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日産 デュアリス 20G新車試乗記(第468回)

Nissan Dualis 20G

(2.0L・CVT・FF・222万750円)

キャシュカイとデュアリス、
2つの名で日欧を結ぶ
大陸間クロスオーバーに試乗!

2007年06月29日

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キャラクター&開発コンセプト

英国製のクロスオーバーSUV

2007年5月23日に発売されたデュアリスは、欧州に拠点を置いて開発されたクロスオーバーSUV「キャシュカイ(Qashqai)」の日本仕様だ。生産も英国日産(NMUK)のサンダーランド工場(プリメーラ、ノート、マイクラ等を生産)が行い、デュアリスも英国からの「輸入車」となる。

プラットフォームには、ルノー・メガーヌ、日産ラフェスタ/セレナ/北米向けセントラ、次期エクストレイル(今夏に欧州で発売予定)等と共有するFFミドルクラス用シャシー「Cプラットフォーム」を採用。エンジンは2リッター「MR20DE」、変速機はCVT(無段変速機)、駆動系はFFに加えて、エクストレイルと基本は同じ電子制御4WD(100:0-50:50)の「オールモード4×4システム」を用意する。

エクストレイルのオンロード寄り

「スマート&コンパクトクルーザー」の言葉どおり、オンロードを重視するデュアリス。「SHIFT_mobility(機動力をシフトする)」のキーワードも、都市や日常生活での機動力という意味だろう。広告コピーは「パワード・スーツ(The Powered Suit)」(SFなどに登場する、着用すると筋力などが増強される装置)だ。

なお車名「デュアリス」(Dualis)の由来は「ONとOFFのデュアル」から。また海外名「キャシュカイ」はイランの遊牧民族の名が由来だ。

欧州で絶好調

国内の販売目標は月間2000台。輸入された車両は九州に荷揚げ後、PDIやナビ等の架装を受けて、全国にデリバリーされる。英国日産からの輸入は過去にUKプリメーラ(5ドア)の例があるが、今回の方がはるかに大規模だ。

発売後1週間の受注は累計5000台を達成。6月18日時点では「7000台超」となるなど滑り出しは上々だが、それ以上に絶好調なのが欧州市場だ。12月に生産開始し、2月から5月末までに6万台を販売。今後はさらに生産能力を増強し、07年末までにさらに約13万台を生産する予定だ。

価格帯&グレード展開

4モデル展開で195万3000円から

英国から輸入する関係で、導入モデルは以下の4つに絞られている。標準の「20S」と、それに大型ガラスサンルーフ(固定式)、キセノンヘッドランプ、17インチアルミ、フルオートエアコン等を加えた「20G」の2グレード構成で、それぞれに2WDと4WD(21万円高)を設定する。変速機はすべて新開発のCVT-M6(6速マニュアルモード付)だ。

・「20S」(2WD)・・・195万3000円
・「20S FOUR」(4WD)・・・216万3000円
「20G」(2WD)・・・222万0750円 ★今回の試乗車
・「20G FOUR」(4WD)・・・243万0750円

初期需要(発売後1週間)の最量販グレードは、今回試乗した「20G」のFFモデル(約4割)。FFと4WDの割合は、ほぼ半々だ。面白いのは購入層で、30代~60代のうち最も多いのは50代(27%)となっている。いわゆるダウンサイザー需要か。

パッケージング&スタイル

長さと幅はゴルフ並み

全長4315×全幅1780×全高1615mmは、VWゴルフプラス(4205×1760×1605mm)に近いもの。正確には最低地上高が205mm(ゴルフプラスは一般的な140mm)あるから、ゴルフプラスがベースの「クロスゴルフ」(日本未導入)に近い存在だ。デザインの方向性がまったく違うが、国内の競合車ではホンダ・クロスロード(全長4285/4290×全幅1755×全高1670mm)が近い。

デザイナーは3代目プリメーラと同じ

「Aピラーから後ろはムラーノのモチーフを取り入れました」とメーカーは強調するが、デザイン的には2004年にジュネーブで発表されたコンセプトカー「キャシュカイ」(右写真:日産自動車)の流れを濃厚に汲むもの。簡単に「○○風」と言いにくい複雑なテイストのスタイリングだ。チーフデザイナーのステファン・シュワルツは、かつて3代目プリメーラをデザインしたその人だという。なるほど。

