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トヨタ クラウン 2.5 アスリート新車試乗記(第318回)

Toyota Crown 2.5 Athlete

(2.5リッターV6直噴・5AT・367.5万円)

2004年05月22日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

ロイヤルからアスリートへ

2003年12月22日に発売された12代目クラウン(“ロイヤル”シリーズとアスリート)、通称“ZERO CROWN”はクラウン半世紀の歴史の中で、最大の変化を遂げた。伝統の直6を捨ててV6を搭載、さらに新世代プラットフォームのいち早い採用により、欧州車もかくやというスポーティセダンとなったのだ。早い話、従来の国内専用ならではの味付けは、過去のものとなった。

それを象徴するのが、今回試乗したスポーティ版のアスリート。テレビCMでもアスリートを前面に出すなど、トヨタとしてはロイヤルサルーンよりアスリートを強調して、ユーザーの若返りを図りたいようだ。

クラウンの一人舞台

販売目標は5000台/月。すごいのは実績で、クラウン全体(マジェスタ、エステート、セダン含む)ながら、1月:1万1578台(3位)、2月:1万2360台(5位)、3月:1万6350台(6位)、4月:1万759台(2位)と、前年比の2倍以上。新型クラウン発表時のトヨタの説明によると、国産高級セダン市場は約1万台程度のはずだったが、この数字から言えば今や同市場はクラウンの一人勝ち、というより市場を拡大さえしている。「国産セダンが売れないのは、いいクルマがないから」という声が以前からあるが、クラウンの成功は逆の意味でその言葉を裏付けたと言えるだろう。

価格帯&グレード展開

アスリートは足が違う

クラウンの6気筒モデルは、快適性重視の“ロイヤル”シリーズ(330万7500円~523万9500円、4WD「i-four」含む)とスポーティなアスリート(367万5000円~514万5000円、2WDのみ)の2本立て。V6・3.0リッター(256馬力)と2.5リッター(215馬力)のエンジンは共通だ。

ロイヤルとアスリートで大きく違うのは足まわりで、アスリートは225/45R18タイヤとAVS(Adaptive Variable Suspension System。アブソーバー減衰力を電子制御で可変する「TEMS」の進化版)を標準装備。ロイヤル系は全車215/60R16タイヤで、AVSの設定がない。

パッケージング&スタイル

名は体を表す

サイズは全長4840mm×全幅1780mm×全高1470mm。ゼロクラウンは、短く、低いボンネットや長いホイールベースで、陸上選手のような引き締まったプロポーションになった。ところどころ「和」のモチーフは残るが、クラウンという言葉の保守的イメージはみじんもない。特に、アスリートが履く18インチのワイドアルミホイールとパッツンパッツンに引っ張った偏平タイヤは、スタイルによく似合っている。ただし、ツライチではなく、そこが惜しい。

ほかに目立つのは、複雑なネジリの入ったメッシュのグリル。今まで見たことがないデザインで、仕上げもすごくいい。「ベストグリル賞」があったら、ぜひアスリートにあげたい。トランクリッドに付く、ごく控えめなリアスポイラーも上品でいい。リアコンビランプはスカイラインのような?丸形4灯タイプになった。

若々しい内装

ブラウン系木目調のロイヤルに対して、アスリートは黒木目調のパネル。センターコンソールやアームレストに、縫い目付きの合成皮革が張られる。「高級」とはちょっと違うが、仕上げはもちろん悪くない。30代後半くらいの若い人でも、違和感なく収まる雰囲気だ。

新型クラウンはプッシュボタンでエンジンを掛ける。これ自体はいいが、シートに座ってブレーキを踏む必要があるのが煩わしい。安全のため、もちろんエンジン始動の際はそれが原則だが、これだとパワーウインドウを動かすためだけでもエンジンを掛ける必要がある。

ホールド性のいい後席

2850mmものホイールベースで、後席の足下に不満はない。頭まわりも広く、天井も後ろまで伸びて、太陽の日差しも気になりにくい。後席シート形状はロイヤルと変わらないが、アスリートだと室内色のせいかバケットシート風に感じられる。ホールド性が良く、座り心地はとてもいい。左右独立でリクライニング(最大11度)する。

