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日産 キューブ 15X Vセレクション新車試乗記(第544回)

Nissan Cube 15X V Selection

(1.5リッター・CVT・170万1000円)

2代目になって
ちょっと丸くなった?
「ピースフル」キューブは
地キューの平和を目指す!

2009年02月07日

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キャラクター&開発コンセプト

3代目は世界に飛躍

2008年11月19日、6年ぶりのフルモデルチェンジで3代目「キューブ」が発表された(発売日は11月26日)。販売的には初代キューブ(1998年)も成功作だったが、キューブと言えばやはり先の2代目(2002年)だろう。国内専用モデルではあったが、そのコンセプトやデザインは海外でも高く評価された。

3代目キューブはその先代の路線を受け継ぐものだが、大きな変化は今回から北米や欧州にも投入される「グローバルモデル」となったこと。日産によればそれは世界の各マーケットに合わせたグローバルモデル化ではなく、「ジャパンオリジナル」として世界に出て行く、というもの。GT-Rやランエボといった高性能モデルならいざ知らず、量産コンパクトカーではあまり例がなかったパターンだ。

生産(最終組立)は海外輸出分も含めて横須賀市の追浜(おっぱま)工場で行われる。国内の販売目標台数は月間4200台だ。広告コピーは「I'm Peaceful.」。

さらに北米で2009年春に、欧州では2009年秋に発売される。なお左ハンドル仕様は、リアゲートもちゃんと左右逆にされる。

日産>プレスリリース>新型「キューブ」を発売(2008年11月19日) http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2008/_STORY/081119-01-j.html

価格帯&グレード展開

1.5リッター・CVTのみで、144万9000円から


「全段連」(全国段ボール工業組合連合会)に喜ばれたという新色「クラフトダンボール」がテーマカラーだが、試乗車はその名の通りチョコレート色の「ビターショコラ」

エンジンは全車1.5リッター直4。変速機は先代で主力だった4ATが全廃され、全車CVTとなった。グレードは4種類で、ベースグレードの「15S」(144万9000円~)、スエード調クロス生地やプライバシーガラスを使う「15X」(153万3000円~)、さらにインテリジェントキーやオートライトなどを追加した「15X Vセレクション」(170万1000円~)、そしてガラスサンルーフや16インチアルミホイールを装備した最上級グレード「15G」(191万1000円~)となる。オーディオやナビゲーションシステムは全車オプションだ。

なお、15G以外のグレードには「e・4WD」、つまり後輪をモーターで駆動する簡易4WDの「Four」が22万7850円~23万8350円高で設定される。このe・4WDとCVTが組み合わされるのは新型キューブが初となる。

■「15S」(FF)  144万9000円
■「15S Four」(e・4WD)  168万7350円

■「15X」(FF)  153万3000円
■「15X Four」(e・4WD)  176万850円

「15X Vセレクション」(FF)  170万1000円(4AT) ★今週の試乗車
■「15X Four Vセレクション」(e・4WD)  192万8850円

■「15G」(FF)  191万1000円

パッケージング&スタイル

全長は4メートル未満、幅はしっかり5ナンバー枠内

海外に進出する新型キューブだが、ボディサイズ(先代キューブ比)は全長3890mm(+160)×全幅1695mm(+25)×全高1650mm(+10)と5ナンバー幅をしっかりキープ。全長は先代の3列シート版であるキューブキュービック(全長3900mm)に迫るものだが、4メートルを大幅に切っているから十分にコンパクトと言えるだろう。

5ナンバー枠にこだわったのは、開発スタッフによれば「ジャパンスタンダードとして世界に出て行くから」とのことだが、プラットフォームが先代の改良版であることも一因としてはあるだろう。2530mmのホイールベースは先代より100mm長く、キュービックより70mm短い中間値にある。

キューブ(立方体)というよりグローブ(球)?

