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シボレー コルベット C6新車試乗記(第360回)

Chevrolet Corvette(C6)

(6リッター・4AT・715万円)

  

2005年04月02日

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キャラクター&開発コンセプト

C3の精神を継ぐ第6世代

2004 年1月のデトロイトでデビューし、05年2月に日本でも発売されたのが、今回の第6世代「C6」コルベットだ。「パワー、パッション(情熱)、プリシジョン(精密さ)」をコンセプトに、基本的には先代C5を大リファインしたものだが、42年振りにヘッドライトをリトラクタブル(開閉式)から固定式に変更したほか、ボディは全面的にシェイプアップされ、栄光のC3を彷彿とさせるスタイリングとなった。エンジンは従来の5.7リッター「LS1」をバージョンアップした6.0 リッター「LS2」。見た目もパワーもファンの期待に応えるモデルだ。

米国が誇るハイパワースポーツカー


歴代のコルベット。左中央がC1(後期型)、左奧がC2、右端がC3のいわゆるアイアンバンパーモデル、一番奥がC4、そして手前がC5
(photo)ゼネラルモーターズ・アジア・パシフィック・ジャパン

コルベットは米国を代表する、あるいは唯一と言っていい量産「ハイパワー」リアルスポーツカーである。1953年に出た初代「C1」はテールフィン全盛期にあって、貴重な国産スポーツカーとして進化。1968年からの第3世代「C3」ではコークボトルラインのスタイルや強力なV8パワーで黄金期を迎えた。

一転、1970年代の排ガス規制以降は苦しい時代が続いたが、1997年の第5世代ではリアルスポーツカー路線に回帰。欧州および日本製スポーツカーに負けじと、コルベット(小型護衛艦を指す)は反撃を始めている。

価格帯&グレード展開

クーペなら700万円前後

日本仕様は3モデル。クーペの6MT(698万円)、クーペの4AT(715万円)、そしてコンバーチブルの4AT(835万円)。いずれも左ハンドルのみ。

本国ではオプションのヘッドアップ・ディスプレイ、DVDナビ、「Z51」パッケージオプションに含まれる高性能ブレーキシステムなどが標準装備で、お買い得感がかなり強い。そう思う人は多いらしく、今年の日本割り当て分300台はすでに完売。米国での人気も高く、増産体制に入るという。

史上最強の7リッターV8「Z06」も

今年初めのデトロイトショーでは、C6の高性能版となる「Z06」が発表された。ポルシェ911で言えばGT3に相当するロードゴーイングレーサーで、史上最強の市販コルベットと噂される。1930mmのワイドボディに、排気量7011cc、レーシングカーと同じドライサンプ潤滑を採用する手組みのV8 エンジン「LS7」(500ps)を搭載する。日本導入は未定だが、そうとう話題を振りまくモデルなのは間違いない。

パッケージング&スタイル

C5をシェイプアップ

エイのように平べったいボディの寸法(カッコ内は先代比)は、全長4455mm(-100)×全幅1860mm(-10)×全高1250mm(-20)。先代に比べてマッチョというよりは、引き締まったスタイルになった。スーパースポーツで全幅1900mm台は珍しくないので、これもてっきりそうかと思ったが、意外にも幅はセルシオ(1830mm)あたりと大差なし。ホイールサイズはフロント18インチ、リア19インチの異径。

固定ヘッドライトがちょっとフェラーリ風だが、GMが謳うようにスタイリングは名車C3コルベットの現代版だ。先代コルベットが出た97年、アメリカでは「RX-7みたい」「いやNSXみたいだ」などと賛否両論があったが、このザインに文句をいうファンは少ないだろう。スティングレイのサブネームが復活してもおかしくない。Cd値は先代から0.1向上して0.28。

鋼鉄のフレーム+FRPボディ

ボディ外皮は伝統通りFRP(強化プラスチック)。シャシーはC5の発展型となる高剛性ハイドロフォーム成型の鋼鉄製バックボーンフレームを大枠として、そこにアルミニウム合金フレームや複合素材を追加。ルーフは脱着式のため、鋼鉄フレーム製のサイドシルと閉断面構造のセンタートンネルがフロアをガッチリ支える。基本的にキャデラックのオープン2シーターであるXLRとストラクチャーを共有する。

ホイールベースは2685mm。ヘビー級の変速機がリアにあるため(いわゆるトランス・アクスル)、重量配分はフロント:770kg、リア730kgと良好。さらにドライバーと70リッター近い燃料が加わるので、後輪軸重が欲しいFR車には理想的。しかも重心位置がきわめて低い。トランスアクスルの採用、それがパッケージングの要だ。

車幅がつかめて、視界もいい

内装品質は先代から格段に向上。一般的な評価では特に高くないが、購入をためらうほど低くもない。モード切替スイッチで、平均燃費、瞬間燃費、エンジン油温、変速機油温などが呼び出せる。さらにヘッドアップディスプレイが、エンジン回転数、速度のほか、横Gの値まで表示。ドリンクホルダーやスイッチ類がすべてあるべき位置にあって使いやすい。

