キャラクター&開発コンセプト
名実ともにベストセラーの座から降りる
初代カローラは'66年デビュー。9代目となる現行カローラ・セダンは2000年8月に発売された。テーマは「ニューセンチュリーバリュー」。デザインやパッケージングを一新、変わらなかったのは名前だけ、とさえ言われた。
そのカローラが33年間保持してきた国内販売台数1位の座を、今年ホンダ・フィットが奪うのは現時点でほぼ間違いない状況(1~11月までの実績でフィット:22万8692台。カローラ:20万4585台。その差、約2万4000台)。そもそも、カローラの台数にはワゴンのフィールダー、ハッチバックのランクス、ミニバンのスパシオが含まれており、実質的なタイトルはすでに失っていた、というのが事実だ。
発売以来初の大きなマイチェン
とは言え、国内シェアナンバー1のトヨタが車種別販売台数1位という重要なタイトルを簡単に明け渡すわけにはいかない。デビューから2年経った今年9月には、テコ入れも兼ねてマイナーチェンジ。内容は内外装の質感向上&デザイン変更、環境性能のアップ、安全装備の充実、操縦性や静粛性向上など多岐にわたる。装備充実でお買い得な特別仕様車も追加。ナンバー1死守のため、販促活動も積極的に行われたようだ。
目標台数は越えたがフィットには届かない
マイチェン時に掲げられた目標台数はカローラ全体で1万3000台/月。内訳はセダン6000台(46%)、フィールダー5000台(38%)、ランクス2000台(15%)。ちなみにデビュー時の目標はカローラ8000台、フィールダー3500台(ランクスは未発売)だったので、フィールダーの割合がこの2年で増えたことになる。
で、今年('02年)の実績はと言うと、1万9000台弱/月(1月~11月までの平均)。目標は大きくクリアしたが、2万台/月をコンスタントに売るホンダ・フィットには全く歯が立たなかった。しかもフィットは文句なしに単一モデル。12月末に発売されたフィット・アリアも販売台数には含まれない。セダンは実売が1/3ほどとみられるから、カローラセダンのみの実績はおそらく7000台前後だろう。3位以下には大きな差がついており、当分の間フィットの独走が続きそうだ。
価格帯&グレード展開
マイチェン後も基本ラインナップは変わらず
カローラは現在、セダン、フィールダー、スパシオ、ランクスの4車種。ちなみにランクスの兄弟車アレックスは別扱いとなり、販売台数も区別される。
今回、シリーズ全体でマイチェンされたが、ラインナップに大きな変更はない。セダンに限って言えば、エンジンは1.3、1.5、1.8リッターのガソリンと2.2リッターディーゼルの4種類。グレードは標準仕様のX(123.3~148.8万円)、中核のG(145.3~165.8万円)、豪華仕様のラグゼール(179.8~200.3万円)の3種類。価格は若干引き下げられた。一部を除き、20万円アップでフルタイム4WDとなる。
ラグゼールにはHIDヘッドランプなどを追加
セダンの最上級車ラグゼールには今回からHIDヘッドランプや盗難防止用のイモビライザー、雨天感知式ワイパーを標準装備。'01年10月に追加された本革シート仕様の“プレミアム・エディション”(188.8万円)はレザー好きのお父さんにアピールする。
セダンには2つの特別仕様車も
実際の販売面でモノを言うのは特別仕様車の投入だ。XがベースのX“リミテッド”(120.3~132.8万円)は電動同色ミラーや木目調パネル(シフトレバー部分)、室内側メッキドアハンドルなどを追加。「ナビ・スペシャル」(6.1万円アップ)は5.8インチモニター付オーディオ一体型ナビを装備する。
G“リミテッド”(144.3~164.8万円)は木目調パネルなどを追加。同「ナビ・スペシャル」は12万円アップで上記ナビを装備。
直接のライバルはもはやサニーではなく、サニーベースながらより上級なブルーバード・シルフィ(154.9~206.2万円)、同じトヨタのプレミオ/アリオン(149.5~216万円)といったあたりか。もちろん、4ドアハッチバックのフィットやイスト、さらにはVW・ゴルフが同じ土俵で比べられても今の時代ならおかしくない。
