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キャデラック CTS 2.6新車試乗記(第270回)

Cadillac CTS 2.6

(2.6リッター・5AT・495万円)

 

2003年05月30日

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キャラクター&開発コンセプト

キャデラック復権の第一歩

2003年3月8日に日本で発売されたCTSは、キャデラック初のFRスポーツセダン。500万円を初めて切るキャデラックでもあり、ユーザーの裾野拡大を目指したモデルだ。

コンセプトの「アート&サイエンス」(創造的なデザインと独創的なテクノロジー)は、キャデラック全体の指針でもあって、アートは、例えば彫刻的デザインを持つステルス戦闘機、サイエンスはハイテクの塊であるスペースシャトルがモチーフとして紹介される。

CTSはドイツ・ニュルブルクリンクにある全長21.6km、高低差300メートル以上の通称オールドコースを3年間にわたって走りこみ、同社開発としては久々のFRシャシー「シグマ・アーキテクチャー」の性能を磨いたという。純粋なアメ車にしてニュルで開発したことをここまでアピールするクルマも初めてだろう。

「マトリックス」の続編に登場


映画「マトリックス リローデッド」のワンシーン
(photo:GM)

ちなみにCTSは、映画「マトリックス」(1999年)の続編である「マトリックス リローデッド」(2003年6月公開)に登場。撮影はGMの協力により、CTSとEXT、それぞれ試作車ベースの車両を十数台を使って行われたという。

なお、「マトリックス」第1作で出てきたカッコいい黒塗りのセダンはキャデラックではなく、1960年代の古い(フォードの)リンカーン・コンチネンタル。

価格帯&グレード展開

売れ筋は2.6リッターの495万円

CTSは2.6リッター(495万円)と3.2リッター(595万円)の2グレード構成。いずれもV型6気筒エンジン、5速AT、左・右ハンドル、レザーシート仕様となる。

3.2リッター車は、DVDナビと4連奏MDチェンジャー、電動サンルーフを標準装備。ナビとMDについては、2.6リッター車もプラス40万円で追加可能だ。それらを除くと、両グレードで快適・安全装備にはほとんど差がない。となると売れ筋は2.6リッターか。

アメリカでは4月にCTSの高性能バージョン「CTS-V」が発表された。こちらは5.7リッターV8(400ps)と6速MTを搭載。日本への導入予定は今のところない。

パッケージング&スタイル

「ロー&ワイド」から「ハイ&ナロー」へ。縦目も復活!

目を引くのは「ステルス戦闘機」をモチーフにしたという外観。確かトヨタのWiLL VSのモチーフもそれだったように思うが。エッジが立ったデザインは、最近のキャデラックがショーカーや新型車、はたまた2000年からルマンで走るキャデラックのレーシングカー「ノーススターLMP」に用いるものと同じだ。

試乗中の注目度は高かったが、キャデラックと気付く人は少ない様子。ガソリンスタンドでは「新しいスカイラインですか」と言われた…。とは言え、古典的な「ワイドに低く」といった文法と、正反対に「縦に細長い」前後ビューは新鮮ではある。実際に並べてみると、他のセダンが古く見えるのは確か。そもそもGMやキャデラックは初代コルベットをデザインしたハーリー・アールの頃から先進的なデザインを採用してきたメーカーだ。

ディテールも凝っていて、例えばヘッドライトがそうだ。キャデと言えば横4灯をイメージするが、CTSでは1965年からしばらくキャデラックが採用していた縦4灯を復活させている。後ろのハイマウントストップランプはLEDより反応速度が速く、色ムラもなくて寿命も長いというネオン管。さすがネオンの国、アメリカ? 室内照明も凝っていて、ルームランプを付けるとフットライトが連動するのはムードがあるし、明るくて便利。

Eクラスやアリストとほぼ同じ

全長4850mm×全幅1795mm×全高1460mmはメルセデスならEクラス、BMWなら5シリーズ、トヨタならアリストが近い。ホイールベースの2880mmはミディアムクラスとしては最大級。実際、室内空間はアメ車というより欧州風。つまりゆったり寝そべるタイプではなく、乗員をきちんと座らせるタイプだ。後席の座面を低くしてヘッドルームを稼いだ形跡はない。このクラスのFRセダンとしてまっとうな広さ。シートの造りも良く、居心地は良い。

樹脂の質感は低いが

室内の樹脂の質感は500万円のクルマとして、はっきり低いと言わざるを得ない。特にセンターコンソール周辺は安物のパソコンみたい。とは言え「ライフルの銃床を参考にした」というウッドパーツ(ステアリング、シフトノブ、ドアハンドル)の使い方はうまい。安物感と高級感が同居しており、ひょっとするとそういう効果をワザと狙ったのか?

