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ホンダ CR-Z α新車試乗記(第593回)

Honda CR-Z α

(1.5リッター直4+モーター・CVT・249万8000円)

単にエコカーでもない、
スポーツカーでもない、
ホンダ製「新しいハイブリッド」は
21世紀のシティランナバウトだった!

2010年04月16日

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キャラクター&開発コンセプト

2+2の新型ハイブリッド。1.5リッターエンジンや6MTを採用


こちらは2007年の東京モーターショーで発表されたCR-Z コンセプト

2010年2月25日に発売されたホンダ「CR-Z」は、2+2の2ドアボディを持った新型ハイブリッド車。ホンダ自身は単に「まったく新しいハイブリッドカー」とだけ言って、明確な定義を避けているが、事実上「ハイブリッドスポーツカー」と言っていいだろう。

ハイブリッドシステム自体は、ホンダでおなじみの「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」。つまりモーターはあくまでエンジンをアシストするタイプで、IMA自体は現行インサイトと基本的に共通だ。

一方、エンジンは現行の2代目インサイトやシビックハイブリッドの1.3リッター直4ではなく、1.5リッター直4を採用。変速機にはCVTのほか、6速MTを新採用している。なおハイブリッド車へのMTの採用は、CVTと5MTの両方があった初代インサイト(1999~2006年)以来で、特に「6速」MTはハイブリッド車で世界初となる。

CR-Xの再来を思わせるスタイリングとネーミング


ホンダ バラードスポーツ CR-X 1.5i (1983年)
(photo:Honda)

スタイリングは初代インサイト風でもあるが、空力性能よりスポーツカーらしさを重視した点では、初代CR-X(1983~87年)や2代目CR-X(1987~92年)を彷彿とさせるもの。そもそもCR-Z(シー・アール・ズィーと発音する)という車名も、CR-Xの再来を思わせるものだ。車名には「Compact Renaissance Zero(コンパクト・ルネッサンス・ゼロ)」、つまり原点(ゼロ)に立ち返って新しいコンパクトカーを創造する、という意味を込めたようだが、「R」がルネッサンスを意味するという点では、CR-Xと同じと言える。ただしCR-Xの場合は、ランナバウト=小型の乗り物、を意味するという説もあるが。

 

2代目ホンダ CR-X (1987~1992年)。写真は1989年に追加された1.6リッターVTEC(160ps)仕様の「SiR」 (photo:Honda)

広告のメインキャッチフレーズは「ふだんをデザインするハイブリッド」、あるいは「ハイブリッドカーは、エコで終わるな」など。ハイブリッドであることをアピールしつつ、ここでも車両キャラクターを明確に定義していない点に注意されたい。

初期1ヶ月の受注は10倍の1万台。グローバルでは年間4万7000台が目標


東京の他、名古屋でも行われた新車発表会にて(下も)

生産はインサイトと同じ鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)。国内での販売計画台数はインサイト(月間5000台)の1/5となる月間1000台(年間1万2000台)だが、発売から約1ヵ月の受注台数は、早くも10倍の1万台に達し、メーカーを問わずスポーツカーとしては本当に久々のヒット車となっている。

ちなみに初期受注の購入層は、20代以下の独身ユーザーが約15%、30代以上の独身ユーザーが約35%、40代以上の既婚・子離れユーザーが約35%と、うまく分散しているのが特徴だ。

 

なお2010年6月からは欧州各国で順次発売予定で、こちらは年間2万台が目標。また北米には2010年夏から年間1万5000台を投入する。よってグローバルでは日米欧合わせて年間4万7000台と、かなりの台数になる。


■参考リンク
過去のニュース>ホンダ、新型ハイブリッドスポーツ「CR-Z」を発売 (2010年2月)
過去の新車試乗記>ホンダ インサイト (2009年3月)
過去の新車試乗記>ホンダ インサイト (1999年11月)

価格帯&グレード展開

αが249万8000円、βが226万8000円。α+インターナビが人気


ボディカラーは全7色。試乗車のボディカラーは「ストームシルバー・メタリック」

本革巻ステアリング、本革巻アルミ製シフトノブ、アルミホイール、HIDヘッドランプ、スマートキー等を標準装備した「α(アルファ)」(249万8000円)とエントリーグレードの「β(ベータ)」(226万8000円)の2グレードを設定。それぞれにCVTと6MTを同価格で用意する。インサイト(189万~221万円)に比べて、少なくとも30万円以上は高い。

