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MINI クーパー クラブマン新車試乗記(第510回)

MINI Cooper Clubman

(1.6L・6AT・287万円)

8センチ増しのホイールベースと
2つの観音開きドアを備えた
異形5ドア、そのココロとは?

2008年05月16日

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キャラクター&開発コンセプト

2代目BMW MINIをストレッチ。さらに2つの観音開きドアを得る


新型クラブマンのデザインソースとなったコンセプトカー。ジュネーブ(手前)、東京(左)、デトロイト(左奥)、フランクフルト(右奥)の各都市で発表された
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

「MINI Clubman (クラブマン)」は、2代目BMW MINIがベースのワゴンモデル。BMWによれば、「シューティングブレーク」(英国流の2ドアスポーツワゴン)のようなイメージを狙ったというユニークな4人乗りだ。ドイツ本国では2007年7月、日本では10月24日に発売された。国内でのデリバリーは2008年春から始まっている。

その特徴は通常のMINIより全長とホイールベースをストレッチして快適な4人乗車を可能としたこと。もう一つがボディ右側(運転席側)と後部に、それぞれ観音開きドアを備えたことだ。

「ミニのワゴン」の歴史を簡単におさらい


モーリス・ミニ トラベラー
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

アレック・イシゴニス設計による「ADO15」、通称クラシックミニ(1959年)をベースに、2ドアワゴンとしたのが「モーリス・ミニ トラベラー」および「オースティン・セブン カントリーマン」(1960年)だ。

その後、ミニのフロントデザインを現代的に改変した「ミニ・クラブマン」(1969年)追加時に、カントリーマンとトラベラーを統合したのが新しい2ドアワゴン版「ミニ クラブマン エステート」となる。よって、「クラブマン」という名称自体は、元からワゴンを意味していたわけではない。

 

ミニ クラブマン エステート(1969年)
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

BMWによればこれらエステート版の累計販売台数(1960~82年)は40万台を上回るとのこと。ちなみにクラシックミニ(1959~2000年)の総生産台数は約540万台だ。クラシックミニをベースとした派生モデルには他に、ピックップや2ドアノッチバックセダンなどがあった。

価格帯&グレード展開

通常MINIの23万円高


車両協力:MINI 名古屋名東

「クーパー」と「クーパーS」の2グレードで、それぞれ6MTとマニュアルモード付き6ATを用意。価格は全グレード、普通のMINIの23万円高だ。凝ったドアやホイールベースの延長分からすれば意外にリーズナブルではないだろうか。

■MINI Cooper Clubman(120ps、16.3kgm) 274万円(6速MT)
MINI Cooper Clubman(120ps、16.3kgm) 287万円(6速AT) ※今週の試乗車

■MINI Cooper S Clubman(175ps、24.5kgm) 318万円(6速MT)
■MINI Cooper S Clubman(175ps、24.5kgm) 331万円(6速AT)

パッケージング&スタイル

ホイールベースが+80mm、リアオーバーハングが+155mm

ボディサイズ(3ドア比)は全長3935(+235)×全幅1685(同)×全高1440mm(-10) 。ホイールベースは2545mm(+80)。フロントデザインは変わっていないから、伸びたのはホイールベースとリアのオーバーハングだけで、パッケージング的には+80mmが後席のフットルームに、+155mmが荷室の拡大分に振り分けられた、と考えることができる(実際の数値は異なるようだが)。

デザインモチーフは往年のトラベラー/カントリーマン/クラブマンエステートであり、リアの「スプリットドア」も祖先にならったものだが、新型が過去のモデルと違うのはボディ右側にも観音開き式ドア(こちらは「クラブドア」と呼ぶ)を備える点だ。

リアドアは右だけだが・・・・・・


(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

後ろヒンジのリアドアは、海外の左ハンドル車でも右側で、世界共通。ボディ左側にクラブドアを設けなかったのは、おそらくガソリン給油口の適当な移動先がなかったこと(仮に出来ても新たなコストが発生する)、ドアがさらに1枚増えること(計6ドアとなり、やっぱりコスト高になる)、左側面の衝突安全対策もやり直す必要がある(同じく)といった具合に、そう簡単ではない。それならいっそ左右非対称を面白さとしてアピールしよう、というところだろう。

