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マツダ CX-5 XD新車試乗記(第 660回)

Mazda CX-5 XD

(2.2リッター直4ターボディーゼル・6AT・FF・258万円)

燃費はデミオ並み
トルクはガソリンV8並み!
スーパークリーンディーゼル
CX-5「クロスディー」に試乗!

2012年05月17日

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キャラクター&開発コンセプト

初フルスカイアクティブ。注目は新開発のクリーンディーゼル


東京モーターショー2011に出展されたCX-5

「CX-5」はマツダの新型クロスオーバーSUV。マツダにとっては、アクセラ、アテンザ、デミオに次ぐ基幹車種であり、同時に世界戦略車。また同社が全力で取り組む次世代環境技術「SKYACTIV(スカイアクティブ)技術」を初めて全面採用したモデルでもあり、さらに新デザインテーマ「魂動(こどう)」を採用したモデルの第1弾でもある。

もともとはコンセプトカー「勢(Minagi)」として2011年3月のジュネーブモーターショーでデビュー。「CX-5」と命名された量産モデルは同年9月のフランクフルトショーでデビューし、日本では同年11月の東京モーターショーで公開。2012年2月16日に発売された。

 

エンジンは「スカイアクティブ-G 2.0」こと2リッター直4・直噴ガソリンエンジンと「スカイアクティブ-D 2.2」こと2.2リッター直4・直噴ディーゼルターボの2種類だが、注目は何と言っても後者。14.0の低圧縮比によって従来エンジン比で約15~20%の燃費改善を行ったほか、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction=選択触媒還元)などのNOx(窒素酸化物)後処理装置に頼ることなく、日本のポスト新長期規制、欧州のユーロ6、北米のTier2Bin5といった最新環境基準をクリアした“新世代スーパークリーンディーゼルエンジン”。JC08モード燃費は最高18.6km/L(FF車)となっている。

グローバルで年間16万台以上。すでに20万台規模に増産へ


東京モーターショー2011に展示された「スカイアクティブ-D 2.2」のカットモデル

生産は輸出向けを含めて広島市の宇品工場。国内の月販目標は1000台(年間1万2000台)だが、発売後1ヶ月の累計受注台数はその8倍の約8000台、発売後約2ヶ月(4月末)では約1万6000台を達成。特にディーゼルは当初、全体の5割と想定していたが、実際には8割以上に達しており、これが販売実績を押し上げている。

さらに北米や欧州でも今春から発売され、海外からの受注も予想を大幅に上回る様子。グローバルでの目標台数は16万台以上だったが、すでに20万台規模の増産体制は必至。

なお2006年にデビューした「CX」シリーズの第一弾、CX-7は2011年12月に国内販売を終了。ゆえにCX-5は現時点ではマツダにとって国内唯一のSUVだが、海外ではCX-7と海外専用車のCX-9が引き続き販売されている。

価格帯&グレード展開

ガソリンは205万円~、ディーゼルは258万円~

エンジンは2リッターガソリンと2.2リッターターボディーゼルの2種類で、変速機は共にトルコンの6速AT。i-stop(アイドリングストップ機能)、DSC、6エアバッグ、オートエアコン、サイドモニター&バックガイドモニター(ルームミラーに表示)は全車標準で、アドバンストキーも最も安い20Cを除いて全車標準。オーディオは全車オプションになる。

気になるガソリンとディーゼルの価格差は、装備内容が近い「20S」と「XD」で38万円。実際にはエコカー減税によって、ディーゼルは購入時の自動車取得税と自動車重量税がハイブリッド車並みに100%免税となるほか(ガソリンは75%減税)、保有義務期間などの条件付で最大18万円のクリーンディーゼル補助金を受けることも可能で(ガソリンは10万円のエコカー補助金のみ)、この差はもう少し詰まる。さらにモード燃費が1割以上良く、燃料費が1割以上安く、最大トルクがガソリンの2倍以上となれば、ディーゼルに傾くのもむべなるかな。

 

