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トヨタ クラウン新車試乗記(第96回)

Toyota Crown

 

1999年10月29日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ジャパニーズブランド。スポーツグレードを新設定して11代目に進化

クラウンといえば、誰もが認める日本の高級車の代名詞。1955年の初代デビュー以来、国内で400万台オーバーの販売台数を誇る、トヨタ車で最も歴史のある超ビッグネームだ。そして永遠のライバルといえば、セドリック/グロリア。”動”のセド/グロに対し”静”のクラウン。

11代目となる新型も恒例のごとく「クラウンらしさ」を受け継ぐキープコンセプト。しかし、こうした伝統を受け継ぎながらも次の時代に向けて「ロイヤル」を軸とし、「マジェスタ」は最高峰としてよりエレガントに、そして「アスリート」という従来にない走りの魅力を備えたシリーズを新設定。オーナーの平均年齢が55歳といわれるクラウンだが、ユーザー層の若返り策を打ち出してきた。

新ブランドを投入することでブランドの幅を広げようとしているわけだが、でもこの戦略って結局はセド/グロが先代までやっていた「グラツー」路線。それを今さら、王者クラウンがやってどうする? とりあえず、新型クラウンのテーマは「伝統と革新の融合」である。

価格帯&グレード展開

ロイヤル、アスリート、マジェスタの3本立て。価格は310万円より。今や誰でも買える

旧型に比べ15万円程度のアップに止め、セド/グロとほぼ同価格帯を形成している。 ロイヤル・シリーズの価格帯は310.0~430万円。廉価版の「ロイヤルエクストラ」でも十分豊かな装備で、その上が「ロイヤルサルーン」、さらに後席の快適装備を充実した「ロイヤルサルーンG」となる。ライバルはもちろんセドリック。

アスリート・シリーズの価格帯は338.0~378.0万円。贅沢品はロイヤル・シリーズに若干劣るが、走りの装備は充実している。注目の280馬力エンジンは「アスリートG」となる。ライバルは走りに重点をおいたグロリア。いや、エンジン形式(直列とV型)を気にすれば、同社のアリストということにもなるだろう。

マジェスタの価格帯は428.0~560.0万円。セルシオと一部ラップするが、装備内容は明らかにマジェスタが上をいく。そういう点では、マジェスタはお買い得な設定だ。

パッケージング&スタイル

これぞ伝統美。ほぼ変わらないボディサイズとデザイン

全長4820mm×全幅1765mm×全高1455mmというロイヤルのボディサイズはヘッドクリアランス確保のため20mm高くなった程度で、ほぼ同サイズ。ベースはプログレで、ホイールベースは2780mm。先代と同じなのは偶然の一致だ。アスリートもロイヤルと同等のサイズとなる。マジェスタは先代ベースで全長4900mm×全幅1795mm×全高1455mmというロイヤルよりも一回り大きいボディサイズを持つ。ホイールベースは先代より+20mmとなる2800mmだ。

デザインは誰が見てもクラウンと分かるもの。というよりは新旧の区別が付かないほど変わっていない。大きな冒険が許されない車種だけに、これはこれでよしとしよう。残念なのはアスリートだ。ロイヤルのランプやグリルをちょこっとイジッて、控え目なエアロを施しただけ。丸目4灯風のヘッドライトはグロリアのグランツーに似ており、むしろ古く感じてしまう。若返り策を狙っているんだから、もう少し変化があってもいいと思う。

一方、マジェスタはドアのみがロイヤルと共通で、他は専用だ。それでもクラウン顔をしており、マスカラをいれたようなヘッドライト、くどくなった格子状のグリルなど、厚化粧によりさらに成金趣味を強めている。最も特徴的だったアメ車風の縦型テールランプは、不評(一部には好きという人もいたが)ということで、大型化された。結果的に中途半端なデザインになってしまったのが残念である。

最大の変更点はサッシュ無しから付きへと変わったところ

ボディで最も大きく変わったのは、4ドアハードトップからサッシュ付きのドアを採用するセダンらしいセダンに変わったことだ。ボディ剛性は高くなったが、今まで同様、ハードトップ風のスタイリッシュなカタチは失っていない。

大型セダンの割には狭いと言われてきた居住性も、ようやく改善が図られるようになった。ボディサイズは先代とほぼ同等ながら、室内サイズは40mm長く、25mm幅広く、20mm高い。シート位置も見直されて、肩まわりの余裕、視界の高さなどが向上された。トランク容量も+110リッターの530リッター。これは一回り大きいマジェスタと同じ。資料を見る限りでは見事な熟成ぶりといっていいだろう。実際に乗って気になったのは、後席の背もたれが若干足りないということ。

決して従来オーナーを裏切らない、丁重なるおもてなし

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コスト削減が重要視される昨今、クラウンを見る限りその影響は全くなく、むしろ品質に磨きがかかている。淡いベージュ色の2トーン配色により、高級感、開放感がより強められているのだろう。スイッチ類の数は少なく、オーディオはリッドで隠されているからスッキリとした印象で、操作性の向上にも余念がない。

贅の限りを尽くした装備に関してはもう何も求めるものはない。走るリラクゼーションルームとでもいおうか、世界一の安楽仕様だ。キーONにするとメーターから冠が浮かび上がる演出、あぐらがかける座布団みたいなシート(身体のおさまりが悪いということでもある)、エアコン吹き出し口のスィングなど、まさに殿様気分である。