パッケージング&スタイル
パッケージングは優れるがセダン本来の古典的な印象はない
カローラ・セダンのサイズは全長4365×全幅1695×全高1470mm。ラグゼールのみ9月のマイチェンでバンパーが大型化、全長が25mmアップして4390mmとなった。先代から劇的に長くなったホイールベースは2600mm。Cd値は0.29と優秀。車重も1020~1190kg(4WD含む)と同クラスではかなり軽い。
プリウス似のスタイルはパッケージングに優れているし、発表から2年経った今もまったく古びない。しかし、セダンで重要な古典的美しさやステイタス感といった点で弱いのは残念。次期カローラ(という名前かどうかは分からないが)の課題はこのあたりだろう。
目に見えるマイチェンはわずか
今回、フロントグリル、ヘッドランプのデザインが変更されたが、その変化はかなり微妙。リアコンビランプは内側のアルミ蒸着処理などで高級感が増したのは一見して分かるが、形状自体は大差なし。
室内は文字盤自体が光る「シルエットメーター」を廃して、代わりにブルーグラデーションメーターを採用(Gグレード)。数字を大きくして読みやすくしたという。ラグゼールは従来通り合皮巻きステアリング&シフトノブ、木目調パネル、メッキ調シフトゲート、オプティトロンメーターを装備。
特にラグゼールの室内の質感は圧倒的。もはや同クラスに敵はいない。が、ここまでやると本物の高級感の無さが気になり始める。外装同様、室内においてもデザイン面での個性の無さがカローラの課題か。「グローバルスタンダード」が要求されるカローラのつらいところだ。
基本性能&ドライブフィール
クラスダントツの「口当たりの良さ」
今回、試乗したラグゼール(200.3万円)はカローラの最高級車種。エンジンはトヨタ車おなじみの1ZZ-FE(1.8リッター4気筒)、4速ATとなる。
いつものごとく走り出しはトヨタ車らしく素晴らしく滑らか。「ばっちり裏漉ししときました!」と言う感じで、タイヤが転がる時の柔らかさ、操作系の滑らかさには毎回驚く。パワーステアリングの感じもいい。新型デビュー時は基本的に1.3と1.5リッターが電動、1.8は油圧だったのでこれもてっきり油圧と思ったが、後で確認すると1.8も電動化していた。これはもちろん燃費性能を上げるため。その他諸々で、ラグゼールの10・15モード燃費は2年前の15.0km/Lから16.0km/Lにアップ。
ちなみに環境基準をクリアしたことで、ラグゼールも1.3/1.5リッターと同じく自動車取得税や自動車税の軽減措置が受けられるようになった(平成15年3月末までの登録車両に限る)。
加速は十分。静粛性はもう少し
132ps/6000rpm、17.3kgm/4200rpmのエンジンは、このクラスとしては軽い1110kgのボディを低速から軽々引っ張る。レッドゾーンは6400回転から。上まできれいに回るが、基本的には低中速トルクや静粛性を重視したチューニング。回すと意外にエンジン音が聞こえるが、低回転では静かだ。ただ、アイドリング時のノイズや振動、加速時のエンジン音は高級車風の室内にいるとやや大き目に感じてしまう。4気筒だから仕方ないとも言えるが。
乗り心地も基本的にはソフトだが、200万円超のセダンと考えると重厚感とは言わないまでも、もう少し「落ち着き」みたいなものが欲しくなる。カローラ本来の性格や車重を考えれば見当違いの要望かもしれない。
ハンドリングに驚く
印象的だったのは操縦安定性。いつものワインディングを期待しないで走り始めたが、まったく破綻なく走り切ったのには驚いた。オプション設定のVSC(リアディスクブレーキとセット)の作動はかなり早く、ハイペースを維持するとほとんどすべてのコーナーで「ピピピピ…」と警告音が鳴る。しかし挙動はまったく安定していて滑らか。コーナリングスピード自体は高くないが、アンダーもオーバーも小さく、操縦していて気持ちがいい。もちろん安全性も高い。実用車の鑑のような操縦性だ。この印象は高速走行でも同じ。まったく何も不満がない。実に良くできた走りだ。
ここがイイ
