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ロータス エリーゼ SC新車試乗記(第511回)

Lotus Elise SC

(1.8Lスーパーチャージャー・6MT・680万円)

軽量スポーツの傑作、
その最新・最速モデルに乗って
思ったこととは?

2008年05月24日

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キャラクター&開発コンセプト

スーパーチャージャー搭載の最速エリーゼ

「エリーゼSC」は、現行エリーゼ(通称エリーゼ2)の最新・最速モデル。上級版「エリーゼR」(1.8リッター直4、192ps)に、新型スーパーチャージャー(機械式過給器)を追加して220psとしたものだ。同じくスーパーチャージャーの武闘派クーペ版「エキシージS」(221ps)と同等のパワーユニットだが、エリーゼSCではインタークーラーを廃してルーフ部からのインテークを省略し、エリーゼ共通のタルガトップ式オープンとなっているのが特徴だ。エキシージ系と異なり、操縦性や快適性もストリート寄りのマイルドなものとなっており、ロータスの言葉を借りれば「パワフルなトラックカーではなく、最速のロードカー」だ。日本では2007年の東京モーターショーで初公開、2008年春にデリバリーが始まっている。

エリーゼとは?

1995年のフランクフルトショーで発表、1996年に発売された初代エリーゼは、同社久々の軽量ミッドシップスポーツ。初代は通称エリーゼ1、フェイズ1、シリーズ1、英国風ならMk.1(マークワン)とも呼ばれる。バスタブ状メインフレームは、アルミニウム製押し出し材をエポキシ系接着剤で接合したもの。アウターパネルはFRP製で、初期モデルの車重はわずか690kgだった。エンジンはローバー製1.8リッター直4「Kシリーズ」(118ps)で始まっている。

2001年には内外装をチェンジした通称エリーゼ2(シリーズ2、フェイズ2)に進化。2004年には、高性能版(111)のローバー製エンジンをトヨタ製「2ZZ-GE」(192ps)とした「111R」が登場。2005年にローバー社が破綻したため、翌年に標準車のエンジンもKシリーズからトヨタ製「1ZZ-FE」(136ps)に切り替わった。その他エアコンやダブルエアバッグの装備、快適性の向上など、実用性や信頼性は年々向上し、北米での販売も始まっている。

少量生産車ばかりだったロータスの中で、エリーゼは史上最大のヒット作となり、2003年には累計1万台、2005年には累計2万台を達成している。なお、日本国内のロータス新規登録台数は、現インポーターであるエルシーアイ株式会社が輸入業務を始めた2003年が292台。以後、2004年:381台、2005年:411台、2006年:449台、2007年:427台。推定だが、並行輸入も含めて日本国内には3000台ほどが上陸していると思われる。

■参考
日本自動車輸入組合 http://www.jaia-jp.org/
日本自動車輸入組合>2007年12月度 車名別輸入車新規登録台数 http://www.jaia-jp.org/j/stat/nc/200712shamei.htm

ロータスとは?

ロータス社(Lotus)はコーリン・チャップマン(Anthony Colin Bruce Chapman、1928~82年)が、1952年に設立した英国のメーカー。その蓮の葉(lotus)を模したエンブレムには彼の頭文字「A・C・B・C」が刻まれる。1950年代から60年代にかけて、セブン(Seven、7、1957年~)、FRP製モノコックのエリート(Elite、1957年)、バックボーンフレーム構造の初代エラン(Elan、1962年)、ミッドシップのヨーロッパ(Europa、1966年)と傑作軽量スポーツを生み出した。またスーパースポーツのエスプリ(Esprit、1976年)は、改良しながら2004年まで生産。セブン以外は車名が全て「E」で始まるのが伝統だ。

またモータースポーツ分野では、その頂点のF1でミッドシップ、モノコックシャシー、グラウンドエフェクトを用いたウイングカーなど、当時最先端の技術を初めて採用し、レース界に多大な影響を与えた。

なお、エリーゼの開発はGM傘下から離れ、イタリアで復興したブガッティ傘下にロータス社があった90年代前半に行われたが、その後まもなくブガッティは破綻(VWが買収)、一方ロータス社はマレーシアのプロトンが大株主となり今に至っている。本社および工場はもちろん今も英国にある。

