良さだ。CLSはそれを共に備えているわけで、その意味ではSクラスより今後のメルセデスを象徴するクルマと言ってもいい。

となれば、次なる勝負は内装の質感だろう。CLSでも多くが不満とするのはその部分だ。レクサスにしても、さほど室内の質感はよくはないのだから、メルセデスにすればそれを圧倒的に高めることで勝機が見えてくる。エクステリアはドライバーには見えないが、インテリアは常に見えているもの。見える部分、触れる部分こそ、質感を高めるべき。また使い勝手の良さももちろん重要。新型Sクラスは操作系に手をつけている。その点CLSはまだまだスタンダード。古きベンツ好きでも乗り換えて違和感はない。

しかし何よりCLSの強みは、メルセデスの中でも別格の車格感だ。Eクラスがベースといった知識がなければ、新型Sクラスと並んでも臆することはない。メルセデスの中ですらクラスレスなのだから、一般路上に置いてはさらに別格。前述のようにSLのスペシャリティ感にも負けないし、国産高級車はもちろんまったく太刀打ちできない。4人乗れるし、800万円台からという価格もその存在感からすれば破格に安い、しかも人気車だから値落ちも少ないはず、とくれば1000万円までのクルマ選びではトップクラスにランクする。「維持費に大金をかけて500Eなんか乗ってる場合ではないかも」とあるスタッフの心は揺れ動いた。

試乗車スペック
メルセデス・ベンツ CLS 350
(3.5リッターV6・7AT・850万5000円)

●形式:DBA-219356C●全長4915mm×全幅1875mm×全高1405mm●ホイールベース:2855mm●車重(車検証記載値):1730kg(F:910+R:820)●乗車定員:4名 ●エンジン型式:272●3497cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・縦置●272ps(200kW)/6000rpm、35.7kgm (350Nm)/2400~5000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/80L●10・15モード燃費:8.5km/L●駆動方式:後輪駆動●タイヤ:前245/40R18、後275/35R18(Continental SportContanct 2)●試乗車価格:888万3000円(含むオプション:パッケージオプション<本革シート+18インチ5スポークアルミ> 29万4000円、パークトロニック 8万4000円)●試乗距離:130km

公式サイトhttp://www.mercedes-benz.co.jp/passenger/car_lineup/cls-class/index.html

 
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