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三菱 ディオン新車試乗記(第114回)

Mitsubishi Dion



2000年03月10日

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キャラクター&開発コンセプト

ミニバン市場に正攻法で挑む、安さが切り札

昨年の東京モーターショーに参考出品済みのモデルだけに、ご存じの人も多いと思うが、ディオンは「乗る人すべてが、楽で、使いやすく、自由度の高いワゴン」をテーマとした、ディンゴに続くSUW(スポーツ・ユーティリティ・ワゴン。三菱が提案する次世代RV)第2弾。シャリオが3ナンバーサイズのグランディスに昇格したいま、隙間が生じた5ナンバークラスの乗用型ミニバンのポジションを埋めることを目的に誕生した。

ディンゴをベースにホイールベース、全長を延長したボディに2-3-2の3列シートを配し、お得意の直噴技術を駆使した新開発2lエンジンを搭載する。三菱の意欲作となるこのディオン、ファミリーミニバン市場では最も遅れてきたモデルだけに、ライバルを徹底研究した成果が現れている。ほどほどの広さを確保した3列目シートのパッケージングと、クラストップレベルの最小回転半径5.2mの組み合わせを実現し、何より驚かされるのが159.8万円からという低価格戦略だ。ライバル車とは10~30万円ほど安く、1.6lのトヨタスパシオとバッティングするほどで、これはディオンの強力な武器となるだろう。

なお、パワートレーンは2.0lエンジン+4速ATのみで、駆動方式はFF、4WDの設定はない。

価格帯&グレード展開

充実装備ながら価格の安さは一番

価格帯は159.8~209.8万円と生半可ではないバーゲンプライス。安いからといって装備はケチっておらず、廉価版の「VIE(159.8万円)」でも、ほぼフル装備。12万円高となる「VIE-X」はエアコンがマニュアルからオートに格上げされ、リアにもエアコンが備わる。また、木目調パネルがグレーからブラウンに、ドアハンドル&ドアミラーがカラー同色からメッキに変更される。さらに13万円高の「EXCEED」になるとプライバシーガラス、前席アームレストが加わるほか、ボディ下部にガーニッシュが装着され、デザインの見栄えも向上する。というか、本来のデザインとなる。

ライバルはトヨタ・イプサム&ガイア(187.0~237.0万円)、日産・プレーリーリバティ(180.8~269.0万円)、マツダ・プレマシー(168.6~198.6万円)といった、5ナンバーサイズ&3列シートを持つ乗用型ミニバン。ワンクラス下の価格で買えるのは、ディオンの大きな魅力だ。

パッケージング&スタイル

シンプル&地味なスタイル

ディオンはミラージュ・ディンゴと基本コンポーネンツを共用している。これが価格を安くできた理由の一つとなるが、ボディパネルは全て専用設計で、ボディサイズも大きく異なり、ホイールベースは265mm、全長は575mm延長されている。全長4460mm×全幅1695×全高1650mmのサイズは、このジャンルに火を付けたイプサムと比較すると80mm短く、30mm高い。デザインは最近の三菱の作品とは180度違う、味も素っ気もないシンプルなもの。ボクシーで、どこか1BOX調だ。その中で存在感をアピールするためか、ヘッドライトとグリルが異様に大きい。でもそれが個性につながっているとはどうも思えない。はっきりいって田舎臭い。一方で、誰でも抵抗なくつき合えそうな安心感(目立たないことを身上としるファミリー向け?)があるのも事実で、三菱としても、それを狙ったのだという。ホントは、期待のディンゴ(これは誰が見てもかなり特異なデザインでしょう)でコケてしまったから、単に臆病になっているだけなのかもしれない。ディオンがディンゴルックスだったら、やっぱり今の販売はムリだったはず。

インパネはディンゴから流用した

photo_3.jpgナビ配置を前提としたインパネは、表面色の違いやタコメーターの追加が図られているものの基本的にはディンゴからの流用だ。スマートシフトこと順手で握れるATシフトも流用。ただシフトフィールに節度感がなく、Dレンジにすると空調パネル等が見にくくて操作の妨げになる。慣れが解消する部分ではあるが。また、シートがアップライトに設置されているために、人によっては(シートを前に出してきっちり座ると)乗り降りする度に膝がインパネ下部と当たってしまう。流用するのは構わないが、これだけ指摘箇所がでてくると、大いに問題あり。

機能性に満ちたシートアレンジは、チャイルドシートの義務化によって魅力倍増

2列目シートは325mmのロングスライド機構に加えて5:5の分割式を採用している。これは2列目にチャイルドシートを固定していても、反対側のシートからは何の支障もなく3列目にアクセスできるという利点がある。チャイルドシートは4月から法的にも義務づけられることだし、間違いなくセールスマンは小さな子様を持つファミリー層に、このあたりを強烈にアピールしてくるはずだ。

ただ、Hウォークと称する前後左右のウォークスルーは、前席にアームレストが備わっているために楽々というわけにはいかない。運転席と助手席のアームレストの間は相当細い人でないとすり抜けられないだろう。せめて運転席側だけのアームアレストとすべきだ。