今回試乗した「XD」(FF)。19インチアルミ&タイヤ、ディスチャージヘッドライトなどはオプション

【ガソリン(SKYACTIV-G 2.0)】+6AT
・最高出力:114kW(155ps)/6000rpm
・最大トルク:196Nm(20.0kgm)/4000rpm
・JC08モード燃費:16.0km/L(FF)/15.6km/L(4WD)
■20C      205万円(FF)
※225/65R17タイヤ&スチールホイール付
■20S      220万円(FF)/241万円(4WD)
※225/65R17タイヤ&アルミホイール、本革巻ステアリング、アドバンストキー付

【ディーゼル(SKYACTIV-D 2.2)】+6AT
・最高出力:129kW(175ps)/4500rpm
・最大トルク:420Nm(42.8kgm)/2000rpm
・JC08モード燃費:18.6km/L(FF)/18.0km/L(4WD)
■XD       258万円(FF)
/279万円(4WD)  ※今回の試乗車
※225/65R17タイヤ&アルミホイール、、本革巻ステアリング、アドバンストキー付
■XD L Package  298万円(FF)/319万円(4WD)
※225/55R19タイヤ&アルミホイール、ディスチャージヘッドランプ、運転席電動レザーシート、SCBS(スマート・シティ・ブレーキ・サポート)付

パッケージング&スタイル

マツダらしくダイナミックな造形

スタイリングはいかにも欧州で受けそうなクロスオーバーSUV風。マツダ的には新デザインテーマ「魂動」の第一弾であり、「生命力と躍動感を研ぎ澄ませた造形」、「獲物に飛びかかろうとするチーターを彷彿とさせる」と訴えるもの。ま、チーターには見えないにしても、獰猛な動物(例えばクマ?)のような印象は受ける。

 

ボディカラーは全6色。写真はブラックマイカ

ノーズ部分にボリューム感を持たせ、そこに5角形の大型グリルを配したフロントデザインは、これから「マツダの顔」として新型車に展開されるはず。CX-7のような端正なカッコ良さではなく、埋没しない個性を打ち出した感じだが、小手先の意匠ではなく、スタイリングでオリジナリティを出そうとしているのがマツダらしい。

欧州流にショート&ワイド


ホイールベースは2700mmで、クラス最長レベル。Cd値は0.33

ボディサイズも欧州車的にショート&ワイド。「コンパクト」と呼ぶのには躊躇するところだが、グローバル基準で言えば「コンパクトクラスのクロスオーバーSUV」であり、国産車で言えば最近フルモデルチェンジしたホンダ CR-V、輸入車で言えばVW ティグアンが近く、このクラスのど真ん中に位置する。1840mmの全幅もクラス平均だが、1705mmの全高と共に、立体駐車場は難しそうだ。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
日産 デュアリス 4315 1780 1615 2630 5.3
アウディ Q3 4385 1830 1615 2605 5.7
VW ティグアン 4430~4460 1810~1865 1690~1710 2605 5.7
マツダ CX-5 4540 1840 1705 2700 5.5
ホンダ CR-V 4535 1820 1685 2620 5.5
トヨタ ヴァンガード 4570 1815~1855 1685~1690 2660 5.3~5.6
日産 エクストレイル 4635 1790 1700 2630 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

メッキ加飾でアクセント。死角はカメラでカバー

インテリアデザインは、マツダらしくシンプルでスポーティ。弓なりになったダッシュボードは手触りのいいソフトパッドでカバー。また夜にはドア内張りやインナードアハンドルのサテンクロームメッキ加飾(本物のアルミに見える)がギラリと光る。アクセルペダルはオルガン式だ。

 

ルームミラーはサイドモニター(写真)とバックガイドモニターを内蔵する

自動防眩機能付ルームミラーは、左サイドと後方を映し出すサイドモニター/バックガイドモニターを内蔵するタイプが全車標準(純正ナビ付はナビ画面にバックガイドモニターを表示)。これは要するにフェンダーの補助ミラー(サイドアンダーミラー)の装着を免れるためのもの。画面が小さくて少々見にくく、サイドモニターを表示させるスイッチを押すのも面倒だが、思い切って全車標準としたところを高く買いたい。

 

