Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > シボレー コルベット Z06

シボレー コルベット Z06新車試乗記(第441回)

Chevrolet Corvette Z06

(7.0L・6MT・966万円)

7011cc、500ps、64.9kg-m !
ケンタッキーのロデオマシン、
Z06(ズィーオーシックス)に試乗!

2006年11月24日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

「C6-R」のロードゴーイングレーサー

2005年2月に日本へ上陸した6代目コルベット「C6」。その高性能バージョンが翌年に登場した「Z06(ズィーオーシックス)」。V8ユニットをノーマルの6リッター「LS2」(404ps、55.6kg-m)から7リッター「LS7」(511ps、64.9kg-m )に換装し、鋼鉄製のフレームをアルミ製に変更して軽量化。ル・マン24時間やALMS(アメリカン・ル・マン・シリーズ)で活躍するレーシングモデル「コルベットC6.R」と並行して開発された、史上最強の市販コルベットになる。

「Z06」という名称は、2代目コルベット「C2」(1963~67年)にあった高性能モデルと同じ。ついでに言えば7リッター(427キュービックインチ)V8は、すでにこのC2で搭載されていた。

生産はボーリング・グリーン工場

最終組立を行なうのは、ケンタッキー州にあるボーリング・グリーン工場(Bowling Green plant)。1981年(第3世代の途中)からコルベットの生産を担い、「ホーム・オブ・ザ・コルベット」と呼ばれる、従業員数1200名の工場だが、生産設備は5代目コルベット(1997年)投入時にリニューアルされており、ボディ構造を共有するキャデラックXLR(2003年)も生産している。同工場は大量生産ではなく、高品質・高性能車だけを少量生産する全米きっての近代ファクトリーとのこと。日本で言えばさしずめシャープの亀山工場のような存在か。

同工場の年間生産台数はコルベットが3万5000台、キャデラックXLRが4000台。全パーツの約77%がアメリカ合衆国およびカナダ製という。

参考サイト:ボーリング・グリーン・アッセンブリー工場(英語)

価格帯&グレード展開

Z06は標準車の268万円高

今年(2006年)の11月15日に、日本向けコルベットの2007年モデルが発表されているが、変更点はごくわずか。具体的にはオーディオ用ステアリングスイッチの追加、ボディカラーの変更(「デイトナ サンセットオレンジ」廃止→「アトミック オレンジ」追加)といったところ。なお、通常モデルのAT車は発売初年度は4速だったが、06年からは6速化されている。今回試乗したZ06は2006年モデルだが、当ページで表記する価格は07年モデルのプライスリストに従った。

コルベット・クーペ(404ps・6MT)     698万円
コルベット・クーペ(404ps・6AT)     740万円
コルベット・コンバーチブル(404ps・6AT) 860万円
コルベット Z06(511ps・6MT)      966万円

パッケージング&スタイル

+4cmのタイヤを収める

一見、標準コルベットとそっくりの外観だが、前後フェンダーは大きく膨らみ、フロントバンパーやエアスクープ付きボンネットも実はZ06専用品になる。ボディサイズは、全長と全高に関してはノーマルとほぼ同じ。全幅だけ1935mm(+75)と超ワイドになった。それもそのはず、足元に収まる前後タイヤ(18/19インチの異径)の幅は、前輪が3cmアップの275/35、後輪が4cmアップの325/30。

6ポッドのチラリズム

一方、最高速300km/hオーバー楽勝のクルマなのに、子供っぽい空力パーツが無いのは好感が持てるところ。テールエンドに、控えめなスポイラーが付く程度だ。それに対してスポークの隙間からチラリとのぞくブレーキが圧巻。フロントにノーマル比30mmアップとなる355mm径ディスクローターと6ポッド・キャリパー。リアには同じく35mmアップの340mm径ディスク+4ポッドキャリパーを組み合わせる(ノーマルのキャリパーは前2ポッド/後1ポッド)。これがまた、全くこけおどしではなく、抜群の製動力を発揮する。