販売構成比は、あくまで初期受注(約1万台)での数字だが、αが90%と圧倒的に多い。変速機は6MTが40%と、昨今では異例なほどMT比率が高いのも特徴だ。ボディカラーは全7色で、一番人気はプレミアムホワイトパール(42%)、2番目が試乗車と同じストームシルバー・メタリック(17%)だ。

オーディオやナビは全車オプションだが、初期受注データではHDDインターナビ(180度リアワイドカメラ+ETC+ワンセグ付、28万6000円)の装着率が62%もある。

α  CVT/6MT   249万8000円 ★今回の試乗車

■β  CVT/6MT   226万8000円

パッケージング&スタイル

「低・短・ワイド」。現行インサイトとは別物

ホンダ言うところの「低・短・ワイド」なボディサイズは、全長4080mm×全幅1740mm×全高1395mm、ホイールベースは2435mm。全高はシャークフィン型アンテナ(ナビ用ではなくAM/FM用)を含む数値なので、実質的には1350mmだ。

 

現行(2代目)インサイト (2009年)

現行インサイトに比べると、310mm短く、45mm幅広く、30mm(あるいは75mm)低く、ホイールベースは115mm短い。現行インサイトがベースとも言えるCR-Zだが、ボディ外板やパッケージングは別物と言っていいほど異なる。

 

初代ホンダ インサイト(1999年)
(photo:Honda)

目指したのは初代インサイトのような空力性能ではなく、あくまでスポーツカーらしい「カッコいいスタイリング」。空気抵抗を下げるなら、全長はもっと長く、ボディの前後幅も絞って、初代インサイト風(後輪を覆うスパッツまで付いていた)にした方がいいからだ。

 

ホンダ バラードスポーツ CR-X 1.5i (1983年)
(photo:Honda)

実際、Cd値(計測方法が曖昧なのであくまで目安だが)は、3代目プリウスや初代インサイトの0.25、シビック・ハイブリッドの0.27、現行インサイトの0.28に劣る0.30。ただし前面投影面積を含めた総合的な空力性能(いわゆるCL値)は現行インサイト並みという。ちなみに初代CR-XのCd値は0.33だった。

フロントは迫力重視? リアは確かにカッコいい

各パートを見てゆくと、フロントは大型のラジエイターグリルを配し、バンパー下部を前にせり出だせるなどアグレッシブ。迫力があって高速道路やアウトバーンでの追越車線では威力を発揮しそうだが、やや好みは分かれそう。フロントウインドウは小さく寝ているが、左右を湾曲させ、さらにサイドウインドウを下にきれこませることで視界を確保している。

 

初代ホンダ インサイト (1999年)
(photo:Honda)

砲弾型のドアノブは新規で起こしたもので、かつての初代CR-X風にドアエッジ部分に指をかけるタイプ。ドアミラーは他モデルからの流用も考えたようだが、あまりに不格好だったため、やはり専用品としたという。

 

ホンダ CR-X (1987年)
(photo:Honda)

水平と言っていいほど傾斜の緩いリアウインドウと、その後端をスパッと垂直に断ち切る処理は、CR-X風でもあり、インサイト風でもあるが、比べると全然違う。リアオーバーハングは削りたいが、バッテリーを積むスペースもいるし、空力もあるし、何よりカッコよくないといけない。CR-Zではそれらを満たしつつ、軽量スポーツカーっぽさと未来的エコカーっぽさを上手にまとめている。後ろ姿はほとんどの人がカッコいいと思うはずだ。

インテリア&ラゲッジスペース

インサイトより質感高し。αには新タイプのメタル調パネルを採用

試乗した「α」は、本革巻ステアリング、本革巻アルミ製シフトノブ、アルミホイール、HIDヘッドランプ、スマートキー等を標準装備する。インサイトでは質感の低さが不評だったため、CR-Zではその点を改善。例えばダッシュボード上部のソフトパッド(ウレタン表皮)は、インサイトより確実に質感をアップさせている。

 