後席の乗降性はそれなりだが、クラブドアはとても便利

インパネデザインは普通のMINIとほぼ同じで、もちろんオプションで色や素材、装備をカスタマイズ出来る点も同様だ。右の写真は「素」の状態だ。

関心が集まるのはやはり後席の使い勝手だろう。特に乗降性に関しては、天井が低く、リアドアの開口部も特に大きいわけではないので、実際のところ特に良いわけではない。ドアハンドルがインナー側にしかなく、外から開けるときは裏側に手を回す形になる、というあたりも最初は面食らう部分だ。直接比較すれば一長一短あるだろうが、乗降性そのものはマツダRX-8と同程度かな、と思えた。

なお、「左側通行の日本では左側(助手席側)にドアをつけるべきでは」という意見もあるが、ドライバーの利便性から言えばクラブマンのように運転席側にある方が使いやすい。荷物を出し入れする時はもちろんのこと、子供を乗せる時にも、いちいち助手席側に回る必要がないし、左側の余裕をあまり気にせず駐車も出来るからだ。子供が一人でドアを開けて車道に飛び出す、という心配もない。なぜなら前のドアを開けない限り、リアドアも開かないからだ。

後席左の「車窓」が楽しい

後席に座ってしまえば予想以上に広々感があり、クッションが薄めなのを除けば、居心地も良い。2人掛けと割り切ったおかげで、横方向の余裕もあるから圧迫感もない。

面白いのは前後に長い一枚モノの左リアサイドウインドウからの眺めで、まるで特急電車のような風景が楽しめること。右リアのサイドウインドウはクラブドアによって2分割となり、太いピラーがあって眺めが良くないのと対照的だ。つまり飛行機で言えば、左が「ウインドウ(窓側席)」、右が「アイル(通路席)」という感じである。

なおエアバッグは計6個を標準装備し、後席に関してはカーテンシールドエアバッグがカバーする。

荷室容量はいわゆるサブコンパクトカー並み

「後席のバックレストを倒さなくても非常に広々としています」とカタログにある荷室の容量は260L(ベース車比で+100L)。広いというのは要するに普通のMINIに比べれば、ということで、数値的にも見た目的にも、絶対的な容量は現行の2代目デミオ(250L)、2代目ヴィッツ(274L)と同程度といったところ。後席の背もたれを倒せば最大930Lとなる。 天地が低いため、スポーツ自転車のようなものは前後のホイールを外し、倒して積むしかない。

床下にジャッキはあるが、ランフラットタイヤ(無圧時でも80km/h以下で150km走行可)を標準装備するため、スペアタイヤは無し。床構造を見るとスペアの搭載も出来そうではある。ちなみに普通のMINIクーパーはスペアタイヤを搭載、クーパーSは巨大なマフラーを床下に収めるためランフラット標準となっている。

なお、デフォルトの車両設定では車速感応式の自動ロックが働き、停車後も手動でロックを解除しないとリアゲートが開かないが、これは正規ディーラーが持つ端末をつないで車両設定を変更すれば無効に出来る。

基本性能&ドライブフィール

動力性能はほとんどクーパーと体感差なし

試乗したのは自然吸気エンジンを積んだ「クーパー」。1.6リッター直4「バルブトロニック」(120ps、16.3kgm)とアイシンAW製6ATは、ギア比も含めて普通のMINIと全く同じだ。車重は試乗車の場合、以前乗った2代目BMW MINIクーパー(6AT)より60kg重い1230kgとなっている。

60kg増しということは車重全体の約5%、人間ならドライバー以外に1人乗った勘定だが、直接乗り比べない限りは、まあ気持ち「重いかな」程度。エンジン自体が全域でトルキーだし、ATにしろMTにしろ6速もあってパワーバンドはキープしやすいから、それほど重量ハンディは気にならない。このあたりは期待値によって印象が変わる部分だが、いずれにしてもこのクラスの欧州コンパクトカーとしては標準的な動力性能だ。