インテリア&ラゲッジスペース

快適性と実用性はそのまま

ノーマルとほぼ同じインテリア。Z06専用品は小径の3本スポークステアリング、320km/hスケールの速度計(ノーマルは300km/h)、7000回転からレッドの回転計(同 6500回転)といったところ。その他の装備はほとんど共通で、エンジン始動まで可能なスマートキー、電磁オープナー式のドア、DVDナビ、電動レザーシート、ヘッドアップディスプレイを備える。つまり実用性や快適性はまったく犠牲になっていない。

前後輪を外せばスポーツ自転車さえ入りそうなトランクもそのまま。ただしZ06専用のマグネシウム製ルーフは、ノーマル・クーペのようなリムーバブル・タイプ(脱着式)ではなく固定で、剛性アップと軽量化を図っている。

基本性能&ドライブフィール

Z06に乗る際の注意点

試乗前にスタッフから注意されたのは3点だ。1つ目は絶対にガス欠しないこと。2つ目はクルマを離れる際、必ずマニュアルのギアをリバースに入れること。3つ目がエンジン始動後、必ずギア位置を確認してクラッチをつなぐこと。

一つ目はフューエルポンプのブローを防ぐためで、電子制御噴射(インジェクション)なら国産車でも同様だが、特に高性能車なら常識の部類。あえて注意を受けたのは、やはりZ06のフューエルポンプが並みじゃないからか。リバースに入れるのは、そうしないとアクセサリー電源が入ったままでバッテリーが上がるから。これは、ウッカリ忘れてもクラクションが短く鳴って教えてくれる。3つめはギアを入れたままエンジンを始動し、ニュートラルだと思ってクラッチを唐突につなぐと、強力なトルクで数メートルは飛び出してしまうから。クラッチを踏まないとスターターが回らないので有り得るミスだ。パワーについて脅されなかったのは、言うまでもなく、ということだろう。

復活の「427」

そんな感じで早速ガソリンを入れたあと、そろそろと走り出す。クラッチはやや重めで、少々疲れ気味のLSDからジャダーも出ていたが(試乗車のオドメーターは2万kmを回っていた)、発進は容易でストールさせることはまずない。パワステは軽く、見切りは良く、小回りも効き(最小回転半径は6.1メートルだが)、アクセルにそっと触れている限りは、全くもって従順だ。

しかし多少なりともアクセルを踏み込むと、世界が変わる。511ps、64.9 kg-mを誇る427キュービックインチ、すなわち7011ccのオールアルミ製・V型8気筒・OHV「LS7」は、ミシガン州・ウィクサム(Wixom)のGMパフォーマンス・ビルド・センターで手組みされたもの。1Gを越える旋回・減速時でもオイルが偏らないドライサンプ潤滑システム、チタン製バルブ、同製コネクティングロッド、専用ハイカムなどなど、レーシングカー「C6.R」(こちらは600ps)譲りのスペックを誇る。

100km/hオーバーでホイールスピン

その加速は凄まじいの一言。なにしろパワーウエイトレシオは2.88kg/psだ。100km/hまで伸びる1速、2000~3000回転から視界がかすむほどの加速を開始するが、その先の4000回転あたりで加速がいったん穏やかになるのは、何とリアタイヤがホイールスピンを始めるから。TC(トラクションコントロール)はもちろんオンのままだ。ここで150km/hまでカバーする2速へシフトアップするが、パワーバンドに入ったところで、またもホイールスピンが始まる。アクセルを踏み直したわけでもなく、加速する過程でグリップを失ってしまう。本領発揮は3速、4速で、アクセルを踏み続ける限り落下してゆくように加速し続ける。その領域でも直進安定性に不安はなく、しかも信じられないほどブレーキが効く。制動時の姿勢も、まるでリアエンジン車のように安定しているのは驚きだ。

