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トヨタ クラウン 3.0 ロイヤルサルーン マイルドハイブリッド新車試乗記(第192回)

Toyota Crown 3.0 Royal Saloon Mild Hybrid

 

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2001年10月13日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

クラウンだからこそ意味がある環境仕様

'89年にセルシオが登場してからやや影が薄くなったものの、依然クラウンは日本を代表する高級車だ。日本人の日本人による日本人のための高級車、それがクラウンだ。販売台数もセルシオに比べて圧倒的に多いが、その訳は価格帯が広いことに加え、法人ユーザーが非常に多いからだ。世間体や慣例から、セルシオは許されなくてもクラウンなら許される、そういう状況は今も変わらない。

だからこそクラウンの環境仕様には意味がある。プリウスがいくら優れたクルマでも社長や重役、取引先の大切な人物に乗ってもらうわけにはいかない(という風潮がある)。逆にハイブリッドが革新的な技術から、一般に普及する技術になるためには、クラウンというコンサバなパッケージは最適。歴史的に見ても、コスト的に融通の効く高級車は先進的技術をいち早く取り入れるという使命を担う。

今回クラウンの一部グレードに設定された、停車時にアイドリングを自動的にストップするという「トヨタマイルドハイブリッドシステム(THS-M)」は、確かにプリウスのTHS、もしくはエスティマ ハイブリッドのTHS-C+E-Four、言わば「正真正銘のハイブリッド」に比べれば一見地味な技術だ。圧倒的に燃費が良いわけでも、モーターだけでずっと走れるわけでもない。しかしプリウスやエスティマが専用エンジンと高価なニッケル水素電池を使うことで初めて成り立つのに対して、マイルドハイブリッドは従来のエンジンと鉛電池(ただし36Vという高電圧)を使うことにより低コストと高い汎用性を実現したという。

また従来からあるアイドリングストップ機構付きのクルマは、エアコン使用中はほとんどアイドルストップしない設定になっていた。つまり年間を通してエアコンの使用率の高い日本では、宝の持ち腐れ、もしくは我慢(エアコンを使わないという)が要求された。渋滞につかまっている時こそ、エアコンが使いたいものなのだが。マイルドハイブリッドシステムはアイドルストップ時に、モーター/ジェネレーターで電磁クラッチを介してエアコンを駆動することによって、そんな矛盾を解決するという。

と聞いただけでは今一つピンと来ないこのマイルドハイブリッド。以下、順次説明していこう。

価格帯&グレード展開

中核モデルとも言えるグレード設定。通常タイプとの価格差はわずか。

クラウン・マイルドハイブリッドは中核車種であるロイヤルサルーンの3.0リッター・モデルに設定される。4WDはない。ちなみにクラウンのFRモデルに積まれる3.0リッターエンジンはこのマイルドハイブリッド仕様も含めてすべて直噴式の通称「D-4」エンジンとなる。

グレードは3種類と、他のエンジンを積むモデルと較べても選択の幅は広い。マイルドハイブリッド・モデルが決してアドバルーンではなく、クラウンのまさに中心モデルであるということだ。

最も簡素な「Sパッケージ」はいわば「レス仕様」で、アルミホイールやディスチャージド・ヘッドランプ、革巻きステアリングホイール、CDプレーヤー、パワーシート、電動リアサンシェードなどが省かれる。ベーシックモデルでは、上記で省かれた装備が標準ないしオプション装着可能。そして豪華版の「Uパッケージ」では、上記がすべて標準装備となる他、インダッシュ6連装CDチェンジャーやリア分割パワーシート、サイド&カーテンシールドエアバッグが標準となり、また本革シートがオプション装着できる。

価格はSパッケージが365万円、ベーシックモデルが397万円、Uパッケージが442万円となる。ほぼ同じ装備の通常のロイヤルサルーン(382万円)とマイルドハイブリッド(397万円)を較べた場合、その差は+15万円。マイルドハイブリッドを選ぶ上で、イニシャルコストでの代償は非常に小さいと言える。また優-低排出ガス車(平成12年基準排出ガス50%低減レベル)に認定されることから、各種減税措置、補助を受けることが出来るので、さらにその差は縮まる。

