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日産 キューブ EX新車試乗記(第241回)

Nissan Cube EX




2002年10月25日

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キャラクター&開発コンセプト

新型もマーチベースだが、デザインは完全に別物

2002年10月8日に発売された2代目キューブは、2月に発売された新型マーチがベース。コンセプトは「マジカルボックス」、広告キャッチコピーは「キューブ。マイ・ルーム」だ。

コンパクトなボディと広い室内が特徴なのは先代モデル通り。それ以上に目を引くのが、気合いの入ったデザインだ。マーチの「丸」に対してキューブは「角」。そのデザインセンスは世界トップを突っ走る!?

マーチとともにベスト10入りを

販売目標は月間7000台。新型マーチが目標の8000台を大幅に上回る月平均1万2000台以上を販売しており、ここはキューブにも期待がかかる。なにしろ、先代のキューブでさえ今年に入ってからも平均5000台以上売れていたのだ。日産としてはこの2台を月間ベスト10に送り込み、トヨタとホンダの間に堂々と割って入りたいところ。発売2週間での受注は1万1500台と絶好調だ。

マーチベースのお手軽車が日産を救った!

初代キューブは1998年デビュー。当時、経営危機にあった日産は新型車開発にリスクが冒せなかった。そこで発売から6年を経過してやや鮮度の落ちたマーチをベースに、四角くて背の高いボディを載せ、言ってみれば妥協だらけで作ったのが「ハイトなワゴン」の初代キューブだった。デザイン面でもパッケージング面でも中途半端だったのは否めないが、これがフタを開けると累計約40万台の大ヒットに。当時、家計の苦しい日産を大いに助けるモデルとなった。日産社員にとって、初代キューブは足を向けて寝られないモデルだろう。

価格帯&グレード展開

ライバルに比べて割安

新型キューブの2WD仕様は廉価版の「BX」(119.8万円)、キーレスやUVカット断熱ガラス、ホイールキャップを持つ「SX」(124.8万円)、インテリジェントキーやオートエアコン、プライバシーガラス、15インチアルミを装備の「EX」(144.2万円 ※今回の試乗車)の3グレード。SXとEXはプラス4.8万円でCVT仕様となる。他は全て4速ATだ。トヨタbBやホンダ・モビリオスパイクといったライバル車に比べて車格が小さいこともあって、割安な価格設定だ。オプションで15インチアルミ(7万円)やインテリジェントキー(3万円)なども追加できる。

e・4WDと呼ばれる電動4WD仕様はSX(142.8万円)とEX(162.2万円)の2グレード。こちらは全車4速AT。

また、新型キューブ発売と同時に、日産の関連会社であるオーテックジャパンは専用エクステリアを持つ特別仕様車「ライダー」を発売した。こちらはSXが149万円(4速AT)~153.8万円(CVT)、e・4WDが167万円。

パッケージング&スタイル

「いちばんいいシカク」

新型キューブのウリは何と言ってもデザインだ。先代の凡庸な(それゆえ人気を得たとも言える)スタイルに対して、完璧にデザインされた新型の「カドをまるめたシカク」は、ショーモデルのように意図が明確で、仕上げも美しい。先代以上に「キューブ」という名にふさわしい外観を獲得する一方、オーバーフェンダーをバッチリ目立たせる「分かりやすさ」も忘れない。タイヤもちゃんと外に張り出しており、サービス精神も旺盛だ。

左右対称より実用的?

もう一つ外装で目を引くのはボディ後部の「左右非対称デザイン」。右側一番後ろのピラーを太くする一方、左側ピラーはガラスで隠して横開きドアを視覚的に強調。左後方がガラス張りでピラーも細いので、後方視界が良いのが最大のメリットだ。右のピラーは太くても特にじゃまにならない。

また、横開きバックドアの利点は狭いところで荷物の出し入れが出来る点。開閉に力も要らない。スペアタイヤを背面に積むSUVに多い方式だが、同クラスではトヨタのファンカーゴが採用する。なお、横開きになったかわりにガラスハッチは廃止された。コスト的にもこれはメリットがあるはず。