デザイン的には先代の四角っぽさがずいぶん薄れた新型キューブ。「フォトフレーム」をイメージしたという窓枠は先代以上に「角丸(かどまる)」になり、前後バンパーも丸く膨らんだ。

また、先代ではAピラーをブラックアウトし、ルーフがひさしのように突き出て見えたほか、フロントボンネットが「おでこ」のように出っ張っていたが、新型では代わりにフロントウィンドウとルーフが滑らかにつながり、特にガラスルーフ仕様ではウィンドウとルーフが一体にすら見える。デザイン手法としては、先代とはかなり違うと言えるだろう。おおげさに言えば、キューブ(立方体)というよりグローブ(球)という感じだ。

ちなみに、ちょっとにらみの効いた顔つきは、「サングラスをかけたブルドック」をイメージしたという。ちょっと「天才バカボン」のお巡りさんにも似ている。先代のヘッドライトは丸目でスタートしたが、途中にあったマイナーチェンジで新型に似た横長の楕円になっていた。

 

インテリア&ラゲッジスペース

「マイ・ルーム」ならぬ「マイ・ジャグジー」

「ジャグジーをイメージした」というインテリアは、造形から色合い、質感まで凝りすぎなくらい凝っている。先代は「マイルーム」がうたい文句だったが、新型は「マイ・ジャグジー」といったところか。開発コンセプトの文句に並ぶ「リラックス感」「ピースフル」「ぬくもり」「なじむ」「よりそう」といったキーワードをそのまま形にした世界がそこにはある。

また、試乗車の場合はまるでモップみたい?に毛足の長いフロアカーペット(シャギータイプ)が非クルマ的で目を引く。あるいはジャグジーだから、足ふきマットか? 毛足はなんと2.5センチあるという。とにかくこのモップ風マット、ダッシュボード真上の丸いくぼみにも配置することができる。ダッシュの上に苔が生えているみたいで、まるで盆栽だ。

アンコ、しっかり入ってます

フロントシートはベンチシート風。シートクッションは先代比で最大+40mmと驚くほど厚みがあり、コシを出すため中にSバネを使う念の入れよう。中央のアームレストにもしっかりアンコが詰まっている。先代よりそうとうシート重量は増えたらしいが、それだけに素晴らしい出来だ。ドライビングポジションは、チルト(上下)の調整範囲が狭く、テレスコ(伸縮調整)もないなど、自由度はやや低い。

シート地は素材別に3種類あって、ベースグレードはサラッとした「テクニカルトリコット」(グレーのみ)だが、主力グレードは「キルティングスエード調クロス」と呼ばれる手触りのいい不織布。アルカンターラほど滑らかな触感はないが、その名の通りキルティングのような厚味があり、キューブのキャラクターに合っている。色はベージュと試乗車のようなグレーがある。

すごいのはメーカーオプション扱いの「クラッシュベロア」(ブラウンのみ)と呼ばれる毛足の長い起毛生地だ。色は高級チョコレートケーキのような濃厚なブラウンで、手で触れただけで跡が残る繊細な風合いを持つ。ちょっと、アメリカ人が好きなモコモコのムートン調シートカバーみたい。ビターブラウンの外装に合わせると、内外ともにチョコレート尽くしとなる。これは上級グレードの「15X Vセレクション」か「15G」でしか注文できない。

「Shoji」シェードか、「波紋」天井か


スタイリッシュガラスルーフと「Shoji」シェード
(photo:日産)

ガラスルーフに付いてくる「障子」風のシェードも面白い。その名はずばり「Shojiシェード」で、不織布をフィルムではさんだ3層構造とし、和紙のような見た目と耐久性を両立している。これは「15X Vセレクション」ではオプション(10万5000円)、「15G」には標準装備だ。

一方、ガラスルーフを選択しなくても、お楽しみはある。ノーマルルーフの天井内張りには、ルームライトを中心に「波紋」状の凹凸がつけられており、陰影が楽しめる。思えば先代キューブでは生産性やコストの関係で天井材を泣く泣く前後で2分割していたが、ついに新型でその恨みを晴らしたわけだ。

ソファというよりチェア。もちろん座り心地は良い

ホイールベースが100mmも伸びているので、室内はもちろん先代より広い。後席を一段高くしたシアターレイアウトもかなり大胆に採り入れられている。床の高さはそうでもないが、座面の高さが十分に取られ、ソファではなくリビングチェアという感じでしっかり座れる。座り心地は前席に優るとも劣らないもので、クッションのボリューム感も半端ではない。ルノーとのアライアンスが効いているのか、いつのまにか日産はこの手の「柔らか系」シート作りが本当に巧みになった。ただし座面が高いので、ソファみたいに足を投げ出す感じではなく、背中をシートバックに付けてきちんと座る感じになる。