インテリアカラーはグレーの1種類だが、上級グレードのαとエントリーグレードのβで、かなり印象が異なる。特にαで目立つのが、インナードアハンドルに施されたメタル調仕上げ、「高輝度メタルインテリアガーニッシュ」。これはいわゆる蒸着メッキや塗装ではなく、金属蒸着層を持った多層フィルムを真空圧着させたもの。本物のメタルに近い質感ながら、形状自由度が高く、センターコンソールにも使われている。

未来的かつ機能的なインパネ

印象的な「スーパー3Dメーター」は、LED照明で青く光るアナログ式タコメーターの中心に、ミラーに映った虚像式のデジタル速度計を配置したもの。周囲のリングはエコ運転するとブルー、ブルーグリーン、そしてグリーンへと徐々に変化し、スポーツモードにすると常時レッドになる。

 

メーターの左右には、バッテリー充電状態、モーターのアシスト・充電状態、燃料計、燃費計、そして葉っぱのマークでおなじみの「ECOスコア」などを表示。そしてメーター右側には「スポーツ」「ノーマル」「ECON(イーコン)」ボタンを配置し、左側には空調コントロールを配置する。このあたりのレイアウトは、3代目プリウスよりもよく整理されており、機能的。

ステアリングは次期NSXの形見


「α」に装着されるレザーステアリング

スポーツカーファンの心を捉えるのが、αの本革巻きステアリング。36mm径の革巻ステアリングは、上下オフセットもなく、グリップも太すぎず、ブルーのステッチで縫い上げられたもの。ヤケに本格的な作りだなあ、と思って発表会で感心して見ていたら、実は次期NSXと共有するはずだったんです、と開発スタッフの方が教えてくれた。

なお、試乗したのはCVTだったが、6MTのシフトノブもFF車のギアボックスとしてはかなり良さそう。10年前の基準で言えば、FF車とは思えないほどコクコクと短いストロークで決まる。ギアボックス自体は欧州向けシビックがベースのようだが、ストロークを詰めてシンクロを強化するなど大幅に設計が変更されている。

HDDインターナビ装着車に「リンクアップフリー」サービスを導入

試乗車のナビは販売店オプションだったが、注目はメーカーオプションのHDDインターナビ(28万6000円)。装着車にはもれなくデータ通信費無料でインターナビが使える「リンクアップフリー」サービスが付いてくるからだ。

これによって、CR-ZのHDDインターナビ装着車なら、ホンダのホームページ上で行われている「エコグランプリ」に通信費無料で参加できるほか、ドライブ情報なども無料で取得できる。なお、この4月にはインサイトにもリンクアップフリーサービス付の特別仕様車が追加されている。

車検時に必要な更新手続きは、ホンダディーラーで車検を行えば基本的に無料。またディーラー以外で車検を受けた場合でも、別途手数料を払えば更新できる。

上級車並みのシート。スポーティな着座感で、座り心地も上々

乗車姿勢は現行インサイトとまったく異なり、低い位置に足を前に投げ出すスポーツカーポジション。ヒップポイントはシビックタイプR(2009年モデル)に比べて30mm低いという。

アクティブヘッドレスト付のシートは、クッションが分厚く、ホールド感も上々。後席の作りが簡単な分、前席にはコストを掛けた?と思うほどで、実際フレームの基本構造はアコード相当だという。オプションでフルレザー仕様も用意する。不満があるとすれば、ステアリングのチルト&テレスコの調整幅(それぞれ30mm)が少なかったり、座面の角度が自由に選べない、といったところか。

なお、エアバッグは前席正面の2個が標準。サイドとカーテンエアバッグはメーカーオプションとなる。

リアシートはまさにワンマイルシート

後席は明らかにプラスツー。短距離なら使えるということで「1マイルシート」(1マイルは約1.6km)を自称した初代CR-Xの伝統を受け継ぐ?もので、ポルシェ911やアウディTTのそれと同程度だ。想定身長は150センチまでで、身長165センチでは頭がルーフにつかえてしまい前が向けない。体を横にひねれば何とか、という感じだ。ただしチャイルドシートの装着は可能なので、小さな子供なら長距離でも耐えられそうだ。

もちろん、これがあると手荷物を置く際には非常に便利で(荷物が落ちにくいような凹みもある)、購入時の精神的なハードルもずいぶん低くなる。ちなみに北米仕様は2シーターで、完全に荷物置き場となる。