主にレース車の開発で使われてきたCFD(Computatinal Fluid Dynamics=計算流体力学)解析を日産車で初めて導入したことで、Cd値は「SUVとしてはトップレベル」の0.35を達成。ドアミラーの複雑な曲面が成果を物語る。なお、メーカーオプション(工場装着オプション)のカーウイングスHDDナビ+サイドブラインドモニター(34万6500円)付きなら、フェンダーの補助ミラーがなしとなる(今回の試乗車は異なる)。

あっさりおしゃなインテリア

ソフトパッド入り樹脂パネルに、4つの丸型ベンチレーションを配したオーソドクスなダッシュボード。デザインコンシャスな最近の日産らしく、メーターからエアコンの操作ダイアル(左右独立で温度調整可)まで「丸」のモチーフを徹底的に反復し、細かいところまでデザインに気を配っている。

全グレードで設定のあるカーウイングスHDDナビ(サイド&バックビューモニター付きで34万6500円)はちょっと高価だが、例の補助ミラーも無くなることだし欲しい装備だ。試乗車のような販売店オプションのカーウイングスナビにも、サイドブラインドモニターの追加は可能だが、補助ミラーは付いてきてしまう。

フランス車そのもののシート

デュアリスで最も印象的なのがシートだ。ここ最近の日産車(特にコンパクトカー)は、心なしかフランス車のようにアンコがつまった、お尻を包み込むような触感のシートが増えているが、デュアリスのシートはもはやフランス車そのもの。座面長も長く、小柄な女性が乗るとペダル操作がしにくいかもと思えるほどだが、膝裏までしっかりサポートされる感覚は、例えば一昔前のルノーやシトロエンみたいだ。ひょっとして英国製ではなく、フランス製では?と思うほどで、そう言えば新車独特の匂いもフランス車のそれに近いような気がしてくる。

天井もフランス流

上級「20G」に標準装備される横880mm×縦1037mmの大面積ガラスルーフもフランス車の定番装備で、プジョー、シトロエン、ルノーが広く採用しているほか、日本では日産(ラフェスタ)やホンダ(スカイウェイブ)も採用している。厚さが6mmもあるUVカット仕様の合わせガラス製で、開閉はできないが電動のシェイドが備わる。

特別な仕掛けのない荷室

荷室にこれといった特徴はないが、リアサスをコンパクトなマルチリンクとしたことで張り出しを抑えている。通常時の容量はCセグメントクラスの平均より多めの410Lだ。リアシートの折り畳みはヘッドレストを付けたままパタンと前に倒すシングルフォールディング式。上げ底にしていないので、弱点は荷室拡大時の床がフラットにならない点や、開口部に敷居が残る点、トノボードを外すと置き場所に困ることあたりだが、容量との兼ね合いもあるからここは考え方次第だ。

基本性能&ドライブフィール

追い越し加速に優れるエンジンとCVT

試乗したのはFFの「20G」。全車共通のパワートレインは、ラフェスタやセレナ等でおなじみの2リッター「MR20DE」(137ps、20.4kgm)と、学習機能や状況に応じて変速プログラムを700通りから選ぶというASC(アダプティブ・シフト・コントロール)を採用したエクストロニックCVT-M6(6速マニュアルモード付き無段変速機)だ。

車重はFFで1400kg前後なので、パワーウエイトレシオはほぼ10kg/ps。日産社内の加速「感」比較データによれば、ゼロ発進時の加速感こそ排気量2.4リッターの国産ライバル車(RAV4、CR-Vと思われる)に劣るものの、中間加速感ではデュアリスが優れるという結果となっている。実際の印象からも、そうした評価は納得できるところだ。

デュアリスのCVTは、ぼんやり乗っているとCVTだと気付かないほど滑り感やベルトノイズとは無縁。今やこのクラスのCVTはもうパーフェクトと言いたくなる出来だ。デュアリスで唯一惜しいのはパドルシフトが備わらない点くらいか。これだけ走りの完成度が高いと、もはやステアリングから手を離してフロアのシフトレバーでマニュアル変速する気にはなれない。

