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三菱 eK スポーツ R新車試乗記(第433回)

Mitsubishi eK Sport R

(0.66Lターボ・4AT・136万5000円)



2006年09月29日

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キャラクター&開発コンセプト

言わばビッグマイナーチェンジ

2006年9月13日に言わばビッグマイナーチェンジとも言うべき改良を受けたeKシリーズ。「eKワゴン」は約5年ぶり、「eKスポーツ」は約4年ぶりの大掛かりな改良となる。最大のトピックは「ボンネット型乗用」軽で初となる電動スライドドア(左リアドア)の採用だが、一方でヒンジドア仕様も依然残り、ekスポーツではヒンジのみとなる。

それ以外はフェイスリフトをはじめとするデザイン変更がメイン。「シンプル・クリーン・ベーシック」なデザインテーマは変わらず、シャシーは従来型を踏襲。パワーユニットも4ATへのロックアップ追加や触媒の変更など少改良に留まる。

目標は6000台

初代の販売目標(当初)は月間1万台で、結局この5年間で約49万台(シリーズ全体)とほぼ期待通りだったが、今回あらためて設定された目標は同6000台と少なめ。しかし2005年からは日産に「OTTI(オッティ)」(同3000台)として供給を始めているし(こちらも追って新型になる)、2006年からは「i」(同5000台)もあるので、数字そのものは妥当なところだろう。

価格帯&グレード展開

eKワゴンは91万3500円~、eKスポーツは126万円~

5年前は3ATだけでスタートしたeKワゴンだが、徐々にバリエーションを広げて、先代ですでに5MT、3AT、4ATを揃えていた。今回のモデルも引き続き、5MT、3AT、4ATの「eKワゴン」(91万3500円~)と、4ATのみの「eKスポーツ」(126万円~)の2モデル体制だ(SUV風の「eKアクティブ」はない)。

主力エンジンは3気筒NA(50ps、6.3kg-m)で、今回試乗したekスポーツの上級グレード「R」(136万5000円)だけが3気筒ターボ(64ps、9.5kg-m)になる。電動スライドドアはeKワゴン(AT車)だけの装備で5万2500円高。全車で選べる4WDは11万9700円高だ。

パッケージング&スタイル

従来モデルを踏襲しつつ、フェイスリフト

標準グレードの外寸は全長3395mm×全幅1475mm×全高1550mmと先代と同一。試乗したekスポーツは大径タイヤ(165/55R14)のため最低地上高(および全高)が20mm高いが、いずれも立体駐車場が利用しやすい高さに収まっている。シャシーはキャリーオーバーなので当然ながらホイールベースも不変の2340mmだ。

デザインもキープコンセプトだが、歩行者衝突対策のためにクラッシャブルゾーンを増やす必要があったからだろう、ボンネットやフェンダーなどフロント部分を一新。eKスポーツには専用デザインのヘッドライト、ポリカーボネイト製グリル、開口部の大きなフロントバンパーが付く。

後ろ姿もリアフェンダーのキャラクターラインが変わったことと、LEDランプの採用が目立つ程度。逆に、変える必要のないくらい従来のデザインは完成していた、とも言える。ほぼ真四角の縦横比を持つ、バランスのいいスタイルだ。

コラムからインパネに変更

インパネはセンターメーターを踏襲(ただし運転席側に少し移動)しつつ、樹脂パーツを一新して質感を向上。それ以外にも大きな改良点が2つ。一つはコラムシフトがインパネシフトに変わった点。先代は「P」から動かすと「ダラララッ」と一番下の「L」(ロー)に入るなど、たいへん使いにくかったが、新型では格段に操作しやすくなった。

もう一つは2DINのオーディオスペースと空調操作パネルが上下逆になり、ブラインド操作しにくいオーディオ(あるいはインダッシュ式ナビ)が上に来たこと。試乗車にあった工場装着のオーディオ(4万7250円)と8スピーカー・360wのハイグレードサウンドシステム(4万2000円)は軽自動車らしからぬ良い音を出す。ドアが4枚ともデッドニングされているのが効いているようだ。

見覚えのあるパーツも散見

一方で変わらないのが、スケルトン素材のドリンクホルダー。運転席側だけでなく、新型では助手席にも付いている。2段階でサイズが調整できるが、細い缶だとグラグラするし、太めのボトルだと入らない点も変わっていない。

従来同様、ekスポーツのメーターはアナログ回転計&デジタル速度計になる。ただし、照明は白/青からオレンジ色に変更された。小物入れは大容量化され、使いにくかった運転席正面のアッパーボックスは約3倍に、グローブボックスは約2倍になった。