テレスコ(伸縮)付きステアリング、電動シートのおかげで、ポジションもほぼ完璧に決まる。盛り上がったフェンダーの峰がポルシェ911並みに見えるので車幅はつかみやすいし、視界もいい。真後ろと右後方(の下の方)だけ見にくいが、スポーツカーとしては上出来だ。

トランスアクスルで、足もとは抜群に広い。タイヤハウスの干渉もなし。とは言え、多少はエンジンとセンタートンネルが浸食するので、それを避けて乗員を両側いっぱいに寄せて座らせる。おかげで左ハンドル用の高速チケットは取りやすい。

広くて浅いトランク

巨大なガラスハッチの下にある荷室は天地こそ浅いが、ゴルフバック2個、あるいは車輪を外した自転車が積めそうなほど広い。ガラスハッチは音振や重量で不利なはずだが、トランクスペース、視界、空力を考えて残したのだろう。

荷室床下には、ドドーンと巨大な「ハイドラマチック4L65E」自動変速機、大容量サイレンサーが2個、ダブルウイッシュボーンのアームとコルベット伝統の「横置きリーフスプリング」、それに支えられた285/35ZR19という巨大なリアタイヤが2本、さらに大型トラックの後ろに付いてるような追突対策の鋼鉄製フレームで一杯だ。ランフラットタイヤなのでスペアタイヤは無し。伸び伸びとしたした設計で無理がない。

基本性能&ドライブフィール

パワーで互角、トルクは1.5倍

試乗車はクーペの4AT。キーを携帯して近付くだけでアンロックするのは珍しくないが、ドアノブのくぼみに指をかけるとノブがない。くぼみの裏のスイッチに触れるとカシャンと音がしてドアが半開きする。鍵穴がないのでセキュリティ面でも有効だ。

 

プッシュボタンを押すと、ズバンと6.0リッターV型8気筒OHV「LS2」エンジン(404ps、55.6kgm)が始動する。ポルシェ997のカレラ S(355ps、40.8kgm)、フェラーリ360モデナ(400ps、38.0kgm)と比べると、パワーで互角、トルクで1.5倍。1500kgの車重はアルミボディの360モデナF1の50kg増し、6気筒のカレラS(AT車)とまったく同じだ。

4000回転以上で爆発

試乗車は4ATで、運転はいたってイージー。アイドリング時のV8サウンドはドロドロではなく、ドドドド。静かとは言わないが、音質がマイルドで疲れない。そのまま2000回転まででドドドドと街中を何事もなく流せる。少しアクセルを踏み込むとドドドドドの鼓動が速くなり、お望み通りに加速できる。大排気量のオートバイみたいだ。

しかも、このエンジンの本領はもっと高回転域にあり、トラクションコントロールを切ってDモードのまま停止状態でアクセル全開にしてもホイールスピンはしない。ドーンと平然とスタートを切るが、最大トルクを出す4000回転台では285/35ZR19のランフラットタイヤを一瞬キュキュンと鳴かせ、あっという間に吹けきって2速にシフトアップ。間髪を入れず最高出力404psを出す6000回転(160km/hくらい)まで抵抗なくズバンと吹け上がる。日本の路上では2速ホールドで本当に用が足りる。

剛性感は考え方次第

洗濯板のような舗装だとバタバタするが、乗り心地は基本的に悪くない。段差を乗り越える時はFRPボディがキシギシいうが、これも構造上のもので剛性には関係ないと考えたいところ。ポルシェのようなパキッとしたソリッド感はまったくなく、良くも悪くも緊張感とか精巧さはない。ポルシェに詳しいデイズのあるスタッフは、大いにこのコルベットを気に入りつつ「このユルさが許せるかどうかが、分かれ目だね」。ハンドリングはけっこうシャープだが、重いのに精密感のないパワステは街乗りでも気になる部分。熟成を期待したい。

磁気粘性フルードを使った減衰力調整システム「マグネティック・セレクティブ・ライド・コントロール」は「TOUR」と「SPORT」が選べるが、変化はかなり微妙。「SPORT」だと多少揺すられるので、試乗後半はほとんど「TOUR」で通した。

最高速は300km/h以上

高速道路はコルベットにとって歩くようなもの。100km/h時のエンジン回転数は4速トップギアで1600回転あたり。エンジン音は小さく、風切り音もロードノイズも低く、燃費も良さそうだ。そこからアクセルを踏めば素速く2速へキックダウンして怒濤のワープ。3速のまま250km/h以上出るはずだが、ランフラットタイヤ(EMT=エクステンディッド・モビリティ・タイヤ)のせいか接地感は薄い。最高速はメーカー発表値で300km/h以上だ。

ここがイイ

カッコ。超強力なトルク。良い乗り心地。購入をためらわせるものが、ほとんどない実用性と完成度。圧倒的なお買い得感。けっこう実用的なハイテク装備。そのまま乗って良し、ドレスアップして良し、チューニングして良し。コルベットには歴史や伝説もいっぱいあって、かなりマニアック。気に入れば趣味のクルマとしてベストバイ。