なお、この後席の中央ヘッドレストと3点式シートベルトは、日産のコンパクトカーとして初の全車標準だという。

荷物を積むならエクストレイルを

先代同様の横開きリアドアを開けると、底は深いが、奥行きのない荷室が現れる。拡大時も背もたれをパタンと前に倒せるだけで、たいして広くはならない。またリアシートは前後にスライドするが、実は座面部分が左右一体なので片側だけ前に寄せることも出来ない。しかし全長3.9メートル未満で、あのリアシートの作りを思えば、ここは納得できるところだろう。アクティブな用途にはエクストレイルなど他に選択肢がある。なお、床下にはテンパータイプのスペアタイヤが収まる。

基本性能&ドライブフィール

1.5リッター+CVTで「ピースフル」な走り

先代キューブは1.4リッターと1.5リッターの2本立てだったが、新型は後者の1.5リッター「HR15DE」(109ps、15.1kgm)に統一された。先代では4ATとCVTだった変速機も、新型ではCVTのみとなっている。車重は先代より100kgほど増えて、FFで約1200kg。先代のキュービックと同じくらいだ。

走りだした直後こそCVT的なルーズさを感じさせる新型キューブだが、CVTによくある滑り感とはちょっと違う。モワッとした独特のマイルドなパワー感で、走りも「リラックス感」「ピースフル」「ぬくもり」というタッチになっており、ドライバーもそれにいつの間にか「なじむ」という感じだ。

最近のクルマでは随一? マシュマロみたいな乗り心地

それ以上にシャシー関係がこれまたホンワカしている。プラットフォームは現行マーチ、先代キューブ、ノート、ティーダ、ブルーバードシルフィなどに使われる「Bプラットフォーム」の発展版であり、マーチ共々デビューから7年以上経つもの。しかし新型キューブ用はサスペンションまわりを抜本的に変更。前後サスをユニットハブベアリング化して支持剛性を大幅にアップしながら、プリロード付きバルブを備えた新型ダンパーや減衰力の大幅な引き下げで、乗り心地を高めたという。

結果、サスペンションは最近のクルマでは珍しいほどソフトで、路面の凹凸を飲み込むようにヒタヒタとよく動く。まるでブッシュにマシュマロでも使ってあるような乗り心地は最近のクルマでは覚えがないものだ。その割に車体の姿勢は安定しており、揺れもほとんど残らない。この乗り心地は販売店でのチョイ乗り試乗でも体感できるはず。乗り心地を重視する人は一発で気に入るだろう。

意外にスポーティな走りもいける

では街乗りだけかと言えばそうでもなく、ワインディングでもよく走る。まずCVTの制御がなかなかいい。マニュアルモードはないが、アクセルを踏み込めばすかさず回転を高めにキープして小気味よく加速。勾配制御なども入った「アダプティブシフトコントロール(ASC)」はちょっとおせっかいに感じることもあるが、登り坂では適度に高めのギア比をキープ、下り坂では適度にエンジンブレーキをかける。なかなか絶妙なセッティングだ。

さらにコラムシフト先端のボタンを押して「S」モードにすれば、回転をもう一段高めにキープ。その気になればちょっとしたスポーティカーも追い回せそうなほど、元気に走れる。試乗車にVDCは装備されておらず(オプション)、タイヤも標準の175/65R15だったが、そうとう追い込んでもヒヤッとする挙動は出ない。サスペンションの支持剛性が高いこと、そしてパワーがそこそこであることが、イイ方向に働いている。もちろん先代でやや発展途上だった電動パワステもすごく良くなった。デザイン的にはそうとう凝っている新型キューブだが、走行性能についても同じくらい細かいところまで吟味した、という印象だ。

ハイスピードはやや苦手だが

100km/h巡航は最も負荷の少ない状況で約2000回転。欧米に出すこともありCd値は見た目によらず0.33と優秀だが、100km/hを越えるとやはり風切り音が高まってくる。Aピラー周辺からというより、どうもフラッシュサーフェス化されていないサイドウィンドウまわりからの音が大きいようだ。

また法定速度を大きく超えるような速度域になってくると、さすがに足まわりが付いてこなくなり、安定感が薄まってくる。しかしそれが風切り音と共に一種の警告となり、またパワー的にもそのあたりが限界なので、結果として不満というところまではいかない。とにかく、自然とすべてが何となく「丸く」収まるように出来ている。

