キャラクター&開発コンセプト
3代目は世界に飛躍
2008年11月19日、6年ぶりのフルモデルチェンジで3代目「キューブ」が発表された(発売日は11月26日)。販売的には初代キューブ(1998年)も成功作だったが、キューブと言えばやはり先の2代目(2002年)だろう。国内専用モデルではあったが、そのコンセプトやデザインは海外でも高く評価された。
3代目キューブはその先代の路線を受け継ぐものだが、大きな変化は今回から北米や欧州にも投入される「グローバルモデル」となったこと。日産によればそれは世界の各マーケットに合わせたグローバルモデル化ではなく、「ジャパンオリジナル」として世界に出て行く、というもの。GT-Rやランエボといった高性能モデルならいざ知らず、量産コンパクトカーではあまり例がなかったパターンだ。
生産(最終組立)は海外輸出分も含めて横須賀市の追浜(おっぱま)工場で行われる。国内の販売目標台数は月間4200台だ。広告コピーは「I'm Peaceful.」。
さらに北米で2009年春に、欧州では2009年秋に発売される。なお左ハンドル仕様は、リアゲートもちゃんと左右逆にされる。
価格帯&グレード展開
1.5リッター・CVTのみで、144万9000円から
エンジンは全車1.5リッター直4。変速機は先代で主力だった4ATが全廃され、全車CVTとなった。グレードは4種類で、ベースグレードの「15S」(144万9000円~)、スエード調クロス生地やプライバシーガラスを使う「15X」(153万3000円~)、さらにインテリジェントキーやオートライトなどを追加した「15X Vセレクション」(170万1000円~)、そしてガラスサンルーフや16インチアルミホイールを装備した最上級グレード「15G」(191万1000円~)となる。オーディオやナビゲーションシステムは全車オプションだ。
なお、15G以外のグレードには「e・4WD」、つまり後輪をモーターで駆動する簡易4WDの「Four」が22万7850円~23万8350円高で設定される。このe・4WDとCVTが組み合わされるのは新型キューブが初となる。
■「15S」(FF) 144万9000円
■「15S Four」(e・4WD) 168万7350円
■「15X」(FF) 153万3000円
■「15X Four」(e・4WD) 176万850円
■「15X Vセレクション」(FF) 170万1000円(4AT) ★今週の試乗車
■「15X Four Vセレクション」(e・4WD) 192万8850円
■「15G」(FF) 191万1000円
パッケージング&スタイル
全長は4メートル未満、幅はしっかり5ナンバー枠内
海外に進出する新型キューブだが、ボディサイズ(先代キューブ比)は全長3890mm(+160)×全幅1695mm(+25)×全高1650mm(+10)と5ナンバー幅をしっかりキープ。全長は先代の3列シート版であるキューブキュービック(全長3900mm)に迫るものだが、4メートルを大幅に切っているから十分にコンパクトと言えるだろう。
5ナンバー枠にこだわったのは、開発スタッフによれば「ジャパンスタンダードとして世界に出て行くから」とのことだが、プラットフォームが先代の改良版であることも一因としてはあるだろう。2530mmのホイールベースは先代より100mm長く、キュービックより70mm短い中間値にある。
キューブ(立方体)というよりグローブ(球)?