欧州調の独特の乗り味

ルノー・メガーヌと同じプラットフォームという予備知識がなくても、乗った瞬間から「なんかいつもの日産車(例えばBプラットフォーム)と全然違うぞ」と感じるほど、乗り味は独特だ。現行メガーヌには2004年に乗ったきりだが、分厚いフロアパンの上に乗り、その四隅でサスペンションとタイヤが動く感じは、やはり何となくあの時のメガーヌを思わせる。乗り初めにある欧州車のような足回りのゴトゴト感は、ハンドリングと乗り心地の両立を狙い、ドイツのザックス(Sachs)社と共同開発したダンパー(「ハイスピード・ダンピング・コントロール・ショックアブソーバー」)の特性か。サスペンション形式はフロントがストラット、リアがマルチリンクとなる。乗り心地は欧州車風に固めだが、むしろ重厚感やしなやかさが印象的だ。

操縦性は特に書くべきことがないほどソツのないもの。ブリヂストン・デューラーH/Pスポーツ(「Made in Poland」とあった)はマッド&スノーではなくサマー規格。ワインディングをハイペースで走ればズリズリと前後とも流れるが(VDCは受注生産オプションで試乗車は未装着)、最後まで安定感が持続する。

100km/h巡航時のエンジン回転数は約1900回転ほど。静粛性、直進安定性、共にこのクラスでもかなり高い部類だ。UK仕様(2.0ガソリン・CVT)の最高速は180km/h(4WDは178km/h)。今回、試乗燃費は計測していないが、10・15モード燃費は14.2km/L(2WD)と、ここでは排気量がライバル車より小さいことが有利に働いた。加えて燃料タンク容量が65リッターと大容量なので、リッター10kmで計算しても航続距離は650kmにもなる。

ここがイイ

SUVとして特に特徴的ではないものの、きれいにまとまったスタイリング。最近のトレンドであるアメ車風ではなく、洗練された欧州風で素直にいいと思えるもの。インパネも奇をてらっていないし、何よりナビモニターがメーターより上に位置するのがいい。最近の新型車には少ない、最も見やすい位置なのがすばらしい。

世界で3番目のサイズともいわれる巨大なガラスルーフ。運転席ではあまり恩恵を感じないが、後席に座るととても気持ちいい。このガラスルーフの室温への影響を和らげるクイック・ブローシステムもセットだから、気兼ねなくシェードを開けていられる。実際、南フランスはいざ知らず、英国や日本なら開閉式のサンルーフよりこの方が実用的だ。

英国からの輸入品にもかかわらず、価格が国産車並みなのは素晴らしいところ。常に行き来している自社船便の融通が利くことで達成できる話らしい。これが純粋な輸入品だったら2割増しといったところになるだろう。そんな英国車であるデュアリスは、ありがちなドイツ車風じゃなく、フランス車風。というかもう、フランス車だと言い切りたい。特にシートは日産車というよりまるでルノーのそれのようだ。素晴らしい。

サイドブラインド補助ミラーが意外に小さくまとまったこと。ノーズの先にでかいサイズでつくパターンではなく、フェンダーミラー風で結構地味。何とか許せるか?

ここがダメ

いや、補助ミラーはやっぱり許せない。それゆえサイドブラインドモニター単体で工場装着できないのはやはり辛いところだ。それが出来れば、高価なカーウイングナビを選ばずに補助ミラーなしと出来るのだが。現行カローラが液晶モニターとバックモニターを全車標準としたみたいに、サイドブラインドモニターとバックモニターを全車標準としても良かったのではないか。補助ミラーをなくすためだけでなく、幅広ボディのサイドや後部を見切れるという意味でも効果があるのだから。

今の状態ではモニターカメラ対応の社外ナビをつけようと思っても、それも不可。新車購入時にカーウィングスナビと同時につけないと必然的に(法的にも)補助ミラーがついてしまう。後で申請してナビのモニターで代用することが法的に認められるようにできないものか。それが無理なら、やはりデフォルトでドアミラー下部に小さなミラーをつけるという仕様にすべきだろう。

総合評価

またSUVか、と試乗前にちょっとげんなりしていたことは事実。とにかくプレミアムSUV人気がすごくて、それがいよいよコンパクトクラスにまでやってきたという感じは、正直クルマ好きとしておもしろいものではない。日本ではスポーツカーが絶滅の縁にあるというのに、絶滅したと思っていた四駆がSUVとして蘇ってきたのだから。街を行く大型SUVを見ていると、絶滅したはずの恐竜がどこかで生き延びて、現代に突然大増殖してきたような幻想を抱いてしまう。