相変わらずクイック、でも穏やかになった操縦性


(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

普通のMINIと一番違うのは、乗り心地と操縦性だろう。もともとBMW MINIは2代目になって安定感が増したが、クラブマンではホイールベースが伸びたおかげでピッチング(縦揺れ)がもうほとんど無くなり、1クラス上のような乗り心地になった。特に後席では、荒れた路面で「タン!タン!タン!タン!」とリアタイヤを突き上げる音を響かせながらも、振動やショック自体は後席の乗員に不思議なくらい伝わってこない。比較的平滑な路面なら、乗り心地はほとんど問題ないと言っていいだろう。

ステアリングを切った時のダイレクト感、クイックな反応は相変わらずで、このあたりは並みの国産コンパクトカーでは味わえないもの。一方、荒れた路面で跳ねがちだった「ゴーカート・フィーリング」は適度に薄れ、安心して振り回せるようにもなった。面白さの「即効性」で言えば普通のMINIだが、安心感(特にパッセンジャーの)という点ではやはりこういう性格の方がありがたい。またクーパーに標準の175/65R15という細くて分厚いタイヤもイイ感じで限界が低く、アクセルとステアリング操作に応じて容易に変化する挙動を安心して楽しむことが出来る。

前後の重量配分の違いも影響しているはずで、60kgの重量増が後軸に集中したため、前軸730kg+後軸500kgというところまで改善されている。FF車なのでむやみに前軸荷重が軽いのは逆効果だが、重量バランス的には悪くないと思われる。

10・15モード燃費の謎

今回は約200kmを試乗。撮影を含めてハイオクガソリンを約23リッター消費し、トータルでの実燃費は8.7km/L(満タン法)だったが、純粋な試乗区間(約170km)では10.9km/L(車載燃費計)をキープした。バルブトロニックのおかげか、巡航時の燃費が驚くほど良く、逆に渋滞時の落ち込みが大きめという印象を受けた。

なお、10・15モード燃費は6ATで14.2km/L、6MTで18.0km/Lとかなり優秀だが、どういうわけかこれは普通のMINIクーパー(6AT:13.8km/L、6MT:16.8km/L)よりも良い数値。車重が増えたのだから、常識的には多少悪化するか、少なくとも同程度のはずなのだが・・・・・・。エミッション(排出ガス)に関して何らかの改良があったのでなければ、クラブマン専用設定のサスペンションジオメトリー(アライメントなど)が、転がり抵抗の低減につながった可能性など、何らかの物理的な要因があるはずだ。中には「10・15モードの燃費計測(シャシーダイナモ上で一定の条件で行う)がたまたまうまくいったんじゃない?」という声もあるが、そういった例は少なくとも大手メーカーの量産車では見たためしがない。

ここがイイ

これまで試乗記でさんざん書いてきたMINI共通の良さに、ワゴンボディが加わったこと。デザインのまとまりも見事。屋根からリア回りのカラーバリエーションの豊富さは購入時に楽しめそうだ。

後席背もたれの固定金具が可動し、背もたれを垂直に立てて固定できるのは(もちろん大きな荷物を積む時のため)、なかなかおもしろいアイデアだ。

ここがダメ

これまでのMINI試乗記で書いてきた細かいところ(6ATのパドルスイッチ操作性やカーナビ装着性など)。加えてこのボディではリア窓が小さく、後方視界がかなり厳しい。特にリアがスプリットドアゆえ、バックミラーの真ん中にはしっかり窓枠が写ってしまう。スプリットリアウインドウの初期型ワーゲンみたいで、最近のクルマにない楽しさではあるが。

総合評価

壊滅的な国産ワゴン、いまだ人気の輸入ワゴン

ステーションワゴンは、特に日本では壊滅状態にある。頑張っているのはスバル・レガシィくらいで、トヨタ・日産あたりはもうこのジャンルをあきらめているとしか言いようがない。つまり日本市場において、国産ステーションワゴンは全く需要がないのだ。なぜかと言えば、答えは簡単。荷物を載せるにしろ、人を乗せるにしろ、ミニバンの方が広くて便利だし、ベースになるべきセダンが壊滅状態にあるからだ。ゼロクラウンにワゴンがあったら、クラウンがさらに売れるのではないかと思うが、もちろん絶対数が少ないゆえに、とても商売にはならないという判断があっての状況だろう。さらにコンパクトカーでは「ミニ・ミニバン」とでも言うべき、室内空間と積載性を徹底的に考え抜いたクルマが多数存在しており、「コンパクトカーをステーションワゴンにしよう」などという酔狂はもはやいない。ワゴンが当たり前のように存在する欧州コンパクトカーとは、全く状況が違うわけだ。

