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三菱 eKワゴン新車試乗記(第198回)

Mitsubishi eK Wagon

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2001年11月22日

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キャラクター&開発コンセプト

全高1550mmがもたらす「ちょうど良さ」

軽規格改正からちょうど3年が経過。2001年10月11日に発売された「eKワゴン」のネーミングは、「いい軽」(excellent K-car)を作ろうという「eKプロジェクト」が由来。一日も早くシェアを回復したい三菱の、起死回生のモデルだ。

CATIAと呼ばれる新型CADソフトによって短期間(企画から発売まで21ヶ月)で開発されたデザインは「シンプル・クリーン・ベーシック」がテーマ。上面から見てボディ前後を絞った「タル型造形」により「力強く安定感のあるスタイリング」を達成したという。全高1550mmの「セミトール・パッケージング」により、ほとんどの立体駐車場が利用可能となっている。

月間目標販売台数は10,000台と、三菱の軽自動車全体の台数の半分に及ぶ。すでに10月11日の発表後4日間で1万3000台を突破、19日後の10月29日時点ではすでに2万1000台を越えたという。初期需要がそこそこあるのは当たり前だが、とりあえずヒット商品が欲しい三菱にしてみればホッと一息つけたというところか。

価格帯&グレード展開

驚くほどほどシンプルなグレード設定

グレードは基本的に「M」と呼ばれるタイプ1種類のみ。エアコン、全席パワーウインドウ、パワードアロックはもちろん、アンサーバック機能付きキーレスエントリーなども全車標準装備だ。エンジンは自然吸気3気筒1種類、全車3ATと組み合わせられる。ターボエンジンや4ATの設定は、とりあえず今のところない。価格は2WDが91万円、4WDが102万円。

全車に設定のあるパッケージ・オプション「Xパッケージ」(+8.8万円)の内容は、ハイマウントストップランプ付きルーフスポイラー、リアワイパー、電動格納式ドアミラー、アルミホイールなど。2WDの他に4WDもあるが、概して非常にシンプルなグレード展開と言える。

パッケージング&スタイル

これぞ本流! のパッケージング

次世代スタンダードと三菱がうたう「セミトール・パッケージング」は、ミニカ(1510mm)より高くミニカトッポ (1680~1695mm)より低い1550mm。前述の通り、日常での使いやすさを重視したというが、それよりも立体駐車場の利用が可能と言った方が説得力がある。

とは言え、そもそも現在爆発的に売れているホンダ・フィットでさえ全高は1525~1550mm、トヨタ・ヴィッツは1485~1510mm。つまり1500mmもあれば普通の使用に関する限り十分な室内高が取れるということだ。

パッケージング面でのもう一つのトピックは、ルーフ長が非常に長く、1830mmという「リッターカー並みの室内長」(広報資料)を実現していることだ。試しにトヨタ・ヴィッツ(1800~1815mm)、ホンダ・フィット(1835mm)と比べてみると、数値上ではその言葉通り。実際にも前席の広々感、後席足下の余裕は十分なものがあり、軽自動車もついにここまで来たかという感じだ。

拍子抜けするほど、あっさりしたデザイン

三菱というとガンダム調のマンガチックなデザインが多かったが、eKワゴンは一転してアッサリスッキリの、無印良品路線。トッポBJにしても、はたまたタウンボックス(三菱の軽1ボックス)にしてもいつの間にかマイナーチェンジしてスッキリ系デザインに宗旨替えしているのだが、eKワゴンはその上を行く素っ気なさ。前後のスリーダイヤモンドさえ無ければ、それこそ本当にムジルシのお店に並んでいそうだ。実際に、エンブレムは簡単かつ跡も残らずキレイに取り外すことが出来るらしい。

ヴィッツやフィットなどが複雑なラインや造形でデザインされていることを考えると、少し芸が無さ過ぎる感じもする。しかし無印良品にしてもユニクロにしても、いまやシンプルなデザインは高級ブランドの対極にあって、トレンドの一つと言える。そういう意味で、eKワゴンはうまい線を突いている。グッドデザイン賞にもしっかり選ばれていることだし。

上面から見てボディ前後を絞った「タル型デザイン」は、真上から見る機会に恵まれなかったため確認できず。ただし三菱はそのタル型により「ホイールアーチの張り出しを強調することが出来」たと主張する。

ちなみに今年4月から三菱のデザイン部門の責任者に、ダイムラークライスラー出身のデザイナー、 オリビエ・ブーレイ氏が就任したということだが、開発時期から見てeKワゴンのデザインに新しいボスの影響はほとんど入らなかったと思われる。

