キャラクター&開発コンセプト
胴長になって、シートが一つ増えた
2002年10月デビューの2代目キューブは、新型マーチ(2002年2月発売)の派生車種。そのキューブのホイールベースを170mm延長、3列シート・7人乗りとしたのが、翌2003年9月3日に発売されたキューブキュービック(cube3:cubeの3乗と表記)だ。キューブのデザインをほぼ受け継ぎ、メカニズムにも大差はない。外観上の違いはわずかで、フロントの横格子のグリル、リアのエンブレム、そしてよーく見ると胴長のボディといったところだ。
キュービックならではの特徴は、ソファのようなシートを3列並べた点。車名の「cube3」は体積・容積の単位の「立方=3乗」(英語でキュービック)が由来で、同時に数字の「3」で3列シートを表す。まさに名は体を表す良いネーミングだ。広告のキャッチフレーズは「sofa×sofa×sofa」。
キューブ&キュービックで上位進出
販売目標は月間3500台。キューブの販売目標が月間7000台だから、合わせて1万500台。発売直後の9月は合計で1万7512台を達成し、1位カローラと僅差の2位を獲得。10月は少し落ち着いて3位(1万1772台)。11月はカローラ、ウィッシュ、フィットに次いで4位(1万555台)だった。背後には直接のライバル、トヨタ・シエンタが迫る。
7人乗り小型ミニバンは今の売れ線モデル。ヒットの秘密は、全長4メートル前後の小回りが効くボディ、いざという時に7人乗れる利便性、小型車なみの価格だろう。キューブ固有の勝因は、ずばりデザインだ。一方、先駆者のホンダ・モビリオ(スパイク含む)はベスト20圏外まで落ちてしまった。
価格帯&グレード展開
キューブの+15万円で、139.8~164万円
エンジンはキューブと同じ1.4リッターのみ。後輪モーター駆動によるe-4WDは遅れて投入されるだろう。変速機は4ATとエクストロニックCVT-M6が選べる。高い順から「EX」のCVT(164万円)、同4AT(159.2万円)、「SX」のCVT(144.6万円)、同4AT(139.8万円)。2列シートのキューブより15万円高いが、こちらはオーディオが標準装備となる。
EXとSXの差(約20万円)は、プライバシーガラス、インテリジェントキー、オートエアコン、15インチアルミ(SXは14インチスチール)など。オートエアコンを除いて、これらはSXでもオプションで選べるのが親切。特にインテリジェントキー(3万円)はお勧めだ。販売主力はおそらく最も安い「SX」の4ATだろう。
キューブ同様に、オーテックジャパンの特別仕様車「ライダー」も発売されている。こちらは162.8万円(4AT)と167.6万円(CVT)。
パッケージング&スタイル
キューブのロングホイールベース版
全長3900mm×全幅1670mm×全高1645mmとキューブに比べて170mm長いキュービック。ホイールベースもかっきり170mm長く、つまりオーバーハング部分はほぼ共通。実際、真横から注意深く見ないと、両者を見分けるのは困難。異なる点は格子から横桟になったフロントグリル、大きくなったリアドアといったところ。実際にはリアクォーターパネルも専用パーツとなる。デザインを徒に変えなかったのは正解だ。言うなれば、大型セダンをストレッチしたリムジン仕様と同じ発想。それでも、ライバルのシエンタやモビリオより一回り以上小さい。
シンプルだが安っぽくない
内装デザインも基本的に同じだが、シート地や樹脂の表面処理を変えて落ち着いた雰囲気に。対象ユーザーが子供のいる家庭、つまりキュービックより少し高めの年齢層となるからだ。コスト面での割り切りを感じさせる天井内張りの2分割(キューブ譲り)など、高級感はミジンもないが、ヘンな安っぽさもない。デザイン的に配慮が行き届いている。
特に、三つソファを並べたように、ベンチシートを3列揃えたところが面白い。1列目と2列目の大型アームレストが1直線につながって見えるところもデザインコンシャスだ。170mm伸びた分はほとんどサードシート用に使われており、セカンドシート自体は特に広くなっていないようだ。
