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新車試乗記 第142回 トヨタ カローラ Toyota Corolla

 

日時: 2000年10月07日

 

キャラクター&開発コンセプト

20世紀の記念碑的大衆車が、21世紀に向けてイメージをガラリと一新

トヨタの総生産台数の約2割を占めるカローラ。国内の全乗用車車名別販売ランキングで、31年連続ベストセラーを達成し、世界約140ヶ国で年間100万台以上を販売する。まさにカローラは、トヨタブランドの代名詞といえる。 「New Century Value」(一時はニュー・コンセプト・ヴィークルといわれていたはずだが、いつの間にかこう変わっている)と銘打った新型カローラの開発には、次の3つのコンセプトが盛り込まれている。1「従来のクラス概念を打ち破るパッケージ・スタイル・品質」、2.「誰もが味わえる質の高い走り」、3.「新世紀が求める安全、環境性能」。今回はカローラ史上、最も大きなモデルチェンジとなる内容で、ベーシックカーの枠を大きく変える変貌ぶりとなった。

新型カローラのボディバリエーションは4ドアセダンと、「フィルダー」と呼ばれるワゴン(もうカロゴンとは呼ばない)の2タイプ。セダンは5年ぶり、ワゴンは9年ぶりのフルモデルチェンジとなる。搭載されるエンジンはセダンが1.3、1.5、1.8、2.2ディーゼルの4タイプ。フィルダーは1.5、2種類の1.8、2.2ディーゼルの4タイプが用意される。駆動方式はFFと4WD。

価格帯&グレード展開

価格帯はセダンが112.3~206.8万円、フィルダーが136.3~199.8万円

まず、セダンのグレードは大きく分けて「X」「G」「LUXEL(ラグゼール)」の3タイプが用意される。「X」はベースグレードながら、安全装備は上級グレードと同じで、集中ドアロックやリモコンキーも標準装備。廉価版といえども文句なく充実した装備を誇っており、わざわざ上級グレードを買う必要があるのかと思ってしまうほどだ。価格(以下、全てAT、FF車という条件)は1.3リットル車が129.8万円、1.5リットル車が134.8万円、2.2ディーゼル車が147.8万円となっている。なお、「X」には一部装備を簡略化した「アシスタ・パッケージ」なるものが用意されている。これは法人向けのクルマと考えていいだろう。

「G」は「X」の装備に加え、電動格納式ドアミラー、タコメーター、木目調パネル、リアセンターアームレストなどが装備され、価格は「X」の17万円高。今回、カローラがウリとしている質感の高さは、このグレードで最も実感できる内容となっている。実用本位なら「X」、さらに高級志向も味わいたいのなら「G」という選択肢になるだろう。

1.8リットル専用グレード「ラグゼール」は、さらにフォグランプ、6:4分割可倒式リアシート、6スピーカー+CDなどが追加され、価格は174.8万円となっている。

「カロゴン」改め、乗用車専用設計となったことで「フィルダー」の名が与えられたワゴンのグレードは「X」「S」「Zエアロツアラー」の3タイプ。「X」はセダンとほぼ同じ内容で、価格はセダンの9万円アップとなる。「X」には「Gエディション」なるものが用意されており、これはセダンの「G」にほぼ匹敵するグレード。価格は「X」の16万円高となる。

「S」はメッシュグリル、ブラックアウトヘッドランプ、本革巻きシフトレバーなど、スポーティー色を強めた装備が加わり、価格は「Gエディション」の10万円高。 「1.8S」よりもさらにハイパワーのエンジンが搭載された最上級グレード「Zエアロツアラー」は、エアロパーツが追加され、価格は199.8万円。6速MT車は193.4万円だ。

なお、今回カローラがフルモデルチェンジを機に、兄弟車の「スプリンター」、および2ドアクーペの「カローラ・レビン」「スプリンター・トレノ」といった伝統的な兄弟車は廃止。「カローラ・バン」は従来型のまま継続販売される。世界に通用するブランド名、カローラだけが残った。

パッケージング&スタイル

トヨタヒエラルキーを超越したか? 伝統にこだわらない大衆車の挑戦的デザイン

ボディサイズは一回り大きくなって、全長4365mm(旧型比+50mm)×全幅1695mm(+5mm)×全高1470(+85mm)。ホイールベースは、全長の延長分以上の135mmも伸ばされ、2600mm。 フロントセクションとフロントドアをセダンと共用するワゴンは、全長が20mm長く(荷室拡大分)、全高が50mm高くなる(ルーフレール装着分)。カローラにここまで成長されてしまうと、最も影響を受けるのは同じトヨタのカルディナかもしれない。 「ずんぐりむっくり」のヨーロピアン調の外観は、従来のカローラというよりもプリウスやヴィッツのイメージに近いもの。デザイン、サイズともに、もはや旧型のイメージを微塵も感じさせない仕上がりとなっている。しかし、印象は大きく変わっても従来の「どこか平凡」「どこか安心」という中庸の性格が保たれている。プリウスやヴィッツのような先鋭さがまったくないのは、立派としかいえない。