「260」という数字まで目盛られた針式のスピードメーターは、ボタン一つで単位をキロかマイルか選べる。つまりマイル表示なら時速260マイル(418km/h)まで計測可能ということか? 問題はメーターの視認性が低いことで、特に昼間は見えにくい。常時点灯できれば解決するのだが。

 

ある専門誌では使いにくさが指摘されているスイッチ類だが、操作方法さえ一度覚えれば、意外に便利に感じた。レザーシートの座り心地は良く、山道でもそこそこホールドしてくれる。

 

トランクの広さはそこそこ。ちゃんとダブルリンク式のヒンジを使って、スペースに配慮したところが涙ぐましい。後席を倒してトランクスルーも可能。やれることは全部やった、という感じだ。

基本性能&ドライブフィール

ウインカーレバーが右側にあって驚く

試乗したのは2.6リッター。メモリー付きの電動シートでポジション合わせは楽だが、ステアリングの手動チルトはノッチが荒い。たまたまベストの位置を選ぶことが出来たが、上・中・下、3段階といった感じだ。

驚いたのがウインカーレバーが右だったこと。日本車なら右が当たり前だが、輸入車と言えばあのフォルクスワーゲンでさえ今でも左。CTSの場合はさらに独特の輸入車っぽい雰囲気で、つい左手が動く。国産車と輸入車の間を行ったり来たりする場合、ウインカー操作はクルマに合わせて頭を切り替えるわけだが、CTSに乗る時は「アメ車だけど右」と頭の中を整理する必要あり。いずれにしても、日本市場に合わせてウインカー位置をわざわざ変えたということで、GMの「本気」を感じる。

最小回転半径は5.3メートルで、実際にも小回りが効く。視界が良く、見切りもいいので運転はしやすい。普通の5ナンバーセダンと同じ感覚で運転できる。

何かに似ているが、何にも似ていない

右ハンドルの右ウインカー、中サイズ、回転でパワーを稼ぐエンジンということで、運転していて古典的アメ車らしさは皆無。では、日本車っぽいかというと、そうでもない。ドイツ車に近いが、メルセデスやBMWのような緻密さもない。なんとなく無国籍。各地域の特徴が集まったという意味では、アメリカ「合衆」国らしいクルマと言えるかもしれない。

サスペンションは欧州車風に固めの設定。しかし、扁平タイヤを履いた最新スポーティカーが「バンッ」と音を立てて乗り越える段差も、CTSは何事もなくやり過ごす。乗り心地自体は良く、少なくとも前席はまずまず快適だ。

線が細い2.6。5速ATは最高の出来

182ps、24.9kgmを発揮する2.6リッターV6は、どの回転域でも同じように回り、トルキーとか音がイイとかいったキャラクターには乏しい。豪快な加速を求めるなら、3.2(223ps、30.4kgm)が必要だろう。2.6は欧州と日本向けのみで、北米は今のところその3.2のみ。最近のホンダ車(MDXなど)がそうだったが、CTSのエンジンも空吹かしだと途中でリミッターが働く。エンジン保護のためだろう。

5速ATはGM製の「5L40-E」型。BMWの5シリーズやX5がすでに採用するが、GM車としてはこれが初。Dモードだと6000回転辺りでシフトアップ。ギアをホールドしてもレッド(6500回転以上)手前で自動シフトアップする。しかし、1~3速まではギアがクロスしており、スポーツモードの変速は素早い。エンブレもよく効く。2速ホールド&スポーツモード状態がワインディングではお勧めだ。こと変速スピードに関して言えば、この5速ATは他社の最新型にまったく劣らないか、リードする出来だと感じた。5速MT(ゲトラク製)は日本には導入されない。

ポテンシャルは高そう

前後重量配分は53対47と理想的。身のこなしに切れ味はないが、スムーズに走らせればなかなかスポーティ。飛ばせばTRC(トラクションコントロール)と「スタビリトラック」(ブレーキ制御による車両安定装置)が、危うい挙動を押さえ込む。特に「スタビリトラック」は減速が伴うので、介入の瞬間がよく分かる。高いボディ剛性といった素質の良さやニュルでの修行の成果は伝わってくるが、フィーリング面でさらに磨きがかかれば、と思う。