試乗車は「XD」だが、オプションでクルーズコントロール(追従機能は全車なし)、SCBS、RVMを装備

写真の「XD」は手動ファブリックシート、「XD Lパッケージ」は電動レザーシートになる
 

【後席】居住性から安全装備まで不満なし


3人掛けも無理なく可能。サイドウインドウは全開する

後席空間に不足はなく、天地方向、横方向、前後方向と全てに余裕がある。シートの前後スライドやリクライニングとかは出来ないが、特に必要がないほど座り心地は良い。乗降性も良い。

衝突安全装備も充実しており、エアバッグは前席フロント、前席サイド、カーテンエアバッグの計6個を標準装備。ちなみに米国IIHS(道路安全保険協会)の衝突安全テストでは、最高評価の「トップセーフティピック2012」を獲得している。IIHSのテスト項目は、約64km/hでのオフセット前面衝突、約50km/hでの側面衝突、約32km/hでの後面衝突時の頚部(けいぶ)保護性能試験など。いずれもCX-5は4段階評価で最高の「GOOD」とのこと。

■外部リンク
IIHS>評価>2013 マツダ CX-5(英語)
YouTube>IIHS>2013 マツダ CX-5 フロントオフセットクラッシュテスト

【荷室】容量も工夫も盛りだくさん


背もたれは流行りの3分割。中央だけ倒すということも可能

トランク容量は通常時で500リッター。数値的にはアテンザより少し少ないが、天地には余裕がある。またトノカバーはリアゲートを開けると連動して上に上がる「カラクリトノカバー」になる(20Cを除く)。類似のものはマツダだけでなく他社モデルにもあるが、なかなか便利。

 

「カラクリトノカバー」に注目。ロールから引き出された部分が透けている

後席の空間が広いので、拡大時の容量は1620リッターと巨大になる。40:20:40分割式の背もたれは、荷室側のリモコンレバーを引くと座面の沈み込みと共に倒れ、ほぼフラットに収納される(カラクリフォールド)。背もたれが3分割なので、レバーも計3つ(左側に2つ、右側に1つ)付いている。

 

全車スペアタイヤレスで、床下には発泡スチロール製の小物収納スペースとパンク修理キットのみ
 

基本性能&ドライブフィール

少しカラカラいうが、それを除けばガソリン車みたい


スカイアクティブDこと、2.2リッター直噴ターボディーゼル。
最高出力:129kW(175ps)/4500rpm
最大トルク:420Nm (42.8kgm)/2000rpm

試乗したのはクリーンディーゼル「XD」のFF。標準グレードだが、試乗車のようなフルオプション仕様なら、手動ファブリックシートを除いて、実質的には上級グレードの「XD Lパッケージ」と同じになる。

まずはステアリング左奥のボタンでエンジンを始動。一般的なディーゼルでは2圧縮目で始動するところを、スカイアクティブ-Dは1圧縮目で着火するとのことで、確かにククッといった瞬間に火が入る。注目のアイドリング音は・・・・・・若干「カラカラカラ」という音は確かに聞こえるが、濁点入りの「ガラガラガラ」では全くなく、ディーゼル的な振動もまったくない。

 

エンジンカバーを取るとこの通り。メカメカした外観が機械オタクを魅了する。透明カバーにして欲しい

アクセルを踏み込めば、普通にスルリと滑らかに走りだす。トルコンATのせいもあると思うが、ある意味ガソリンの直噴ターボ車みたい。6ATはすぐに2速、3速とシフトアップして、回転が高まるスキを与えず、ゆえにエンジン音が高まることも全くない。4リッターV8ガソリン車並みの最大トルク、420Nm (42.8kgm)はわずか2000rpmで発揮されるが、街中での常用回転域は1500回転前後。おおむね1200~1800回転の範囲内で、コロコロと走り続ける。オーディオを消して耳をすませば、加速時にカラカラという音がかすかに聞こえるなど、ディーゼルっぽさが皆無と言えば嘘になるが、音・振関係がかなりガソリン車に近いのも確か。同時に、2000回転以下で大人しく走る限り、超トルクフル、というほどでもなく、この点もちょっとガソリン車っぽい。