気になった点は、座面長が短いシート。今の若者向きとは言えない。それに傷が付きやすい樹脂パーツには、撮影中ちょっと気を使った。
いざという時に元を取る
結論から言って、普段は3列目を畳んでおくのが適した使い方だ。3列目の足元スペースはミニマムで、人が座ると2列目にしわ寄せが行く。テレビCMで後席に座らされた欧米人男性は苦しかったはず。頭上後方にはリアガラスが迫り、ちょっと怖い。
とは言うものの、短距離なら十分に使えるし、乗降性は悪くない。乗り心地も意外に良いし、しかもキュービック一番の騒音源であるエンジンから遠いので静かだ。いざという時に「意外に使えるじゃん」と思えれば、十分に元を取った気分になれるだろう。
サードシート使用時の荷室はほぼ皆無。モノを積むなら3列目は畳むことになる。背もたれを倒すと自動的に座面が沈み、フラットな荷室を作る。ヘッドレストを抜く必要があるが、方法は単純で好ましい。外したヘッドレストは荷室の左右に差す。
基本性能&ドライブフィール
100kg増えても十分な加速
試乗したのはエクストロニックCVT-M6仕様。キューブと同じ1.4リッターエンジン(98ps、14.0kgm)だが、車重は100kg増えて1180kgと重い。その分をカバーするため、CVTは少し高めの回転数を使う。普段の加速なら3000~4000回転、全開加速なら5000回転前後。街乗りなら十分な性能だが、加速時は少しノイジー。それでも、今回試乗できなかった4AT車と乗り比べれば、無段変速のスムーズさは魅力かもしれない。CVTらしく100km/h巡航時のエンジン回転数は約2200回転と低い。
街を小粋に流したい
エクストロニックCVT-M6は、コラムシフトレバー先端のボタンを押すとスポーツモードだが、回転数が若干上がるだけで(つまりうるさくなる)、スポーティではない。さらに、ステアリング上の+-ボタンで変速する6速マニュアルモード(自動シフトアップあり。停止時のみ1速へ自動シフトダウン)があるが、このボタンが押しにくく、そもそもこうした機構がクルマやエンジンの性格と合っていない。キューブもキュービックも、本来ストリートを小粋に流すのが似合っている。目を三角にして走るクルマではないのだ。このスイッチはあくまでお遊びと心得た方がいいだろう。
最小回転半径はキューブの4.4メートルより少し増えて4.7メートルだが、相変わらず抜群に小回りが効く。シエンタの5.2メートル(2WD車)より50センチ小さいわけだから、Uターン時の差は大きい。見切りも良く、狭いところでも運転しやすいクルマだ。
やや固めの乗り心地
キューブより足(スプリングやスタビライザー)は固められたが、基本的には似た感じのドライブフィール。乗り心地はやはり少し固めで、段差では軽い突き上げがある。しかし、全体的にはバランスが取れた、しっかりした走行感覚と言えるだろうか。今回は、ポルシェ専門誌を製作する(つまり普段は新旧ポルシェに乗ることが多く、逆に一般の新型車にはほとんど乗らない)スタッフが別のロケに一日使ったが、そのスタッフ全員が「走りも乗り心地も、まったく不満ない」と口を揃えた。
1名や2名乗車より、後席に人を乗せた方が、乗り心地も操縦性もバランスが良かった。7名乗車時まで考慮した足まわりだからだろう。ロードノイズは不思議なくらい小さく、ほとんど聞こえない。
改善された電動パワステ
試乗車は同グレードのキューブと同じ175/60R15という大径タイヤを履くので、タイヤ自体のグリップレベルは高い。山道でもその気になればかなりのハイペースで走れる。最大の理由は、初期のマーチやキューブで軽いばかりだった電動パワステのフィールが著しく改善されたこと。切り始めはそうでもないが、切り増し時は正確かつ自然で安心感があった。クルマ全体の印象にかなり貢献している。
ここがイイ