ベンチシートも変わらず

前席は従来同様のベンチシート。ハイト調整は可能だが、ステアリングにはチルトさえ付かない。センターメーターゆえ、メーター視認性の確保がシビアではないからだろう。「eKスポーツ」にはメーカーオプションで専用レカロ製シート(アームレスト付)が用意されるが、これも前からあったもの。

満点の後席

後席はほぼ従来通り。頭上空間、室内幅、共に圧迫感は皆無で、フットルームも十分。この単純明快なパッケージングこそ、eKシリーズのいい点だ。身長が180cm以上あるスタッフが足を伸ばしたら、助手席下のパワーアンプ(オプション)に足先が当たったが、リッタカーと考えても十分通用する広さだ。

助手席背面にはコンビニフックなどアタッチメントが自由に付けられる「マルチポジションユーティリティ(MPU)」が付く。前席の「プチごみ箱」(先代にもあった)をはじめ、対応するフックを付ければ、縫いぐるみだって付けられる。

段差は残るが・・・

荷室の拡大は、背もたれを倒すだけのシングルフォールディング。段差は残るが、シンプルでいい。オプションのボードでフラットにすることも可能だ。

基本性能&ドライブフィール

扱いやすいエンジン、しっかりしたシャシー

試乗したのはeKスポーツのターボ車「R」。三菱の軽でおなじみの3気筒SOHC「3G83」インタークーラーターボ(64ps、9.5kg-m)は過給圧の急激な高まりを感じさせず、NAエンジンのように870kgのボディを自然に加速させる。エンジン本体の改良点は少ないのでパワー感は先代と大差ないが、キックダウン時の変速がスムーズな4ATもあって、走りに不満はない。

むしろ印象的なのは、しっかりしたシャシーの方だ。ターボ専用のスポーツサスペンション(パフォーマンスロッドも追加)と165/55R14タイヤのおかげで「スポーツ」の名に恥じない安定感が味わえる。まあ、このあたりも従来のekスポーツがすでに備えていたものだが。少し気になったのはパワステのフィーリングが従来車よりやや人工的になった感じがしたことくらいだ。

山道では確かにスポーティ

その足回りのおかげで、いつものワインディングではミズスマシのようにキビキビ走れる。ステアリングを切った方向にグイグイ曲がり、それでいて旋回中にブレーキを踏んでもリアタイヤはビタッと安定。絶対的な安定性では、よりホイールベースが長く、トレッドの広いリッターカーに譲るが、山道での速さは対等だろう。

100km/h巡航は3800回転ほどで、快適性や静粛性もまずまず、ひと頃の軽ターボのように中回転でトルク変動が大きくないので一定速度を無理なくキープできる。超ロングホイールベースの「i」のようなフラット感こそないが、常識的なディメンションがもたらすソツのない感覚も悪くない。

今回は撮影や高速走行を含めて約200kmを試乗。燃費は参考までに約9km/Lだった。最悪の数字と考えてもらっていいが、都市部の街乗りで10km/L台に乗せるのはやはり辛いだろう。

ここがイイ

こと試乗したターボ車に関しては、小型車としても大きな不満がない。旧eKスポーツ(3万㎞走行)と乗り比べてみたが、新車であることを割り引いても、かなり洗練された印象だった。室内はインパネシフトの採用で「今のクルマ」になったし、内装材がすっきりしたためか、広くなったようにも感じられた。

eKスポーツは少し背が高いため微妙だが、eKワゴンの方ならほぼすべての立体駐車場に入る。これはワゴン型軽自動車の中で、やはり大きなアドバンテージだと思う。また室内の広々感もかなりのもので、この点では軽のセダンタイプとは比較にならない。「道具としての軽」としてはベストなパッケージングだろう。さらにスライドドアが加わったのだからモアベストだ。

ここがダメ

5年ぶりのモデルチェンジなのに、ハードウエア的に進歩していないこと。スズキやダイハツが軽自動車用エンジンおよびCVTの新開発を行っている今、この変わらなさを逆手にとってもう少し価格を下げるという手もあったのではないか、と思う。

シフトゲートには一直線に「P-R-N-D-3-2」と並ぶだけ。4速なのでマニュアルモードは必要ないが、ジグザグゲートならもっと使いやすいし「スポーツ」の雰囲気が出たと思う。せめて4速(オーバードライブ)OFFボタンは取り付けてもらいたかった。