気になるところがまったくない、優れた居住性

試乗したのは2WDのM(Xパッケージなし)、91万円。 そこかしこに設置されるスケルトン素材のせいか、乗車した時の第一印象は「10代の女の子向け雑貨屋(3~4年前の)」という感じ。とは言え、たっぷりしたサイズのベンチシートはフカフカしつつも意外に座り心地がよい。軽自動車&三菱初というセンターメーター(タコメーターはなし。水温計も警告灯のみ)もとても見やすい。足踏み式のパーキング・ブレーキも便利だ。

エクステリアデザインと同じく、運転席に座った感じもまったくトゲがない。圧迫感は皆無、目線も高からず低からず。パッケージングとしてはほとんどパーフェクトではないかと思う。

ここまで空間がまっとうだと、やはり気になるのがブルー系のスケルトン素材で作られたドアカップホルダーおよびドアポケット内の間仕切り(取り外すとウインドウの霜取りに使える、その名も「霜とりクン」!に変身)、そして運転席ドアポケットにある取り外し式「プチごみ箱」の3点。うーん。こういうものを付けたかったインテリア・デザイナー(多分、女性)と、このクルマを買うユーザー層(主に若い?女性)のことを考えれば、気持ちは分からないでもない。

居住性の良さは後席でも変わらない。固定式であるがゆえ、座面はまずまずの前後長と高さが確保され、特にクッションがたっぷりしてるのが嬉しい。バックレストもシートアレンジを優先したクルマにありがちな薄っぺらさがなく、ヘッドレストを含めた高さも合格点。正直、後席の座り心地(乗り心地ではない)に関してはいくつかの最新小型車よりも良いのではないかと感じた。

またグラスエリアが広く、やや高めのヒップポイントと相まって、適度に開放感があるのもいい。内装はありがちなブラックやグレーではなく、明るいベージュ系(ファブリック部分は薄いグレー)に統一されており、それも室内の明るさに貢献している。

基本性能&ドライブフィール

自然吸気3気筒、3ATの走りは全く従来のレベル

エンジン、トランスミッションともに、「これしかない」の自然吸気SOHC12バルブ3気筒(50ps/6500rpm、6.3kg-m/4000rpm)、3速AT。ライバル車がターボ・エンジンや4ATを用意するのを思うと物足りないが、軽自動車本来の性格を考えれば、このエンジンとミッションに絞ったのは(実際の経緯はさておき)理にかなった選択と言えるだろう。

たしかにこのeKワゴン、他車をリードするような加速をしようと思うとそれなりに騒々しい音を立てる。しかし普通に流れに乗る分には、遮音レベルが高いこともあって問題のないノイズレベルだし、動力性能も過不足ない。実際、このエンジンは790kg(2WD)のボディを街中では十分に加速させる。10・15モード燃費も17.4km/l。オートマチックであることを考えればまあ納得できる。

「軽自動車としては」十分な操縦性

「軽自動車の新しいスタンダード」を目指したというeKワゴン。サスペンションはフロント:マクファーソンストラット、リア:トルクアーム式3リンクと従来の物ながら、eKワゴン用にファインチューンされているという。まず好印象なのがステアリングフィール。流行りの電動ではなく油圧を採用したパワーステアリングは軽すぎず重すぎずごくごく自然で、前輪の状況をよく伝える。

サスペンションのロールは少な目で、ロールスピードも遅い。つまりぐらっと来ない。ハードなコーナリングをしても腰砕け感、底付き感はなく、確かにこれまでの軽自動車よりもしっかりした感じがある。ただしそれが「軽自動車の新しいスタンダード」と言えるほどのものかと言うと、それほどでもない、というのが正直なところだ。

軽自動車にありがちながら、ややオーバーサーボ気味のブレーキはコントロール性が良くなく、しかもロックするまでの限界が低い。ABS(ブレーキアシスト付)はメーカーオプションで、試乗車には装備されていなかった。ちなみに他メーカーの同クラスの軽自動車もABSはほとんどメーカーオプション扱い。軽自動車がこれ以上豪華&高価になる必要もなく、ABSが必要不可欠とは言わないが、ヴィッツの最廉価版(84.5万円)にさえブレーキアシスト付ABSが標準装備されている今、軽自動車においても標準化が必要ではないかと思う。