デュアルモード・ヘッドアップディスプレイは、視点の奥の方に画像を表示し、あたかも風景の中に浮かび上がっているように見え、表示モードも好みで2種類選べて、とてもゲームっぽくて楽しい。横Gセンサーもついているのだが、実際にはほとんど無用の長物だし、画像がちょっとゆがんでいたりして、トイザラスのアメリカン玩具(実際には中国製だったりするが)に通じるチープさがこれまた楽しい。

ここがダメ

今時たった4速のAT。スポーツモードもマニュアルモードもない。初代コルベットは2速ATだったというが…。AT以外の部分は他のスポーツカーと同等か、あるいは独自の個性があるだけにここだけが惜しいところ。6速ATが付くという話があるが、せめて5速ATが欲しい。

パワステが曖昧、超高速域での直進性や接地感の薄さ、バタつくグッドイヤーのランフラット、ヘッドアップディスプレイの像がゆがむなどなど、ハードウエアのこまかい欠点はいくつもあるが、大きなものはない。ただ、ナビに関してはどこのメーカー製なのか不明だが、地図画面(道路の線)があまりに見にくい。これはちょっと問題だ。

総合評価

米ロック歌手プリンスがヒット曲「リトル・レッド・コルベット」を出したのが1982年、C3が生産中止された年で、翌年はコルベットがない空白の一年だった。そこで歌われるリトル・レッド・コルベットは女の子のように擬人化されているものの、明らかにコルベットのこと。アメリカ人にとっては初のスポーツカー「コルベット」は愛すべき特別な存在のようだ。初代C1でも最終の62年にはすでに360馬力のV8モデルがあったわけで、となればC6の404馬力はそう驚くべき数値でもない。実際、日本の路上を走っている限り、パワー感、トルク感は数値ほど感じられず、実に扱いやすく、日常的にも乗りやすいクルマだ。

そして驚かされるのはその回頭性。アメ車に対する固定概念をひっくり返される俊敏さは、大きめのボディを全く感じさせない。ワインディングが楽しいアメ車というのは初めての体験だった。パワーステアリングの重さや曖昧さは気になるものの、それもアメ車らしさとして許せる範囲。内装も気にならない程度に上質になっているが、依然アメ車らしい雑さがある。それも含めて、アメ車の味と好意的に思える魅力が C6にはあふれている。

C6にはハーレーに通じる楽しさや魅力がある。世のハーレー好きは600ccを超えるシリンダーの中をピストンがドコドコと動く時の気持ちよさを知っている。1気筒あたり746ccもあるC6のV8も、基本的には似たような感じ。 OHVのV8、ダブルウィッシュボーンでありながらいまだ「板バネ」の足といった伝統の味を生かしつつ、現代風にリニューアルしてあるのはまさにハーレーと同じ世界。ポルシェのフラット6にも通じるアイデンティティの強固さは、マスプロカー全盛の昨今、貴重だ。

ただしこの世界は趣味のもの。弱小メーカーポルシェには意味のあるアイデンティティも、世界最大メーカーGMにとってはビジネス的にさほど旨味はないだろう。トヨタにもMR-Sといういかにもトヨタらしいスポーツカーがあるが、これもビジネスとしてはいまやオマケのようなもの。儲かっているトヨタならそれでも大丈夫だが、厳しい経営状況の大GMに、コルベットはさほど貢献することはないと思われる。

とはいえ、今年日本に割り当てられた300台はすっかり売約済み。この出来ならもっと、もっと売れると思うので、アメ車らしく大増産して供給して欲しいところ。アメ車は一般に世界へ通用しにくいが、コルベットC6は世界中に通用する性能と完成度で、味があって絶対的に安い。ポルシェボクスター(あるいは間もなく登場するケイマン)あたりと価格では近いが、目立ち度では圧倒的に上だ。

なおweb上で素晴らしいコルベットサイトを発見したので以下をご参照願いたい。
http://www.harrys-racing.com

また、ディープなアメリカンV8の歴史については、こちらをご参考に。
http://allabout.co.jp/auto/americancar/closeup/CU20031204A/index.htm

試乗車スペック
シボレー コルベット C6
(6リッター・4AT・715万円)

●形式:GH-X245●全長4455mm×全幅1860mm×全高1250mm●ホイールベース:2685mm●車重(車検証記載値):1500kg (F:770+R:730)●乗車定員:2名●エンジン型式:5G●5967cc・V型8気筒OHV・縦置●404ps(297kW)/6000rpm、55.6kgm (546Nm)/4400rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/68L●10・15モード燃費:-km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:前245/40ZR18/後285/35ZR19(GOODYEAR EAGLE F1 EMT)●価格:715万円(試乗車:715万円 ※オプション:なし)●試乗距離:約160km

公式サイト http://www.gm-corvette.jp/index.html

 
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