2DINにオーディオを入れるとナビが行き場を失う。下の1DINにオーディオ、上の1DINにナビという手もあるが、画面を立ち上げるとエアコン吹き出し口だけでなくセンターメーターの一部まで視界を塞ぎそう。なのでもちろん、正規のオプションには用意されない。運転席正面のアッパーボックスは蓋を外せばナビのベストポジションに見えるが、視界的にステアリングとの干渉が気になりそうだ。何よりここにカーナビをセットすることは、先代と違って考えられてはいないようだ。残念。

総合評価

試乗車は最上級グレード、しかもスポーツモデルということで、3ATのベーシックグレードとは相当に印象が異なると思う。先代の試乗車はベーシックグレードだったから、かなり厳しい意見にもなったが、今回の試乗車では「たいへん良くできました」スタンプをたくさん押したくなってしまった。ターボモデルながらパワーに段付感はなく、リニアな加速が可能。4速ATゆえフルスロットルではCVTと違って「ゴン」とキックダウンするはずだが、このクルマにはそれもなく、しなやかな加速が連続して心地よい。高速のけっこうな上り坂でも130㎞/hをキープできるから、流れが遅い昨今の高速道路なら、ほぼ不満なくどこまでも走れそうだ。室内騒音も良くカットされており、その点でも疲労がない。小型車並みの走りと快適性を持つ軽自動車だ。

装備面でも不満がない。物入れの類は先代より大きくなっているし、オプション装着されていたオーディオは、低音の良く効いたなかなかにいい音を奏でてくれる。モーターデイズではクルマの必需品といつもいっている「ゴミ箱」もある。いろんなものをアレンジしてぶら下げられるマルチユースフックも便利で、オプションカタログを見ると実に様々なものが取り付け用として用意されている。あと、カタログで面白いと思ったのはフロントフロアセンタートレイ。iPodが固定できるようウレタンをくりぬいたパッドが用意されている。まあ、オプションではなく、センターコンソールあたりに標準装備してもらいたいものではあるが。

試乗したeKスポーツにスライドドアがないのはちょっと残念だが、実際、電動スライドドアはファミリーならぜひお勧め。子供のドア開け事故(多いのは隣のクルマにエクボをつける事故)が減ることは、クルマ好き(クルマ大事の人)には大歓迎。普通車ミニバンなら当たり前の装備だから、軽でも悪いわけがない。今回用意したことは英断だと思う。ただ、5万2500円の価格差は、やはり軽には販売面で大きな壁になるかもしれない。

と、なかなかいいクルマなのだが、価格もかなり立派。軽の値引きにはあまり期待できないから、かなり高価なクルマになる。いくら性能が良くても、高価だと「ベーシックカーとしての軽」という本来の姿からは離れてしまうだろう。そのバランスがこのクルマの場合、とても微妙だ。試乗車は車両本体136万5000円、ハイグレードオーディオが8万9250円、フロアマットが1万5750円で合計約147万円。安くはない買い物だ。また、燃費も我々の走り方だとリッター10㎞を切ってしまった。よく走るが、燃費は小型車より悪くなる傾向があるだけに悩ましい。

この性能で軽本来の価格が達成できたら、三菱は圧倒的な優位に立てると思う。よく見ればこのクルマ、シャシーからエンジンまで先代のキャリーオーバーだし、内装のデザインもほぼ先代を踏襲している。ビッグマイナーとも言えるフルチェンジだから、原価的にはかなり低いのではないだろうか。販売数だって日産にOEMすることでかなり稼げるはず。その意味では、あっと驚く低価格を打ち出してもらいたかった。価格にサプライズがあれば、この出来なら爆発的に売れると思う。「i」もその価格ゆえ苦戦を強いられているようだし、三菱にとっては低価格路線こそ生き残りの重要なポイントだと思うが、いかがだろうか。

試乗車スペック
三菱 eK スポーツ R
(0.66Lターボ・4AT・136万5000円)

●形式:CBA-H82W●全長3395mm×全幅1475mm×全高1570mm●ホイールベース:2340mm●車重(車検証記載値):870kg(F:540+R:330)●乗車定員:4名●エンジン型式:3G83●657cc・直列3気筒ターボ・SOHC・4バルブ・横置●64ps(47kW)/6000rpm、9.5kg-m (93Nm)/3500rpm●カム駆動:タイミングベルト●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/30L●10・15モード燃費:17.0 km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:165/55R14(FALKEN ZIEX ZE-326)●試乗車価格:148万3550円(含むオプション:2DIN AM/FM/CD/MD 4万7250円、ハイグレードサウンドシステム 4万2000円、フロアマット 1万5700円、ドアバイザー 1万3600円)●試乗距離:約200km●試乗日:2006年9月 ●車両協力:西尾張三菱自動車販売株式会社

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/ek/index.html

 
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