2000回転以上でパワーディーゼルに豹変


これは街中で流している時。加速時以外、エンジン回転は1500回転前後がキープされる

とはいえアクセルを躊躇なく踏み込み、エンジン回転が2000回転を超えると、その瞬間にターボディーゼルらしいトルクの塊が盛り上がり、FFで1510~1530kgという車重がフワッと軽くなるように加速する。これぞ420Nmの威力。大小2個のターボチャージャーからなる2ステージ・ターボの過給圧が一気に高まるのが分かる。

加速する割にエンジンの回転数が上がらないのが誠にディーゼル的だが、回転上昇は鈍くない。1速、2速でアクセルを全開にすれば、最高出力175psを発揮する4500rpmオーバーまでシュゥンと一気に吹け上がる。特にマニュアルモードでは自動シフトアップしないので、5200回転からのレッドゾーンに軽く飛び込もうとするほど。昔のディーゼルと違って、エンジンが唸ったり、振動が出たりすることは全くない。

 

パドルシフトはなく、マニュアル操作はシフトレバーのみ。マツダ流に手前に引くとシフトアップ

ちなみに圧縮比はディーゼルエンジンとしては常識外れに低い14.0で、これは狙ったのか、たまたまなのか、デミオの13-スカイアクティブとまったく同じ。一般的なディーゼルは16~18くらいで、エクストレイルの20GTでも15.6だ。

変速機はガソリン車も含めて全車、新開発の6速AT。「7速、8速、アタリマエ~」な今、6速というスペックに特別なインパクトはないが、これもロックアップ領域の拡大などを図った「SKYACTIV-DRIVE」と称する新世代AT。街乗りでは3速と4速のステップ比がやや大きく、ともすると3速で2000回転近くまで引っ張るのが少し気になったが、だからといってどうというわけではない。

ディーゼルでも優秀なi-stop

もちろん信号で止まれば、i-stopことアイドリング・ストップ機能が作動。基本的には停車すれば、ほぼ確実にエンジンを止めてくれる。再始動時間は、ディーゼルエンジンで世界最速の0.4秒とのこと。おかげでブレーキを離せばククッとスターターが回る間もなく火が入る。ヒルホルダーのおかげもあって坂道発進でも下がることはない。

細かいことを言えば、ガソリン車のi-stopに比べると、始動時の振動とノイズは大きめで、アイドリングストップ自体に慣れていない人には違和感があるかも。しかし他社の一部アイドリングストップ機能と比較すれば、むしろディーゼル用のi-stopの方がよく出来ている、というレベル。いちおうセラミック製グロープラグも装備しているようだが、基本的には自然着火だから、始動性の良さは驚異的。もちろん、いちいち止まったり始動したりするのがイヤなら、i-stopをオフにすることも出来るし、ブレーキを軽く踏むことで作動せないことも出来るが、そうするより慣れてしまう方が早い。

低速用の自動ブレーキ「SCBS」を採用


SCBS用のレーザーセンサーはフロントウインドウ上部に配置

CX-5には、約4~30km/hで走行中、前方の障害物をレーザーセンサーで監視し、自動ブレーキで衝突被害の軽減を図る「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」が採用されている(XDにオプション、XD Lパッケージに標準装備)。

機能としてはボルボのシティセーフティと似たもので、あくまでも低速での追突回避・被害軽減やAT誤操作発進抑制を狙ったもの(歩行者には反応しない)。安全運転する限りは作動せず、付いているのか付いていないのかよく分からないくらいのものだが、壁が迫っているところでアクセルを踏むと「BRAKE」と警告表示されたので、「ああ、付いてるな」と実感。まあ、こういうものは普段は忘れているくらいがちょうどいいかも。

また、SCBSやクルーズコントロールとセットで付いてくるのが、「リア・ビークル・モニタリングシステム(RVM)」。これも機能としてはボルボやドイツ車など他社ですでに見られるもので、走行中に斜め後方の死角を監視し、車両が接近してくると車線変更時などにドライバーに音と光で警告するもの。ボルボのBLISはCCDカメラ(画像認識)を使うが、マツダがアテンザから採用しているものは24GHzレーダーを使う。

