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ランドローバー ディスカバリー XS新車試乗記(第86回)

Landrover Discovery XS



1999年08月06日

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キャラクター&開発コンセプト

徹底したキープコンセプトでオンロードでの快適性を追求

ディスカバリーは、ヨーロッパの名門4WDブランド、ランドローバーの稼頭。「四駆界のロールス」と賞される高級ヘビーデューティカー、レンジローバーの弟分にあたる由緒正しいクロカン4WDの血統を持つ。つまり1989年に誕生した初代ディスカバリーの基本メカニズムは旧型レンジローバーにほぼ等しいものとなっていた。

とはいえこのクルマ、アメリカでいうところのSUVだ。最近では様々なメーカーがこのSUVマーケットに参入してきており、オフよりオンを重視した、いわゆるシティオフローダー的需要が高い。新型ディフェンダーはそうしたニーズに対応させるために、老舗としての妥協のない4WD性能はそのままに、最新デバイスを組み合わせることで快適性能を追求し、オン、オフ性能の高い両立を目指している。駆動方式はフルタイムの4WDだ。

価格帯&グレード展開

本国では2.5リッターディーゼルの設定もあるが(旧型の日本仕様には設定されていた)、今回日本導入されたのは4リッターV8に4ATを組み合わせたモデルのみ。動力性能と装備の違いにより、上からES(7人乗り)489.9万円、XSロング(7人乗り)454.9万円、XS(5人乗り)439.9万円の全3グレード。最上級グレードESの追加装備は本革シート、11スピーカー、SLS(後に解説)など。300万円をきる廉価版が用意されていた先代のことを考えると、やや割高な感じは否めない。

ライバルは国産ではプラド、パジェロ、輸入車ではベンツ・Mクラス、ジープ・グランドチェロキーなど。

パッケージング&スタイル

言われても気づかない、旧型と変わらぬスタイリング

スタイルは新旧比較しても判断できないほど、変わっていない。だから非常に古くさい。ディスカバリーのユーザーの多くは保守層で、あまり大きな変化は好ましくないとメーカーは判断したのだろう。とりあえず新旧の判断の基準となるのは、旧型より一段上に配置されるテールランプぐらいで、多少フラッシュサーフェイス化された程度。それでもリアゲート以外のボディパネルはすべて新しくなっており、事実、ボディサイズは全長+210mm、全幅+80mmの、全長4720mm×全幅1890mm×全高1900mmとなっている。ホイールベースは旧型と同じ2540mmだ。

インパネも流用? あまり新型に乗っている気分にならない

内装もこれまた古典的なもの。最新型に乗っている感じを受けないどころか、かなりクラシックな、いわゆるオトコの仕事場的なもの。それもそのはずで素材の質感こそ向上しているものの、見る限りではステアリングを除くインパネデザインは旧型と全く同じなのだ。運転席のヒップポイントは、同クラスの国産車と比べても高い位置にあり、見晴らしの良さと引き替えに乗降性は悪い。一応、グリップが用意されているのだが、どうも位置が悪い。Aピラーに欲しいところだ。さらにいえばステップが欲しくなる(実際、XSプラスとESの後席はステップが装着される)。

旧型のT型からグリップ型に変更されたシフトノブは、BMWのパーツをベースに開発されたもの。D・3間だけフリーで、他はすべてボタン操作がいる。またカラダを起こさなければ届かないほど、離れた位置にある。灰皿の位置はさらに遠い(その分、助手席からは近い位置になる)。使い勝手はいいとは言い得ず、言い換えれば「スパルタン」である。

試乗したXSグレードのシートは 、生地部分に”LAND ROVER”柄があしらわれたハーフレザー。サイズは大柄だが、腰部の張り出しがあって、座り心地はいいほうだ。なお、試乗車は5人乗りだったが、7人乗りの方は3列目シートが従来のサイド跳ね上げ式から前向きに座れる折り畳み式に変更されている。ヘッドレストが天井から釣り下げられている点が面白い。さらに旧型ディスカバリーでも好評だった、一段盛り上がった後席ルーフ部につけられたガラスサンルーフを引き継いだことにより、後席の頭上は開放感に溢れている。

基本性能&ドライブフィール

外観は10年前のままでも、中身は最新デバイス満載

ラダーフレーム、ウォーム&ローラー式ステアリングなど、基本的なシャーシは初代ディスカバリーからのキャリーオーバー。よって設計そのものはそうとう古いが、これがまた、既存ファンにとってはたまらない魅力でもある。

エンジンは4リッターV8・OHVで、先代の3947ccという排気量はそのままにトルク重視のチューニングにより、最高出力185ps/4750kgm、最大トルク34.7kgm/2600rpmを発生する。ギアボックスは新開発の電子制御デュアルモード4ATだ。