デザイン的には先代の四角っぽさがずいぶん薄れた新型キューブ。「フォトフレーム」をイメージしたという窓枠は先代以上に「角丸(かどまる)」になり、前後バンパーも丸く膨らんだ。
また、先代ではAピラーをブラックアウトし、ルーフがひさしのように突き出て見えたほか、フロントボンネットが「おでこ」のように出っ張っていたが、新型では代わりにフロントウィンドウとルーフが滑らかにつながり、特にガラスルーフ仕様ではウィンドウとルーフが一体にすら見える。デザイン手法としては、先代とはかなり違うと言えるだろう。おおげさに言えば、キューブ(立方体)というよりグローブ(球)という感じだ。
ちなみに、ちょっとにらみの効いた顔つきは、「サングラスをかけたブルドック」をイメージしたという。ちょっと「天才バカボン」のお巡りさんにも似ている。先代のヘッドライトは丸目でスタートしたが、途中にあったマイナーチェンジで新型に似た横長の楕円になっていた。
「マイ・ルーム」ならぬ「マイ・ジャグジー」
「ジャグジーをイメージした」というインテリアは、造形から色合い、質感まで凝りすぎなくらい凝っている。先代は「マイルーム」がうたい文句だったが、新型は「マイ・ジャグジー」といったところか。開発コンセプトの文句に並ぶ「リラックス感」「ピースフル」「ぬくもり」「なじむ」「よりそう」といったキーワードをそのまま形にした世界がそこにはある。
また、試乗車の場合はまるでモップみたい?に毛足の長いフロアカーペット(シャギータイプ)が非クルマ的で目を引く。あるいはジャグジーだから、足ふきマットか? 毛足はなんと2.5センチあるという。とにかくこのモップ風マット、ダッシュボード真上の丸いくぼみにも配置することができる。ダッシュの上に苔が生えているみたいで、まるで盆栽だ。
アンコ、しっかり入ってます
フロントシートはベンチシート風。シートクッションは先代比で最大+40mmと驚くほど厚みがあり、コシを出すため中にSバネを使う念の入れよう。中央のアームレストにもしっかりアンコが詰まっている。先代よりそうとうシート重量は増えたらしいが、それだけに素晴らしい出来だ。ドライビングポジションは、チルト(上下)の調整範囲が狭く、テレスコ(伸縮調整)もないなど、自由度はやや低い。
シート地は素材別に3種類あって、ベースグレードはサラッとした「テクニカルトリコット」(グレーのみ)だが、主力グレードは「キルティングスエード調クロス」と呼ばれる手触りのいい不織布。アルカンターラほど滑らかな触感はないが、その名の通りキルティングのような厚味があり、キューブのキャラクターに合っている。色はベージュと試乗車のようなグレーがある。
すごいのはメーカーオプション扱いの「クラッシュベロア」(ブラウンのみ)と呼ばれる毛足の長い起毛生地だ。色は高級チョコレートケーキのような濃厚なブラウンで、手で触れただけで跡が残る繊細な風合いを持つ。ちょっと、アメリカ人が好きなモコモコのムートン調シートカバーみたい。ビターブラウンの外装に合わせると、内外ともにチョコレート尽くしとなる。これは上級グレードの「15X Vセレクション」か「15G」でしか注文できない。
「Shoji」シェードか、「波紋」天井か
ガラスルーフに付いてくる「障子」風のシェードも面白い。その名はずばり「Shojiシェード」で、不織布をフィルムではさんだ3層構造とし、和紙のような見た目と耐久性を両立している。これは「15X Vセレクション」ではオプション(10万5000円)、「15G」には標準装備だ。
一方、ガラスルーフを選択しなくても、お楽しみはある。ノーマルルーフの天井内張りには、ルームライトを中心に「波紋」状の凹凸がつけられており、陰影が楽しめる。思えば先代キューブでは生産性やコストの関係で天井材を泣く泣く前後で2分割していたが、ついに新型でその恨みを晴らしたわけだ。
ソファというよりチェア。もちろん座り心地は良い
ホイールベースが100mmも伸びているので、室内はもちろん先代より広い。後席を一段高くしたシアターレイアウトもかなり大胆に採り入れられている。床の高さはそうでもないが、座面の高さが十分に取られ、ソファではなくリビングチェアという感じでしっかり座れる。座り心地は前席に優るとも劣らないもので、クッションのボリューム感も半端ではない。ルノーとのアライアンスが効いているのか、いつのまにか日産はこの手の「柔らか系」シート作りが本当に巧みになった。ただし座面が高いので、ソファみたいに足を投げ出す感じではなく、背中をシートバックに付けてきちんと座る感じになる。
なお、この後席の中央ヘッドレストと3点式シートベルトは、日産のコンパクトカーとして初の全車標準だという。
荷物を積むならエクストレイルを
先代同様の横開きリアドアを開けると、底は深いが、奥行きのない荷室が現れる。拡大時も背もたれをパタンと前に倒せるだけで、たいして広くはならない。またリアシートは前後にスライドするが、実は座面部分が左右一体なので片側だけ前に寄せることも出来ない。しかし全長3.9メートル未満で、あのリアシートの作りを思えば、ここは納得できるところだろう。アクティブな用途にはエクストレイルなど他に選択肢がある。なお、床下にはテンパータイプのスペアタイヤが収まる。
