キャラクター&開発コンセプト
初志貫徹の快適系ライトクロカン
トヨタRAV4が開拓したライトSUVの市場に、ホンダが'96年に投入した5ドア専用モデルがCR-Vだ。当時のシビックをベースにチョイと仕上げた、クロカンとしては相当に安直なクルマではあったが、ジャストサイズとウォークスルーを可能としたミニバン的な使い勝手の良さやがウケて、たちまち世界中で大ヒット。過去6年の販売実績は100万台を超え、今ではホンダの世界戦略車であるアコード、シビックと並ぶ3本柱の1つとなった。もともとヘビークロカンを持たなかったからゆえ、出来あがったCR-V。それが世界標準となったわけだから、ホンダとしてまさに「棚から牡丹餅」だっただろう。
今年9月、初のフルモデルチェンジによって登場した2代目は、変化を求めるのではなくCR-Vを極めるということに的を絞った。つまりキープコンセプトというわけだが、メカニズムは一新しており、プラットフォームには現行シビックから始まったグローバル・コンパクト・プラットフォーム、エンジンには2.0リッター「i-VTEC」というホンダの新世代パッケージを採用する。また、さらにグローバル性を強めるために新型は英国でも生産され、マーケットは140カ国から160カ国以上に拡大。ライトSUVの世界標準車としての姿勢を一段と明確にしている。
ボディスタイルは同じ5ドアながら、リヤ外観の特徴によって、スペアタイヤを背面装着した「パフォーマ」と床下収納とした「フルマーク」に大別される。駆動方式はパフォーマが4WDのみ。フルマークはFFと4WDが設定されている。ミッションについてはフルマークが、全車4ATの設定であるのに対し、パフォーマは両グレードともに4ATと5MTが設定されている。なお、4WDシステムは、通常はFFで必要に応じて後輪にトルクを配分する「リアルタイム4WD」となっている。
価格帯&グレード展開
価格は187.5~214.8万円
パフォーマ、フルマークともにグレードは「iL」と「iG」の2本立て。価格は最も安い187.8万円(フルマーク・iG・FF)から214.8万円(パフォーマ・iL・4WD)。先代の同スペック・同装備仕様と比べて約1万円安くなっている。
上級グレード「iL」の装備は、「iG」の基本装備に加えてフロントアームレスト、革巻きステアリング、助手席シートアンダートレイ、トノカバー、フォグライト、プライバシーガラス、アルミホイールなどが標準化される。価格差は15万円だから、お得な内容となっている。なお、オーディオは全車、レス設定となっている。
ライバルはトヨタRAV4、日産エクストレイル、三菱パジャロイオ/エアトレック、マツダ・トリビュート。昨年あたりから一気に激戦区になったことで、価格競争も注目されるようになり、今や4WD・ATで200万円というのが、このクラスのスタンダードとなっている。なかでもエアトレックの185万円という安さは驚異的だ。で、今回のCR-Vはというと同じ4WD・ATで、205.8万円。広さ、大きさ、使い勝手を考慮すれば十分納得できる価格と言えども、これまで低価格戦略を推し進めてきたホンダとしては、割高な印象は否めいない。
パッケージング&スタイル
サイズ、デザインお変更点は最小限で、クラス最大級の広さを追求
ボディサイズ(パフォーマ)は全長4490mm×全幅1780mm×全高1710mm、ホイールベース2620mm。全幅こそ30mm拡大されたが、全高は旧型と変わらず、全長に至っては25mmも短縮されている。「シャープ&タフネス」をテーマとしたデザインもほとんど変わっておらず、新鮮味は薄い。しかし、じっくりと先代と比べてみると、細かい部分での変化に気づく。例えば前進したAピラーや、より立てられたサイドウインドウ、高くなったボンネットフード、太くなったクォーターピラー、大型化されたグリルなど。新型はグッとたくましいイメージとなっている。
そんなボリューム感のあるボディに対して、唯一悔やまれるのが貧弱な足回りだ。タイヤのサイズが205/70R15サイズと小さい。見ていて、今にも足がポキッと折れそうな感じ。本当の意味で見た目だけ街乗り専用SUVになってしまったような気がする。まぁ、それはそれでニーズに叶っているのかも知れないが、デザイン的な進歩は見られないのは残念。最近、ホンダのRV勢は、そのような例が多い。「ヒット作の次はキープコンセプト」がホンダの伝統だから、ヒット作は多かった証ではあるが。
ミニバンパッケージをさらに進化