リジッド式というコンベンショナルな前後足回りは旧型と変わらずだが、オンロード性能を向上させるため電子デバイスが投入されたことが、最も大きく変わったところ。ロールを制御するため、アクティブサスの一種ACE(アクティブ・コーナーリング・エンハンスト)とSLS(セルフ・レベリング・サスペンション)を組み合わせたほか、下り坂でブレーキ操作なしでも10km/h前後にキープするHDC(ヒルディセント・コントロールシステム)やLSD効果を発揮するEBD(エレクトロニック・ブレーキ・ディストルビューション)、ETC(電子制御トラクションコントロール)など、兄貴分レンジローバーの立場がなくなるほどの贅沢なものが装着される。なんとなく空冷ポルシェを想わせる進化だ。

難しい用語ばかりが続いてしまったが、HDC(ランドローバーの特許)以外の電子制御は同クラスではもはや常識となっている。要は10年ぶりのモデルチェンジで、ディスカバリーもようやく、現代のニーズにあった快適レベルに達したわけだ。ただしSLSはESにしか装備されない。なお、タイヤはESが18インチ、XSが16インチとなる。

フィーリングはさすがランドローバー、トルクの発生もヘビークロカンとしては理想的

ホントは上記に上げた目玉アイテムであるSLS装着車のESを試すべきなのだが、残念ながら試乗したのは、SLS非装着のXS(5人乗り)。それでもSLS以外の電子デバイスや基本的なスペックは共通だから、ベースグレードであってもその恩恵を受けることができるだろう。

走り出してまず感じるのが、オフでの速度を微妙にコントロールできるアクセルストロークの深さと、パワートレーンの滑らかさ。ステアリングの操舵感からは、いかにも「硬派な四駆」という重厚な感じをうけるのだが、トルクがアクセルを踏み出す瞬間の低回転域からきっちりと出ているので、走りそのものは軽快な感じをうける。強く踏み込む必要もなしに十分に速く、2.3トンの車重とは思えない加速ぶりだ。登坂や急加速を含めても3000回転も回せば事足りる。よってアイドリング時の静粛性はそれほどでなくても、エンジン音がそれ以上に騒々しくならないので、走行中でも静かな印象だ。

気になったのはコーナーでの挙動の不安定さ。切り込んでいくとオーバーステア気味になり、とても楽しむ気分にはなれない。まぁ楽しむクルマではないのだが。高速走行でも軽々と150km/h出るが、ちょっとしたレーンチェンジでも結構気を使う。これがSLS装着車では、どこまで克服されるのかが興味深いところ。

見晴らしは良くても、これだけボディが大きいと市街地でのチョイ乗りはあまり期待しない方がいいだろう。足回りはけして野蛮なものではなく、ロングストロークゆえに、突き上げの吸収がよく、あたりは柔らかい。シティユーザーにとってみれば、そう快適性に不満はないだろう。

オフでの試乗は残念ながらできなかったが、そのパフォーマンスはよく知られたとおり。すさまじいまでの悪路走破性があるはずだが、これもビギナーにはまったく宝の持ち腐れになりかねない。四駆ローに入れたことのない四駆ユーザーはあまりに多い。全国にオフロードパークがあるので、一度こういうクルマがどれくらいのパフォーマンスを持っているか、体験してくるといいだろう。そして自分のディスカバリーで試して・・・みる人は多くない。この価格の新車をオフロードに持ち込む勇気? は私も正直ない。変わり映えのない外観からは想像できないくらいに濃い内容に仕上がっているディスカバリーだが、基本は街乗り専用車だ。

ここがイイ

何の迷いも感じられない徹底した、そしてみごとなキープコンセプト。古くさい独特のスタイルは、今では貴重な存在。大きな価値だ。それとリーズナブルな価格(それでも400万円以上もするが)で手に入るステイタス感。性能的には国産四駆で十分かもしれないが、やっぱランドローバーブランドはオシャレです。

ここがダメ

10・15モードで5.3km/リットルという燃費。4リッターエンジンの走りはさすがに悪くないが、もう少し環境とサイフにも配慮してもらいたい。この先長く乗ろうと思うとこの燃費は結構ネックかもしれない。

総合評価

四駆らしいカタチがいい。外観、内装ともにここまでキープコンセプトを徹底したことは評価に値する。変にスタイリッシュな外観にしてしまったら、既存ユーザーはもちろん、新規ユーザーからもソッポを向かれただろう。新たなユーザー層を開拓するのはこの手のクルマでは難しくなっているので、永年に渡って築き上げてきたブランドイメージを傷つけないよう、うまく変わって正解という感じだ。どこかの雑誌に、「たとえオフロードを走らなくとも、卓越したオフロード性能のクルマを所有することは、持て余すほどの走行性能を持つモンスタースポーツカーを所有することと同じこと」と書いてあったが、まさにその通り。等身大の性能のクルマなど、だれも買ってくれないのがこうしたプレミアムカーの宿命。昔から砂漠や戦地でも活躍してきたランドローバーにしてみれば、所詮、パジェロやプラドは「ニセモノ」だ。そしてディスカバリーは「ホンモノ」。国産四駆とディスカバリーの決定的な違いは、性能よりも、そのブランド力。メーカーがどう思っているかはわからないが、結果としてはそれをよくわかった上でのモデルチェンジに見える。

公式サイト http://www.landrover.co.jp/Discovery/index.html

 
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