Published by DAYS since 1997 from Nagoya, Japan. 名古屋から全国に発信する新車試乗記や不定期コラム、クルマ情報サイト

ホーム > 新車試乗記 > キャデラック ドゥビル

キャデラック ドゥビル新車試乗記(第106回)

Cadillac Deville



2000年01月14日

  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

キャデラックの旗艦サルーン

本国アメリカにおいて、ここ14年間にわたって名実ともにラグジュアリーカー・セグメントのベストセラーの座に君臨してきたキャデラック・ドゥビル。キャデラックはGMの高級車チャンネルであり、そのフラッグシップに位置するるVIPサルーンがドゥビルだ。

ドゥビルはこれまで日本では「コンコース」、本国では「ドゥビル・コンコース」という名で発売されており、今回のフルモデルチェンジを機に、「ドゥビル」という日米統一名となったわけだ。駆動方式は従来通りFFとなる。

本国アメリカでのドゥビルはオーナー層の代替えによって育ってきた。その平均年齢は50歳を超えるという。日本ではトヨタのクラウンのような存在といえば分かりやすいだろう。このまま保守的な姿勢を貫き通せば、いずれは消滅するという危機感をGMが抱いたようで、イメージの若返りを図ってきている。それが2000年モデルだ。

価格帯&グレード展開

6人乗りの「DHS」のみで、699万円

本国のグレードはスタンダード、DTS(デゥビル・ツーリング・セダン)、DHS(デゥビル・ハイラグジュアリー・セダン)の3タイプ。DTSはフロアシフトのスポーティーな性格を持ち、DHSは伝統的なコラムシフトのショーファードリブン的な仕上がりとなる。

日本導入モデルは最も豪華なDHSで、4.6リッターV8エンジン+コラム式4速ATを搭載。乗車定員は6名、ハンドル位置は左となる。日英2ヶ国語ボイスナビゲーション付きナビシステム「キャデラックビジョン」、体重や姿勢に応じて常に乗員を理想的にサポートしてくれる「フロントアダプティブシート(本革)」がオプションで用意される。

ライバルはアメリカンサルーンのもう一つの雄、フォードのリンカーン・タウンカー(677万円)だ。また本国ではレクサスも大きなライバルとなる。

パッケージング&スタイル

旧型より小型化。それでも全長5260mm

ベースとなったのは現行セビルで新開発された「Gプラットフォーム」と呼ばれるもので、今回は剛性の向上を中心に手が加えられたれたという。ボディサイズは先代(コンコース)と比較して全長75mm、全幅40mm、全高10mm小さくなり、全長5260mm×全幅1900mm×全高1440mm。トヨタ・センチュリーとほぼ同じサイズと思っていいだろう。ホイールベースは2920mmと40mm延長されており、居住空間は長さで90mmも広くなっている。

スタイルはキャデラックのアイデンティティでもある縦型テールこそ踏襲しているものの、国際色が濃くなったとでもいうのか、大きなメッキグリルが象徴するケバい典型的アメ車的ムードが薄れている。正直なところ「かなりセルシオ入ってます」という感じだ。まぁ、それでもフロントバンパーコーナーに星条旗付きのポールを付けても、このクルマならまだ似合うだろう。

拡大された居住空間はアメ車ムードを温存

ボディがこれだけ巨大なのだから、室内の広さは言うまでもないだろう。外観とは違い、アメ車的なムードも漂う。それは釣り下げ式のセンターパネルであったり、コラム式のATシフトであったり、3人掛け可能のベンチ風フロントシートであったりといったところ。また、灰皿がとてつもなく巨大であったり、スイッチ配置が大雑把なところもアメ車的でおもしろい。ただ、こちらもかつてのようなケバさはない。メッキパーツは少ないし、インパネ全体を覆うウッドパネルも渋い。

高級車らしく装備には抜かりない。電動シート&ステアリングといったお約束アイテムはもちろんのこと、Dレンジにすると勝手にパーキングブレーキが解除されたり(リリースレバーがない)、メーター下部のモニターに暗くなると「ヘッドランプヲツケテクダサイ」と表示されたり、キーシリンダー周辺にはキーでキズが付かないようにと樹脂が貼ってあったりと、国産高級車よりも気配りの効いた(お節介な?)装備が付く。また後席優先車だけに、後席用にはエアコンスイッチ、電動ランバーサポート、電動サンシェード、シートヒーター、バニティミラーなどなど、至れり尽くせりの快適装備が標準化されている。

目新しいのが「ナイトビジョン」というアイテム。これは夜間、赤外線暗視装置でヘッドライトが届かない暗闇でも人や障害物などを知らせてくれるもので、ドゥビルが世界で初めて実用化したというもの。認可の関係で遅れて日本にも導入される予定だ。期待したい。