価格帯&グレード展開

「SC」は680万円。ベーシックな「S」なら479万円

エリーゼのトップグレード「SC」の価格は、標準グレード「S」の約200万円高、NAの高性能版「R」の約100万円高となる680万円。基本的に全車右ハンドルで、「S」が5MT、「R」および「SC」が6MT。デュアルエアバッグは2008年から全車標準。メーカー保証は1年間・走行距離無制限となっている

■Elise S  1.8L「1ZZ-FE」(136ps、17.6kgm、最高速205km/h) 479万円
■Elise R  1.8L「2ZZ-GE」(192ps、18.5kgm、最高速237km/h) 584万円
Elise SC  1.8L「2ZZ」SC (220ps、21.6kgm、最高速240km/h) 680万円 ※今週の試乗車

オプションはメタリック塗装(13万6500円)、トルセンLSD(20万9600円)、トラクションコントロール(9万9200円)、ボディ同色ハードトップ(39万2800円)、そして防音仕様、フォグランプ、フルカーペット、カップホルダー等がセットの「ツーリングパック」(39万7000円)など。

参考までに、その他の日本向けロータスは以下の通り(2008年5月現在)。

■Exige S  1.8L「1ZZ」SC(221ps、22.0kgm、最高速240km/h) 730万円
■Exige S PP  1.8L「1ZZ」SC(243ps、23.5kgm、最高速245km/h) 804万5500円

■Europa 225  2.0L「Z20LER」ターボ(225ps、29.3kgm) 677万2500円/698万2500円

■2-Eleven  1.8L「1ZZ」SC(255ps、24.7kgm) - 円

パッケージング&スタイル

ライトウエイト「スーパーカー」風

ボディサイズは全長3800mm×全幅1720mm×全高1130mm。とにかくボディ全体が小さく、そして相当に低い。この全高は往年のロータス・ヨーロッパ(全高1090mm)に迫るもの。現代の大径ホイール&偏平タイヤを収め、十分なトレッドを確保し、広い室内空間を確保すべく、ボディ全体がコークボトルのようにうねっている。

回顧的なデザインだったエリーゼ1に比べて、スーパーカー風となったエリーゼ2のデザインモチーフは、こう言ってはロータスファンに怒られるかもしれないが、60年代末のフェラーリだろう。特にピニンファリーナが手がけたショーモデル「ピニンファリーナ・ディーノ 206 コンペティツィオーネ」(1967年フランクフルトショー)をリスペクトしたのでは、と思しき点が多い。もちろんロータスだけに、運動性を優先してショートオーバーハング&ショートホイールベースとなっている。

質感の高い樹脂製パネル、下面はアルミ製パネルで空力効果を狙う

メインフレームはアルミだが、アウターパネルは全てFRPなどの樹脂。プレスではとても出来ない曲面の連続で、樹脂素材の特性を存分に生かしたデザインとなっている。質感は高く、チリ合わせも悪くない。

最低地上高は140mmと余裕があるが、フロントオーバーハングのアゴ下が水平に伸びているので起伏の激しいところでは要注意。ボディ裏面はアルミ製パネルで見事にフラットボトムとなっており、後部のアルミ製ディフューザーと共に本気でダウンフォースを狙っている。ウイングカーを発明したロータスらしいところ。

「SC」固有の特徴は、リアホイール幅が従来モデルの7.5Jから8.0Jにワイド化された専用デザインのアルミホイール(タイヤサイズは同一)。そして専用リアウイング、「SUPERCHARGED」のデカールくらい。試乗車のボディカラーはソリッドの白に見えるが、実はメタリック(アスペンホワイト)だ。

乗降性は(これでも)大幅に良くなっている

アルミ剥き出しのフロア、簡素な作り、低い着座位置、薄っぺらいシート(座り心地はとても良い)などは歴代エリーゼに共通するものだが、それでも樹脂類の質感や標準装備のエアコンなど、仕上げや装備はかなり文化的になった。中でもありがたいのが、乗降性が良くなったことだ。初代エリーゼなどはアルミ製サイドシルがほとんど競技車両のサイドバー並みに高く、特にルーフを閉じた状態でクルマから降りる、というか這い出すのは、体が固い人だと絶望的になるほど、体のひねりが必要だったものだ。

しかし今のモデルではサイドシルが少々低くなり、難易度としてはまあ、一般的なスポーツカーに競技用フルバケットシートを付けたものくらいになった。それでもサイドシル上面(傷のつきにくい樹脂で覆われている)に当たらないよう、足先を高く上げる必要はあるが・・・・・・。コツさえつかめば、DAYSスタッフの巨漢(身長180センチ、体重100kgくらい?)でも問題なく出入りし、ドライビングポジションが取れた。シートの前後位置以外、調節機構が皆無であることを思えばたいしたものだ。

