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ランドローバー ディスカバリー3 HSE新車試乗記(第367回)

Land Rover Discovery 3 HSE

(4.4リッターV8・6AT・759万円)

2005年05月27日

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キャラクター&開発コンセプト

シャシーもエンジンも刷新した3代目

3世代目ディスカバリーとなる「ディスカバリー3」が、2005年5月に日本で発売された。先代はさかのぼれば旧レンジローバーがベースだったが、新型では一気に近代化が図られ、シャシーはモノコックとフレームを合体させた「インテグレイテッドボディフレーム」に、エンジンはジャガー用から派生したV8もしくはV6、変速機はZF製6AT、足回りはエアサスと、レンジ並みの豪華仕様となった。日本向けはすべて3列シートの7人乗りになる。

レンジローバーとディフェンダーの間

1989年に登場したディスカバリーは、簡素なディフェンダーと豪華なレンジローバーとの間を埋めるモデル。これまでに全世界で70万台、日本でも約2万1000台以上がデリバリーされたという。一時は「ホンダ・クロスロード」として日本のホンダ・ディーラーでも売られた。

なお、ランドローバーはローバー社の4WD専門ブランドとして1948年にスタート。70年に高級4WD車のレンジローバーを加えて英国自動車産業の再編期を生き延びたが、94年からはドイツBMW傘下に、そして2000年からは米国フォード傘下にと揺れ動いた。その間も独自の 4WD車を作りつづけたユニークなメーカーだ。

価格帯&グレード展開

レンジより300万円安い

日本仕様は3グレード。V6エンジン(4009cc、215ps)の「S」(568万円)とレザーシートの「SE」(648万円)、V8エンジンの「HSE」(759万円)。価格帯がかなり上がった感じはするが、それでも870万~1090万円のレンジより、およそ300万円くらい安いと言える。

パッケージング&スタイル

サイズもカタチもレンジ風

ボディサイズ(カッコ内はレンジとの差)は、全長4850mm(-100)×全幅1920mm(-35)×全高 1890mm(-10)、ホイールベース:2885mm(-5)。レンジより少し小さいが、ホイールベースはたったの5mm違い。外観もレンジ風だが、先代の特徴(ステップド・ルーフなど)は受け継いでいる。スタイリッシュだが、旧ディスコ(Discoveryの愛称)やディフェンダーにあった旧き良きブリキっぽさはなくなり、今風の外観になった。

不変のコマンド・ドライビング・ポジション

レンジローバーと違うのがインテリア。「豪華クルーザーのキャビン」をイメージしたというレンジと違い、ディスコはウッドを使わない。ただしウォールナット・ウッドパネルは11万5500円のパッケージオプションで追加できる。上から見下ろすコマンド・ドライビング・ポジションは不変で、シート高を特に意識して上げなくてもエンジンフードが見切れるのは伝統通り。サイドウインドウの下縁が腕のひじの辺りと低く、見晴らしは抜群にいい。

後席でも見晴らし良し。使えるサードシート

3座独立式の後席。1~2人で乗るときは体を支える場所に困るが、真ん中でも大人がちゃんと座れる。後ろの席に行くに連れて階段状に高くなるスタジアムシートと大きい窓(リアサイドウインドウは一番下まで開く)、電動サンルーフと後方に2つあるガラスルーフによって、3列目までまったく閉所感がない。合計8個のエアバッグが乗員全員をカバーする(サードシートにもカーテンエアバッグがつく)。

レンジ譲りの座れるリアゲート

リアゲートはレンジローバーと同じ上下2分割式。下側はテーブルやベンチにもなる。サードシート使用時の荷室容量はほんのわずかだが、それを畳めば1260L、セカンドシートを倒せば2558Lまで増える。スペアタイヤは吊り下げ式になった。

基本性能&ドライブフィール

カジュアルなレンジ

試乗車は最上級グレードのHSE。ジャガーの4.2リッターV8をランドローバー用に4.4リッターに拡大したエンジン(299ps、43.3kgm)を積む。BMWが設計したレンジローバー用の4.4リッターV8(286ps、44.9kgm)を、フォード側が自社のリソースで設計し直した?と思えるほどスペック的には近いユニットだ。

