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トヨタ クラウン 3.0 ロイヤルサルーン G新車試乗記(第303回)

Toyota Crown 3.0 Royal Saloon G

(3.0L・V6直噴・6AT・470万円)

2004年01月31日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

「日本」を代表する高級車の12代目

初代クラウンは1955年に登場。以来半世紀にわたって「日本の高級車」を代表してきた。89年のセルシオ登場以降はトップ・オブ・トヨタの地位を譲ったが、国内専用モデルとしてユーザーの嗜好に合わせたきめ細かいクルマ作りは、今も他の追随を許していないと言える。

2003年12月22日に発売された12代目クラウン(6気筒モデルの“ロイヤル”シリーズとアスリート)は、「原点からのクルマづくり」という発想で、受け継ぐところは受け継ぎ、「革新すべきところは革新した」(開発スタッフ)という。「静から躍動への変革」をコンセプトに、プラットフォーム、エンジン、サスペンションを一新。国内専用ながら、世界に通じる性能を目指したという。

象徴的なのがエンジンを伝統の直6からV6に変更した点。軽量、前後長の短さ、環境性能など、様々な点で有利というのがその理由だ。新開発の直噴3.0リッター(256ps)および直噴2.5リッター(215ps)の2本立てとなり、前者に6速AT、後者に5速ATを搭載する。

“ZERO CROWN”でゼロからスタート

キャッチコピーは“ZERO CROWN”。「かつてこのクルマはゴールだった。今、このクルマはスタートになる」という説明が続くが、やっぱりゼロといったらゼロ戦? 「日本」専用車であることや優れた運動性能をイメージさせると言ったら深読みしすぎか。これは正式な車両名称ではない。

販売目標は5000台/月。立ち上げリ1ヶ月の受注はその4倍の約2万2000台。縮小傾向にある国産高級セダン市場(約1万台ほど)を盛り上げると共に、現在8割を占める同シェアのアップを目指す。ユーザー層の若返りを図るべく、アスリートの販売にも力が入れられる。

価格帯&グレード展開

“ロイヤル”シリーズとアスリート

今回モデルチェンジしたクラウンの6気筒モデルは、快適性重視の“ロイヤル”シリーズ(315~499万円、4WD「i-four」含む)およびスポーティな足回りと外装を持つアスリート(350~490万円、2WDのみ)。
エンジンは共通で、新開発V型6気筒3.0リッターと2.5リッターの2種類となる。

アスリートは225/45R18タイヤとAVS(アブソーバー減衰力を電子制御で可変する「TEMS」の進化版)を標準装備。ロイヤル系は全車215/60R16タイヤで、AVSの設定はない。

パッケージング&スタイル

セルシオとアリストの中間

外観は、最近のトヨタ・セダンの流れに沿ったもの。小さなセルシオのようでもあり、前から見ると立派なプレミオ/アリオン?でもある。従来のクラウンとは一線を画す、短くて低いフロント、CD値:0.27の流麗な空力ボディが特徴だ。グリルは伝統のメッキ格子だが、威張った感じはない。「書の勢い」をモチーフとしたサイドビュー、クラウンならではの太いCピラーが「和」の雰囲気。ちなみにアスリートのフロントグリルはメッシュタイプで、リヤランプは丸型となる。

サイズは全長4840mm×全幅1780mm×全高1470mm。先代比で各+20mm、+20mm、+15mmと少しずつ大きいが、最大の違いはホイールベースが70mmアップの2850mmになったこと。これによって室内長が40mm伸びた。前後にコンパクトなV6ならではの進歩だ。現行アリストの2800mmとセルシオの2925mmの中間となる。

セルシオに準ずる室内デザイン

木目を生かしたオーソドクスなパネルに、多くのスイッチ類を散りばめたインテリア。分かりやすい高級感があり、質感も申し分ない。セルシオの雰囲気をこじんまりまとめた感じ。中央の空調吹き出し口はルーバーが左右に首を振る。

スイッチがやや煩雑で一発で分かりにくいのが難点か。特にエアコンの温度、オーディオのボリューム、ラジオのバンド、CDのディスク変換などがすべて同じ上下の矢印なのは操作時に戸惑うところ。慣れれば問題ないのかもしれないが。

プッシュボタンでエンジン始動

主力グレードに標準装備されるスマートキーは、ドアノブに手が掛かったことを感知してアンロックする。エンジン始動は、プリウスと同じようなプッシュボタン。キーはスロットに差し込んでもいいし、ポケットに入れたままでもいい。クルマを離れる時はドアノブの黒いスイッチを押してロックする。

