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日産 エルグランド新車試乗記(第223回)

Nissan Elgrand




2002年06月08日

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キャラクター&開発コンセプト

ヒット作となった先代のコンセプトを見事にキープ

'97年に発売された初代エルグランドは「国産最上級ミニバン」というコンセプトとアメリカンなルックスが受けて会心のヒット。苦しい時期の日産をよく支えた。

2002年5月21日に発表された5年振りのフルモデルチェンジは、成功作らしくキープコンセプト。スライドドアが両側に付いたが、サイズやパッケージングに大きな変更はない。基本的に先代のFRシャーシを継承(ただしリアサスはリジッドからマルチリンクに)、5速ATを得るもVQ35DEエンジンに大変更なし。しかしディーゼルエンジンは今回ラインナップから落とされた。

販売目標は3,300台/月。ちなみに1日遅れの5月22日(急遽1週間繰り上げたらしい)に発表されたトヨタ・アルファードは4,000台/月。すでに好調な受注状況が伝えられる。かつてのBC戦争が21世紀ではミニバンで繰り広げられることになりそうだ。

価格帯&グレード展開

グレードは全部で5つ。お約束のハイウェイスターも

ベースグレードの「V」(289~321万円)は、価格は安いがリモコンオートスライドドア等が付かないほか、オーディオもオプション。中間グレードの「VG」(308~340万円)は基本的な装備を備え、唯一4ドアもある。その上の「X」(358~390万円)は純正ナビシステムに加え、断熱ガラス、革巻&木目調ステアリング装備の売れ筋。トップグレードの「XL」(418~450万円)は本革シートを装備した至れり尽くせり豪華版。この「XL」のみ2列目がキャプテンシートとなり、定員7名となる。

また、日産のミニバンでは定番の「ハイウエイスター」(330~362万円)も外せない。スポーティな内外装、10mmダウンの足回り、17インチアルミホイールを装備。価格帯は「X」とカブるが、純正ナビシステムが50万円前後のセットオプションとなるのはちょっと痛い。

パッケージング&スタイル

サイズアップはわずか。ポイントは低床化

新型エルグランド(ハイウェイスターを除く)のサイズは全長4795mm×全幅1795mm×全高1920mm。先代より55mm長く、20mm幅広く、20mm低くなった。ホイールベースは50mm延長されて2950mm。

これらサイズアップにより実質室内長を55mm、室内幅を20mm(5ドアで)拡大。また低床化(-40mm)により室内高がアップ。ステップの高さが(セカンドシートで)25mm下がったのは恩恵を感じやすい部分だ。運転席のヒップポイントも30mm下げて、乗降性に配慮したという。

ちなみに荷室だが、国内向けミニバン共通の特徴として、3列シートをゆったりと使用した時の容量は皆無に等しい。ここはアメリカ市場をターゲットにして全長5メートルを躊躇なく越すホンダ・ラグレイドやアメリカ製ミニバンに勝てない部分ではあるが、その分、各シートのスライド幅は大きく、またサードシートのはね上げも「軽く」可能だから、必要に応じてシートをアレンジすれば相当の物が載るはず。サードシートをはね上げ、セカンドシートを一番前に寄せた場合、フルフラットな荷室の奥行きは170cmほどあるから、小柄な人ならマットを敷いて快適に寝られるだろう。

新しいフロントデザインはちょっと怖い!?

先代エルグランドの人気の要因は何といってもフロントデザイン。どことなくシボレーのミニバンを連想させるアメリカンなルックスは、やや意匠変更。どこか端正でもあった先代に対し、新型は「何もそんなに怒らなくても」と言いたくなるツリ目系に。縦2段構えのヘッドライトや巨大ラジエイターグリルといった特徴は同じだが、かなり好みが分かれるデザインだ。ただでさえ威圧感を与えるサイズのクルマの上、この威嚇するような戦闘的マスクでは、運転する方にその気がなくてもあらぬ誤解を招くかも。逆にいえばこの威圧感こそがエルグランドの商品価値であるわけで、その意味では日産はよくわかった上で確信犯的にこのデザインを採用したのだろう。

フロントに比べれば横と後ろのデザインは先代と大差ない。一応、サイドには深いキャラクターラインが入れられ、先代でややエグいデザインだったリアはスッキリした(あるいは没個性的な)ものに改められている。ドアミラーなどのディテールも洗練された。

インパネ周りのデザインは秀逸!