このSCBS、RVM、クルーズコントロール(追従機能はない)は、標準グレード用のオプションでもセットで7万8750円と不思議なくらい格安。営業マンならずとも、装着をおすすめしたくなる。

高速道路での走りは素晴らしいの一言


Cd値は0.33で、SUVとしてはかなり優秀

CX-5の良さが最も発揮される場所、それはもう間違いなく高速道路。100km/h巡航は6速トップで約1800回転。すごいのはそこからアクセルを踏み込むと、キックダウンなしでグングン加速してゆくこと。エンジン回転が上がらないのに速度は伸びる、という感覚は、ガソリン車に慣れた身にはかなり新鮮。100km/hを超えた後は、130km/hだろうが、150km/hだろうが、体感スピードは変わらないはず。仮に150km/h出しても約2700回転で平穏に巡航できるし、巡航時の疾走感は素晴らしいの一言。日本では大手を振って味わえないのが、あまりに残念。

ただ、馬力自体は175psに過ぎず、ディーゼル特有の、絶頂感のない加速感のせいか、ガソリン車のようなパワー感はない。また加速自体も160km/hあたりから伸びなくなる。ちなみに日本仕様は180km/h+αで速度リミッターが働くはずだが、UK仕様(2.2ディーゼル・175ps版の4WD・6AT)の最高速は127mph(204km/h)とある。

なお、こうしたハイスピード域では試乗車がFFだったこともあり、ややリアのスタイビリティが心もとなくなってくる。目線の高さやFFであるという先入観もあるが、よく出来たフルタイム4WD車のような絶対的な盤石感はない。と言っても、日本では一般的ではない速度域の話だが。

もちろん高速域での快適性も文句なし。Aピラーやドアミラー付近で風切り音がザワザワと高まるが、これはエンジン音やロードノイズといった他の音源が際立って静かだから。特にロードノイズは、欧州製SUVに負けないくらい静かだと思った。

■外部リンク
Mazda Motors UK>CX-5>スペック(英語) http://www.mazda.co.uk/showroom/cx-5/specs/

FFの場合、ワインディングは腹八分目で


19インチタイヤ(XDはオプション、XD Lパッケージは標準装備)は、トーヨーのProxes R36。完全なるサマータイヤ

今どき、FFベースのクロスオーバーSUVでハンドリングが良くないクルマなど皆無だが、CX-5はさすがマツダ車だけあって、動きは軽快。ステアリングを切り込めば、ノーズがスッとインに向き、対角線方向に軽くロールしながらボディ全体でヒラリと曲がってゆく。試乗車は19インチ仕様だったせいか、操舵に対する反応やグリップにも不満はない。7~8割くらいで走る分においては、アンダーステア感もなく、ブレーキもよく効く。アクセラみたい、とは言わないが、ハンドリングはスポーティ。

とはいえ試乗車はFFだったせいか、コーナー旋回中にステアリングを素早く切り増す、みたいなことをすると、ボディ上屋がそれについて行けない感じが出る。アンダーステアが出る間もなく、DSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロール)のブレーキ制御がトトトッと断続的に介入して軌跡が膨らむのを防ぐが、やはり絶対的なフロントヘビー感は否めないところ。前後重量配分は車検証で、950kg+580kg(62:38)と、FF車としては一般的なレベルなので、原因がエンジン重量なのか、エンジン重心位置なのか、あるいは単純にアクセルオフに対するエンジンブレーキの効きの弱さ(常用回転域が低いせいもありエンブレが弱い)なのか、ちょっと分からないが。いずれにしても、最大トルクが420Nmもあるので、電子デバイスなしでFF車の設定はありえなかったはず。

試乗燃費は11.0~16.6km/L。JC08モードはFFで18.6km/L、4WDで18.0km/L


「i-DM(インテリジェント・ドライブ・マスター」に褒められた時の図(16.3km/Lを出した直後)。ステアリング操作が急だと「滑らかなハンドル操作を心がけましょう」と出る

今回はトータルで約250kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、いつものように様々なパターンで一般道と高速道路を走った区間(約90km)が11.0km/L。一般道でエコドライブに徹した走った区間(約30kmを2回計測)が16.3km/Lと16.6km/Lだった。