パッケージング&スタイル

エンブレムを除き、普通のクラウンと外観や使い勝手はほぼ同じ。

マイナーチェンジされたと言っても外観の変更はごくわずかだ。較べてみて初めてグリルが少し変わったことに気付く程度。よって外から見ても中から見ても、いつものクラウンだ。ただしマイルドハイブリッドに関しては、リアドアの真中あたりに「Mild Hybrid」というちょっと目立つエンブレムが入る、と思ったら、これは13,000円のオプション装備だった。よって外から見る限り、マイルドハイブリッドだと識別する手立てはリアに貼られた小さな「Mild Hybrid」のプラックしかない。この辺りにも、トヨタがこのクルマを「普通のクラウン」として売ろうとしている意図を感じることができる。

全長4820×全幅1765×全高1465mm、ホイールベース2780mm。都内の迷路状路地に躊躇なく入って行くことを考えれば、最小回転半径5.3メートルを持ってしても外寸はこれが上限だろう。そんなセルシオより一回り小さいボディに包まれたインテリアスペースはごく平均的なもの。インテリアの意匠も日本人なら誰でも気負うことなくリラックスできるものだ。確かに高級感に関してはセルシオなどに及ばないが、これはこれでクラウンならではの世界がある。

インストルメントパネルはマイルドハイブリッド専用設計のデュアルビジョンオプティトロンメーターが付く。これはオプティトロンメーターに、マルチインフォメーションディスプレイ(多機能情報表示)を組み合わせたものだ。メーター中央に、ハイブリッドシステムの動作状況が図によって分かりやすく表示される。プリウスで専用のモニターに表示されたものが、スピードメーター内に移動した感じだ。

その他、快適装備に不足はない。Uパッケージを選択すれば、運転席には8ウェイ、助手席には4ウェイのパワーシート、後席パワーシート、左右独立式オートエアコン、インダッシュ式6連奏CDチェンジャー、6つのエアバッグが付いてくる。室内装備で言えば、最上級仕様であるロイヤルサルーンGにあってマイルドハイブリッドにないものは、後席用のエアコンとリアアームレストの奥にある冷蔵庫、それに読書灯くらいのものだ。

トランクスペースはハイブリッド化のためのバッテリースペース確保のためか(通常の12Vバッテリーと36Vの二次バッテリーを積む)、幾分奥行きが削られている。しかし左右に長く、開口部も大きいことから使い勝手は悪くなさそうだ。

基本性能&ドライブフィール

エンジンが止まって初めてすごさが分かる、史上初のクルマ。

試乗車は豪華版のUパッケージ装着車。さらにオプションの本皮シート付き。環境仕様とは言うものの、簡素で環境に優しくというのとは無縁の世界だ。

乗ってすぐに目に入るのは、ハイブリッドシステムの動作状況を示すディスプレイ。エンジン、バッテリー、モーター/ジェネレーター、そしてタイヤという4つのアイコンが並び、それらを随時矢印でつなぐことによってエネルギーの流れを示す仕組みだ。初回始動は通常のスターターモーターでエンジンが始動され、クルマはエンジンによって駆動される。ディスプレイの矢印はエンジンからタイヤに1つ、そしてエンジンからモーター・ジェネレーターを通ってバッテリーまでの2つが表示される。 減速時にはモーター・ジェネレーターが発電し、その回生エネルギーがバッテリーに蓄えられる。矢印はタイヤからモーター/ジェネレーターを通ってバッテリーまでの流れを示す。

気になる燃費だが、10・15モードでは13km/lと、マイルドハイブリッドではない3000D-4エンジンの11.4km/lの15%アップ。このクラスでは最高水準だという。

エンジンが止まった瞬間、印象が激変!

正直に言ってこのクラウン マイルドハイブリッド、走り続ける限り全くごく普通の(退屈な、そして安楽な)クラウンである。エンジンはロイヤルサルーンGと同じ2JZの3.0リッターD-4エンジンだが、マイルドハイブリッド用は200ps/5000rpmと馬力にして20ps低く、エンジン回転数の上限も1000回転ほど低い(トルクは全く同じ)。車重は60kg重い1670kgもあるから、動力性能は必要十分という範囲を超えない。ちょうど2.5リッターモデルとほぼ同等のパワーウエイトレシオとなる。

しかし赤信号で停止した瞬間、このマイルドハイブリッドは本領を発揮する。ただでさえアイドリングの静かなエンジンではあるが、エンジンが止まった時の静けさに勝るものではない。クルマが停止すると同時に、ふっとロウソクの火が消えるようにエンジンは停止、はっとするような静寂に包まれる。タコメーターの針はゼロを差し、ディスプレイはバッテリーからモーター/ジェネレーターを通してエアコンユニットにエネルギーが送られていることを静かに示す。