一方、内装デザインはイメージが明確で、センスの良さと先進性が感じられる。ライバルのトヨタ・アルファードが、黒の樹脂や木目調パネル、メッキ処理で古典的かつ無難な高級感で訴えるのに対し、エルグランドの内装はクールで知的、都会的なセンスで勝負という感じ(それゆえいわゆる「高級感」ではアルファードに負けるかも)。

印象的なのは湾曲したインパネから連続して屏風のように広がる8インチワイドモニター。新型エルグランドのデザインで最も魅力的な部分だ(未装着グレードあり)。この手の未来的デザインはまかり間違うと一気に安っぽくなるが、これは質感も高く視認性も非常に高い。また、助手席全面、左右に薄く伸びる吹き出し口も良いアイディア。日産の最近のインテリア・デザインは本当に素晴らしい。

インテリアカラーは、日産お得意のベージュ系「エクリュ」。ボルボのバーチ(白樺)ウッドを思わせる、明るい木目調パネルが品良く、爽やかな高級感をアピール。一方、ハイウェイスターは、グレー系にチタン調パネルの組み合わせとありがち。

「ファーストクラス」のインテリア

エルグランドのシートは3列目も含めてサイズ、デザインとも申し分なく、居住性はなかなかゴージャス。左右に幅のあるヘッドレストがまさに「ファーストクラス」を演出しており嬉しい。ただし前席は膝から下の狭さが気になる。FRゆえギアボックスがキャビンを浸食するのは仕方がないが、正直、ボディーサイズの割には運転席の狭いクルマだ。タイトで運転する気分にさせる狙いはあると思うが、大柄な人には狭苦しく感じられるかもしれない。

気になったのは、2列目中央の「セカンドマルチシート」。ベンチシートとして8人掛けを実現するこのシートは、前方にスライドさせて2列目と3列目のウォークスルーを可能にする。シートバックを倒せば、2列目用の大型アームレストに変身。一見便利だが、困るのは取り外したり収納したりできないことだ。ウォークスルーの場合にはじゃまだし、ヘッドレストもないから積極的にシートとしても使いたくない。その意味では実質的に7人乗りと大差ないと思う。

やはりミニバンは、1列目から3列目まで自在にウォークスルー可能なのが望ましいが、そういう人には、最上級グレード(7人乗り)しかない。一般的に、7人乗りキャプテンシートは8人乗りベンチシートより人気が低いものだが(ホンダ・オデッセイでもそれは同じ)、廉価版でも7人乗りシートが欲しいところだ。

基本性能&ドライブフィール

インテリジェントキーは今後必需品?

試乗したのはスウェード調の布シートを持つ「X」2WD(358万円)。8人乗りタイプでは最も高価なグレードだ。試乗車はさらに、インテリジェントキーや後席用8インチワイドモニターなどのセットオプション(15.7万円)とツインサンルーフ(12万円)を装備。車両価格は締めて385.7万円である。

乗り込むにあたって嬉しいのが最近の新型車で多いインテリジェントキー。これは便利だ。おそらくごく近い将来、普通の「キーレス」はこのタイプに駆逐されるに違いない。なにしろ新型マーチにも装備されるくらいだ。鍵穴がないから防犯面でも効果は高い。問題はエルグランドでは室内に専用の置き場所がないこと。とりあえず助手席の上に置いたが、ブレーキをかけた拍子にどこかへ行ってしまい、後で冷や汗をかきながら探すハメに。とは言え、自分のポケットに入れておくとけっこう大きいからかさばるし、そのまま洗濯機で洗ってしまいそうだ。バッグを持つ習慣のない人はちょっと困るだろう。まして今後いろいろなクルマがこうしたリモコン方式を採用した場合、何台かのクルマを持つ人は、リモコンをたくさんぶら下げて歩かねばならない。もう少し小型化されることを切に望む。

速い! 速い! もひとつ速い!