後席を畳めば、荷室容量は現行インサイトの5名乗車時並み

荷室容量は後席の背もたれが起きた状態で214リッター、荷室奥行きは770mm、最大幅990mm。さらに背もたれを倒せば、382リッター、荷室奥行きは1280mmとなり、インサイトの後席使用時(400リッター)とほぼ同等になる。ゴルフバッグなら2個、タイヤなら4本積めるようだ。開口部が広いので、スポーツ自転車なら前後の車輪を外すことで1台積めそうに思えた。

ちなみに初代インサイトは荷室容量が139リッター(床下と合わせても182リッター)。それに比べれば倍以上はある。

 

床下には発泡スチロール製のボックスに19リッターの床下収納スペースを設け、パンク修理キットと車載工具を配置。その下に、現行インサイトと同じニッケル水素バッテリーやコントロールユニット(まとめてIPUと呼ぶ)がある。容量40リッターの燃料タンクはリアシートの座面下だ。

 

なお、リアウインドウはCR-Xやインサイト、それにプリウスでもおなじみのエクストラウインドウ付。バックミラーから見ると水平に横切るフレームが邪魔だが、慣れればそう目障りではない。もちろん、無いに越したことはないが。

基本性能&ドライブフィール

エンジン+モーターで1.8リッター相当のトルクを確保

試乗したのは「α」のCVT。新開発とされる1.5リッターSOHC・4バルブのエンジンだが、基本ブロックや各パーツ類はフィットやインサイトからの流用。インサイトのような気筒休止システム、つまり全気筒の吸・排気バルブを閉じてポンピングロスを抑制するシステムは採用せず、片側の吸気バルブを低回転時のみ休止するに留めている。理由はこれ以上シリンダーヘッドが大型になるとインサイトと同等のボンネット高にできないからだ。

 

エンジン+薄型モーターの透視図。この右側にCVTもしくは6MTのギアボックスがドッキングする
(photo:Honda)

CVT車の場合、最大出力はインサイト比+25psの113ps/6000rpm、最大トルクは+2.4kgmの14.7kgm/4800rpm。6MTの方が1psと0.1kgm高いのは、排気音にこだわってマフラー形状を変えたからだ。エンジンと変速機の間にサンドイッチされる薄型モーターはインサイトと共通で、14ps/1500rpm、8.0kgm/1000rpmを発揮する。エンジンとモーターとを合わせたシステム出力は、124ps/6000rpm、17.7kgm/1500rpmだ。

車重はインサイトより30~40kgほど軽い1160kgで、パワーウエイトレシオは約9.4kg/ps。スポーツカーと呼ぶにはギリギリの性能だが、1.8リッター並みのトルクをわずか1500回転で発揮するあたりは、ただのガソリン車じゃないところ。

パワフルというよりトルクフル

走り出せば、まさに17.7kgmのトルクが実感できる。要するに1.8リッターか、それ以上の排気量があるように、トルクでグイグイ走ってゆくわけだ。少なくともCVT車で街中を普通に走る限り、パワフルというよりはトルクフル、という印象が強い。

走行中、エンジンは常に回っているが、停止する直前にはストンと止まるので、その時に「ああハイブリッドだ」と思い出す。マツダのi-stopでは完全に停車後、一呼吸あってからエンジンを停止するが、CR-Zのエンジンストップはそれよりも時間が長く、より頻繁。走行中でも停止する直前、CVT車の場合なら10km/h以下になるとエンジンを止めてしまう。MT車の場合は、30km/h以下でクラッチペダルを踏み込んだ時に止めるようだ。

モーターはエンジン始動時のみ9.4kgm/500rpmを発揮するが、これはスターターとして働く分と発進時のクリープとして働く分を補うためか。なお、インサイトやCR-ZのCVTは発進用のトルコンを持たず、DCTなどと同じように電子制御クラッチでクリープを発生させている。クリープが発生するまでに若干のタイムラグがあるのはそのため。

「ノーマル」はもちろん、「ECON」でも十分パワフル

「ノーマル」「ECON(イーコン)」「スポーツ」の3つの走行モードを選択できる「3モードドライブシステム」は、意外にもホンダ初。と言うのも、インサイトではATのシフトセレクターで選ぶ「S」レンジ、そして例の「ECON」ボタンという風に分散していたからだ。