参考までに今回の燃費は、いつもの試乗区間(約110km)で11.3km/L。さらに郊外の一般道を通勤ペースで走り、トータル170kmで11.6km/Lとなった。日産の1.5リッター・CVT車で実質11~12km/Lという数値は、まずまず妥当なところではないかと思う。なお10・15モード燃費は19.2km/L、JC08モード燃費は17.4km/Lだ。

ここがイイ

見事な癒し空間、数々のこだわり、乗り心地、走り、オーディオ・ナビなどのIT機能


(photo:日産自動車)

すごく広いが、広すぎないゆったり感は、まさに理想的。手に触れる部分はみな手触りがよく、目に入るラインはすべて柔らかい。分厚いシートの掛け心地のよさを含めて、くつろぐにはベストと呼べる見事な癒し空間になっている。

後席などはスライドレールをセンター部分に持っていき、これによってシート左右の柔らかさを出すという、こだわりが素晴らしい。豊富な小物入れやモノをはさめるラバーバンド、いっぱいあるフック類も便利だ。ちなみにAピラーが前方に移動した分、ガラスルーフの先端も前方にいったので、運転席頭上のかなり前の方から空が見える。これぞサンルーフだ。素晴らしい。

1980年代のフランス製コンパクトカーを思わせる乗り心地。それでいてワインディングでもけっこう踏ん張って走り、そこもフランス流。CVTの制御が巧みで、コラムシフト先端のSモードボタンを押すと、おいしい回転域を使って力強く走ってくれる。これがけっこう気持ちいい。さらに小回りもよく効く。コンパクトだが、これだけ「大きく見える」クルマで、最小回転半径4.6メートル(16インチタイヤの「15G」のみ5.0メートル)は大したものだ。

純正ナビ(あるいはオーディオ)の位置は高くて、たいへん見やすい。さらにその上(ダッシュ上)にはPNDを置きやすいスペースもある。また純正オーディオはMP3が再生でき、もちろんUSB端子付き。ディスプレイは曲目表示できるタイプで、しかもバックビューモニター組み込み。これとPNDの組み合わせが、安くあげるにはベストだ。さらにお金を出して純正カーウィングスナビをつけると、地図のリアルタイム更新やらグーグルマップとの連動やら、フルセグ表示やら、同じ車種のオーナー同士でのエコランキングやらができる。ちなみに試乗車ではケータイとブルートゥースの接続も簡単にできた。このあたりは実によく考えられている。

ここがダメ

コラムシフトが使いにくい、左Aピラーの死角、風切り音

コラムシフトが使いにくいこと。例えば「L」(ロー)から「D」に戻すときには飛び越えて「R」に入りそうになるし、「P」に戻すときにはしっかり手前に引くなどコツを要する。10年以上前の初代ホンダCR-Vのコラムシフトを思い出した。もう少し操作感を工夫した方が喜ばれるだろうし、ここまできたクルマなのだから、いっそシフトレバーそのものを無くして、ボタン操作でシフトチェンジ、としても良かったのでは。

助手席側のAピラーが太もも並みに太く、それなりに視界を遮ること。チルト(上下)の調整範囲が狭く、テレスコ(伸縮調整)のないステアリングが、ちょっと合わせにくいこと。いずれも慣れてしまえばどうということはないが。

高速走行時の風切り音。スピードを競うクルマではないのだが、高速道路で一般的な流れに乗る領域でも少々気になる。特に常用速度域の高い欧州や米国ではここに不満が出るだろう。

総合評価

ジャパンオリジナルで勝負

先日テレビで空港に着いた外国人観光客にインタビューしていた。50才くらいの米国人(だった?)はどこかの自動車博物館へ行くつもりだという。そこで見たいのはダイハツのミゼットだとか。しかもオリジナルの方じゃなくて、チョイ古の方。あのクルマにすごくオリジナリティを感じているようで、もし新車で買えたらぜひ欲しいと言っていた。もちろん走りとかではなく、デザインに惹かれている。彼にとってはキュートなクルマなのだ。

そんなふうに世界の人にデザインがうける日本車は、けして少なくないと思う。もちろん国によって、また世界の地域によって好みはあるから、日本でのヒット作が彼の国でヒット作になるとは限らない。マーケティングリサーチで売れないと出れば投入されないのは当たり前だが、それでも投入してみたら意外に売れるのでは、なんて思ったりするクルマもけっこうある。「瓢箪から駒」はありえると思うのだ。キューブの場合はそれなりにマーケティングされての世界市場投入だと思うが、ジャパンオリジナルでの勝負は日本人として大きく期待したいところだ。