気になったのは、ドアノブに手が掛かったことをクルマが感知してから、ドアを開けないと、アンロックしない点。また、一度走って集中ドアロックが掛かった後は、室内からアンロックしないと開かない(いったんロックして、またアンロックすれば開くが)。システム上、仕方ないのかもしれないが、荷物の出し入れ時に不便を感じることが多かった。トランクも受信範囲が車両のリア周辺のみと狭いせいか、なかなかリモコンで開かず困った。

手で戻すか、足で戻すか

もう一つ慣れなかったのは、パーキングブレーキの解除を手で行う点。何のことはない、マークIIより上級のトヨタ製セダンは昔からこのタイプだ。

しかし、現在ファミリーカーで主流のミニバンの多くは、ペダルをもう一度踏んで解除する「2度踏み式」。トヨタ製を含めてこのタイプに乗ることが多いデイズスタッフは、パーキングブレーキを解除し忘れることが多かった。一方、2度踏み式は誤って走行中にペダルを踏んでしまう可能性があるという指摘もある。ならばいっそ、ジャガーやBMWの7シリーズのように、戻し忘れのない電子式パーキングブレーキにすべきではないか。

近赤外線で視界を補助するナイトビュー

試乗車はランドクルーザーシグナスに設定のあったナイトビュー(30万円)を装備していた。これは、近赤外線照射で得た車両前方の白黒映像をフロントガラス下部に表示するもの。役にたつかどうかは難しいものだが、これからの発展性に期待したい技術だ。あくまでもヘッドライトを補助する装置であり、ライトを消した状態だとナイトビューもOFFになる。

 

ライトの光軸を左右に可変するAFS(アダプティブ・フロントライティング・システム)も装備。時速30km以上で、専用ランプが右に最大25度、左に最大12度動く。クラウンのものは山道のコーナーで効果を発揮するもので、交差点のような低速ではほとんど動かない。ハリアーは小糸製だが、クラウンのユニットはスタンレー製で、光軸を動かす仕組みも異なっている。

さらに進化したレーダークルーズ

セルシオなどでおなじみのレーダークルーズコントロール(7万円)も装備。割り込み車への対応など、制御はますます緻密になって、設定可能な115km/h以下なら、ほとんど自動運転が可能だ。緊急ブレーキ付きのプリクラッシュセーフティ機能も備わる。今までに何度も書いたが、レーダーが付いて、クルーズコントロールは日本でまともに使える装備になった。いつも指摘するとおり、惜しむらくは100km/h+アルファという速度までしか設定できないこと。上限をもっと引き上げないと、せっかくの機能がもったいない。

基本性能&ドライブフィール

新開発「ストイキD-4」

試乗車はロイヤルサルーンG。エンジンは新開発の3.0リッターV型6気筒直噴「ストイキD-4」(256ps、32.0kgm)。同じ直噴でも、従来のD-4が燃費重視の超希薄燃焼であるのと異なり、こちらは理想的な混合気濃度のまま、パワーと低エミッションを両立したという。つまり「なんとなくトルク感がない」という印象の直噴の欠点を解消したエンジンだ。ストイキとは、Stoichiometryの略。ノッキングに強い直噴ゆえ、圧縮比は11.5と高い。

オルガン式のアクセルペダルを踏んで走り出した印象は、シューンと軽く回転が上がる感じ。クラウンと言えば、アクセルを少し踏み込むだけでトルクフルに加速する、良くも悪くも出足がイイのが特長だったが、新型はそういう意味で普通になった。

電動ステアリングにダルさや違和感はまったくない。街中ではとても快適で乗りやすい。足がブワンブワンで、ひたすら柔らかさを狙った従来のクラウンの面影はなくなった。

高速性能でドイツ車に引導を渡す

真骨頂は高速道路に入ってから。トヨタがライバルとして挙げたメルセデスのE320、BMWの530などに比べて、アスリートどころかこのロイヤルサルーンでも、安定性や安心感で引けを取らない(控え目に言っても)と感じた。とにかく「スピード感の無さ」はちょっと例のないもの。「120km/hくらいかな」と思ってメーターを見ると、すでにリミッターに当たった状態(電子制御スロットルなので穏やかに作動する)。一線級スポーツカーでも恐怖を感じる高速コーナーに、アクセルを迷うことなく踏み込んで入ってゆける。例えるなら「ものすごく静かで滑らかなアベンシス」。そうとう気を付けて乗らないと、免許の点数が危ないクルマだ。逆に高速取り締まりのパトカーには最適か?(中央道では旧ロイヤルサルーンの覆面パトカーを目撃)。