基本性能&ドライブフィール

圧縮比12.0

試乗したアスリートは2.5の方。3.0(256ps、32.0kgm)より排気量分少ない、215psと26.5kgmを発揮する。パワーと低燃費を両立を主張する直噴「ストイキD-4」なのは変わらない。圧縮比は直噴ゆえ12.0と高い。指定燃料はハイオクだ。2.5の場合、オートマチックは3.0の6ATに対して、5ATとなる。

某ドイツ車のような重めのオルガン式ペダルを踏むと、アスリートはその名の通り軽快な足取りで加速する。パワー感では3.0リッター車に譲るが、低めの最終減速比(5速までのステップ比は同じ)と軽い回転上昇がそれを帳消しにする。4名乗車など負荷が大きい場合を除けば、2.5で十分、人によってはこっちの方が気持ちいいと感じるだろう。

ちなみにトヨタの宣伝資料による0-100km/h加速は「ドイツ車A(2.6リッター)」の9.3秒、「ドイツ車B(2.5リッター)」の9.0秒より速い、8.4秒(社内測定)。前者はメルセデス、後者はBMWのことだろう。

ロイヤルに遜色ない乗り心地

18インチの偏平タイヤを履く足まわりによって、乗り心地がどう変化したかが気になるところ。しかし、結論から言うと、ロイヤルとほとんど遜色ないと感じた。AVSのノーマルとスポーツ、いずれのモードでも街乗りではまったく快適で、同乗者から不満が出ることはないはず。正直なところ、新車おろし立てだったロイヤルより、今回借りた走行距離6000kmオーバーのアスリートの方が(あたりが付いて?)良いと思ったくらいだ。

タイヤの影響は主にロードノイズに出ているようで、走行中ロイヤルでは気にならなかったサワサワという音がどこからか聞こえてくる。ただし、エンジン音など他のノイズがほとんど聞こえない状況だから、この「サワサワ」もボリュームとしてはわずかなもの。荒れた路面でも「ゴーゴー」にはならない。

山道でこそ“アスリート”

街乗りではロイヤルと差を感じないアスリートだが、山道での操縦性はやっぱりすごかった。ここではAVSのスポーツモードが生きてくる。狙ったラインをピタッと狙えるシャープで正確な電動パワステ、前後タイヤのグリップ感、上までスカッと回る適度なパワーの2.5リッターエンジン、よく効くブレーキ(冷却ダクト付き)、介入が控えめな(でも安心の)ESC…。

スタビリティによる速度感の無さ

以前試乗したロイヤルでもすさまじかった高速性能ゆえ、ましてアスリートに不足はない。とにかく伝統の音の静かさに加えて、圧倒的スタビリティによるスピード感の無さは、新型クラウン最大の特長だ。3.0では6速トップの100km/h巡航で2000回転を大きく切ったが、2.5では2200回転くらい回る。総じて、高い回転を回す分、3.0より「疾走感」がある。少なくとも2名乗車までなら、パワーも静粛性も2.5で十分だ。また、法定速度の低い日本で使う分には、5ATで十分だろう。

ここがイイ

エンジンパワーが控えめな分、アクセルペダルの踏み込みに対して車体が素直に動くこと。アクセル開度とスピードにダイレクト感があり、踏んだだけ素直に動くのだ。ということは、ギアをマニュアル操作して走ると楽しいということ。昔からトヨタのギザギザゲート式のATはマニュアル操作をすると、たいへん使いやすい。2.5は3.0と違ってマニュアルモード(シーケンシャル式)付きATではないが、シフトレバーを握ってゲートをゴリゴリやるのは、いかにもマニュアルな感じで年配の人にはかえってウケるはず。自分でクルマ操る感覚がクラウンで楽しめるとは10年前には想像もできなかった。