一方で、ステーションワゴンは単に便利というだけでなく、今でもセダンやハッチバックより少し上級でオシャレというイメージが維持されている。ワゴンはベース車より実際に積載性が高まるのはもちろんだが、どちらかと言えばイメージを買う商品といえるだろう。それは日本国内の輸入車ファンは十分分かっているし、クルマ好きばかりではなく結構一般の人にも理解されているのではないか。

トラベラーでもカントリーマンでもなく

MINIの場合は、ほかの欧州車と同様の流れでワゴン化されたわけではないだろう。実際のところ、ワゴンとしての能力は相当に低い。普通のMINIよりは確かに荷物は載るし、人も乗せやすいが、利便性追求がワゴン化の目的ではなかろう。それよりワゴンの持つイメージで、MINIに別の価値を加えるため(それによってさらに売れるため)だと思う。MINIをMINIとして楽しむのなら、ワゴンでなくてもいい。でも「なんかワゴンに乗るって、かっこいいよね」という人が買うためのクルマであり、「MINIのワゴンならスペシャリティな雰囲気があって欲しいな」という人のためのクルマだ。

 

モーリス・ミニ トラベラー
(photo:ビー・エム・ダブリュー株式会社)

しかしクラシックミニのワゴンは、もうちょっと切実にユーティリティを求めて作られたモデルだったと思う。当時、小型車しか買えなかった庶民がより広いスペースを求めたゆえ、フィアット500にも、そしてスバル360にもワゴンはあった。一方、新型クラブマンでは観音開きのリアドアを開いても、開口部には敷居があり、床のはき出しがツライチではないし、そのドアはいかにも小さすぎる。要するにワゴンの雰囲気を楽しむためのワゴンボディなのだ。その意味ではトラベラーでもカントリーマンでもなく、クラブマンというネーミングとなったのは納得ができるところ。旅もカントリーライフも、やろうと思えばもちろんできなくはないが、やはり難しいだろう。クラシッククラブマンがクラシックミニのひと味違ったモダンなバリエーションだったように、新型クラブマンはスピリットとしてクラシッククラブマンと同じ、といっていい。

今後のバリエーション展開に期待

昨年のモーターショーで、このクルマが驚くほど人気を集めたのは、付加価値の高い小さなクルマであるMINIに、さらに付加価値がついたがゆえだろう。役に立つか、立たないかではなく、夢や憧れの象徴としてのワゴンボディ。同時に若々しいイメージが強烈なMINIに、ちょっと落ち着きも与えている。年配の人がMINIを欲しいと思っても、ちょっと抵抗があるかもしれないが、クラブマンなら気負いなく買えそうだ。実際、乗り心地やハンドリングも少し穏やかな方向になっているから、その点でも年配向きかも。本物のウッドじゃなくても構わないから、木目のカントリーマンキットあたりが出るともっとオヤジ心をくすぐりそうだ。いやいっそ、かつてのような2シータートラックはどうだろう。現代ではこのクラスにそんなクルマは全く存在していないゆえ、結構ウケるような気がするのだが。MINIには今後、そこまでバリエーションが広がっていくことを望みたい。

試乗車スペック
MINI クーパー クラブマン
(1.6L・6AT・287万円)

●初年度登録:2008年4月●形式:ABA-ML16 ●全長3935mm×全幅1685mm×全高1440mm ●ホイールベース:2545mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1230kg( 730+500 ) ●乗車定員:4名●エンジン型式:N12B16A ● 1598cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 120ps(88kW)/ 6000rpm、16.3kgm (160Nm)/ 4250rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/40L ●10・15モード燃費:18.0 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 シングルジョイントストラット/後 マルチリンク ●タイヤ:175/65R15( Continental PremiumContact2 ランフラット ) ●試乗車価格:-円( 含むオプション:- )●試乗距離:約200km ●試乗日:2008年5月 ●車両協力:MINI 名古屋名東

 
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MINI 名古屋名東

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