全く何も悪いところがない、というところがいい。またVSCがわずか9万円のオプションというのがすばらしい。現在この価格なら、そう遠くない時期に全車標準装備になるだろう。カローラのユーザーは走りに無関心な人が多いと思うが、そういう人だと今の性能のカローラでは意図せず「暴走」しかねない。それを早めに押さえるVSCは効果的だ。
ここがダメ
試乗車で言えば、背伸びしていること。これだけの数を売るには様々な人に好まれるためにオーバーデコレーションモデルも必要だとは思うが、カローラの本質からはかなり離れて、妙に背伸びした「豪華仕様」になっている。試乗車の価格はほぼフルオプション状態で225万5000円もする。
総合評価
約30年前、30歳の頃に必死でカローラを買ったお父さんは、すでに60歳を越えてしまった。その中でも出世したお父さんはきっとセルシオに乗っているだろうし、地道に勤め上げたお父さんは、今までに4回ほど代替えして今もカローラに乗っているだろう。そしてここにきて、セルシオのお父さんもカローラのお父さんも、快適性でさほど変わらないクルマに乗っていることになった。そこにあるのは高級車と大衆車というヒエラルキーの差だけ。30年たって日本はそういう社会になってしまったのだ。
トヨタ車にもヒエラルキーがあるから、200万円を超える高級カローラも、アイドリング時に少し振動が感じられて、やっぱりカローラだ、という仕上がりになっている。車幅は小型車枠ほぼ一杯で室内は広いし、これで静粛性や高級な乗り心地を徹底追求してしまったら、マークⅡはますます売れなくなってしまう。そういうジレンマの中で最良の仕上がりになっているわけだ。今回のマイチェンにより仕上がりはさらに良くなり、「普通のセダン」としては100点満点。80点主義ではなく、もはや100点である。
古典的な「クルマ」としてカローラは非の打ち所がない。バックモニターも付いた試乗車のナビエディションなどは、インテリジェント性能も全く不満なし。しかし高級なものと限りなく低価格なものしか売れない最近の消費動向の中で、本質のいい物(コストに対するバリューのある物)は残念ながら売れにくい。その意味でカローラは今もがんばっている方と言えるだろう。
1年ほど前、普通のセダンが欲しいというある年輩の人に、自信を持ってカローラをすすめたことがある。しかしその人は買わなかった。カローラじゃイヤだそうである。結局シビックフェリオを買った(苦笑)。このあたりがカローラにとってはちょっと難しい問題だったりする。どうやらカローラという名前にはすでに36年の手垢がついているようだ。コロナ同様、国内では「リセット」をする時期が来ていると思う。まあ好調な海外ではカローラの名のままでかまわないだろうが。このあたりにも、今回のカローラ首位転落のキーがあるのでは。
カローラが売れているのは、前述のように4車種を合体計算しているからで、セダンだと営業車など法人需要もそこそこある。クルマをよく知らない人にスパシオやランクスがカローラだと言っても納得しないはず。いわゆるカローラはとっくにトップではなかったのだ。しかしこれでトヨタとしては肩の荷が下りたはず。いつも一番をとらなくてはならない優等生は面白みがないが、そうでないならいろいろ自由にやれるはずだ。次期カローラは「ニューセンチュリーバリュー」ではなく、「ニューセンチュリーヴィークル」であることを期待したい。
試乗車スペック
トヨタ カローラ LUXEL(ラグゼール)"Navi Edition"(2WD・4AT)
●形式:UA-ZZE122-AEPGK●全長4390mm×全幅1695mm×全高1470mm●ホイールベース:2600mm●車重:1110kg(F:710+R:400)●エンジン型式:1ZZ-FE●1794cc・DOHC直列4気筒横置●132PS/6000rpm、17.3kgm/4200rpm●10・15モード燃費:16.0km/L●タイヤ:185/70R14(トーヨー・NP-01)●価格:200.3万円(試乗車:225.5万円 ※オプション:VSC 9万円。アルミホイール 5万円。バックガイドモニター 4.7万円。サイドエアバッグ 3.5万円。マイカ塗装 3万円)
公式サイトhttp://toyota.jp