キューブは日産らしいデザインコンシャスなクルマで、実にオリジナリティに富んだ雰囲気を持っているが、キュービックとなっても一にデザイン、二にデザイン、三にデザインとデザインの3乗で、他車にない雰囲気が楽しい。特に、男の子でも乗れるデザインという点で女性専用のシエンタ、ターゲットのよく分からないモビリオ、なんだか無理のあるカタチのスパイクを凌駕する。この手のクルマの中では、bBとキュービック(キューブ)が男の子の乗れるクルマだ。
電動パワステが大幅に改良され、その結果、クルマ全体の印象がたいへん良くなった。初期のマーチは相当苦しい電動パワステだったが、キューブで改善され、キュービックではまったく問題なしとなった。特に素晴らしいフィーリングではないが、何ら不満を言うこともない。
ここがダメ
ちゃんと走るのだが、乗ってて楽しくはない。せっかくの6速マニュアルモードもダウン側へステアリングボタンが押しにくく、かつ、かえって力の無さばかりを感じてしまう。ダッシュボードにマニュアル・AT切り替えボタンがあるのも使いやすいとはいえない。最高速は150㎞/hに達せず、操縦安定性は欧州だとこのままではちょっと売れないだろうな、と感じるレベル。
インテリジェントキーでロックするためドアハンドルのボタンを押そうとしたら、強烈な静電気ショックを食らってしまった。こんなに便利な装備が満載なのに、静電気対策はなぜなされないのだろう。
総合評価
7人乗れることになったのと引き替えに、重量の増加によるパワー不足といった不満はあるが、素晴らしいインテリア/エクステリアデザインは破綻しておらず、3列シートによる使い勝手の向上は何よりだ。空間的にはなんとか7人が座れるし、2列目、3列目シートをたたむと荷室がフラットになるのもキューブよりいい。電動パワステも不満が無くなった。あとはキューブの項を参考にしてもらっていいだろう。シティカーとして、7人乗れることでさらに使い良くなっている。
とはいえ、発表されたモビリオを見て「やっぱり3列がいる」とばかり、キューブを引き伸ばして作ってしまったのがキュービックなわけで、トヨタがbBを引き伸ばさず、別にシエンタを作ったのと対照的。その意味ではライバル車の中で最も志は低い。画期的だったモビリオ、工夫いっぱいのシエンタと比べると小手先的細工的な感覚は否めないのだ。
今年になってもキューブはずっと販売台数でベスト5に入っているが、キュービックが加わってさらに売れている。クルマ選びはデザインが大きな決め手。キューブのカタチが気に入っていても、多人数が乗れないことで躊躇していた人には朗報だろう。また男女ともに乗れるデザインもキュービックの強み。シエンタは好評だが、オーナーは圧倒的に女性。このように詳細なクラス分けが進むトヨタ車、一発勝負的なホンダ車(上に書いたようにモビリオは2003年11月販売ランキングでベスト20から消えた)に比べ、キュービックは「製作費用」対「販売効果」が高く、ビジネスとしては堅調なはず。日産の躍進はまだ続きそうだ。
試乗車スペック
日産 キューブ キュービック EX
(1.4リッター・CVT・164万円)
●形式:UA-BGZ11●全長3900mm×全幅1670mm×全高1645mm●ホイールベース:2600mm●車重(車検証記載値):1180kg(F:680+R:500)●エンジン型式:CR14DE●1386cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●98ps(72kW)/5600rpm、14.0kgm (137Nm)/3200rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/41L●10・15モード燃費:16.8km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:175/60R15(ダンロップ製 SP SPORT 300)●価格:164万円(試乗車:166.5万円 ※オプション:フォグランプ 1.5万円、撥水加工シート 1.0万円)
公式サイトhttp://www.nissan.co.jp/CUBE/CUBIC/