キューブは本当にジャパンオリジナルなデザインだ。乗り味は何となくフランス車っぽいけど、この日本的なへんてこな形(世界的に見ても相当へんてこな部類に入るデザインと思う)が世界で売れたなら、けっこう痛快、拍手喝采。しかも車幅は1695mmと5ナンバー枠に入っている(ちなみにホンダの新型インサイトもこの幅で世界へ出る)。国際的には狭すぎると言われるこのサイズは、しかし人が二人座るにはけして狭すぎはしない。いや、コンパクトカーなら本来、このくらいの方がいい。最近のコンパクトカーの横幅は広すぎると思うのだ。世界基準のセグメントに収まらない(というか達しない)サイズというのも、個性があっていいのではないか。走りの方はずいぶんしっかりしているし、燃費も悪くないし、性能的にはもう何も問題はないのだから、これこそぜひ世界でヒットして欲しい。

これまでのクルマ商売の根本を変えなくてはいけない

スズキのラパン、そしてキューブと形にオリジナリティのあるクルマが、キープコンセプトでモデルチェンジしたことは喜ばしいと思う。ラパンもそうだが、日本車でもある一定数(たいした台数ではないが)売れているものは形を変えない、という方向ができつつある。オリジナリティのある形はもう変えない方がいい。MINIだってそう。ビートルだって変わっていない。もちろんポルシェ911も。日本車はこれまで変えすぎた。昔から書いているとおり、トヨタ2000GTやいすゞ117クーペ、スバル360等々、今やイコンともいえる形はこんなにあるのに、一切それが活かされていない。スクラップ&ビルトを繰り返すことで成長し、発展してきたのが日本の自動車業界だとすれば、昨今の不況を見るにつけ、もう一度そのやり方を見直す時にきているのではないか。

キューブの宣伝コピーは「くらべない、競わない、ゆっくりいこう」「力まない、ぶつからない、すべてに心を解放しよう」。クルマを人と比較しなければ、スピードや高級感を競わなければ、ゆっくりゆったりのキューブを長く愛でながら乗り続けるという選択肢が出てくる。ただしそれは3年、5年で目新しいクルマへ乗り替えさせようという、これまでのクルマ商売の根本を変えなくてはいけない、ということでもある。つまり「隣のクルマが小さく見えます」から「くらべない、競わない、ゆっくりいこう」への転換。時代は変わる。

そして時代の風は完全にそちらへ吹いている。クルマに強い興味を持つ人はもう数少なくなったし、一台に長く乗る人、乗らざるを得ない人も多い。その時にキューブはいい選択肢だ。クルマを生活の道具とするなら、ベストに近い選択だろう。ただそうすると国内では先代ほど売れないかもしれない。であれば、そのコンセプトを世界へ送り出して、先代並みの台数を稼げばいい。商売としてはそこで何とかバランスを取るわけだ。ビジネスのやり方を変えていかないと自動車産業はもうやばい。オリジナリティがあって、価値が変わらないものをロングテールで売り続ける。そんなビジネスモデルをクルマ業界も考えていく必要があるだろう。キューブこそ、そのモデルパターンになり得ると思う。

試乗車スペック
日産 キューブ 15X Vセレクション
(1.5リッター・CVT・170万1000円)

●初年度登録:2008年11月●形式:DBA-Z12 ●全長3890mm×全幅1695mm×全高1650mm ●ホイールベース:2530mm ●最小回転半径:4.6m ●車重(車検証記載値):1180kg( 720+460 )●乗車定員:5名●エンジン型式:HR15DE ● 1498cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:78.0×78.4mm ●圧縮比:10.5 ● 109ps(80kW)/ 6000rpm、15.1kgm (148Nm)/ 4400rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/45L ●10・15モード燃費:19.2km/L ●JC08モード燃費:17.4km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット/後 トーションビーム ●タイヤ:175/65R15( Bridgestone B250 )●試乗車価格:196万3400円( 含むオプション:日産オリジナルナビゲーションシステム<ワイド2DIN HDDタイプ、ワンセグ付、販売店装着オプション> 23万5100円、シャギーカーペット 2万7300円 )●試乗距離:170km ●試乗日:2009年1月 ●車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

 
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