動力性能や重量がレンジローバーに近いせいか、運転感覚もけっこうそれに近い。直接比較すれば遮音などの差を感じるかもしれないが、今回のように単独で乗ると「7人乗りで内装がカジュアルなレンジローバー」という感じだ。最小回転半径は5.5メートルと平均的で、見切りがいいから取り回しは大きさの割にいい。

ミニバンのように快適

2570kgという車重はレンジ(最上級のVogue)より70kgも重いが、低速トルクがあり、高回転(といっても 6500回転あたりまで)もきれいに回るから、パワー不足は感じない。ただ、止まるようなスピードから急にアクセルを踏むと、シフトダウンのショックがやや気になる。全体に静粛性は高く、ハーマン・カルドン製オーディオのサウンドが堪能できるほど。ラック&ピニオンのステアリングの反応は自然で、8割くらいのペースにはよくついてきた。フレームボディのようなユサユサ感は当然まったくなく、乗り心地は高級ミニバンのように快適。ただ、タイヤ自体の硬さは若干感じるため、高級セダンほどの乗り心地ではない。

コーナリング時はロールも少なく、マッドタイヤにもかかわらず、乗用車なみのスピードでコーナーを次々にクリアできる。この重量にもかかわらず十分軽快といえるコーナリングができるのはなかなかのもの。先代も高速巡航はそれなりにこなしたが、こちらは150㎞/hでも快適そのもの。ボディ形状のせいだろう、風切り音がそれなりにやかましい。

中身はやっぱりランドローバー

オフロードで試す機会はなかったが、新型最大の新機軸がランドローバー初の「テレイン・レスポンス」と呼ばれる電子制御システム。様々な路面状況に対して5つのプログラム(舗装路、雪などの滑りやすい道、轍(わだち)の深い泥道、砂地、岩場)を選ぶことで、副変速機を含むギアの選択、エンジン出力、エアサス(車高、減衰力)、ブレーキを自動的にコントロールする。センターコンソールに絵文字を書いたダイアルがあり、初心者でも選びやすい。ローレンジでは、通常の1.000に対して2.930までローギアードになる。

最低地上高は最大240mm、渡河水深限界は最大700mm。このクルマで思う存分、泥遊びをしてみたいものだ。

ここがイイ

先代から全てが大進化を遂げている。メーカー系列が替わったことが大きいだろう。ランドローバーの伝統をうまく引き継ぎつつ、最新のクロカン四駆になった。また、旧ディスカバリーのイメージを残しつつ、モダンで良好なパッケージングを実現した。前から見るとランドローバーのアイデンティティがあるし、横や斜め、後ろからの眺めには見事にオリジナリティがある

それでいて街乗りも十分できる快適さを持つ。ジープ並みの超本格クロカン四駆なのに、それを知らずとも不満のない快適性を確保している。シートアレンジ優良で、きちんと7人乗れるのもいい。装備も充実している。電子式パーキングブレーキは便利だし、リモコンキーはスロットに差しておくと充電できる(電池交換不要)。2、3列目にある独立オーディオコントロールやアイシン製とおぼしき音声カーナビも快適。進行方向を向くアダプティブ・ヘッドライトまである。段付テールゲートは目から鱗。便利だ。

ハイドロのようなエアサスは家人を乗せるときに下げれば喜ばれるし、悪路走破性も高い。
車重のわりには、ちゃんと走るし、ハンドリングも素直。さすが最新と納得できる。

ここがダメ

致し方ないとはいえ2.5トン超の車重はつらい。これに起因する燃費の悪さ(10・15モードでも6km/L。実際は???)、フル制動時のストッピングパワー不足(M+Sタイヤのせいもある)。

小柄なドライバーだとシートが半端に高いのが困る。乗り込み用のグリップもなく、乗りこみはかなり辛いのだ。価格に相応するとは思えないインテリアの質感も残念。オプションでウォールナットパネルも用意されているが、標準にしておいて欲しい(レンジとの棲み分けを考えたのだろうが)。