フロントタイヤを避けて足先が車両中心方向にまっすぐ伸びる、独特の着座姿勢になるが、違和感はほとんどない。左手を伸ばせば助手席ドアに手が届くほど室内幅は狭いが、(つまり軽自動車並み)、男二人で乗っても不思議と狭苦しさはない。分厚いサイドシルや余裕あるショルダールームあたりがその秘訣か。

なおアルミ削りだしのABCペダルを撮影していたら、フロアにキラリと光るものが・・・・・・。何とアルミの削り屑だった。妙に感心してしまった。

エアコン、集中ドアロック、ついにダブルエアバッグも標準装備

快適装備にも触れておく。標準装備のエアコンはもちろんマニュアル式だが、これもトヨタ製エンジンと元々セットみたいなもののようで、文字通り「寒いくらい」効く。車体前部のラジエイターや後部のエンジンからの熱の侵入、外気との断熱性の低さを考慮しても、冷房能力はまあ十分だろう。

量販店で売っていそうな一般的なAlpine製CDプレーヤーと4スピーカーは標準装備。スピーカ-はダッシュボード上面の左右、およびリアバルクヘッド左右に配置される。音質はそれなりだが、意外に静粛性が高いため走行中でも割とクリアに聞ける。

ダブルエアバッグは標準となり、小径(32か33センチくらい)の専用MOMO製ステアリングは、そのセンターパッドに小型エアバッグを内蔵する。メーター視認性と乗降性を確保するため、中心がずれているのを除けば、このステアリングは見た目も操作感も良好。こういう小径スポーツステアリングが似合う国産スポーツがほとんど消えてしまったのが残念だ。ステアリングはノンパワー、いわゆる重ステ(死語)である。しかし操作力は軽く、パワーステアリングの必要はまったく感じない。

そして何とパワーウインドウ、集中ドアロック、イモビライザー(盗難防止装置)は2008年モデルのエリーゼに全車標準となっている。このご時世にイモビは必要としても、集中ドアロック標準とは。リモコンはキーと一体型だ。

最初はシガーライターが見当たらなかったが、もちろんそんなはずはない。試乗後半になって、センターコンソール後部に発見。とりあえずここから普通に12V電源が取れる。シート背後にも多少の収納スペースがあるが、かなり体をひねらないと手が届かないため実用性は低い。

最小限でもリアトランクがあるのは便利

ラゲッジスペースは外した幌をしまう場所でもあり、写真は収納した状態。容量は「フルフェイスのヘルメットが2個入るかな」という程度で、マツダ・ロードスターの2/3か半分程度だろう。底が浅く、高さ的にはハードケースのカメラバッグ程がギリギリだ。エンジンと排気系が近いので、生モノには適していない。カーペットが丁寧に貼られており、仕上げは良好だ。容量はともかく、デザインを崩さずに独立したトランクを設けた点を評価すべきである。FRP製トランクリッドの開閉は鍵を使って行うが、ペナペナ感はなくバムッといい音で閉まる。

フロントフードの下は水平配置のラジエイター、補器類が占領している、フードもボルトを緩めないと外れない。

シンプル&軽量な幌。「脱着」も簡単

幌はひざ掛けみたいな四角い布と左右サイドフレームのセット、そして布を下から支える50センチ物差し?みたいな樹脂製の「棒」2本で構成される。その開閉、と言うより脱着は、やってみると意外に簡単。もちろん完全に停車し、一回降りてトランクリッドを開けて・・・・・・、という手順が必要だが、手際が良ければ1分も掛からない。

幌の軽さも大きな特徴だ。一般的なオープンカーの折り畳み式幌にあるスチール製の「骨」や「関節」(リンク)は無く、軽量・単純に仕上がっている。横のサイドフレームこそ少々重いが(片側でだいたい2kg弱くらいか。実測してません)、全部で5kgもないだろう。マツダ・ロードスターの幌でも20kg近くあるので、この軽さは圧倒的。雨漏りも心配ないという。構造的に劣化しそうな部分もなく、耐久性も高そうだ。