CR-Zではステアリング右側に「スポーツ」「ノーマル」「ECON」と一つずつボタンを与えてあり、これがいかにも操作しやすく、分かりやすい。エンジンを切る度にノーマルに復帰するため、何もしなれけばノーマルで走ることになる。

「ECON」ボタンを押すと、メーター内に葉っぱマークが点灯。ノーマルよりも確かに低回転を維持し、スロットルレスポンスも鈍くなるが、普通に走る分には何の支障もない。ECONではエアコンも省燃費モードに入るが、このあたりは3代目プリウスのエコモードと同じだ。ちなみにECONモードでの100km/h巡航時のエンジン回転数は、約1900回転。この時、一番うるさいのはエンジン音でも風きり音でもなく、16インチのアドバンA10が立てるロードノイズだ。

「スポーツ」モードに変更すると、例のアンビエントメーターが鮮やかな赤に染まる。同時に電子制御スロットル、エンジン・モーター制御を変更。電動パワステも明確に重くなる。またCVTの場合は、高回転を維持するプログラムになり、加速時はレッドまできっちり回し、エンブレもギャンギャンかける。しかし率直に言って、スロットルレスポンスはCVT的に曖昧で、疑似6速マニュアルモードを使った高回転域でのパワー感も今ひとつで、しかもノイジーだ。少なくともCVT仕様の「スポーツ」は、雰囲気ものという感じ。

ライバルはMINI。ハンドリングは文句なし!


CR-Z用に開発された鍛造製フロントロアアーム

サスペンションはそれなりにハードで、いかにもホンダのスポーツカーという感じだが、不快な縦揺れや振動はなく、デートカーとして十分に使えるレベル。むしろインサイトやフィットのような軽々しさがなく、しっとり感すらあるのが意外だった。ボディの剛性「感」も、ドイツ車あたりに劣らず高い。

実は開発時にハンドリングの仮想敵としたのは、BMW MINIのクーパーだったそうで、確かにそれもなるほどと思える仕上がり。落ち着きがあるという点では、CR-Zの方が安心して楽しめる。

そのハンドリングは素晴らしく、FFスポーツとしては出色の出来。正直かなり気に入った。ステアリング・ギア比は、ロック・トゥ・ロックで言えば、インサイトの:3.29回転から2.48回転にクイック化。おかげでステアリングを切り込むと、「そうそう、これこれ」という感じで、ノーズがスッとインを向く。またホイールベースがインサイトより115mmも短い上、ドライバーの乗車位置もボディの真ん中にあるので、まさに自分を中心にクルマが旋回する。この感覚は、軽量コンパクトで重心が低いクルマじゃないと味わえないもの。

 

サスペンションおよび排気系、燃料タンクの配置図。これだけ見ると、純ガソリン車のFFライトウエイトスポーツに見える(というのがこの図の狙い?)
(photo:Honda)

サスペンション自体は、フロントがマクファーソンストラット、リアがH型トーションビーム。形式はインサイトと一緒だが、トレッドは前が20mm、リアが25mmも広がっているので、パーツ自体は別物だ。で、どうせ別物ならというわけか、フロントのロアアームは豪勢にアルミ鍛造製(インサイトより1本で2kg、左右で計4kg軽い)を採用。アルミホイールも4本合わせてインサイトより約5kg軽いものを履く。

タイヤはインサイトの上級グレードよりワンサイズアップの195/55R16で、しかも銘柄はアドバン A10(他にBSのポテンザRE050Aがあるようだ)。おかげでアンダーステアは小さいし、リアもトーションビームとは思えないくらいしっかり踏ん張ってくれる。最終的にはVSAが介入してくるが、その領域でも安定感は高く、コーナリングスピードも滅法速い。

 

今回試せた中で、特に気持ち良かったのが、高速道路やサーキットによくある100km/h+αくらいの高速コーナー。前後重量配分が62:38のFF車とは思えないバランスの良さで、思い通りに曲がって行く。サスペンションは確かにハードで、気になる人もいるはずだが、こういった高速コーナーでの気持ちよさや安定性を一度味わえば、十分納得できると思う。

なお、VSAは、一部オプションとなるインサイトと異なり、全車標準。ついでに言えば、インサイトはリアブレーキが全車ドラムだが、CR-Zは4輪ディスクとなる。インサイトより高価なCR-Zだが、装備内容を見るとそれを補って余りある感じがしてくる。