シビックから始まったグローバル・コンパクト・プラットフォームを採用したことによる恩恵は絶大だ。全長が25mm短縮されているのに室内長は65mmも拡大している。同様に室内高は+20mm、室内幅は+35mm。もちろん前後左右のウォークスルーは可(AT車のみ。MT車はシフトがフロア式となっている)。後席はリクライニングに加えて左右独立の170mmロングスライドが新採用され、ダブルフォールディングはヘッドレストを外す手間がなくなった。その代わりにフルフラットと助手席回転シート機能の設定がなくなった。とはいえ得たものと失ったものを勘定すれば、実質的なアレンジの自由度は向上したと考えていいだろう。
また、荷室も大きくなり、荷室長は920~1090mmとクラス最長を誇る。さらにフル乗車時の容量も、エアトレックの420リッター、トリビュートの422リッター、エクストレイルの490リッター、RAV4の492~537リッターをはるかに超える527~628リッターを確保する。タイヤを外さないMTBが2台乗るというのがウリだ。
リヤゲートは先代同様のガラスハッチ付き。実はここにも改善の手が入っており、先代ではハッチを開けてから横開きのゲートを開く2段階操作が必要だったが、新型はそれぞれが独立操作が可能となっている。
以上のように広さ、使い勝手に関しては文句のつけようがない出来映えなのだが、チョット気になったのが乗降性だ。フロアが120mmも低くなっているのに、補強されたサイドシルが大きく出っ張っているおかげで、降りるときにつま先がひっかかりやすい。もちろん雨の日にはズボンの裾が気になる。細かい部分だが、フロアを低くした利点を半減している。
前代未聞? 見栄えを損なわないインパネブレーキレバーを採用
インパネは、一見するとセンター最上部にオーディオ&ナビを配置させている以外、何の変哲もないデザイン。しかし、実はホンダらしく新しい発想が隠されている。特に注目したいのがセンター中央にある収納ボックスだ。上面に開閉バルブがあって、500mlペットボトルが2本収めることができるクーラーボックスとして使える。また、その脇に設置されているAV入力端子を利用すれば、ナビモニターでビデオやテレビゲームが楽しめるようになっている。さらにはセンターパネル部分にはグリップ式のパーキングブレーキレバーが埋め込まれている。最初は「どこにあるの?」と迷ってしまったほど、上手くデザインい溶け込んでいる。このようにホンダならではの新発想を盛り込むことで、デザイン面、機能面の新機軸を打ち出しているわけだ。
が、質感との兼ね合いが上手くいっていないのか、新鮮な感動に乏しいのも確か。質感ではRAV4にかなわないし、機能やアイデアではエクストレイルにはかなわない。そんな中途半端な印象を受ける。随所随所で色や素材を変えるだけで、もっと新鮮味が増すと思うのだが…。
基本性能&ドライブフィール
ホンダ次世代エンジン「i-VTEC」の採用により、排ガスクリーン度はSUV初の★2つを取得
エンジンはストリーム、ステップワゴンで先行採用された2.0リッター直4の「i-VTEC」。もちろん細かい仕様は異なっており、ミッションも先代から一新されている。スペックは最高出力158馬力/6500rpm、最大トルク19.4kgm/4000rpm。先代を8馬力、0.6kgm上回る。クリーン度はSUVクラスでは初となる★2つを取得。10・15モード燃費は1.4km/lアップの13.0km/l(4WD・4AT)。直噴を採用するRAV4の14.0km/lに一歩及ばないものの、トータルな環境性能はSUVとしてトップレベルと言っていいだろう。
足回りは前がストラット、後ろがダブルウィッシュボーン。シビックやストリームと基本は同じだが、パーツ単体はSUV用のもので、味付けも異なる。4WDシステムは先代同様デュアルポンプ式。通常はFFで必要に応じて後輪にトルクを配分するスタンバイ方式で、本格的なオフロードクロカン走行はできないという欠点があるものの、システムが簡素で軽いため燃費悪化や騒音が最小限に抑えられるというメリットは大きい。実際にFFと4WDとの車重の差は40kg、燃費の差は0.4km/lしかない。
オンロードのための走り、その快適性は極めて高い