確かにこのマイルドハイブリッドシステムはエアコン使用時にもアイドルストップしてくれるのだ。従来からある多くのアイドルストップ機構付きのクルマが、エアコンやヘッドライト等の電装系使用時にほとんど、もしくは一切エンジン停止しないのに較べて、はるかに活躍頻度は高い。

実際、夕方の渋滞の中でこのクラウン マイルドハイブリッドは停止するたびにアイドルストップ。雨模様の蒸し暑い天気の中、オートエアコンはON、晧々と光るディスチャージヘッドランプもON、ワイパーもON、オーディオもナビゲーションシステムもONという電気使いたい放題という状況で、エンジンは「まだまだいけまっせー」という感じでバンバンアイドルストップしてくれる。30分ほど走る間に、ディスプレイに表示されるアイドルストップ合計時間は10分をあっけなく超えた。

システムの核はモーター/ジェネレーターと36Vバッテリー

マイルドハイブリッドはモーターだけで走行「し続ける」ことはできない。モーターだけで走行するのは、アイドルストップした後に発進する時のほんの一瞬だけだ。単にアイドルストップするだけなら、プリウスやエスティマ ハイブリッドのように大容量で高性能なニッケル水素バッテリーを積めば済むように思える。しかしマイルドハイブリッドは、従来のエンジンと低コストの鉛電池を使うために、非常に芸が細かく、かつ画期的な技術が投入されている。

例えば発進の際に、ブレーキの解除と連動して絶妙にクルマをクリープさせるモーター/ジェネレーターの働きだ。そのフィーリングはほとんど通常のトルコン式オートマチックのクリープと変わらない。と同時に同じモーター/ジェネレーターがエンジンをすかさず始動する。だから始動ノイズはほぼなく、そのかかり方もごく自然だ。

またこのモーター/ジェネレーターは減速時には回生ブレーキ(減速時に無駄になる車両エネルギーを電気に変換してバッテリーに充電する)としてその名の通りジェネレーターの機能も果たす。またアイドルストップ時のエアコンの駆動もこのモーター/ジェネレーターが行う。

また非常に重要なことは、このモーター/ジェネレーターが36Vで機能していることだ。これからの自動車の補機類は電気で駆動されることが一般的になりつつある(すでにパワーステアリングは電動化が著しい)。それには従来からの12Vでは効率が悪い。12Vシステムと並列配置とはいえ、トヨタが世界に先駆けて高電圧化を市販車で試みていることには注目しなければいけないだろう。このあたりが実はこのクルマの最大のポイントだったりする。

ここがイイ

クラウンは安楽だ。久々に乗るとつくづく実感させられる。3リッターロイヤルのパワー感はV8マジェスタほどの圧倒的なものはないが、まずまず、不満のないもの。足はふんわり柔らかだが、街中を走っている限りこの方が楽だし、ワインディングでも普通に踏ん張る。何かもう「上がり」という感じで、自分がクルマなど興味の外のオッさんと化してしまう。

そういうクルマにハイブリッドを積んだことが一番イイことだろう。何も考えないオッさんが「ハイブリッドの方が燃費が良くて維持費が助かりますよ」とセールスマンに言われ、環境のことなど二の次で、自分の利益のために環境に優しいクルマを買う、これを理想といわずしてどうしよう。自分の利益に走ることが環境に優しいなんて、素晴らしいの一言。ガソリン代で取り戻せる15万円という差額設定は、グレイトというしかない。

ここがダメ

初期物プリウスは、個体差が激しく、モノによっては振動やら電池交換やら、電動アシストパワステやら、でトラブル続出だったとか。新しいシステムゆえ、トヨタといえどもそれはあったのだ。果たしてマイルドハイブリッドの場合は……

総合評価

先日乗った廉価版ヴィッツのアイドルストップは評価しづらかったが、さすがにこの高級車クラウンに乗せたアイドルストップシステムは、見事な出来で高く評価できる。エンジン止まったらすぐ動き出し、またすぐ停車し、またすぐ動くなんて意地悪をしてみたが、そういう場合は止まらなかったりしてなかなか頭がいい。クラウンらしくボーっと乗っている限り、絶妙のシステムだった。クルマのキャラと新システムが見事にマッチしていいと思った。