車重はたった1440kg

このZ06、極めてボディが軽い。V8を積むにも関わらず、車重はたった1440kgとノーマル・クーペ(1500kg)より軽い。実は標準モデルで鋼鉄製のハイドロフォームフレームは、Z06でアルミ製に変更。そのほか、エンジンを支えるクレードルはマグネシウム製、フロントフェンダーとキャビンフロアはカーボンファイバー製と徹底的に手が入っている。実際、運転中もフロントにV8が載っているのを忘れそうになる。

おかげでハンドリングも軽快だ。パワーは有り余るほどなのでオーバーステアの自由は完全保証だが、もっとイイのはスライドしながらでもクルマが前に進み、アクセルオフ時の収束も素直でコントローラブルなこと。パワーが4倍あるのを除けば、ユーノス・ロードスターみたい、と言ってもいい。Z06にマグネティック・ライド・コントロールは備わらないが、乗り心地も十分に快適だ。

燃費は意外に悪くない

最後に燃費について触れると、今回は2日間で280km余を走行して、車載燃費計の数字は4.9km/Lだった。意外と良好だったのは、要するにアクセルを踏み込む必要も、チャンスも、実際の路上ではほとんどないのが一因か。試しに通勤路(片道30km)で、無駄な加速を控えて走ったら、簡単に6.5km/L前後を維持できた。高速巡航でも大人しく走れば、10km/L台は難しいが7~8km/L台は可能という感触。ノーマル同様、このZ06もアメリカで燃費の悪いクルマに科せられる通称「ガスガズラー・タックス」の適用を免れているのがその証拠だ。ただしエンジン音はV8らしいドロドロッというゆったりした音ではなく、メカニカルノイズが混ざったレーシーなものなので、のんびり走るのは少々退屈だ。

ここがイイ

あり余るパワーこそが魅力という、理屈も、言い訳も、理論武装も必要ない、パワフルな説得力。アメ車らしい頑丈さから来る信頼感。エンジンルームもスカスカしていてプリミティブなのがいい。

直線ならすぐにホイールスピン、コーナーならスライドを始めてしまう結果、それ以上容易に飛ばせない。つまり、ある意味、後輪のトラクション不足がいろんな意味で、安全弁になっている。もしタイヤが100%グリップしてしまったら機械的なストレス(クラッチやドライブシャフト、デフなど)はそうとう大きいはずだし、ドライバーの精神的ストレスも大きくなるかもしれない。

カーナビやヘッドアップディスプレイなど装備もいろいろついているし、ハッチバックの荷室も広く、低回転でも走れるなど、実用性がかなり高いのもいい。それでいていかにもスポーツカーらしいカッコよさがあるのだから一挙両得。フェラーリやランボルギーニ、ポルシェ911ターボに匹敵するパワーが3ケタ万円で手に入るという、いかにもアメリカンなお買い得感も魅力だ。

ここがダメ

あえてダメは無し、と言いたいクルマだが、ポルシェなどと公平に評価すれば、やはりもう少しシャキッとしたボディ全体の一体感が欲しいし、サスペンションももう少し煮詰めたい。エンジンの回り方は標準モデルに比べるとV8・OHVらしい大らかなフィーリングは薄まっている。

総合評価

素のコルベットもアメ車らしからぬハンドリングを備えた、相当に楽しい「スポーツカー」だったが、Z06はそれを遙かに凌駕するムチャクチャ楽しい「スーパーカー」だった。低回転ではV8らしいたっぷりしたトルクで乗りやすく、そこから踏んでいくとドドドドグォーンとトルクが爆発して凄まじい加速へ移る。欧州のスポーツカーのようにシューンと加速するのでなく、あくまでトルクフルなのが独自で、まさにアメ車的。官能的かはともかく、8個のピストンがそれぞれ1リッター近いシリンダー容積の中で動いているという、エンジンの鼓動がちゃんと感じられて、なんだかうれしくなってしまう。