さて、キー要らずのイグニッションを回してエンジンを始動すると、シュワーンと聞き覚えのあるエンジン音。これは最近試乗したスカイライン 350GT-8と同じ音だ。チューンや仕様、組み合わされるミッションは違うが(エルグランドは5AT、350GT-8はトロイダルCVT)、基本的には同じエンジンである。

でもって加速もまさに新型スカイラインを彷彿とさせる。速い! 試乗車はオプションの追加(プラス40kg)もあって、車両重量は2050kgとヘビー級。いくら名機VQ35DE(240ps/6,000rpm、36.0kgm/3,200rpm)でもちと荷が重いのではと諦めていたが、これには本当にたまげた。

1速全開でスタートし、60km/h(約6,000rpm)で2速にアップするまではまさに一瞬(レッドゾーンは6,700rpmから)。その後がさらに速い! 3速にシフトアップしつつ、速度計の針は100km/h付近を猛烈な勢いでかすめて行く。恐ろしいほどの速さ。まるで大砲を公道でぶっ放しているようである。飛ばす弾は2トン。もし高速道路で新型エルグランドの釣り目が迫ってきたら、すぐに譲るのが賢明である。その恐いルックスに負けない走りの実力があるのだから。

新しく採用された5ATはショックのショの字もなく、非常に滑らかに変速する。ただしマニュアルモードは「レンジセレクトタイプ」。すなわち3速を選んでも、スピードが落ちれば1速ないし2速に入る。しかもレッドゾーン「付近」まで回しただけで勝手にシフトアップもする「なんちゃって」マニュアルモードである。

非常に快適な乗り心地

ミニバンなのだから快適性がまずは重要。静粛性は全く問題なし。エンジン音は小気味よいハミングが透過するのみ。ドライバーが楽しめて、パッセンジャーからも不満が出ない音環境だ。100km/h巡航時の回転数は2100rpm弱。タイヤノイズも気にならない。サスペンションの設定も乗り心地重視。親孝行するにはうってつけのクルマだ。後席に乗って走ってはいないが、この柔らかさには若干クルマ酔いの心配もありそう。

パワーを解き放つとFRらしい挙動が出る

高速安定性は悪くない。日産によると新型エルグランドはスカイライン同様、空力的に「ゼロリフト」を達成して安定性を高めたという。一方、ワインディングでは、ステアリングのギア比が遅いせいもあって飛ばす気になれない。ロールも大きく、コーナー中に不用意にパワーをかけると挙動を乱しがち。また、サスペンションが吸収しきれない大きなウネリや段差では、それまでの安定した姿勢がまるでウソのように大きくバウンシングする。さらに1速ないし2速で回るコーナーでアクセルを全開にするとリア内輪の215/65R16タイヤ(トーヨー・トランパス)がホイールスピン。トラクションコントロールは装備されておらず、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)として車間自動制御システムと共にセットオプション(17万円)となる。これはぜひ装備すべきだ。

やはりこのクルマは大陸横断クルーザーと心得るべきだろう。大陸でない日本の場合でも、街中のスタートダッシュで負けず、高速の中間加速で負けないという点で不満はないはずだ。

飛ばしまくったツケか。燃費はかなり厳しい数字となった

最後に燃費だが、試乗してすぐに燃費の悪さは覚悟した。「打てば響く」VQ35DEの動力性能と快音の誘惑に負けて全開加速を繰り返してしまったからだ。レスポンス抜群のエンジンと、過敏なほど素速く滑らかにキックダウンする5ATを前に、トロトロと走るのは困難だった。2トンものクルマをこんな勢いで加速させていいものかという快感と罪悪感にかられながらの試乗となったのだ。で、肝心の燃費は150kmほどを走行して約40リッターを消費。4km/Lを大幅に割ってしまった。ちなみにエルグランドに付属している燃費計には3km/Lと表示された。おそらく新型エルグランドでこれ以上悪い数字は出ないと思われる(思いたい)。

ちなみに10・15モードは8.0km/L(試乗車のカタログ値)。使用燃料はプレミアム、燃料タンクは76リッターである。また、エルグランドの一部車種はグリーン税制の対象である(2003年3月までの登録に限り取得税15,000円の軽減と、自動車税の2年間50%オフ)。試乗車もまさにその対象車であったのだが……。