10・15モード燃費はCVTで25.0km/Lだが・・・

10・15モード燃費はCVTで25.0km/L、6MT車で22.5km/L。ちなみにインサイト(CVTのみ)は16インチタイヤ(185/55R16)で28.0km/L、15インチタイヤ(175/65R15)で30.0km/Lなので、インサイトの方が1~2割は優れる。逆に言えば、CR-Zの195/55R16タイヤをエコタイヤ化すれば、かなり差は縮まりそうだが。

ところが今回の試乗燃費は、高速・一般道の混じったいつもの試乗コース(約90km)で11.3km/Lと、スポーツモードで飛ばした区間が響いてしまい、意外なほど伸びなかった。ECONモードで80~100km/h巡航したときは、19km/L台を維持できたが、飛ばしてしまうと一気に落ちてしまう。少なくともプリウスのように、誰でも(ついつい飛ばしてしまう人でも)好燃費が出せるとは言いづらい、という印象を受けた。

なお「α」に標準装備されているクルーズコントロールは、ECONモード時にスロットル開度と開閉頻度の抑制を行なう。端的に言って加速がかなり鈍くなり、ついつい補助的にアクセルを踏んでしまった。日本のようにスピードの上下が激しい流れの中では、少々使いにくい。

ここがイイ

奢った仕様、スイッチでモード切り替えができるデジタル感覚、リンクアップフリー

流用パーツと専用パーツをうまく組み合わせた、さじ加減の巧さ。価格を抑えたかったという割に、お金を掛けるべき(だと開発者が思った)ところには、専用パーツや上級装備、そしてVSAなどの安全装備をしっかり奢っている。シートもいい。

モードによって全く異なる性格を見せること。スイッチオンでパワーモードに変身というデジタルな感覚、パワーを使いきって回頭性の高いボディを振り回すというスポーツカー「的」な走りを安全に楽しめる。

リンクアップフリーがこのクラスで実現したのは画期的。燃費情報の蓄積などは後付ナビでは不可能な部分だ。また今やプローブカー情報システムの唯一の成功例と行っていいインターナビ・プレミアム・クラブがこれによってさらに進展するはず。

ここがダメ

ECONモードがエンジン停止でキャンセルされる点、ロードノイズなど

ECONモードがエンジン停止と共にキャンセルされる(ノーマルモードに戻る)のは残念。モードは維持してもらいたい。

上質感はインサイトより明らかに上だが、そのせいかロードノイズが突出してうるさいこと。流行りのエコ&コンフォート系タイヤではなく、あえてこういう「非エコタイヤ」を選んだホンダの志も買いたいところだが、もうちょっとなんとかしてもらいたいもの。

インテリアで惜しいのが、ダッシュボード下部の白っぽい部分。ここはソフトパッド化されておらず、色合いも含めて少々安っぽい。開発側は重々承知の件と思うが、ここは無難にダーク系カラーでも良かったのでは。質感が全体に価格相応にしか見えないのは、致し方ないところか。

 

後方視界の確保のため、リアビューカメラは全車標準とし、できればルームミラーに映し出して走行中も見られるようにするといい。未来っぽい演出としてボタンスターターとかボタン式のシフトも欲しかった。長すぎるATシフトレバーは要らない。

年配者に売るのであればリンクアップフリーも全車標準装備にしたかった。そしてwebブラウジングのさらなる進化を期待したい。

総合評価

一台でいろいろ楽しめるのが21世紀のクルマ

国内で生産されている4ドアセダンのシビック・タイプRがこの夏で生産終了とのこと。燃費が悪い「ブリブリカー(ブリブリに走るクルマ)」は、いよいよ生きていけなくなったということか。それでも、走るクルマが欲しい人はいる。そして、それを作りたいメーカーもある。その結果がこのCR-Zということになるのだろう。したがって、過去のブリブリカーを知る人には、乗るとそうとう物足りない。一般会社員の知人(過去にMR-2所有)が試乗してみて「全然走らん」と憤慨していたが、試乗してみても印象としてはそのとおり。少なくともCVT仕様の場合、走りに過剰な期待はできない。

 

(photo:Honda)