そんな感じでアスリートを走らせていると、伝統の手あかにまみれたクラウンという名のクルマに乗っている感じは到底しなくなってくる。そこが最もいいところだろう。欧州スポーティーセダンに十二分にタメを張れる国産高級セダンがついに登場したわけだ。

ここがダメ

オーディオ(クラウン・スーパーライブサウンドシステム)はDSPをONにすると、かなり人工的な音場になり、違和感を禁じ得ない。ロイヤルに装備されていたマークレビンソンと正反対で、電子デバイスはない方がいい音だと思う。

スマートキーやエンジンスターターの件はロイヤルと同じ。

総合評価

40代以降は、RVを対象にしない場合、国産車の選択肢がずいぶん狭められる。クルマに対して意識的であればあるほど、魅力的に思えるクルマがあまりに少ないことに愕然としてしまうだろう。セダンを数多くラインナップしているトヨタ車でもそれは同じで、中にはブレビスやヴェロッサ(販売終了)といった意図的に「外し」を狙ったクルマもあるが、セダンとして最も重要というべきブランド力がないため、販売的にも苦戦を強いられる。そんな中でアベンシスは販売が好調なようだが、欧州車然とした走りのためだけでなく、トヨタのブランドヒエラルキーの外にあることがその大きな要因だろう。

40代、50代のクルマ好きといえば、すでに20年以上クルマに乗り続けているわけで、クルマを買うなら、ブランド力があり、走りが楽しく、かつ快適なクルマを求める、クルマに対する「うるさ方」だ。となると輸入車へ行ってしまうのはごく当然のこと。かくして日本のセダンは「クルマ好きでない人のための足」にすぎないものとなってしまった。

実際、RVだけは乗りたくないという、クルマ好き中年は少なくない。そういう人を取り込める国産車があまりに少なかったことは事実。強いていえばレガシィB4くらい。ただしこれも高級車ではない。スカイラインも訴求力は今一歩だし、インスパイアはあまりに無名だ。また、RVに乗ってきた人にとっては、戻るに値する魅力的なセダンが存在していない。

そこでトヨタが、ブランド力(知名度といってもいい)のあるクラウンを走りに振ったことは、実に見事な戦略だろう。特にこのアスリートの走りは素晴らしく、それでいてブランド力があって、快適で、最新デバイス満載。多くのクルマ好きが「クラウンなんてオヤジ車は…」と切って捨てていたはずだが、アスリートに試乗するとその評価は一転するはず。評判が評判を呼び、クラウンのブランドイメージはどんどん変わっていくはずだ。子供が育ち、そろそろRVもいらなくなってきたという人も、取り込むことが可能だ。

このように現状の日本のセダンの中では、ブランド力を考慮に入れると完全に最良のクルマとなる。他メーカーに類するクルマはなく、これなら1万台以上売れるのも当然だろう。実際のところ、ロイヤルはコンフォートすぎたが、アスリートなら完全に欲しくなってしまった。クルマ好き中年の心を惑わす「ジジイ殺し」のクルマである。

試乗車スペック
トヨタ クラウン 2.5アスリート
(2.5リッターV6直噴・5AT・367.5万円)

●形式:UA-GRS180-AEAXH●全長4840mm×全幅1780mm×全高1470mm●ホイールベース:2850mm●車重(車検証記載値):1570kg(F:840+R:730)●エンジン型式:4GR-FSE●2499cc・DOHC・4バルブV型6気筒・縦置●215ps(158kW)/6400rpm、26.5kgm (260Nm)/3800rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/71L●10・15モード燃費:12.0km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:225/45R18(DUNLOP SP SPORT 2050)●価格:367万5000円(試乗車:431万250円 ※オプション:クラウンスーパーライブサウンドシステム&DVDナビ 46万2000円、カラーバックガイドモニター&ソナー 9万1350円、サイド&カーテンエアバッグ 6万3000円、ETCユニット 1万8900円)●試乗距離:約210km

公式サイトhttp://toyota.jp/crownathlete/index.html

 
 
 
 
 

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