世界最高の静粛性

少なくとも静粛性では、欧州車はライバルではない。特に、ロードノイズの低さには「やろうと思えばここまで抑えこめるのか」と感心するばかり。ノイズ面で不利な後席でも前席と同レベル(というか、ほとんど聞こえない)と言えば、すごさが伝わるだろうか。風切り音の低さも同様。「ビュービュー」という音はちゃんと設計すればしなくなる、という見本のよう。

巡航時のエンジン音など気になるわけがない。6速トップは、100km/hで2000回転を大きく割る。160km/h時でも3000回転ほどしか回らない。ギアが5速に入っていても6速に入っていても、静かさは変わらない。この静粛性もスピード感を感じさせない要因の一つ。

氷上のクラウンで「ESC」を体験

今回はこのクラウンに乗って長野県・白樺高原にある女神湖に出掛けた。目的は氷結した女神湖上で開催された「ESC(エレクトリック・スタビリティ・コントロール=横滑り防止装置)」の体験試乗会に参加するため。

ESCとは、ボッシュなどが呼ぶところのESP、トヨタが呼ぶところのVSC、あるいはその他メーカーがVDCとかVSAとか呼ぶもの。今回の氷上試乗会は、日本のボッシュ、アドヴィックス(デンソー、アイシン系=トヨタ系)、コンティネンタル・テーベスというブレーキメーカー3社が集まり、呼称をESCに統一するという動きの中で開催された(詳しくはhttp://motor.days.co.jp/news/20040130231259.html)。

さて、会場には国内外メーカーの最新車に混じって、新型クラウンもあった。今回の試乗車と違うのは、スタッドレス(ブリヂストンのブリザック)を装着する点のみ。コースは30~35cmの氷が張った湖上のオーバル周回路で、路面ミュー(摩擦係数)は0.1以下(通常のアスファルトは0.8~0.9程度、雪上では0.2~0.3)。通称ブラックアイスと呼ばれる最も滑りやすい状態で、人が歩くのも難しいコンディションだ。

超低ミュー路ではTRCオフ

実際にそこをクラウンで走ると、とにかくアンダーステアが強く、曲がらないというのが第一印象だ(FFでも4WDでも、それはほとんど同じだが)。ESCはアンダーステアも抑制するが、こうした超低ミュー路では絶対的なグリップが無いのでさすがに歯が立たない。後輪のトラクション(駆動力)も弱く、発進時にTRC(トラクションコントロール)が働いて最後には加速しないところまでパワーを絞ってしまう。「こうした超低ミュー路では、逆にTRCを切った方が良い時がある」というのが開発スタッフのアドバイスだ。TRCオフスイッチは、あくまでそのためにあるそうだ。ちなみにトヨタ車にはTRCオフスイッチはあっても、ESC(VSC)のオフスイッチは付いていない。なお、クラウンのESCはアドヴィックス製となる。

 

何はともあれ、これだけのハイパワーFR車で氷上をそれなりに走ってしまえるのは、ESCあってのもの。会場にあった同じFRの280馬力スポーツカーでは、ESCオフだと発進もままならず、氷上ではとても乗れたもんじゃない、というものだった。一方、ESCオンなら、オーバースピードにさえ気をつければそこそこ走れてしまう。

ESCは雨の日はもちろん、乾いた路面でも高速走行時の緊急回避など、まさに生死を分ける瞬間に大きな効果を発揮する。ある意味でエアバッグ以上に重要な装備であり、これからは低価格車にも急速に普及してゆくだろう。クラウンはむろん全車標準装備だ。

優れた実用燃費

合計で約700kmを試乗。車載燃費計の表示によれば、一般道と高速道路を移動しながら撮影した時の100km区間が7.0km/L。高速道路を超ハイペースで飛ばした300km区間の燃費が8.0~9.4km/L。30km/1時間ほどの通勤路(都市部を除き、割と一般的な平均速度ではないだろうか?)で無駄な加速をせず走った時は、8.8km/Lだった。10・15モード燃費は11.8km/Lだが、3.0リッター・1.6トン級のクルマでは実用5km/L台も珍しくない。実用燃費は優秀と言えるのではないだろうか。

ここがイイ

まず圧倒的な高速安定性と静粛性。「こんな速度域でこんな安心感は今までない!」と試乗中に声をあげたほど。シートも殿様座りから欧州車タイプの「しっかり座れる疲れないシート」に変わっている。先代でも400km以上試乗したが疲れはまったくちがった。腰が据わるシートは、長距離を走るにふさわしい性能を持つ今回のクラウンには必需品だ。

 