先代とほぼ同じサイズ。パッケージングは飛躍的に進歩

サイズは全長3730mm×全幅1670mm×全高1640mm(電動4WDは1650mm)。2430mmのホイールベースは新型マーチと変わらないが、全高はプラス115mmと高い。先代キューブ(全長3750×全幅1610×全高1625mm、ホイールベース2360mm)と比べると、全長は短くなったぐらいなので、要するに前後オーバーハングがバッサリ切り捨てられたわけだ。いずれにしても絶対的にコンパクト。

ミニバン級のヘッドルーム

室内は圧倒的に広くなった。少なくとも視覚上の広さは感動的。それを実現できたのは、エルグランド以上に幅広というルーフのおかげ。なんと先代より285mmもワイド。長さに至っては505mmmも伸びた。よって、頭の周囲の空間がものすごく広い。まさに、走るヘッドルーム。感覚としては2.0リッター以上のミニバンクラスに匹敵。かと言って、むやみやたらと天井が高いだけだった先代と違い、頭の上がスカスカすることもない。逆ハの字のように上に向かって広がる左右のAピラーには、インパクトさえ感じた。

24通りのカラーコーディネイト

冷静に観察すると、腰から下のスペースはフツー。高めのヒップポイントで上体を起こして座るから、狭い感じはない。「ゆったりとしたソファ」をイメージするシートは、豊富なカラーが特徴。エクリュ(薄いベージュ)、モカ(こげ茶)、グラファイト(ダークグレー)の3色。それぞれ生地の表面処理が異なり、それぞれがオシャレ。「P」の形がモチーフというインパネの色合いもそれによって変化。全8色のボディカラーと合わせて、3×8=24通りの組み合わせから選べる(ベースグレードを除く)。

良くも悪くもソファのような後席シート

スライド幅220mmの後席を最後尾ま下げると、「シーマ並み」と資料で謳う後席足元スペースが誕生。やはりソファのようなデザインで、静止状態での座り心地は良い。しかし収納性よりクッションの厚みを優先したと言う割りに、動的な座り心地はあまり良くない。平板な形状で体の押さえが利かず、背もたれの剛性も足りない。ソファだから仕方ないかもしれないが、ちょっと残念な部分だ。前席とフルフラットになるのは若い人にはうれしいかも。快適なベッドスペースとしてくつろげる。

ちなみに後席に座ると嫌でも目に入るのが、天井中央にある内張りの継ぎ目。完成度が高いデザインゆえ、これもちょっと惜しい。とはいえこれこそコスト削減の象徴だろう。一枚と二枚では大きくコストが異なるはず。気にしない人には全く気にならないはずで、これはこれで正解かも。

様々なユーティリティ

新型キューブは室内に数多くの工夫がある。例えば右Cピラー裏に設置された縦型の収納スペース。フックが付いていて、ジャケットをぶら下げるのにすごく便利。車外から見えない点でも画期的。ドリンクホルダーは前席に4つ! 後席用に2つ。その他、フタ付きの小物入れが数多く用意される。いずれもきっちりした造りがいい。

荷室は横1122mm×高さ944mmの四角い開口部を持つ。容量は307~460リッターを謳うが、最大値は後席足元を完全に潰した時のもの。絶対的にはそれほど広くない。開口部の仕切りが高く、重い物の出し入れはやりにくい。

CD値には苦労した

パッケージング的に良いこと尽くめの「シカク」だが、Cd値(空気抵抗係数)には苦労したようだ。結果的には0.345を達成。この手のクルマのCd値は普通、あまりにも数値が悪くて? 発表されないから、こうして数字を公表したこと自体に開発側の自信が見える。

いずれにしろ前面投影面積は限りなく「幅×高さ」に近いクルマゆえ、マーチのようなクルマと比べれば燃費や最高速について不利となるのは否めない。参考までにマーチ14eの10・15モード燃費は18.4km/Lだが、キューブは16.4km/Lとなる(重量差も大きいが)。

基本性能&ドライブフィール

マーチからさらに進歩。パワーは必要十分

試乗したのは最上級グレードEXの前輪駆動。エクストロニックCVT-M6仕様ではなく、通常の4速AT仕様だ。実際の売れ筋は20万近く安いSXと思われるが、走りの部分での違いはタイヤサイズのみ。試乗車はディーラーオプションのDVDナビ・パッケージ(CD・MD付き。18万円)が付いて計162万2000円だ。