ちなみにJC08モード燃費は、FFで18.6km/L、4WDで18.0km/L。実用燃費は2000回転以下か、2000回転以上回すかで大きく異なるが、高速道路を法定速度で淡々と流せば、JC08モード燃費も十分に狙えそう。燃料タンク容量は56リッター(FF)/58リッター(4WD)だ。

 

2012年5月17日、愛知県の某ガソリンスタンドにて

ちなみに2012年5月現在、ガソリンの全国平均価格はリッターあたりハイオクが約155円、レギュラーが約145円。軽油は約125円なので(今回入れたところも125円)、ハイオクよりは30円(約19%)安く、レギュラーより20円(約14%)安くなる。

なお、国内で唯一のライバル車、エクストレイル 20GT(4WDのみ)のJC08モード燃費は、6ATが13.8km/Lで、6MTが14.2km/L。燃料タンク容量は65リッターになる。

ここがイイ

トルクフルな走り、取り回しの良さ、先進安全装備

何と言ってもディーゼルの走り。燃費に加えて、やはりこの強力なトルクは魅力。「やはりクルマはパワーよりもトルク」と認識させられる。また、エンジンを上まで回さなくても加速するという、ディーゼル特有の乗り味は、ガソリン車とは異質だが、それゆえにガソリン車に慣れ親しんできた人間には新鮮。一昔、ふた昔前のディーゼルにあった、ガラガラ音、振動、吹け上がりの重さ、黒煙、匂いといったものはもはや皆無で、まさに内燃機関の進化というものが感じられるが、はっきり言ってそんな昔と比べることなど必要ないくらい最新エンジンとして素晴らしい出来。

乗ってみると意外にコンパクトで、狭いところでも困らないこと。最小回転半径は5.5メートルとまずまず小さく、実際のところ小回りもよく効く。あるいはよく効く感じがする。左フェンダーにつける例の補助ミラーを廃するため、ルームミラー一体型のモニターが全車標準になっているのも評価したいところ。視認性が悪く、いまいち役に立たない感じはするが。

 
cx-5_08sw_15.jpg

ブレーキ自動制御で衝突被害の軽減を図る「SCBS(スマート・シティ・ブレーキ・サポート)」&AT誤発進抑制制御、24GHzレーダーを使ったリア・ビークル・モニタリング・システム(RVM)、クルーズコントロールといった安全装備をセットにした「セーフティクルーズパッケージ」の設定(20SとXDに7万8750円のセットオプション、XD Lパッケージに標準装備)。スカイアクティブ技術の影に隠れて目立たないトピックだが、普通に考えれば「安全」は、燃費や経済性などより、はるかに重要な問題。ディーゼルの投入だけでなく、さりげなくこうした装備を採用してきたことは評価できる。特に20SやXDにも、格安の7万8750円で設定したのは英断。マツダの心意気に応えるためにも、注文すべきだと思う。

ハロゲンでも十分に明るいと思うが、AFS機能付のディスチャージヘッドランプ(20SとXDに8万円のセットオプション、XD Lパッケージに標準装備)は、速度やステアリングの舵角に応じて光軸をよく変えてくれるし、もちろん明るい。オートライトとオートワイパーもセットで付いてくるので、迷うくらいなら装着をおすすめしたい。

ここがダメ

あえて言えば標準グレードのシート。美味しい速度域の高さ

好みや体型にもよるかもしれないが、シート。大柄で、全体にクッションが柔らかいタイプであり、特に腰まわり、いわゆるランバーサポート部のクッションが柔らかい。これがちょっと昔のアメ車というか日本車みたいで、何とも体が落ち着かず、モジモジした感じになりやすかった。試乗したXDの場合は手動式シートで、座面の角度やランバー調整が出来なかったせいかもしれない。XD Lパッケージでは、座面角度やランバーサポートも調整できる電動10ウェイのレザーシートが標準装備になるので、気になる方はそちらもチェックを。