マークレビンソンオーディオはデジタルエフェクトをすべて切ると、驚くべき変な音。しかしデジタルエフェクトを効かせることでたいへんいい音場を生み出すタイプ。高速巡航中でも高音から低音までいい音を響かせてくれた。

前述のような優れた実用燃費もいいところだが、クラウン(しかもロイヤル)に乗っていて、初めて楽しいと感じた。これなら若い人(といっても40代以上だと思うが)やこれまでのクラウンオーナー以外を振り向かせることのできる出来だ。背水の陣とはいえ、そこへチャレンジしたトヨタの姿勢は高評価。トヨタ首脳は口にしないが、おそらくこのクルマは名前を変えて輸出される、と見た。海外トヨタブランドの旗艦になるかも。

ここがダメ

乗った瞬間にクラウンじゃない、と感じてしまった。原因は低回転トルク感のなさ。踏めば十分なトルクがあるが、アメリカンV8的なビッグトルク感が演出されていないため、イメージとしてのクラウンとは大きくずれたのだ。むろんゼロクラウンになったのだからしかたないのだが、古くからのクラウンユーザーには不評かも知れない。

スマートキーはブロックタイプ。無くさなくていい、のは確かだが、できれば薄いカードタイプを望みたい。選択できるといいのだが。上で書いたように、解錠はグリップに手を突っ込んで始めて感知するタイプで、やや感覚通り動かなかったことも。施錠はボタン式だが、これは好まない。近づくと自動解錠、離れたら自動施錠ができるといい。もちろんこの方式は防犯上の問題があるはずなので、選択できることが条件だが。

総合評価

1999年の先代クラウン試乗記を読み返してみて欲しい。ゼロクラウンはその試乗記のクラウンとはまったく正反対のクルマになったと思ってもらっていいだろう。共通点は静かであることくらい。快適性一つとっても、和室の快適性と洋室の快適性といった大きな差がある。日本でしか通用しない高級車を、世界で通用する高級車にまったく作り替えてしまったのがゼロクラウンだ。エンスーな人も無視できないセダンになった。

ただ、ゼロクラウンは世界への通用を目指したがゆえなのか、和の部分が薄れているのが惜しい。内装には確かに和のムードがあるが、エクステリアにはそこまでの訴求力がない。外観にも和を保ちつつ世界に通用する、新しい「和風感」「ラスト・サムライ感」のデザイン提案が欲しかった。先のモーターショーでのメインテーマの一つである「和」を、クラウンこそ実現して欲しかったのだ。ゼロクラウンという呼び方は名機ゼロ戦(海軍零式艦上戦闘機)をインスパイアさせることは間違いないのだから(ゼロ戦の機能美に和を感じませんか?)。

 

先代と同じように速度感のない高速巡航だが、どっしり感や安定感は正反対。より速いペースで、いわゆるクルマ好きを唸らせる走りをみせる。高速巡航に関しては欧州A車、B車をしのぎました、という開発資料を勝手に作りたくなったほど。しかしこのすばらしい巡航性能を生かせる公道は、日本にはまだない。日本で一番売れる高級セダンが走るにふさわしい道が日本にない、ということは、『愛・地球博』(2005年愛知万博のことですが知ってます?)を開催する国として恥ずかしいこと。早く第2東名を作りましょう、そんな、トヨタ無言のアピールこそ、ゼロ戦ならぬゼロクラウンに与えられた秘密指令なのかもしれない。この性能がやがて登場するだろう覆面ゼロクラウンのものだけになるというのは、国家的損失ではないだろうか。

試乗車スペック
トヨタ クラウン 3. 0ロイヤルサルーンG
(3.0リッターV6直噴・6AT・470万円)

●形式:UA-GRS182●全長4840mm×全幅1780mm×全高1470mm●ホイールベース:2850mm●車重(車検証記載値):1630kg(F:860+R:770)●エンジン型式:3GR-FSE●2994cc・DOHC・4バルブV型6気筒・縦置●256ps(188kW)/6200rpm、32.0kgm (314Nm)/3600rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/71L●10・15モード燃費:11.8km/L●駆動方式:後輪駆動(FR)●タイヤ:215/60R16(Toyo Proxes J33)●価格:470万円(試乗車:574.3万円 ※オプション:ナイトビュー(ヘッドアップディスプレイ付) 30万円、マークレビンソン・プレミアムサウンドシステム 26.6万円、本革シート(前後シートヒーター付) 18万円、電動ムーンルーフ 9万円、バックガイドモニター&ソナー 8.7万円、レーダクルーズコントロール 7万円、パール塗装 5万円)●試乗距離:約700km

公式サイトhttp://toyota.jp/index.html

 
 
 
 
 

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