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GM シボレー クルーズ新車試乗記(第199回)

Chevrolet Cruze

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2001年12月01日

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キャラクター&開発コンセプト

スイフトをベースとしたスズキとGMの共同開発車

小型車作りを得意とするスズキは長年にわたってGMと業務提携を結んでいるわけだが、昨年、両社はさらにその戦略を強化。スズキがGMグループのなかで小型車作りを受け持つことが明確化された。というのも、今後10年ほどで、アジアは大きな自動車市場となると予想されているから。アジアでシェアを拡大させるためには、まずは小型車が重要なのはいうまでもないだろう。そうした背景の中で生まれたのが、今回のシボレー・クルーズだ。両社のアジア向け戦略車の第1弾であり、アジアで設計・生産されるGM初の小型車乗用車である。

ベースとなったのはSUVチックなスズキの異色作(?)「スイフト」。生産はスズキの湖西工場だが、デザインと走りのチューニングを担当したのはGM (足はホールデンらしい)であり、ブランドもシボレーとなる。エンジンはスイフトと同じ1.3リッターとエリオ用の1.5リッターの2タイプで、ミッションは4ATのみ。駆動方式はFFと4WD。ハンドル位置は全車右で、乗車定員は5名となる。

価格帯&グレード展開

ややこしい販売体制と1.5リッター車の割高感

グレードは、2つのエンジンそれぞれに2つのグレードという計4グレード構成だが、このクルマは少しばかり販売形態がややこしい。まず、1.5リッター車は、「GMオートワールド」ネットワークを通じて販売される。一方、1.3リッター車は、「アリーナ」店を中心としたスズキの販売ネットワークのみで販売される。装備面では、GM仕様、スズキ仕様ともオーディオ装備以外はほぼ共通。グレード間の差は、上のグレードには、革巻きのステアリングホイールやシフトノブが装備され、ルーフレールやアルミホイールが標準装備されるなどのドレスアップ系パーツのグレードアップとなっている。オーディオについては、スズキ仕様が標準でスピーカーのみ。GM仕様には、AM/FMラジオとカセットないし、CDプレーヤーが標準装備される。

価格だがスズキ仕様の1.3リッター車で124.8~149.8万円。グレード名は標準仕様が「E」、上級グレードが「X」となっている。スイフトと比較すると、「E」に最も近いので116.8万円の「SG」だから、価格差は8万円ということになる。が、革巻きステアリングが「E」に有って「SG」には無い、タイヤサイズが「E」は15インチだが「SG」は14インチといった、細かいところで「E」のほうが立派な仕様となっているので、価格は妥当といえる。

一方、GM仕様の1.5リッター車の価格は1.3リッター車の25万円アップとなる149.8~180.3万円。グレード名は「LS」と「LT」。 180万円といったら三菱の新鋭SUV、エアトレック(2リッター・4WD)やホンダのHR-V(1.6リッター・4WD・5ドア)が買えてしまうだけにクルーズに対する割高感は否めない。ダイハツ・テリオス(トヨタ・キャミも含む)と比べて、ようやく買い得感が生まれてくるわけだが、営業力の差からすればテリオス&キャミの方が有利なのは明らか。年間2万台が販売目標だが、クルーズもスイフトと同様、販売面ではやや不安が残る。

 

パッケージング&スタイル

シボレーのアイデンティティを全面的に押し出したエクステリアデザイン

ボディサイズは全長3625mm×全幅1610mm×全高1560mm。ベースとなったスイフトと比べると、それぞれ+10mm、+10mm、+20mm。またクルーズには専用でルーフレールが設定されるため、その装着車の全高は1605mmとなる。ホイールベースは同一の2360mmだ。
デザインはGMが手がけており、ドアパネル以外は専用デザインだ。スイフトが女性的なイメージでまとまっているのに対して、クルーズはアメ車の香りがプンプンする男性的なイメージへとガラリと印象を変えており、なかなかまとまってる。いや、デザイン力に関してはクルーズの方が完全に上だろう。