前述どおり、広大な頭周りの空間に感心しながらスタート。走り自体は、目をつむって運転すれば(出来ないが)、やっぱりマーチに似ている。マーチの1.4リッターモデル(950kg)に比べて120kg重い1070kgのボディを、同じ98ps/5600rpm、14.0kgm/3200rpmのCR14DEで引っ張るのだが、出足を含めてかったるさはなく、街乗りなら加速に不満を感じることはないだろう。

コラム式4速ATはトルキーなエンジンを生かして、街中では2千回転以下を積極的に使う。だから静粛性もまずまず、慌ただしさもない。4速100km/h巡行は2,500回転を上回る程度。風切り音も思ったより低い。直進性も優れており、高速巡航はなかなか得意だ。その気になれば150㎞/h巡航も可能。遠くに出かけることも、このクルマなら苦にならない。

抜群の取り回し

乗り心地も悪くない。ルノーのようなゆったり感がある、というとほめ過ぎか。後席は前述した通りやや難があるが、前席に関しては不満はない。1070kgと軽めの車重、コンパクトなボディ、頭でっかちな重心位置などを思えば、このあたりが妥協点だろう。見切りは非常に良く、最小回転半径は4.4メートルと小さい。実際、Uターンをした時もステアリングをロックさせずに曲がってしまいちょっと驚いた。

電動パワステはかなり改良されたが

いちおうワインディングでの様子も書くと、オーバーフェンダーの張り出した元気なスタイルにも関わらず、コーナリングは不得意だ。EXは175/60R15(ダンロップのOEMタイヤであるSP SPORT 300)という大径タイヤを履くので限界そのものは高いが、限界を楽しむとなるとちょっと難しい。重心が高いせいかグラッとロールするのが怖いし、電動パワステはマーチより改良されたものの、相変わらず操舵感がやや不自然。いずれも通常の速度域ではほとんど気にならないレベル。かつての走りにこだわる日産だったら、もう少し楽しいハンドリングをねらっただろうが、今はこれで十分、という判断と見た。

新開発「エクストロニックCVT-M6」と「e・4WD」

今回、試乗はできなかったが、新型キューブでは新設計のCVT「エクストロニックCVT-M6」が採用された。プリメーラ等に採用するハイパーCVTの技術を生かし、電磁クラッチをトルコンに変更、変速比のワイド化やロックアップ領域の拡大、リニアな加速感を達成したという。

また、新型マーチに一足早く追加された電動4WD「e・4WD」も採用。これは車体後部のモーターで後輪を駆動する簡易4WD。バッテリーは搭載せず、必要な時だけジェネレーターで発電してモーターを回す。基本的に約30km/h以下でしか作動しない。つまり雪道などでの発進や緊急脱出時に威力を発揮する生活四駆だ。プロペラシャフト等が無いので、省スペース、軽量化、低フリクション、低コストがメリット。デメリットは、フルタイム4WDと違い、高い速度域では走行安定性に寄与しない点だ。

ここがイイ

デザイン秀逸。四角ながら柔らかなラインで描かれており、和み系、ルーズ系のデザイントレンドを見事につかんでいる。これでフェンダーが張り出してなかったらよくある日本車のデザインになりかねないが、縦のラインはわざわざ内側に絞り込み、オーバーフェンダーといえるほどの張り出しを演出している。ボディ四隅に置いたタイヤ、そしてオーバーフェンダーという昔ながらの小型車のデザイン手法を踏襲しており、旧MINIを現代の考えで作るとこうなるという印象だ。それでいて左右非対称(国内専用ボディ)のリアビューは、クルマのデザインに対して新たな自由を与えた、といえる。フロントグリルをリアと逆向きに非対称にしてあると、もっとおもしろいのでは。

室内デザインも秀逸。試乗車のシートはキルティングのような編み目の入った生地だったが、このおしゃれさは今までのクルマにはないもの。前席座面センター部分のスリットに物が挟めたり、座面のふたを開ければティッシュボックス入れが、アームレストのふたを開ければ財布入れが、など機能的ながら趣味よくデザインされている。