試乗インプレッションでも表現に困ったが、このディーゼルターボで一番気持ちのいい速度域が、本音で言えば130~150km/hという速度域であること。とにかく100km/hから上はスピード感や快適性にほとんど差がないので、新東名のような場所ではスピード超過に要注意。知らないうちに速度が上がってしまうのを防ぐためにも、クルーズコントロールは必須かも。

オーディオやナビは実質的に全て販売店オプションで、試乗車にはパイオニアのフルセグ付メモリーナビ(20万7900円)が装着されていたが、純正装着でメリットがあるとすれば、ステアリングスイッチが使えることくらいか。ある意味、純正ナビの存在意義が急速に薄れつつある今、ナビなどの操作インターフェイスに何の取り組みもないのは戦略として正しいのかもしれないが、物足りなさは残る。5年前に乗ったCX-7にはトヨタと提携した通信型ナビが用意されていたのだが。操作系と言えば、シフトレバーなども旧態然としていて、何か新しさが欲しいところ。

後席背もたれを畳んだ時に、カチッとロックしそうで、ロックしないのがちょっと惜しい(実用上、何の問題もないが)。あと、リアゲートを閉める時、ドアハンドル(単なる凹み)に手を掛けにくいのはけっこう気になった。CX-7ではリモコンキーがクレジットカードサイズだったが、それは完全に消え失せた。しかし選択肢として残しておいて欲しかったと思う。

総合評価

燃料代はCX-7の1/3程度

乗ってすぐに分かるのは世界を相手に戦う極東の小メーカー、マツダ渾身の一台であること。トルクグイグイという走りの出来の良さに関しては、誰もがまず褒めずにはいられないはずだ。ただそこでふと、CX-5の記事を書く前に、モーターデイズのCX-7の記事(2007年)を読みなおしてみた。で、あれっと思ったのは、車両の話ではなく、サラリーマンの年収に関しての記述。CX-7の原稿は5年前だが、そこからさらに5年ほど前、つまり今から約10年前、2002年頃の国税庁の統計では、男性サラリーマンの平均年収は、20~24才が280万円、25から29才が388万円、30から34才が483万円だったという。ずいぶん多いのじゃないかと思い調べてみたら、直近のデータは見つからなかったが、2年前(平成22年)のものがあり、それぞれ269万円、366万円、432万円に下がっていた。それでも結構高めの水準に思える人も多いはず。これは地域によって、かなり差があるからだろう。給与水準の高い東京では、新卒でも280万程度の年収が普通のようだ。とはいえ10年前より確実に下がってきている。日本の若い人はどんどん貧乏になっているのだ。人が減り、給与が下がる。クルマが売れないわけだ。

 

で、CX-5の話に戻るが、まず評価すべきは、その手頃な価格だろう。ガソリンなら205万円から、ディーゼルだと258万円からという価格は、基本的に高価な印象のあるSUVにとって、かなり手頃に感じられる。ちなみにほぼ同サイズのアウディ Q3は2リッターターボのクワトロ(フルタイム4WD)になるが、409万円もする。昨今はさらに減税(もちろん値引きも)が加わるから、支払い価格はもっと安くなる。

とはいえエコカー補助金の予定枠がいついっぱいになるのか、5月18日の時点でははっきりしていない。補助金は麻薬のようなもの。とはいえ無くなると実際に売れ行きに響くのが困ったところだ。いずれにしても、これだけ立派なサイズのSUVがこのくらいの価格で買えるなら、24歳までの人ではちょっと無理としても、それ以上の人には現実的に考えられる価格だろう。一部の都市生活者以外、給与が下がろうと、クルマは必要なものなのだから。

安いといえば燃料代もだ。燃費はCX-7に比べて笑えるほど良くなっている。CX-7(4WD)の2.3リッターターボがプレミアムガソリン仕様で10・15モード:8.9km/L、我々の試乗では5.5km/Lしか走らなかったことを思うと、試乗したCX-5 ディーゼルでは、燃料代が1/3程度で済んでしまう。そのうえCX-7で不足気味と書いたトルクは、有り余るほどあるわけで、国内では実質的に後継車となるCX-5が段違いに進化しているのがわかるだろう。昔オフロード四駆ブームの頃は、ディーゼルだからあれだけ大きなクルマでも維持できたもの。CX-5も感覚的には一昔前の軽自動車以上の燃費だから、燃料コストはかなり安いと言っていい。