ここがイイ

FRながら完全フラットのフロアと広い居住空間は、人がミニバンに求める最大の価値「移動する巨大空間」を理想的に満たしている。やはりミニバンを名乗る以上、これくらいの空間が欲しい。エルグランドに載ると5ナンバーミニバンがいかに日本的なものかを思い知らされる。また少し低床になって乗り降りのしやすさが増していることも、老人などを乗せる機会の多いミニバンとしてはうれしいところだ。

左右のスライドドアもやはり便利。そして何より見やすいカーナビディスプレイを含む斬新なインパネまわり、およびカーウィングス(後述)などのIT装備は意欲的で、評価したい部分だ。

ここがダメ

ディーゼルが無くなったことで、一気に燃費の問題が浮上してくる。走りや大きな空間とのトレードオフになることはいたしかたないが、実用燃費が5km/Lを切るとなると、かなり厳しい。ちなみにデイズの旧型ステップワゴンやエミーナはリッター6.5km程度。これでも実用車としてはギリギリだ。エルグランドの場合、排気量やサイズを考慮すればけして納得できない数字ではないが、さらなる燃費向上の技術開発に努めてもらいたいところだ。

総合評価

先代エルグランド成功の原因が、そのアメリカンなムードだったことは誰もが認めるはず。アメリカンなムードってなんだ? というと、シボレーアストロ似のボクシィな形と巨大なメッキグリルなわけで、この2つが先代の成功要因であったといいきってもいい。

では今回のモデルはというと、近未来的な要素を少しだけ取り入れたアメリカンなジャパニーズミニバンなわけで、基本コンセプトは変わっていない。このグリルの迫力は、正直、エグイと思う。でもこの手のクルマを欲するちょっとヤンキーな(あるいはそういう体質を内在する)人たちには、間違いなくトヨタ・アルファードよりうけるはずだ。強そうで速い、これに勝るものはない。ただ、旧型の方がよりクラシカルなアメリカンミニバンの体質を持っていたわけで、ややモダンな新型は、当初少し苦戦するかもしれない。一時的な旧型人気の復活はあるだろう。

そうしたヤンキーな体質と相容れない? ハイテク軽装備があるのもこのクルマのおもしろいところ。カーウィングスというタイトルでサービスされる、携帯電話経由でニュースや天気予報・交通情報をダウンロードして読み上げる「オートDJ」、インターネットのカーウイングスページで編集しておいたドライブ情報を携帯電話経由でダウンロードする「レッツドライブ」、位置情報を友人の携帯電話へ知らせる「ここです車メール」のほか、緊急通報システムやナビゲータが声で答えてくれる日産お得意のコンパスリンクライト、ハンドフリーフォンなど「携帯電話」を使った数々の移動体通信サービスは、十分実用性のあるものになっている。使ってみたが、確かに便利だ。

とはいえ、これらが現実に使われるかに関してはどうしても?がつく。機能を「携帯電話でできること」に絞り込み、携帯電話をベースにした独自サービスという点でトヨタのMONETがトライしてきたことに近いが、MONET同様、ユーザーがこれらの仕組みをかなり理解していないと辛いだろう。それに、これらのサービスの大半は、携帯電話単体でできるようになってきている。交通情報は携帯で聴けるし、位置情報サービスも間もなく多くの携帯で始まるだろう。メールも携帯で十分なので、クルマでうける必要はほぼなくなった。

よくできた最新装備に対してきついことを言うが、クルマのこうした通信機能に関しては根本的に見直す時が来ているのではないだろうか。どんどん進化していくIT系ハードウェアを何年も使うクルマに搭載するのはやめて、ユニットで載せ代えられるようにした方がいい。クルマに装備してしまうのでなく、後付にして最新ユニットを載せ代え可能とするのだ。ただしその場合重要なのはディスプレイだ。エルグランドの大型ディスプレイは大変便利で見やすい位置にあるので大正解。希望としてはここに携帯電話の画面が大写しできるようにしてもらいたい。それなら携帯を多用するヤンキーな人々にも大ウケするはず。今後進化していく携帯電話に対応する大型ディスプレイこそ、クルマのIT装備として第1に求められるものだと思う。ノートパソコンやPDAの外部モニタとして使える車載ディスプレイはいつになったら装備されるのだろう。

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/ELGRAND/

 
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