特に「ウマイ」と感じさせるのが、テールの位置とデザインの処理。コルベットに代表されるシボレーのアイデンティティ、丸目ランプをバンパーに配置させながら、リアピラーにはハイマウントストップランプ、バックランプ、ウインカーを縦に配置させてブラックアウトさせることにより、スモーク処理のバックガラスに上手く溶け込ませてある。一見、リアランプはバンパーにポツンとあるようにしか見えなくても、ブレーキング時や曲がる時にはバックガラスの両端が光るという仕掛けだ。また、グリルのエンブレム「ボウタイ」も男性にはウケそうな部分。スタイルだけでも買ってもいいと思わせる、今ドキのカッコ良さがある。

スイフトで指摘したドライブポジションの煮詰めの甘さが改善、後席も広くなった

インテリアは基本的にスイフトと同じだが、一部にGMが手が入っている。メーターパネルとコンソールの一部にはシルバー塗装が施され、ボウタイが描かれたシートはサイズも形状も別物。バケットシートのようにサイドの張り出しが強く、クッションは固め。アメ車というよりドイツ車風だ。なによりドライビングポジションが良くなっている。以前、スイフトに試乗したときには、以下2つの不満個所があった。1つは前席のヒップポイントが沈み気味。もう1つが、ステアリング位置が妙に高いということ。クルーズではその2つが改善されており、シートにはダイヤル式調整機構が、ステアリングはチルト機構が装備されている。おかけで乗り手の体系を問わず、まともなポジションをとれるようになった。当然、車両の見きりも良くなっている。

もう1つ注目したいのが室内長だ。スイフトに比べて40mm延長されているのだ。どうやら後席を後方に下げて、膝元スペースの拡大を図ったようだ。実際、座って見ても膝と前席の背もたれの間には拳2個分のスペースが確保されており、快適性はわずかに向上している感じ。スイフトにはない1.5リッターエンジンを搭載したことによって、4名乗車でも快適なクルージングがOKという仕様となっている。ただし、荷室はその分、狭くなっており、背もたれを倒すと段差が生じてしまう(スイフトはフラット)。またスイフトにあったアンダーボックスも未装着。このあたり作りは何を優先させるかで善し悪しが決まってくるわけだが、とりあえずパーソナルユースでの使い勝手はスイフトの方が上。逆にクルーズは、小さなクルマでもフル乗車するケースが多い、発展途上のアジア市場を見据えた作りといえる。いずれにせよ両社とも的は射ている。

基本性能&ドライブフィール

噴けのいいエンジンは走りの楽しさをもたらしてくれる

エンジンはスイフトと同じ1.3リッター(最高出力88ps/6000rpm、最大トルク 12.0kgm/3400rpm)とエリオに搭載される1.5リッター。ともにオールアルミ製で、VVT(可変バルブタイミング機構)付き。排出ガスレベルは★2つを取得している。ミッションは全車4速AT。4WDシステムはスイフトの機械式のものは別物で、「EMCD」という新開発の電子制御カップリングを搭載する。オートモード・FFモード・ハードモードの3つのモードを任意で選択できるのが特徴だ。

足回りは前ストラット、後ろアイドレーテッド・トレーリング・リンクという形式はスイフトと同じだが、細かなチューニングはGMが担当。タイヤサイズもスイフトが165/70R14に対し、165/65R15という一回り大きいものが与えられ、最低地上高は30mmアップの195mmを確保。より多彩な路面に対応できるようになっている。

試乗したのは1.3リッターのFF車。車重がスイフトより20kg重いものの、加速面への影響は全くなく、1.5リッター車並の力強い走りを披露する。っていうか、エンジンを見るまでは、ずっと1.5リッター車だと勘違いしていたほど。2000回転台のトルクが充実しているために、アクセル開度は少なく、早めのシフトアップが行われるのが特徴だ。それゆえに市街地でも低回転域で走るというケースが多くなる。このあたりのシフトプログラムは人によっては嫌われるところであるが、上手く付き合えば、燃費の向上は期待できるだろう。

独自のサスチューンが施されているだけに、乗り味はスイフトとは少々異なる。同じ固めでも、段差を乗り越えたときスイフトがピョコピョコ跳ねる感じであったのが、クルーズでは段差をしっかりとサスで吸収しており、強いショックが伝わってこない。一言でいえば、しなやか。確実にワンクラス上の乗り心地を実現しており、その快適さは1.3~1.5リッタークラスの国産車では、なかなか味わえないだろう。

