キャラクター&開発コンセプト
3代目は大人のための高級ハッチバック
2008年3月にジュネーブショーで発表された新型デルタは、初代(1979~95年)、2代目(1993~2000年、日本への正規輸入はなし)に続く3代目。今回の新型は約8年ぶりの復活となる。
デルタと言えば初代デルタ、特にWRC(世界ラリー選手権)で1987年から1992年までメイクスタイトル6連覇を達成した高性能ターボ4WDモデルが有名だが、今回の3代目はそれとはまったく異なり、フィアット傘下の高級車ブランドであるランチアらしい、大人のための高級ハッチバックとなっている。
なおランチアの日本への正規輸入は1996年から途絶えているが、この新型デルタを機にフィアット グループ オートモービルズ ジャパンが正規輸入に乗り出すという噂もあった。しかし現在のところ、それは見送られており、今回もイタリア車の老舗である株式会社ガレーヂ伊太利屋(東京都港区)が2008年末から並行輸入をスタートしている。同社から供給を受けるランチア販売店は2009年4月現在、全国に約30拠点ある。
■ガレーヂ伊太利屋>ランチア ディーラー ネットワーク
価格帯&グレード展開
1.4のガソリンターボ(6MT)と1.6のディーゼルターボ(6速セミAT)で400万円前後
今回ガレーヂ伊太利屋が輸入するのは2モデルで、1.4リッター直4ターボの「1.4 ターボジェット」(6MT)、および1.6リッター直4ディーゼルターボの「1.6 マルチジェット」(6速セミAT)。いずれも左ハンドルで、レザー&アルカンタラのコンビシート、オートエアコン、CD・FM/AMオーディオ、6エアバッグ、リアパーキングセンサーなどを標準装備する。
オプションはフルレザーシート(21万円)、電動サンルーフ(12万6000円)、アダプティブ・キセノンヘッドライト(15万7500円)、ルーフ色を塗り分けるランチアお得意の「Bカラー」ペイント(15万7500円)、BOSEサウンドシステム(10万5000円)など。
■1.4 ターボジェット 1.4L直4ターボ(150ps、21.0kgm) 398万円
■1.6 マルチジェット 1.6L直4ディーゼルターボ(120ps、31.0kgm) 428万円 ★今週の試乗車
パッケージング&スタイル
圧倒的な個性と存在感
まずは、いい意味で「得体が知れない」デザインに度肝を抜かれる。なにぶん日本ではメジャーとは言えないブランドと車種ということで、多少クルマに詳しい人でも一見するだけではどういったクルマで、値段がどのくらいなのか見当すら付かないだろう。
ボディタイプはいわゆる一般的な5ドアハッチバックに過ぎず、サイズも全長4520mm×全幅1797mm×全高1499mmと、ボルボのV50やマツダ・アクセラと同程度だ。プラットフォームは新型フィアット・ブラーボとシェアされるもの。しかし新型デルタのスタイリングからは、そんなことなど関係ないと言わんばかりの圧倒的な存在感が感じられる。SUV的なスタイルでもあり、ちょっと車高を上げてクロスオーバー風にしても似合いそうだ。
ちなみにデザインの基となったのは、ランチア創業100周年の2006年にヴェネツィア国際映画祭で発表された「ランチア デルタ HPE」だ。結果的にはほぼそのままのデザインで市販化されたことになる。
なお、試乗車はランチアがイプシロンなどで採用している「Bカラー」と呼ばれる2トーンのオプション塗装を施したもの。ピラーとルーフがガンメタリックとなり、デザインの異質さを強調している。
ヒエラルキーに縛られたドイツ車を打ち負かす
インテリアはランチアらしい、まさに「エレガント」という言葉が似合うもの。内装色はブラック、ブルー、ベージュと3色あるが、試乗車はブルーだ。ランチアの旗艦であるテージスのようなイタリア家具のごとき高級感はないが、日本の高級車は当然としてドイツ車とも、はたまたアルファロメオやマセラティとも違う独特の「品」が感じられる。そのクラスレス感には、ヒエラルキーで細かくセグメント分けされたドイツ車を打ち負かす魅力がある。
ランチアのグリルとバッジをモチーフにした空調吹き出し口などのデザイン的な遊びも面白い。よく見るとフィアット車と共有されるパーツも多く、スイッチの操作感もマチマチだったり、ガサガサしていたりするが、イタリア的な感性で言えば「それがどうした? カッコいいだろ?」といったところだろう。
あと、夜になって初めて気付くのが車内のあちこちに、レクサスのような白いLED(風?)の照明が仕込まれていること。ドアのインナーノブは、まるでメッキが光を反射しているように光るし、シフトレバー周辺の枠が白く光っているように見えるのは裏側からの間接照明だ。メーターやスイッチの透過照明も美しく、なかなか雰囲気がある。
標準仕様のシート素材はアルカンタラとレザーのコンビだが、そのアルカンタラの使い方がこれまた巧い。座面と背面に使い、そこに細いレザーで縦縞を入れただけのものだが、イタリア車ならではの微妙なセンスが感じられる。オプションでフルレザー(アルファでも使われているポルトローナフラウ社製)もあるが、滑りにくさではこのコンビシートの方が上だろう。
言うなれば、上質でオシャレな「タクシー」
リアシートは「居住性第一」という感じ。このクラスでリムジン的な後席を狙ったものは他メーカーにもあるが、デルタの採った方法はかなりシンプル。FFハッチバック車にしては極めて長い2700mmというロングホイールベースの中にドーンと広いリアシート空間を確保し、そこにソファ(もちろんイタリア家具風)のようなリアシートを置くというものだ。ホールド性はあまりないが、車両キャラクターに合わせてあえてフラットな形状にしたのだろう。6:4分割の前後スライドとリクライニングが可能だ。
フロアトンネルの出っ張りは多少あるが、このリアシートは足を組んで座るには格好の空間。乗り降りも楽なので、年配者にも喜ばれそう。やたら上質でオシャレな「タクシー」といった感じだ。
荷物満載ではなく、乗員&その荷物を想定
奇天烈な外観からすると、意外と普通な荷室。ボディサイズが大きいので、5人乗車時の容量は380リッターと同クラスのハッチバック車の平均を超える。
一方、荷室の拡大時には、リアシートの背もたれがパタンと倒れるだけで、深めの床との間にはかなりの段差が残る。絶対容量を犠牲にして上げ底にしてしまえばフラットになるわけだが、あえてそうしていないのは、あくまで乗員空間が優先で、その乗員のスーツケースなどがドサッと載ればいい、と考えるからだと思う。こんなところもイタリア流か。