長い期間、たくさん距離を走ってこそ価値がある

さて肝心のディーゼルエンジンの話だが、最近はよく分からなくなってきた。何が分からないか。まずディーゼルに乗ってCO2を削減すべきか、だ。CO2削減のためにはガソリン車よりディーゼル車がいいというのは確かなのだが、そもそもCO2はそんなに問題なのか。震災以降、さまざまな常識を疑わざるを得なくなってしまったが、CO2問題も今となっては一種のプロパガンダとも思えてしまう。欧州でディーゼルが売れているのは、環境性能というより、大トルクによる走りの性能とか、航続距離の長さとか、何より経済性のためという話。今でこそ、CX-5のようなクリーンディーゼルが登場してきているが、欧州のディーゼルがすべてクリーンだったとは言いづらいのだし。

メルセデスのEクラスディーゼル(E350 ブルーテック)では、振動にしろ音にしろ気にならなくなっているものの、日本においてわざわざ高級車をディーゼルで乗る必要はないのではと書いた。とはいえCX-5なら、経済性だけでもディーゼルが選択肢となるだろう。まして音も振動もすっかり気にならなくなっていて、さらに圧倒的なトルクが得られるのだから。こういう大トルク車に乗ると、クルマの良さはやはりトルク感にあるなと思う。気持ちいい走りは、トルクがもたらすものだと実感するはずだ。

さらにCX-5の場合、ディーゼルの音や振動をキャビンに通さないよう、入念な遮音・制振対策がなされていて、さらに快適性が高まっているのもいい。雨の高速クルージングも本当に静か。本文にあるようにアイドリングストップにさえ慣れれば、他に何も不満がないクルマとなる。つまりCX-5のディーゼルは、当然のことながら環境よりディーゼルのもたらす経済性の高さ、トルクフルな走りにその本質があるように思う。給与が下がり続ける昨今、それらは素晴らしいことだ。

 

と褒めておいてなんだが、昔のディーゼルエンジンを知る身としては、10年10万km、あるいはそれ以上の距離を走った場合、振動はどうなのか、日本のように低速走行ばかりした場合、DPFは大丈夫か、などと一抹の不安が心をよぎる。日本では今後、長期保有する人が増えると思うし、ディーゼル車は長い期間、たくさん距離を走ってこそ価値があるもの。欧州の人たちのようにクルマをメンテナンスしながら乗り続ける文化があればいいのだが、日本人だと乗りっぱなしで不満ばかり言いそう。10年後に「心配は杞憂にすぎなかった」とレポートしたいものだ。

試乗車スペック
マツダ CX-5 XD
(2.2リッター直4ターボディーゼル・6AT・FF・258万円)

●初年度登録:2012年3月●形式:LDA-KE2FW ●全長4540mm×全幅1840mm×全高1705mm ●ホイールベース:2700mm ●最小回転半径:5.5m ●車重(車検証記載値):1530kg(950+580) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:SH-VPTS ●排気量・エンジン種類:2188cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・直噴ターボディーゼル・横置 ●ボア×ストローク:86.0×94.2mm ●圧縮比:14.0 ●最高出力:129kW(175ps)/4500rpm ●最大トルク:420Nm (42.8kgm)/2000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:軽油/56L ●10・15モード燃費:19.4km/L ●JC08モード燃費:18.6km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 マルチリンク+コイル ●タイヤ:225/55R19(Toyo Proxes R36) ●試乗車価格(概算):302万9150円  ※オプション:ディスチャージパッケージ(ディスチャージヘッドランプ+AFS+オートライト+レインセンサーワイパー) 8万円、セーフティクルーズパッケージ(クルーズコントロール+RVM+SCBS&AT誤発進抑制制御)7万8750円、225/55R19+19インチアルミホイール 5万2500円、パイオニア製メモリーナビゲーション 20万7900円、フロアマット 3万円 ●ボディカラー:ブラックマイカ ●試乗距離:約250km ●試乗日:2012年5月 ●車両協力:東海マツダ販売株式会社

 
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