追記すればワインディングでは腰砕け感はないものの、接地感に乏しく、楽しめるものではないのは当然か。ただ、ごく普通に、ごく普通の人が、ごく普通の速度でコーナリングするとき、それはごく普通よりちょっと上なのでたいへん安心感がある。つまり軽としては不足ないということだ。高速ではさすがに騒音、中間加速で3速ATのハンディが出るものの、120km/hでの巡航なら特に不満なくこなす(相当やかましいのは確かだが)。軽も100km/hまでは合法的になったので、その速度でなら快適に走れる。ちょっとした距離なら遠出も十分可能だろう。[

ここがイイ

ファンシーすぎるきらいはあるものの、カップホルダーにはペットボトルがちゃんと収まったし、ほかの小物入れもたいへん使いやすいものだった。頭上空間には普通車セダン以上の空間があり(トッポBJのようなただ広いだけの無駄な空間ではない)、アイポイントも高からず低からず、シート高もスッと乗りやすい高さであるなど、パッケージングは本当に文句なくいい。軽の枠としては完成型だろう。センターメーターも見やすかった。

試乗車にはなかったが、カーナビディスプレイは通常のメーター位置にセットできるという。これは画期的。以前から主張してきたとおり、カーナビディスプレイは最も見やすい位置(ダッシュセンターの方が見やすいという意見もあるが)にあるべきで、ついにスピードメーターとカーナビの位置が逆転したわけだ。クルマ史上初のITインパネと評価してもいい(トヨタの公道を走れる2人乗りEVのe-comもこうだったので史上初とはいえないかもしれないが、一般市販車としては初だと思う)。

ここがダメ

軽としてのチープさが、そこはかとなく感じられてしまう。おそらくもう少しコストをかければ、かなり上質感が出せると思うが、現在のところ、乗ればその乗り心地や、音、走りなどで、軽であることが実感できてしまう。あと10万円も出せば、もう少し上質感のある、小型車らしいヴィッツとかが買えてしまうわけで、このあたりの価格設定は悩ましいところだ(以下総合評価へ)。

どこから見ても冒険心が感じられない。実に手堅く作られた感じ。これは、というインパクトがないのが残念だ。したがってほかのクルマより新しい分、現時点ではいい点が多いが、近い将来に追いつかれそうな危惧がある。オートマも4速にすべき。

それはそうと、カーステレオの使い方がわからないのにはまいった。どうして最近のカーステレオの操作性はああ複雑なんだろう。電源のオンオフすら一瞬にはできず、ボリュームを下げるしかなかった(苦笑)。

総合評価

このクルマは、軽自動車というパッケージングでは、いよいよ究極のものだ。ミニバン型のような不安定感はなく、広さは十分。出足のパワー感も1リッターヴィッツなどよりあるくらいで、加速にも不満はない。これで横幅があと10mmあったら、タウンカーとしてはほぼ理想的だろう。それはワゴンRソリオを高く評価する理由でもあるのだが。

ただ、現在のこのクルマにはあくまで「軽」を感じてしまう。軽の枠を超えた素晴らしさだ、とは絶賛できないのだ。

軽としてのメリットはというと、やはりその維持費の安さにつきる。維持費がリッターカーに対する劣性を挽回してあまりあるわけだ。しかし、考えるにこの軽という特例は、そろそろ矛盾した制度になってきている。これがなければかなりおもしろい小型車が作れるし、またスモール軽のような規格ができ、さらに税制が優遇されればもっと小さなタウンカーも作れるはず。2人乗り49万8000円で、軽商用車並の税制が適応されたら爆発的ヒット車が出ると思う。

軽の規格を2つ作り、一つは幅を広げた現在のサイズで、排気量を800ccまでにする、もう一つは現在より小さいサイズで排気量を現行に据え置く、というのはどうだろうの。軽自動車という制度を撤廃して、そんな2クラスの税制優遇小型車を作ると、もっと小型車の世界がおもしろくなるはずだ。それはまた、世界の小型車と同じような規格であり、軽サイズのクルマの輸出が本格化できるということでもある。

軽枠のスマートがいよいよ発売されたが、あれに対抗できる軽は日本にはない。ekワゴンも軽の枠から見れば確かに「いい軽ワゴン」だ。が、実際に4人が乗れる空間は軽に必要なのだろうか。今後2座あるいは3座の大きな空間を持つ「軽の枠を破った軽」が出てくることを期待したい。

●車両協力:中部三菱自動車販売株式会社

公式サイト http://www.mitsubishi-motors.co.jp/

 
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