基本性能&ドライブフィール

高圧縮比・高回転型のスーパーチャージドエンジン

エリーゼは2008年5月現在、3グレードあるが、今回試乗したのはトップグレードの「エリーゼSC」。中間グレード「エリーゼR」が積む1.8リッター直4「2ZZ-GE」(192ps、18.5kgm)に、新型スーパーチャージャーを追加したエンジン(220ps/8000rpm、21.6kgm/6800rpm)を積むモデルだ。一般的にはトヨタ製エンジンと言われるが、実際の開発はヤマハ発動機のようで、外から見えない部分には「YAMAHA」の刻印も見られるという。

メーカー資料によれば、スーパーチャージャー本体は、現行エキシージSより一回り小さいイートン(Eaton)社製「M45ユニット」をベースに、ロータスが設計し直したインテークマニホールド一体型のインタークーラーレス仕様で、マグナソン社(Magnuson)が製造したものという。

車重は英国仕様の「素」の状態で870kg、オプション満載の日本仕様でも910kgで、パワー・ウエイト・レシオは910kg/220ps=約4.1kg/psと驚異的だ。メーカー発表値(本国仕様)は0-100km/h加速:4.6秒、0-160km/h加速:10.7秒とある。

トヨタ車そのもののサウンドとギアボックス

スタートボタンを押して火が入るエンジンの音はそれなりにスポーティで低音の効いたものだが、それでもまさしく「トヨタ直4のスーパーチャージャー」という感じで、特に刺激的というわけではない。発進もこれ以上なくイージーで、クラッチの踏力もごく平均的。ミッションもトヨタ車と共通だから当然だが、6MTのシフトタッチもやはりまんまトヨタ車。つまりストロークが長く、ガチャガチャしている。

ベースのNAユニットに比べて+28psと+3.1kgmと、パワーアップは控えめなエンジンだが、過給器付きにしてはやたら高回転型なのが特徴だ。圧縮比は何とNAと同じ11.5。おそらく過給圧は控えめで、トルクを全体に上乗せしたものだろう。実際、そのトルキーな低中回転では、BMWのMINIクーパーS(同じく直4の過給器付き)のように柔軟にグイグイ走る。レスポンスが良く、高回転までスカッと回るところは、むしろ最近の直噴ターボ風か。スーパーチャージャー特有のミャーミャー音はまったくない。

全開加速では8500回転のレブリミットまで一気呵成。それまでに赤いシフトアップインジケーターが速度計内で順々に光る。全開の2速シフトアップでは、ドン!といかにもパワフルなショックが生じるが、軌跡の乱れは一切ない。発進加速は、体感以上に猛烈に速い。

楽しい、速い、快適

3000回転までで走ってもエリーゼは十分に速く、十二分に楽しい。低い着座位置、低い視界、フロントウインドウ越しに鋭く切り立ったフェンダーの峰、決してシャープではないが、リニアに反応してくれるトルキーなエンジン、ダイレクトなステアリングフィール、オープンでも快適なまま保たれるキャビン、低重心による絶大な安心感などなど、ファン・トゥー・ドライブに関しては120点満点だ。

薄っぺらいシートからは想像できないほど、噂通り乗り心地も驚くほど良い。重くなったとはいえ車重は910kgと、マツダの初代“ユーノス”ロードスター(エアコン非装備で940kg)より軽く、前後異径タイヤは前175/55R16、225/45R17の偏平だが、街乗りではおそらく下手な最新国産スポーツカーよりいいと思う。ロードノイズが静かなことも驚きだ。普通のクルマでここまで内装や遮音材がないと、ゴーゴーザーザーバキバキ、そうとう騒がしいものだが。

タイヤはエリーゼ専用のヨコハマ製アドバン「ネオバ」。最近のハイグリップタイヤは、乗り心地も往々にして良い(耐磨耗性はそれなりだが)。タイヤによって巻き上げられた小石が、時々「カーン!」とアルミ剥き出しのホイールハウス内に当たる音が響く。

ワインディングではミズスマシのごとく

一般的なワインディングでの話に限ると、操縦性はステアリングを切ったら切っただけ、そして切った瞬間から旋回するという身のこなしがすごい。またアンダーからオーバーまで、自在にコントロールできるその自由度がすごい。理想的なディメンションと理想的なミッドシップレイアウトによる、理想的な操縦性、という感じだ。パワートレインと駆動論が直結した感覚は、ミッドシップないしポルシェ911のようなRR車ならでは。ポルシェ911と違うのは圧倒的にボディが小さく、低く、そして軽いことで、狭いワインディングでも自由自在に、それこそミズスマシのように走ることが出来る。前後サスペンションは、典型的な上下A型アームによるダブルウィッシュボーンで、ピロボールではなくゴムブッシュを使う。