装備品では前席コンビニフックが横に二つあるのがいい。一つだと引っかけるだけだが、二つあると袋を開いて引っかけられ、ゴミなどが入れやすい。よく考えればわかりそうなものだが、今までは見たことがない。オプションのインテリジェントキーも使うと離せなくなる。ボタン押すだけでドアが開けられるのはもちろん便利だが、キーを差さなくてもエンジンがかけられるのは最高に便利。若者はキーをジャラジャラたくさん持っているもの。それを出さなくてもいいのだから、文句無しのはず。キーレスエントリーがほぼ標準装備となってきた現在、次はこれが付加価値としてもてはやされるだろう。

センターでなく運転席側に付いたルーフアンテナ、完全に開くリアドアウインドウ、大きく上下リフトする運転席シート、先代同様の後席足元のアンダーボックスなど便利さいっぱい。パーキングブレーキペダルが二度踏みで解除できるのもGOOD。

ここがダメ

もうちょっと運転して楽しいといいな、とか、もうちょっと静かだったらいいな、とか、リアシートがきれいにたためるともっと荷物が載せられるのに、とか。あとは、電動パワステのフィーリングがよくなれば文句無し。

総合評価

日産は2002年度上期連結営業利益が前年同期比84%増に、連結売上高営業利益率は10.6%に急上昇。「ゴーン氏はそのご褒美で、レーシック(近視矯正)手術をうけた」というのは冗談だが、とにかく急激によくなっている。今年になって出すクルマがすべて大ヒット。トップが劇的に変わると、こんなに組織は変わるという好例だ。Z、キューブという二台はゴーン氏になってから開発が進んでおり、デザインにはゴーン氏の意見がかなりはいっているという。確かに、いよいよ日本車離れしたデザインワークになってきている(しかし、あのルノー出身のゴーン氏ゆえ、このぶっ飛び方でもまだ不満があるかも)。クルマのデザインに関してはトヨタもすごいが日産もすごい。ハードウェアとして完成した商品であるクルマは「デザインが勝負」。それが分かっている経営者のいる会社が、今後のびていくのは間違いない。

ところで日産の収益を支えているのがコストダウンであることはよく知られたところ。そんな目でキューブを見ると、見事なまでのコストダウンがわかる。ベースはマーチそのもので、お金はかかっていないし、前述した天井内張の二枚化をはじめ、インパネもドアの内張の質感もチープそのもの。ガラスハッチだって欲しかった。ただそれをデザインワークやパッケージングでフォローしており、全く気にさせないところがうまい。その意味では、キューブは、ハードウェア半分、ソフトウェア半分どころか、ソフトウエアがハードウェアを上回っている。今後のクルマのあり方を示唆するクルマだ。

そして日産は、かつての「技術の日産」から「ソフトの日産」へ変身している。会社がもともと東京・銀座にあるだけに、オシャレさを強調しても嫌みにならないのは強みだ。こればかりは三河のトヨタにはまねできないところ。トヨタはグローバル企業としてそんなことは気にしてないかもしれないが(東京の拠点機能は数年のうちに名古屋に移る)、これって国内マーケティングに対しては今後かなり重要なポイントになるかも。マーチそしてこのキューブは、ソフトな日産、おしゃれな日産、そして東京銀座日産を象徴するクルマだ。

追記:全国各地の日産ギャラリーがキューブのデビューにあわせてリニューアルしている。白ベースのインテリアはオシャレそのもの。そして、ミネラルウォーターを飲めるのが、これまたオシャレ。

試乗車スペック
日産 キューブ EX
(4AT)

●全長3,730mm×全幅1,670mm×全高1,640mm●ホイールベース:2,430mm●車重:1,070kg●エンジン:1,386cc・DOHC・横置き●駆動方式:前輪駆動●98ps/5,600rpm、14.0kgm/3,200rpm●10・15モード燃費:16.4km/L●タイヤ:175/60R15(DUNLOP SP SPORT 300)●価格:144.2万円(試乗車:162.2万円 ※オプション:DVDナビパッケージ 18万円)

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/CUBE/

 
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