座った感じは、お尻が深く沈む格好となりクルマのシートというよりも”応接間のソファー”といったところ。ステアリングとシートは細かく調整できるので最適なポジションはとれる…はず(正直、あまりしっくりこなかった)。大柄な人なら座ったときにぐっと落ち着きが出ると思う。小柄な日本人では乗せていただいているという感じがつきまとう。

基本性能&ドライブフィール

新世代ノーススターエンジン

エンジンはV型8気筒DOHCの4.6リッター。最高出力279ps/5600rpm、最大トルク41.5kgm/4000rpmを発生する「ノーススターエンジン」。ほぼセルシオと同じ出力のこのエンジンは、先代のセビル、つまり8年前から使われているオールアルミ製エンジンで、今回はシリンダーヘッドを一新するなどドゥビル用に改善され、燃費の向上、排ガスのクリーン化を図っている(本国ではLEV仕様もラインナップされているらしい)。10・15モード燃費は7.1km/lとなっている。スロットルの開度は少なくて済むはずだから、実用燃費もさほど変わらないと思っていいだろう。

ギアボックスは4速AT。足回りは前がストラット、後ろがマルチリンクを採用する。トヨタのVSCと同様の電子制御スタビリティーコントロールシステム「スタビリトラック」も標準装備だ。

ゆったり、かつ軽快感も感じられる

ハンドリングは紛れもなく直進性重視のアメリカン・スタイルだ。ドイツ車ほどではないにしろ、意外に重めで、切り込んでいくとだんだん軽く感じられる。反力は強めだ。高速巡航では手を据えておくだけでいいのに、かなりリラックスできる。1830kgと、これだけボディが重いのだから、相対的にバネ下荷重が軽くなり乗り心地は良い。段差による衝撃はタイヤが収めているようで、若干ブニョブニョするも、余計なインフォメーションが伝わってこないので、同乗者にとっても同様のゆったり気分が得られる。

大トルクにものをいわせる加速ぶりもさることながら、V8エンジンはあらゆる回転域でスムーズなのも評価できるところだ。アイドリング時からフル加速をすれば軽くタイヤがスリップする。それでもトルクステアがほとんど感じられないのはいい。市街地では3000回転も回せば、事足りるはずだ。ちなみに100km/h走行時の回転数は1800rpm。だからエンジン音もほとんど気にならない。また、これだけ車幅が広いにも関わらず、車両間隔が掴みやすかったのか、狭い道や対抗車とのすれ違いではあまり気を使わなかった。狭い場所での縦列駐車や車庫入れ、これだけは苦労させられた。

応答性が鈍い、ロールが大きいなど気になる点も、このクルマの性格を考えれば納得できるもの。それでもコーナーでは軽快に走り抜けられ、かつてアメ車とは隔世の感がある。とにかく、悠々たるリラックスムードは、このクルマの醍醐味といえる。

ここがイイ

インターナショナルな高級車像に近づいてはいるものの、依然としてアメ車らしさを持っている点。ドイツ車の硬さ、日本車の繊細さ、イギリス車の渋さ、といった各国の高級車のどの味とも違う「大味さ」があるのがいい。価格も他の輸入車に比べ良心的。

ここがダメ

久しぶりにこのサイズの左ハンドル車に乗ったが、高速の料金支払いはしにくいし、対抗車が見にくいため交差点での右折が特に辛い。そして日本の道路事情ではやっぱりボディは大きすぎる。ただそれがこのクルマの重要な味なのだが。

総合評価

ドゥビルはショーファードリブン(運転手付き)が本来の姿だろう。日本で、運転手付きといえば”シャチョーさんのクルマ”。そうなるとわざわざアメ車を選ぶとは思えない。健全にセルシオもしくはセンチュリーあたりとなるはずだ。仮にキャデラックを指名買いするにしても、オーナーカー向きのセビルということになるだろう。つまりドゥビルは、日本ではほとんど市場はないと思われる。GMもそれを知ってか、このクルマに右ハンドルを設定していない。逆にいえば、ドゥビルはそれだけアメ車独特の持ち味を備えたクルマでもあり、希少価値があるともいえる。

とはいえ、先代よりはかなりパーソナルになっており、そして、かなりアメ車色の薄まった普通の高級車に近づいている。Sクラスやセルシオ、ジャガーあたりを買うオーナードライバーなら、その選択肢に入れてもさほど違和感はないはず。十分実用的なVIPカーとして使える。そしてドイツ車とは明らかに違うカーライフが「良くも悪しくも」楽しめるだろう。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加 
  • mixiチェック
 
 
 
 

キャデラック 最新の試乗記10件

最近の試乗記一覧