基本性能&ドライブフィール

用意されるエンジンはシリーズ全5タイプ(2.5~4.0リッター)。ロイヤルが3タイプ。アスリートが3タイプ。マジェスタが2タイプとなる。

主力となるのは3車ともに用意される直噴ガソリン、トヨタでいうところのD-4である3l直6エンジン(最高出力220馬力/5600rpm、最大トルク30.0kg-m/3600rpm)だ。D-4は1.8リッターですでに存在していたが、3リッターでの採用はトヨタ初。これに5ATが組み合わせられ、燃費はクラストップの11.4km/リッターを実現。実測燃費も9.5km/lと、非常に満足できるものだった。それにしても高級車のスタンダードがV型という時代に、今だ直6にこだわるというのは、これもやはり伝統なのか。

もうひとつ注目したいのがアスリート専用の2.5リッター直6ターボ(最高出力280馬力/6200rpm、最大トルク38.5kg-m/2400rpm)だ。クラウンにターボが搭載されたのは17年ぶり。今回搭載されるのは、マークIIツアラー系に搭載されるものと同じ(アリストとは違う)。ギアボックスはステアシフトマチック付きの4ATが組み合わせられる。

旦那はおもわずニンマリ、究極の安楽仕様

試乗したのは、D-4を搭載するロイヤルサルーンG。静粛性は怖いぐらいに静かと巷でいわれているほどではなく、エンジンがかかったことがかすかに分かるもの。それでも静かには違いなく、いくらエンジンを回しても、一番気になったのは雨がガラスに当たる音だった。

ステアリングは意識させない軽さで、アクセルはフカフカ。鋭い段差を前もって予知していたように優しく吸収し、ふんわりと元に戻る乗り心地。加減速も同様のふんわりとした感じを受ける。全てが品のある滑らかさで、このインフォメーションの把握しにくい味付けは、もはや個性といっていいだろう。運転の楽しさはこれっぽちもないが、運転したくなくならないというのもこれまた確か。快適、極楽気分になって思わずニンマリ、クセになる。クラウンを代々乗り続ける人の気持ちが少し分かったような気がした。

これで10km/リッター近い燃費とは

加速に関しては鋭い力強さを期待しないのなら、十分満足できるもの。静かすぎて加速感がないから、いつのまにか100km/hオーバーっていうことに。巡航も100km/hが50km/hくらいにしか感じられないから、緊張感は全くゼロ。あまりにも外部からのインフォメーションが掴みにくいので、ちょっと危険ではないかと思えてしまう。高速安定性はいいが、どっしりとした安定感はないので140km/hくらいで流すのがもっとも適当な速度域に感じられた。気になる低燃費がウリのエンジンの素性は、高速中心の実燃費9.5km/リッターという数値が立証している。ただしガソリンはハイオク指定だ。

ここがイイ

久々に日本車に乗ったなぁ、と感慨を深くしたこと。セド/グロは意識して走る気にさせてくれたが、クラウンは運転することをできるだけ意識させないという性格のクルマだ。空気のような存在、自宅の居間の延長、そんなクルマ。アクセルを踏めばスポーツカー並の加速をみせ、インテリアは豪華で、燃費もイイ。タッチパネル式のカーナビに道案内させながら、安楽なままどこへでも行けるわけで、クルマ好きでなければ、何一つ不満がないはず。

ここがダメ

直進性が今一つだの、静粛性が今一つだのとはいえるが、根本的にハード面では不満は何もない。あるとしたらドライバーズシート。どう調整しても腰のおさまりが悪かった。リアシートの足元も狭い。不満はそんなもの。

総合評価

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究極の安楽仕様、殿様仕様といっていいだろう。コレに不満を付けたらバチが当たるというもの。ふんわりしながらゴツゴツするという賛否両論ある乗り心地については、結局のところ支持するユーザーもいるのだから、これはこれでよしとしたい。世界に認められていない、というのも確かにあるが、そもそも日本人だけに特化したクルマであり、それを世界中の人に認めてもらおうということ自体おかしなハナシ。とりあえず、日本国内だけで乗るのならクラウンの満足感は何ら揺るがない。

エンスーな人には全く面白味のカケラもないクルマだが、大半のクルマに興味のない人にとっては、理想のセダン以外の何物でもない。ひとたびクラウンにのった後は、何も考えず4年ごとに買い替えれば幸せが持続するという構造だ。

しかし、そうしたオーナーの平均年齢も今や55歳。「いつかはクラウン」というキャッチフレーズももはや過去のもの。オヤジばかり相手にしていては、近いうちにクラウンも消滅の危機に瀕するはず。いや、「死しんでもクラウン」というなら、霊柩車というのは一つの手かも(笑・そういえば新型クラウンワゴンはもうじき発売予定)。

とりあえず今回のチェンジはキープコンセプトに徹して成功だが、ベンツ、ジャガーなど世界の高級車は思い切った改革を行っている。次回作では「クラウン革命」をしないと、この路線ではきつくなるだろう。グラツーを真似たアスリートの新設定はどうにも似合わないのだから。

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
 
 
 
 

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