トヨタはエスティマハイブリッドを出したとき、15万円の差ならほとんどの人がハイブリッドを選ぶはず(エスティマは60万円)と豪語していたが、半年もたたないうちに簡易型とはいえ出してしまったわけで、恐れ入ったというしかない。トヨタの客の半分以上はクルマに積極的には興味がない人だと思うので、文句ばっかり言うクルマ好きなど相手にせず、そういう人相手にいろいろな車に載せたマイルドハイブリッドをブリブリ売りまくって欲しいものだ。それこそが、クルマがこの世紀を生き残るための最良の方法の一つだろう(最近トヨタばっかりを誉めているが、実際のところちょっと他社との格差が開きすぎている感がある。21世紀末にトヨタ車しかないというのは困ったことなので、他社もがんばって欲しい!)。

クラウン番外編

レーダークルーズコントロール(マジェスタV8に搭載)体験記

ところでクラウン、マジェスタなどにオプション装着される(その他クラウン 3.0 ロイヤルサルーンやセルシオなどにもオプション装着可能。クラウン マイルドハイブリッドには設定されない)レーダークルーズコントロールを体験してみたのでその報告をしたい。

レーザークルーズコントロールとはバンパーなどの中に組み込まれるレーザーレーダーセンサーやステアリングセンサーなど、各種センサーからの情報によって、前を走行する車と走行レーンを認識。設定車速内(約45~108km/h)で、車間距離を保ちながら追従走行できるシステム。簡単に言えば車間距離を半自動的に一定に保ってくれる賢いクルーズコントロールだ。

まずはクルーズコントロールをON。さらに先行車を目標に定めてロックオン(?)する。車間距離は3段階で切り替えが可能。車速は上限のメーター読み108km/hにセットする。先行車は混み合った高速道路上を、100km/h前後に車速を上下させながら走っている。通常のクルーズコントールならプラス・ボタンやマイナス・ボタンを押しながら、まめにスピード調節しなければいけない状況だ。実際のところ、これだけ混んでいるとクルーズコントロールなんか使ってられない、というのが普通だろう。

ところがこれが「レーダー付き」となるとよほど急激に流れが遅くならない限り、何もしなくても巡航できてしまう。前のクルマにぶつかるんじゃないか、という不安もない。普通のクルーズコントロールだといつの間にか車間が詰まっていて慌ててブレーキを踏む、ということがあるが、基本的にそういうことはない。前が遅くなると自動的に速度を落とし、加速すればついていく。

先行車がいなくなると、クルマは設定した車速までゆっくり加速を始める。もちろんこの時アクセルを踏んでやってもいい。設定車速に到達した後は、クルマは新たな先行車が現れるまで一定速度で巡航する。

自分のクルマよりも遅い先行車を検知した場合は、自動的にスロットルを閉じて減速する。が、それでも減速が足りない場合はシフトダウン制御。それでも十分な減速が出来ない時(普通ならすでにブレーキを踏んでいるくらい接近した状態)は、警報を鳴らしドライバーのブレーキ操作を促す(セルシオの場合は、ここでさらにブレーキの制御機能が働く)。警報は寝ていても気付く大きさだ。他車が別の車線から割り込んできた場合などはこういう状況になり、ブレーキを踏むことになる。しかし車間さえ最短に設定しておけば、そう頻繁に起こることではない。

クルーズコントロールはもともとアメリカで普及したものだ。ひたすら真っ直ぐの道が続くフリーウェイを、何時間も移動することが多いアメリカでは、クルーズコントロールは半必需品。スピード違反の取り締まりは日本以上に厳しく、ほとんどのクルマは制限速度の65mile/h(約100km/h)ないし75mile/h(約120km/h)プラスαに車速を設定して、コンボイ走行するのが普通だ。周囲のクルマもほとんどクルーズコントロールを使っているし、郊外では渋滞もほとんどないから、ステアリングに軽く指を添えているだけで目的地の近くまで行くことが出来る。

「日本ではクルーズコントロールなんて必要ない」。確かに今まではそうだったかもしれない。しかしこの進化した「賢い」クルーズコントロールなら、あった方が確実に便利。特に80~100km/hくらいで流れる、交通量の多い時間帯などは、車線変更すら出来ない状況ゆえ、レーダークルーズにまかせて、音楽でも聴いていた方が精神的にラク。ただ、法規の問題だろうが108km/hまでしか設定できないのは、決定的な欠点といえるだろう。せめてあと20km/h上乗せできたら、実用性は飛躍的に高まるはずだ。空いた高速道路なら120km/h程度で流れるのは社会的な常識なのだから。これがいけないというのなら、180km/hも出るクルマを発売することの方がよほどいけないことだと思うのだが、いかがだろう。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
 
 
 
 

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