電動式パワステのタッチもかなり変わっている。スイフトの場合、中立付近が適度な重みで、ハンドルを切っていくにつれて軽くなる、というものだったが、クルーズはそれの逆。切り始めは軽くて、切れ角が大きいと重くなる。だから超低速時の車庫入れの時などはすごく重宝するし、ハンドルをどれだけ切ったかというインフォメーションも良く伝わってくる。強いて不満をいうなら、重さの切り替わる境目があまりにも明確だということ。なんとなく「軽い・重い」の2段階調整しかできていないという違和感がある。ハンドルを切るに連れてジワジワと重みが増せれば、よりナチュラルなタッチとなるだろう。

高速ではさすがにこのクラス相応の性能で、フルスロットルでも150km/hというところ。直進性の落ち着きもなくなり、快適巡航速度は120km/h プラス10km/h程度。まあこれで大きな不満はないと思うが、エンジンが静かなだけに風切り音はかなり気になるところだ。
コーナーでもまあ普通に踏ん張るが、追い込んでいくとアンダーが強くなり、アクセルを戻せばタックインという、古典的FFの挙動を示す。正直なところコーナリングがおもしろいクルマではない。

ここがイイ

スタイリング。好き嫌いはあると思うが、好きという人の方が多いはず。スイフトのような曖昧さがなく、エッジが立っている。
内装の質感。ずいぶん向上しており、サラッとした感触のシートは座り心地抜群で特に◎。カップホルダーをはじめ、小物入れも充実しており、使い勝手がいい。
スイフトとオーディオ位置の上下が変わったインパネ。空調パネルが下になり2DINのオーディオが上になった。これで後付カーナビでも位置はOK。電波式のキーレスエントリーがワンボタンなのも○。

ここがダメ

このクラスとしてはハードウェア的に文句をつけるところはほとんどない。1.3のパワーに不足を感じるなら1.5を買えばいいのだし。ただ販売戦略的なものだと思うが、この1.3と1.5の住み分けがどうも明確でない。売り方には問題があるのでは。一般にはどこでどう買ったらいいか、まったくわかりづらいだろう。問い合わせフリーダイヤルまで、スズキとシボレー(GM)に分かれている。

同様に、日本市場では購入者の顔がイマイチ見えない。ハデな赤、鮮やかな黄色といったボディカラーも気持ちよく決まるのだが、じゃ、誰が乗る? シボレーだからといってヒップホップ系の若者が買うとも思えないし、当然年輩者ではない。では女の子になるのか? Keiで十分といわれそうだ。

総合評価

スイフトはコンセプトとしてはいいと思ったが、いろいろハード面で詰めの甘いところが多く、評価は厳しくなってしまった。しかしクルーズはそうして不満にことごとく対応しており、正直に「たいへんいいクルマだ」といえるだけの仕上がりとなっている。モーターデイズでは、スイフトやワゴンRソリオといった軽を大きくした小型車を、コンセプト的には理想のコンパクトカーとして評価しているが、このクルーズはまさにその完成型といえる。シート高が高くて乗り降りしやすいし、ちょっとしたラフロードにも耐えるボディ形状で、4人が乗れて走行性能も十分。★2つの環境性能もあり、アジアでの街乗りクルマはこれがベストだ、といい切れる。 ただ、前述のように、日本市場はアジアでも特殊。SUVルックのクルーズが入っていける隙間はあまり広くなさそうな気がする。フィットの妙な売れ方はミニバン(ルック)だったから。その意味では現在シボレーラインナップにあるMW(ソリオのGM版)がもっと売れてもいいはずだが、販売していること自体、あまり知られていない。

そこで提案。MWをシェビーバン・ミニと名を変えて大々的に宣伝すれば、フィットに負けない売れ行きを示すはずだ。ミニバンならシェビー(シボレー)ブランドのパワーは強烈。クルマの出来はいいんだからあとはイメージ作りと販売戦略が重要。スズキソリオとシェビーバン・ミニでは内容は同じでも、どちらが売れるかは火を見るより明らか。スズキアリーナ店でも買えるようにすると、シェビーバン・ミニは圧倒的に売れるはずだ。そしてクルーズもをそれに引きずられて、盛り上がっている小型車市場で旋風を巻き起こすことも夢じゃない、と思う。
とはいえ、現状では、クルーズはGMのクルマなので、スズキ車の売上としては計算されない。そのあたりがウラの事情なのだろうか?!

公式サイトhttp://www.chevrolet.co.jp/index.html

 
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