それでも「赤」モードにすれば、ワインディングを走るには十分心地よく、楽しい。6MTも用意されているから、スポーツガソリン車的な楽しみは、その気になればもっとできる(MTの方が燃費は悪くなるらしいが)。今の時代は過去の大パワーを懐かしむのでなく、こういうクルマを楽しむべきなのだ。それにガソリンエンジンメインなので、その気になればチューニングだってできると思う。それでいて普段チンタラ走るときに(だいたいクルマは8割方そうだと思うが)、ECONモードにしておけば軽自動車並みの燃費が確保できるから、通勤に使っても不満はないはず。スバルのSI-Driveもそうだが、一台のクルマでいくつもの性格(モード)を切り分けられるというのが、これからのクルマだと思う。今やどんな商品にだってモード切替スイッチがある。クルマにもやっとそれが用意されはじめたということだ。一台でいろいろ楽しめるというのが21世紀のクルマでは当たり前になる。素晴らしい。

過去の正しさと未来への希望

21世紀といっても、当面はまだまだエンジンが主力という意味でも、モーターがサポートするだけのこのクルマは、いかにも21世紀的と言える。モーターがでしゃばる感じはほとんどなく、ガソリン車らしい違和感の無い走りは、21世紀初頭の今だからこそだろう。やがてモーターが主力となり、その大トルク感が当たり前になったときには、こういった古典的な走りの世界は楽しめない。エンジン主力といえば、トヨタのクラウンハイブリッドあたりもそうだが、大パワーのあの手とは異なって、このクルマには小さいエンジンを回しきって走る快感がある。その分、燃費的にはクラウンハイブリッド並になってしまうのだが。

 

初代ホンダ インサイト (1999年)
(photo:Honda)

スタイリングという点での商品力も、久々にはっきりしたクルマだ。好みは別としても、これはもう男女年齢問わず、誰が見たってカッコいい。そのカッコいいリアスタイルのために後方視界が悪いという、すでに20年も前にわかっていたことをまたやってしまったわけで、カッコのためには犠牲を厭わないという潔さがいい。タイヤにしても、でかくてホイールハウスの隙間が小さい。燃費よりもカッコ。こうしたクルマを売るためには悪い話ではない。とはいえ、もうちょっと初代インサイト的な「ヘンさ」があると、マニアックな人にもうけるだろう。ストレートすぎて、やや気恥ずかしさを覚える人もいるのではないか。

 

このクルマのテレビCMは、過去の正しさと未来への希望を示していると思う。第一次ターゲットとされている50代以上の人に、今までは間違ってなかった、そしてこれからもきっとうまく行く、とメッセージを発しているように思う。小さくてカッコよくてハイテクで世界に通用する商品を作り続けてきた日本の(ホンダの)象徴的なクルマゆえ、このCMは涙なしには見られない。ステアリングはついに出なかった新型NSXの遺品という。ブリブリスポーツカーを懐かしんでいてはいけない。ブリブリスポーツカーはもはや甦ることはできないが、まだまだクルマは生き続ける。それは決して間違いではないのだ。

試乗車スペック
ホンダ CR-Z α
(1.5リッター直4+モーター・CVT・249万8000円)

●初年度登録:2010年2月●形式:DAA-ZF1
●全長4080mm×全幅1740mm×全高1395mm
●ホイールベース:2435mm ●最小回転半径:5.0m
●車重(車検証記載値):1160kg( 720+440 ) ●乗車定員:4名

●エンジン型式:LEA
●1496cc・直列4気筒SOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:73.0×89.4mm ●圧縮比:10.4
●113ps(83kW)/6000rpm、14.7kgm (144Nm)/4800rpm
●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L

●モーター形式:MF6
●モーター種類:交流同期電動機(薄型DCブラシレスモーター)
●定格電圧:100V
●14ps(10kW)/1500rpm、8.0kgm(78Nm)/1000rpm ※エンジン始動時:9.4kgm(92Nm)/500rpm
●バッテリー:ニッケル水素電池

●10・15モード燃費:25.0km/L ●JC08モード燃費:22.8km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム
●タイヤ:195/55R16( Yokohama Advan A10 )
●試乗車価格:-円 ( 含むオプション:- -円 )
●試乗距離:200km ●試乗日:2010年4月
●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

 
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