100km/h巡航は5速トップで2500回転を少し下まわるくらい。直進性も問題なくゆったりとした気分で150km/h以上のハイスピードクルージングが楽しめる。このあたりもアメ車らしからぬところ。全体の静粛性はいまひとつ。参考までにCTS欧州仕様の最高速(発表値)は、2.6リッター(5AT)で206km/h、5MTで223km/h。3.2リッター(5AT)は230km/h、3.2リッター(5MT)は238km/hとなる。

ここがイイ


ちょっと皮肉な言い方になるが、従来のアメ車のイメージでないところ。走る、曲がる、止まるという基本が、日本の道路上で何ら問題ない。欧州車や日本車とまったく同様に違和感なく乗れる。前述のように右にウィンカーレバーがあるし、重めのステアリング、ガッシリとしたボディの感じは、今まで乗ったアメ車では感じられなかったもの。

独自のボディデザインは威圧感があり、小さくなってもキャデらしさを保っている。試乗車のパールホワイトのボディカラーにもかつてのキャデらしさが残っていた。ハードウェアの出来とこうしたデザイン性が独自の個性を生み出していることは評価できるだろう。カッコ悪いとは誰もいわないはず。

ここがダメ

500万円という価格を考えると、走りも、見た目も、質感も、仕上げ的に今一歩。例えばドアを留めるステーとボルトが、ドアを開けるとむき出しになる、というあたりは、やっぱりアメリカ生産車だなと思ってしまう。価格を考えなければ、けして不満足ではないのだが、この価格ならもっと繊細なクルマが買えるので……。同様に、この価格でカーナビが標準でないのも辛いところ。3.2に標準で付くナビはなかなか見やすい位置にあるので、2.6でもぜひ純正で欲しいが……。オプションでは40万円……。

総合評価

ハイテク感のカッコ良さ

米国が世界に誇れるものの筆頭はハイテク軍事力(軍事産業)だろう(もちろん宇宙開発も軍事力といえる)。そのハイテクがもう一つの米国の基幹産業「クルマ」に生かされていないのは、どうにも腑に落ちないところだった。ピンポイント爆撃ができる技術をクルマに活かさない手はないでしょう。特に世界一のメーカーGMのクルマは、ナイトビジョンだけでなく、もっともっとハイテク満載になっても良さそうなものなのに。

CTSはGMが「そうだよな」と気がついて作ったクルマのように思える。まだまだ一気にハイテク満載とはいかないものの、デザインは世界で通用するハイテク軍備のカッコ良さをモチーフにしており、米国だけでなく世界で通用するハードウェア・ソフトウェアで仕立ててみたわけで、その意味ではGMのマーケティングした「クルマのグローバリゼーション」を具現化したものといえるだろう。

世界中をキャデラックが走る日

確かにCTSはいったいどこの(国の)クルマか、と悩んでしまう。日本車の場合、「ドイツ車風」日本車とか、「アメ車風」日本車などとわかりやすいが、CTSはドイツ車風+日本車風にさらにアメ車風までが加わった米国車で、見事にグローバルな車風。これこそがアメリカ流の世界仕様ということになる。そういう意味では、マクドナルドに近いのかも。そしてこの(乗り)味はやがては世界に広まっていくのかも。

マクドナルドが特に旨いと思う人は少ないはず(そんなことはない!という反論も聞こえてきそうだが)。しかし、徹底的に同じ味は、結果的に全世界で受け入れられた。たとえばCTSを中国市場で売り出した時、欧州車や日本車の味に慣らされていない人にとっては、最も気に入る乗り味となるのかもしれない。さらに知名度という点ではマクドナルドに匹敵するキャデラックというブランド力もある。CTSに乗るとキャデラックはアメリカだけでウケるもの、という他メーカーの安堵感は過去のものになりつつある、と実感できるだろう。「世界中をキャデラックの小型車が走り回る日がやってくる」可能性は高い。

試乗車スペック
キャデラック CTS 2.6
(2.6リッター・5AT・495万円)

●形式:GH-AD32F●全長4850mm×全幅1795mm×全高1460mm●ホイールベース:2880mm●車重(車検証記載値):1640kg(F:-+R:-)●エンジン型式:2F●2596cc・DOHC・4バルブ・V型6気筒・縦置● 182ps(134kW)/6000rpm、24.9kgm (244Nm)/3400rpm●10・15モード燃費:8.9km/L●駆動方式:FR●タイヤ:225/50R17(Goodyear Eagle RS-A)●価格:495万円(試乗車:495万円)

公式サイト http://www.cadillac.co.jp/

 
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