細かいところで目を引くのは、それとリアドア後部のラインだろう。リアホイールアーチと干渉しておらず、まっすぐに伸びている。このデザイン手法は新型セルシオでも見ることが出来るトヨタ独自のもの。マークIIもこうなりそうだ。  

ドラスティックな変貌ぶり以上にお見事と思わせるのが“軽量化”だ。各社は今、ボディ剛性、衝突安全性を向上させるのに余念がないわけだが、それに合わせてボディが重くなってしまうことが課題として残されている。一回り大きくなった新型のインプレッサやランサーセディアはその一例で、100kg近くも重くなっている。ところが今回のカローラは、ほとんど変わっていない。もちろん、ボディ剛性、衝突安全性を進化させての上でだ。さらに遮音対策も旧型以上に図られている。バンパーとフェンダーの隙間が1mmという、驚異の組立精度も見逃せないポイントだ。

デザイン、サイズを変えるのは、その気さえあれば誰でもやれることだが、性能向上を果たした上での軽量化というのは、生産ラインを根本的に変えないとやれないこと。豊かな資金力を持つトヨタならではの仕上がりといえよう。

ここまでやるか! 大衆車とは思えない質感の高さはプアマンズ?プログレ

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室内で圧倒されるのが質感の高さだ。ナビは最上部、小物入れ全てフタ付き。面一化を図った絶壁調のインパネが、さらに重厚感を加味している。その質感の高さをイヤというほど見せつけるのが、ラグゼール(LUXEL)シリーズだ。オプティトロンメーター、木目調パネル、キラキラ輝くATプレート…、たぶんその素材には極端なコストはかけられていないはずだが、入念にチェックしても、見える範囲では文句の付けようがない。他社なら立派に高級車として通じる仕上がり。グローブボックスのダンパーなどはXグレードでもついている。後席のウインドウが全開できるのも泣かせるところだ。

質感だけでなく居住空間もクラスを越えたもの。特に後席の広さはクラウン並といっても差しつかえないのでは。180cmの4人乗りが確かに無理なくできる。

細かなところで気になったのは、運転席のシートリフレクター。シート全体ではなく、座面部分しか調整できない。インパネ上面が高いので、車両感覚をつかみやすくしようとシート高を高くすると体が前のめりになってしまうのだ。結局、適切なポジションは一点に限られてしまう。

一方、スポーツ色の濃いフィルダー・エアロツアラーの室内は黒色で統一され、どこかゴルフⅣにも通じるもの。センタークラスターにはメタル調パネルが採用されており、中庸的なプロポーションながら、中身は走り屋系といったところ。座り心地も、セダンより硬めだ。

居住空間は基本的にセダン同様、余裕たっぷり。ただ、居住空間の長さはセダンより15mm短い1900mmとなっている。このため後席の膝元空間はセダンよりわずか少ない。その代わりといってはなんだが、シートアレンジはワゴンならではの多彩なもの。助手席の背もたれを水平に倒せるシートバックテーブル機構が、トヨタ車初として採用されたのも見逃せない点だ。

基本性能&ドライブフィール

ホットモデルはセリカと同じ190馬力エンジン+6速MTを搭載

搭載されるエンジンは2種類の1.8リットル(190馬力/18.4kgmと136馬力/17.4kgm)、1.5リットル(110馬力/14.6kgm)、1.3リットル(88馬力/12.5kgm)のガソリン仕様と、2.2リットル(79馬力/15.0kgm)のディーゼル仕様、全5種類が用意される。ガソリン仕様は全てVVT-i化されたもので、すでにヴィッツやbB、セリカなどに搭載されているもの。ミッションは4速AT、5速MT、6速MTの3種類。190馬力の1.8リットルエンジン+6速MTというセリカと同じパワートレーンは、フィルダーZエアロツアラー専用となる。なお、6速MTというのは旧型にも存在した。

メカ関係で注目すべきは1.3l、1.5リットル車の2WDに採用される電動パワーステアリングの存在だろう。プリウスを除く量産車への採用は、トヨタにとってこれが初の試みとなる。狙いは、車重の軽量化。そして燃費の向上だ。