3列目はオデッセイと同じように床下にスッポリと格納できるというのがウリ。ただし、シートバック脇とヘッドレストを取り外す手間を要する。この外したシートバック脇部分はアームレストにも利用できるという仕掛け。これをやっちゃうと肘掛けというより、バケットシートみたいに身体がサポートされる。

居住空間は定規を持ち出して図れば、恐らくどの席でもライバルよりも広いだろうし、頭上空間も不満はない。しかし、乗ってみると室内が広いという印象は希薄だ。これはこのタイプの3列シートミニバンすべての問題。サードシートはあくまで補助席で、ちょっと広めのセダンと考えた方がいい。

基本性能&ドライブフィール

2リッター直4+4ATのみ

搭載されるパワートレーンは2リッター直4DOHCユニット+4速ATの1種類のみ。エンジンはシャリオ・グランディスの2.4リッターGDIを縮小した新開発で、GDIの2リッターへの展開は、三菱としては初めての試み。恐らく1.8リッターのGDIに見切りをつけ(問題が多いから? )、他の車種も順次、この2リッターGDIに切り替わっていくのだろう。

最高出力/最大トルクは135PS/5800rpm、18.7kgm/3500rpmを発生する。同じ馬力を発生するイプサムより車重が多少重いのが気になるが、10・15モード燃費はクラストップの13.0km/l。しかもレギュラーというのが売れしいところ。

足回りは基本的にディンゴのものを踏襲する。前がストラット、後ろがマルチリンクでディオン用にチューンが施され、リアのブレーキ容量は1インチアップの9インチに変更され、車重増加に伴う制動力の向上に努めている。タイヤサイズは専用で、195/65R14を全グレードに装着する。

取り回しは良くても、走りはメリハリのないルーズなもの

発進加速には全く不満はない。低域からフラットなトルクが出ており、扱いやすいし、アクセルに特別に気を使わなくても希薄燃焼領域を示すGDIランプの点灯頻度は高い。実際の燃費も良好そう(残念ながら今回は測定できず)。

乗り心地は柔らかすぎることのない程度の、ソフトタッチなもの。ATがシフトチェンジする際、トルコンを滑らせる領域が長く、ショック自体はほとんどない反面、そのルーズな感覚はやや不快なレベルともいえる。また、ボンネット部に遮音材が少ないのか、こもったエンジン音が室内に入ってくることも気になるところ。全体的にはファミリーカーとして特に不満がないものの、やはり安いクルマというムードがどこからともなく感じられる。

高速では120km/h程度の走行なら安定感が高い。やや風切り音は大きめだが、ファミリードライブで不満はでないだろう。

穏やかに味付けされたハンドリングは、どちらかといえば女性向け。ロールは小さいので違和感なく運転できるし、クラストップレベルの最小回転半径(5.2m)からくる取り回しの良さは、特に喜ばれるれるはずだ。

が、ステアリングにあまりにも手応えがないので、高速でコーナーに進入すると、どこまで耐えられるか分からなくなることも。加えて、ロールが小さいと思ってさらにスピードを上げて走り抜けようとすると、いきなりオーバーステアに転じ、ヒヤッとさせられる。このタイプのクルマの危険回避のためには、ロールを無理やり抑えることはせずに、最初からはロールを感じさせ、無理をさせない方が適切な処置といえるのでは。

このクルマで過激な走りをすること自体タブーなことかもしれないが、もう少し穏やかな運動性にするといいと思う。

ここがイイ

バリューフォーマネー。発売一ヶ月で1万台以上を受注しているそうだが、そりゃそうだ。この価格ならへたなセダンを買おうとは誰も思わなくなるだろう。チャイルドシート着装が必至となった現在、旦那は電車通勤で、平日に奥さんがメインに乗る郊外の30代サラリーマン家庭のファミリーカーと規定すれば、まあ、ベストでは。

ここがダメ

生活の足にする奥さんとか、日曜に乗る旦那さんとかには不満がないだろうが、クルマ好きとしてはどうにも評価しづらい。クルマに生活の道具以上の入れ込みをしようと思うと、全く何もないのだ、このクルマは。「イプサムでもリバティでもいいけど、安くて新しいからディオンにしておこうという感じ(語尾上げ)。」1年たつとライバルとの差別化のため、特装車が続々と投入される予感がする。

総合評価

photo_2.jpgカタログ、スペックを見る限りでは、ライバルを意識した優れた数値を作りだしている。居住性、経済性など総合的なバランスは、現在のところ確かにクラス一番といっていいだろう。それでいて、値段もクラス一番の安さなのだから、文句のつけようがない。でも、いざ乗ってみると、走りはギリギリのところで煮詰め不足だし、居住空間はライバルと比べても実感できるほどアドバンテージがあるとは感じられなかった。なんとなく机の上で作りましたという感じ。

いよいよダイムラークライスラーとの提携話が進む三菱だが、三菱らしいウリを打ち出さないとホントに飲み込まれてしまいかねないのでは。スズキやいすゞはGMグループの中で独自性を打ち出しているが、三菱って……。エンジン供給メーカーになってしまわないよう、苦しいのは分かるが、今こそ独自商品を開発・発表すべきだろう。ディオンは他メーカーのクルマの不満を解消したクルマであり、三菱の力を示したクルマではないのが、残念なところだ。

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/

 
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