試乗したのはフルマークの4WDモデル。エンジンの素性がいいだけに、街乗りの走りは文句のない出来映えだ。パワー&ウエイトレシオでは先代と大差ないものの、フィーリング面を含めた実力の差は、数値で表現される以上に大きい。なかでも注目は音振対策で、ステップワゴンでもかなり優秀と感じたのだが、CR-Vは新たにバランサーシャフトを採用しているために、さらに振動が抑えられている。特に高速走行での追い越し加速時など、エンジン音の静かさには驚かされる。
ガサツなところがないから、エンジンの吹け上がりもより軽く感じる。ドタバタした重々しいところは一切なし。十分な低速トルクによって発進にもたつくことはないし、グイッとアクセルを踏めばレッドゾーンの6000回転まできっちり伸びのある加速が体感できる。力強いというより軽快さに終始、徹している走りだ。また、小柄なRAV4・5ドアをも上回る、最小回転半径5.2mを実現したことも見逃せないポイントだ。
パワステはどちらかといえば軽め。しかし、ホンダらしくリニアティのある味付けになっているので、安心感はある。SUVにありがちな大きな上下動も上手く抑えられており、嫌な余韻を残さないスッキリとした乗り味だ。このあたりは高剛性ボディと高性能シャシーがもたらす恩恵とも言っていいだろう。
ただし、やはりというべきか、ハイペースでのワインディング走行は苦手のようだ。ロールそのものは横Gに応じた自然な出方なのだが、タイヤの鳴り始めがはやく、はやい段階で恐怖感を覚えてしまう。無理やりタイヤのグリップ力を増して、その性能を超えたらいきなり横転、というよりはマシであるものの、やはりSUVの肩書きを持つクルマだけに、もう少しスポーツ性能が欲しいところ。現状ではあまりにも頼りなさすぎる。
ここがイイ
何といっても静粛性の高さ。SUVに乗っていることを忘れてしまう。
室内の広さやユーティリティ、様々な部分の使い良さも文句なし。ただそれは先代にもあったもので、それが全て少しずつ良くなっている。安全性、ボディ剛性、対環境性能も同様。フルチェンジしないと良くできない部分を、徹底してやった、という感じだ。
荷室のフロアが外れてテーブルになるのは、ギミックではあるがアウトドアレジャー時に便利でいい。
ここがダメ
内装が細いストライプの入った茶色(サドルという)だったが、若々しさが感じられず×。シートは側面サポートが強いスポーティーなものだが、街乗り中心のクルマの性格には合っていないと思われる。
助手席に運転席と同じカップホルダーがないのも残念。センターテーブルを起こしておけばそこにあるものが使えるが、高めにあった方がいい。それから初めて乗る人のために、駐車ブレーキレバーの使い方はどこかに表記した方がいいだろう。大半の人が始め、ボタンを押しながらちょっと引いて戻すという動作が出来なかった。
総合評価
かつて四駆が好きだった頃(その頃は三菱デリカでアウトドアレジャーへもよく出かけたものだが)、街乗りが快適で、高速移動が楽にでき、ちょっとしたオフも走れるATの4WD車こそが自動車の究極の進化した姿だと思っていた。先代CR-Vはウォークスルーもでき、フラットシートではたいへん寝やすく(下手なミニバン以上)、ミニバン的な要素すらもった理想的な一台であり、「これぞ究極のクルマ」とたいへん感銘を受けたものだ。ホンダ自身が驚くほど売れたことは、こうした部分を特にアウトドアで使うことの多いアメリカ人が評価したからだと思う(価格やファッションの部分も大きいとは思うが)。
そこでヒット車のフルチェンジには定番の、先代の良さをそのまま生かして全てが新しくなるという手法がとられたわけだが、実際のところ、クロカンの形をしたシティカーというCR-Vは、コンセプト的にはもはや一種究極のクルマであり、キープコンセプト以外に変える手はなかったとも言えそうだ。
その結果はひとまず大正解。この分野のクルマの市場が頭打ちな中、RAV4はかなり大胆に変わったことで売れ行きを鈍らせてしまったが、CR-Vは最低でも今までの売れ行きをキープできるはずだ。しかしながら先代よりずっと良くなっているこの新型CR-Vを評価できるか否かは、「変化への挑戦」ということをどう見るか、できまるだろう。
クルマ好きとしては何か変化して欲しかったというのが本音ではないだろうか。あまりにキープコンセプト。特にインテリアは大市場のアメリカで受けそうな、安くて広いという部分が強調されている感じで、エアトレックやエクストレイルのようなチャレンジ心が感じられないのは残念。ホンダは先進性がウリだったはずなのだが、最近ちょっと違うなぁと思うことがある。このクルマにもそれが感じられてしまった。
公式サイト http://www.honda.co.jp/CR-V/