確かにオン・オフ問わず走れるSUVは本当の意味でスーパーカーであるとモーターデイズでは何度も書いてきた。高速を快適にとばし、不整地に分け入ってからまた高速をとばすなんて芸当は、車高の低いスポーツカーには考えられないことだ。しかも最新のSUVはみな、オンロードでは下手なスポーツカーより速くて安定している(デュアリスもそう)。AWDゆえ当然といえば当然であり、積載性などのユーティリティーも文句はないところ。しかもプレミアムというイメージまで纏うようになったから、こうなるとSUVは本当の意味でスーパーなクルマだ。

それがコンパクトカーにまで増えてきて、大衆化し始めているとなると、へそ曲がりとしては皮肉の一つもいいたくなる。そんなネガティブさを胸に乗り込んだデュアリスは、果たしてその期待?を遙かに裏切るものだった。まずイギリス製というイメージを大きく裏切るその味は、なんとフランス車だった。体を包み込むような大柄で柔らかなシートは、最近のフランス車にも少なくなった類のもの。乗り味も優しく、いわゆるしなやかさを前面に押し出した乗り心地は「これはルノー?」と思わずにはいられない。

確かに部品の多くはフランス系のようで、イギリスで作っているとはいえ要は欧州市場を目指したクルマであり、日産のゴーン=ルノーの社長、なわけで、これすなわちフランス度が高い理由なのだろう。一般的な試乗記ではあまりそうしたレポートはなされていないようだが、一部の試乗記ではそのフランス度の高さを指摘してあるものも見受けられた。乗れば明らかに日本の日産車との違いがわかる、ということは保証できる。

そんなフランス車度の高さとトータルな使い勝手の良さを総合すると、試乗を終えたデュアリスはとても好印象なクルマとなっていた。本文で書いたとおり、その走りやユーティリティには何ら不満はない。取り回しに関しては、全幅・全高ともに立体駐車場向きではないが、このあたりは日本車じゃないゆえ致し方ないところ。その分がスタイリングの素晴らしさに生きていると思えば納得できるというものだ。モーターデイズとしてはこのクラスのSUVとしては一押し。いや、新車ラインナップ全体で見てもトップクラスのおすすめ車ということになる。

こうなるとパワードスーツというテレビCMとのギャップはちょっと大きい。このクルマのエンスー度を広告で表現するのは難しいとは思うが、どちらかといえば人形が出てきて踊っているほのぼの系CM(キューブだったけ?)の方がデュアリスの性格にはふさわしく思えてきた。まあそうなると別の誤解も生みかねないが、現在のCMではたぶんこのクルマの良さが、クルマ好きの心へは響かないと思う。現在販売的に好評なのはクルマ好きの心に響ていないことが幸いしている?とも言えるのが皮肉だが、今後はクルマ好きにも是非どんどん試乗してもらい、購入車候補の一つに入れてもらいたいと思うのだ。とにかく「日本製日産車とは全然違うクルマ」という一点を確認するだけでも、その意味はあると思う。かつて日産にはミストラルというスペイン製のSUVがあり、一部でカルトな人気を誇ったが、デュアリスも初期の大人気が一段落すると、ミストラル同様のマニアックなクルマとなるかもしれない。

試乗車スペック
日産 デュアリス 20G
(2.0L・CVT・FF・222万750円)

●形式:DBA-J10 ●全長4315mm×全幅1780mm×全高1615mm ●ホイールベース:2630mm●車重(車検証記載値):1420kg(860+560)●乗車定員:5名●エンジン型式:MR20DE ● 1997cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・横置 ● 137 ps(101kW)/ 5200rpm、20.4 kg-m (200 Nm)/ 4400 rpm ●カム駆動:チェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/65 L ●10・15モード燃費:14.2 km/L ●駆動方式:前輪駆動(FF) ●タイヤ:215/60R17(Bridgestone Dueler H/P Sport) ●試乗車価格:- 円 ( 含むオプション:- ) ●試乗距離:170km ●試乗日:2007年6月

日産公式サイト>デュアリスhttp://www2.nissan.co.jp/DUALIS/J10/0705/index.html

 
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