後退時に自動で下方を向くドアミラー(ヒーテッド)は下がりすぎ。

総合評価

デジタル一眼レフカメラのようなもの

旧ディスカバリーに乗ってから早6年がたつが、旧型がいかにも古くからのクロカン四駆の改良版だったのに比べ、新型は数世代一気に進化した感じだ。ヒルディセントコントロールこそ旧型にもあったが、モードをスイッチで切り替えてオフロードの状況にあわせて走るという電子デバイスは、他のクロカン四駆では見られないもの。試していないから実際の走行時にどんな感じかは分からないが、こうしたモードを持たないごく普通のATクロカン四駆(街乗り嗜好のSUVではない)でも、ローレンジに入れてクルマ任せにするだけで凄まじい走破性をみせることは衆知のところ。まあ実用上、十二分であることは想像に難くない。

こうしたモード設定はちょうどデジタル一眼レフカメラのようなもので、オートモードで撮ればたいていうまく撮れるが、作画を考えると様々なプログラムモードを使って撮影することになる、のに似ている。もちろんプロはそんなお仕着せのモードに頼ることなく、マニュアルで撮るわけだが、それができるようになるには修行が必要。プロに近い写真が簡単に撮れるモードを備えた一眼レフがカメラの主流になった(マニアからは好まれないにしろ)ように、クロカン四駆も今後はこうなるという方向性をディスカバリーは示している。その点で世界のクロカン四駆の先端を行っていることは確か。今後、追随する四駆は多いだろう。

そう、つまりディスカバリーは軟派な街乗りSUVではない。真のクロカン四駆であるわけだ。ここが重要なところで、オンロード重視のSUVという目で見ると、もうちょっと速くて快適なクルマが作れるはずと思ってしまう。しかし先進クロカン四駆で、しかも超ヘビー級の重量を持つクルマがここまで快適で、オンロードを速く走り、ユーティリティーも文句なしとなれば、考えは変わってくる。以前から、クルマ任せでどんなところでも走れるクロカン四駆がオンロードを快適に走れれば、それこそ現代のスーパーカーだと書いているが、その意味でディスカバリーはまさにそれにふさわしい。街乗りならハリアーの方がいいし、オンロードの走りならカイエンがいいが、最先端本格オフロード性能を持った上で、オンロードも快適となるとディスカバリーにとどめを刺す。

800万円のクルマを使い倒せるか

つまりディスカバリーは道具として素晴らしいのだ。近年まれにみる肘が乗せられる(掛けられるではない)ほど低いサイドウインドウ、段付屋根で7人がきっちり座れるシートアレンジ、段差がついて荷室にアクセスしやすいリアゲート、些細な部分ではやたら多いカップホルダー(軽い飲み物だけではなく、予備の大型飲料水ボトルを乗せておける)など、基本的な使い勝手の良さは文句なし。アウトドアでバリバリ使い倒すためには、ものすごくいいクルマだ。試乗した最高級グレードでは、これにパワフル&静粛なV8が載り、エアサス、AFSまで載っているわけでほぼ完璧だ。こうなると問題は価格だけ。800万円のクルマを泥だらけ、傷だらけにして使い倒せる財力を持った人には、ぜひおすすめしたい。

このパッケージングでもうちょっと装備がシンプル(安価)な車両があれば、と思うが、そうなると半端な価格となって、特に日本では売りにくいだろう。豪華さやプレステージ性をウリにするレンジローバーとは別の「お金持ちの趣味のための実用車」だ。

蛇足だが、このクルマはBMWの息はかかっていない。いずれ登場するであろうフォード製レンジローバーのベースであることは間違いない。いやこのクルマの内装を木目で飾り立てれば、一丁上がりだ。こうなると現行のレンジローバーが貴重に見えてくる。買うなら今のうちだ。

試乗車スペック
ランドローバー・ディスカバリー3 HSE
(4.4リッターV8・6AT・759万円)

●形式:ABA-LA44●全長4850mm×全幅1920mm×全高1890mm●ホイールベース:2885mm●車重(車検証記載値):2570kg (F:1250+R:1320)●乗車定員:7名 ●エンジン型式:448PN●4393cc・V型8気筒DOHC・4バルブ・縦置●299ps(220kW)/5500rpm、43.3kgm (425Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/86L●10・15モード燃費:6.0km/L●駆動方式:フルタイム4WD(電子制御センターデフロック付)●タイヤ:255/60-18(Pirelli Scorpion Zero ) ●価格:759万円●試乗距離:約130km ●車両協力:ランドローバー名古屋 名東

公式サイトhttp://www.landrover.co.jp/

 
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