フィルダーは軟弱スポーティーだが、とりあえず花マル印

まず試乗したのはフィルダーの「S」(1.8l+4AT・FF車)。若者を狙っただけに足回りは若干硬め。パワステ(1.8だから一般的な油圧式)も適度な重みが加わっている。操作系は好感触。でも、応答性はそれほどよくなく、加速も1.8リットルとしては平均的なレベル。表面的なところだけ、スポーティーにしました、といった印象だ。それが最も表れるのが、高速コーナーでハンドルを切ったとき。荷室分だけボディが重くなったからなのか、リアだけが大きくグネッとしてしまい、前後バランスが乱れる。もちろん、一般的な走りにおいて致命的な問題があるというわけでないが、13O馬力ソコソコでこれだと、190馬力モデルが不安になってしまう。また、遮音対策はばっちり(確かに静か)のはずなのに、それゆえやたらガサガサしたエンジン音だけが耳に付くところもいただけないところ。ただ、スポーティーなイメージと実際の乗り味に統一性がないだけで、スポーティーと、スポーティーと気張っていなければ、十分評価できるし、特に欠点らしい欠点はない。

快適性は確かに上がったが、基本的な性格はやはりカローラのまま

次に試乗したのは本命のセダンの「X」(1.5l+4AT・FF車)。こちらの印象はガラリと変わる。実際には1.8リットルよりも非力なのだが、そんな気配を全く感じさせない余裕ある加速をみせる。アクセルを軽く踏むだけで、過不足のない加速を得ることができ、エンジン音もうるさくならない。非常に扱いやすく、とても1.5リットルとは思えない質の高い走りを創り出している。実用的エンジンのお手本といってもいいほどだ。1.8リットルの恩恵は、おそらく高速域からの加速ぐらいだろう。そのために1.5リットルよりも20~30万円も余分に出すのは、あまり賢明ではない。やはり1.5リットルこそがカローラの本命だといえる。

一方、操作系のフィーリングや乗り心地は、良くも悪くもカローラのままだ。手応えの薄い軽いパワステに、タイヤが地に着いていないようなソフトな乗り心地。電動パワステは負荷がかかると重みを増していき、初モノとしては良くできていると思うが、それでも運転している実感にやや乏しい。まぁ、このような乗り心地はカローラの本来の性格を考えれば、納得できるところ。ターゲットとなる40、50歳代のユーザー層も、それを望んでいるはずだ。

ここがイイ

パッケージングはもはや完璧だ。非の打ち所のないサイズ対居住空間を創り出している。次のモデルチェンジをどうするのか、と心配になるほど。また全車にリモコンキーがあるのも素晴らしい。

シートは柔らかふんわり系で、特にフィールダーSはよかった。最近のトヨタ車のシートは、欧州車(フランス車)をすごく意識している。かなり近づいたと言っていい。加速性能はほどほどだが、高速巡航性能は向上は目覚しい。1.5で150km巡航が、1.8なら170km巡航が楽々可能。全体の質感はもはやクラスをはるかに超えてしまって、誰も追いつけないだろう。

ここがダメ

デザインはやっぱりカローラ。欧州案のデザインスケッチを日本でダサく描き直したのではないか。トヨタのデザイン力ならもうちょっとかっこよく仕上げられたと思うが、意図的にダサくしたように思えてならない。むろんその結果として、日本を始め世界中で今まで通りのカローラとして迎えられるのだが。しかしフィールダーがさらにダサく感じられるのは残念。こちらはもうすこしスタイリッシュにして欲しい。トヨタはワゴンのデザインはどうもうまくない。

総合評価

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あまりの品質感に目がくらんだ。マジで買おうかと思ったくらい。ただ、1.8クラスと1.5クラスではやはりかなり差があり、1.5もいいにはいいが、1.8の良さが凄すぎ、という事実に現実に引き戻された。1.8が買えるくらいのお金を出せば、これくらいでも当然かもしれない。とはいえクラスで比較すれば新型シビックフェリオとの差は歴然としている。好みは別として、作りで言えばダントツでカローラが優位に立つ。

新型カローラはいいものをもっと安く、というどこかのフレーズを実践したクルマで、いよいよクルマがユニクロの洋服みたいなものになってきたということの証だ。毎日着る安くて良質な洋服、毎日乗る安くて高級なクルマ。その結果、皆が同じ様な服やクルマをきて、同じ様な娯楽や情報を仕入れる社会、大量に作られる安くて良質な品物に囲まれた快適な生活が実現される。その良し悪しは別として、カローラに乗るというのはそういうことを受け入れるということだろう。カローラは絶対的な価値としてパーフェクトに近い商品だが、それを買うか買わないかは個人の趣味嗜好の問題だ。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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