180㎞/hで2000回転ちょっと、というのだから、ポルシェターボなどと同様の世界がその先に待っているわけだ。それゆえ、普通に出せる速度であれば高速コーナーでの安定性も高く、直進性もしっかりしてる。ワンダリングも感じられず、高速安定性はノーマルのポルシェ997あたりよりいいと感じるくらい。ワインディングでも重めのパワステ、重めのクラッチペダル、力で押し込む感じのシフト(やや5速と6速のゲートが甘い)、大パワーのエンジンなどとの体力勝負で、しっかり汗がかける。ヒール&トゥはしやすいのだが、とにかく欧州車のようにスマートに乗れず、運転する方も力でねじ伏せる感じ、というのは荒馬乗りの伝統か。コーナーで鞭を入れると簡単にケツを振るものの、騎手を振り落とすようなバカ馬ではないから安心だ。

そしてこんな大柄なクルマでも、小柄な人がちゃんとポジションを決められるのがいい。ナビも見やすく、乗り心地も街乗り可。トロトロ走るのもけっこう得手で、500馬力を意識せず日常的に使えてしまうスーパーカーだ。ただし路面の段差でノーズ下のスポイラーはよく擦ってしまうが。

ポルシェにしろフェラーリにしろ、独自の世界を持っているスーパーカーだが、Z06も見事に自分の世界を持っている。それはアメ車のスポーツモデルとして究極の姿だ。ハーレーのVツインを横にして4つ並べたらV8になる?わけだが、このエンジンはそうやって作ったんじゃないかと思えるほど伝統の味を残しつつ、現代の最高性能レベルまで高めてある。エンジンがドコドコ回るのは他のどこにもないアメリカンなフィーリングで、乗ったことはないが、ハーレーエンジンベースのスポーツバイク「ビューエル」もこんなフィーリングなのだろうかと思ってしまう。ポルシェの水平対向6気筒が最新モデルになって失ってしまった「荒さ」を保ったまま、同じスピードレベルで走れるZ06は、ロータスなどと同様、ポルシェよりおもしろいかも、と思える新車のひとつだ。そろそろ日本でも、ハーレーブームのようなV8ブームが起きてもいいような気がする。

大排気量V8とGMのクルマはアメリカ人の心のふるさとで、コルベットやピックアップトラックにその伝統は脈々と生き続けている。トヨタがいよいよテキサスの工場でV8のトラックを作り始めるが、いよいよその心の領域へ足を踏み入れることは、資本の論理としては間違ってはいないものの、かなり微妙な話だ。なにより、GMはこんなおもしろいスポーツカーを作っているのに、トヨタには何もない。儲からないかもしれないが、こうしたクルマを作り続けることは、クルマ屋としてやらなくてはならない使命なのではないか。北米で「新規参入、安くていい商品作り、企業年金のないローコスト経営」でいけている今の内におもしろいクルマを作らないと、いずれしっぺ返しがあるのでは、と心配してしまうのだが。

試乗車スペック
シボレー コルベット Z06
(7.0L・6MT・966万円)

●形式:- ●全長4465mm×全幅1935mm×全高1250mm●ホイールベース:2685mm●車重(車検証記載値):1440kg(F:-+R:-)●乗車定員:2 名●エンジン型式:-●6997cc・V型8気筒・OHV・2バルブ・縦置●511 ps(376 kW)/6300rpm、64.9 kg-m ( 637 Nm)/4800rpm●カム駆動:プッシュロッド●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/68L●10・15モード燃費:- km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:前 275/35ZR18 ・後 325/30ZR19(GOOD YEAR EAGLE F1 )●試乗車価格:945万円(※ 2006年モデル 含むオプション:- ) ●試乗距離:約280km●試乗日:2006年11月

公式サイト http://www.gm-corvette.jp/index.html

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

シボレー 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧

関連コンテンツ一覧