ノンサーボだった初期エリーゼと異なり、4チャンネル式のABSまで備えるブレーキは、製動力も十分。ABS付きとは思えないほどロック寸前まで制動力を発揮し、踏み込んだ時の剛性感はポルシェ911にまったく引けを取らない。

ただ、前項で乗り心地がいいと書いたものの、段差では鋭いハーシュネスが入ってビックリする。またフロントスポイラーが低いため、フルバンプした時に路面の凹凸で前のナンバープレートを擦りはしないかと心配だった(もちろん無傷だったが)。

スーパースポーツだって怖くない

6速トップの100km/h巡航は約3000回転と高めだが、エンジン音はまったく気にならず。オープンでも空気の乱れはまったくなく快適で、これなら2人で長距離ドライブも大丈夫、と思わせる。そんな穏やかな高速巡航もけっこう楽しい。

もちろん、ここぞという時の加速はSCの真骨頂。3速で引っ張った時の打ち出されるような加速感は、ポルシェ911もかくやというもの。追越加速は一瞬で終了し、後ろから速いクルマが来ても余裕で対処できる。実際、国産高性能GTスポーツや高性能ドイツ車を中間加速で引き離すことは造作ないだろう。

ただ、そこから上の超高速域は意外に苦手で、最高速は240km/hというものの、160km/hを越えたあたりから、アライメントのせいかフロントがリフトするせいか(軽量ミッドシップ車やRR車の宿命だ)、接地感が急に乏しくなり、また跳ね気味にもなって直進安定性がおぼつかなくなる。一般的な神経では、180km/hあたりが限度で、「まあ、このへんで止めといたろか」となる。その意味でも決してスピードジャンキーなクルマではなく、常識的な速度で満足が得られる、とも言える。路面が平滑なサーキットでは、そう気にならないだろう。

今回の実燃費は8km/Lくらい。燃料タンクは40L

今回は2日間で、計290kmを試乗。平均燃費計などというものは当然なく、成り行きで少々アバウトな満タン法となってしまったが、約37リッターを消費して実燃費は8km/Lあたりとなった。撮影やかなり飛ばした区間も含まれるから、高速巡航では間違いなく10km/L台に乗っているはず。燃料タンクは40Lと小さめで、今回は2回にわけて給油した。

ここがイイ

ゆっくり走っても楽しいこと。目線が低いのに、安心感と守られ感があること。カッコ。この軽さ、小ささ、スーパーカー並みの所有感、非日常感、パフォーマンス。そしてそれらが500万円弱からで手に入ること。でもってエンジンはトヨタ製で、およそ壊れそうにないこと。

従来のスーパーチャージドモデル(エクシージS)にあったインタークーラーと屋根のインテークがなくなり、高性能とオープン走行が同時に楽しめるようになったこと。後方視界も良くなった。エクシージSのオーナーは今までバックモニターを付けて対応していたくらいだから、これは大きな進歩だろう。よほどのオープン嫌いでも、これならオープンも悪くない、と思うはずだ。

ここがダメ

いちおう一般的な量産スポーツカー基準で気になった点を以下に。

これはNAを選べば済む問題だが、やはりエリーゼSCのスーパーチャージド・エンジンはレスポンスが絶対的に悪い。いかに非力な136psであっても、スタンダードモデルの「S」(価格も479万円と手が届きやすい)がエリーゼの本命だろう。もちろん、普通のエリーゼはもう十分堪能し、その上でポルシェが相手でも怖くない究極のエリーゼを求める、という上級者にはその限りではない。

ガチャガチャしたシフトタッチ。いくらFFのケーブル式とはいえ、今時かなりお粗末なレベル、というかトヨタ車のまんま。最近のFF車のマニュアルシフトは、例えばホンダあたりなら、かなりしっかりしている。まあこれも英国車らしい、と言えなくもない。

エリーゼSC専用のリアウイングであるが、せっかくのインタークーラーレスで得たバックミラーの視界をスポイルしているのは残念。

思ったほど小回りが効かない。これだけのボディサイズで、しかもフロントにエンジンがないため(ステアリング切れ角を確保しやすい)、クルッとヴィッツ並みにUターンできそうなのだが、実際には「おおっ」となるくらい大回りになってしまう。最小回転半径の数字が手元にないが、おそらく5メートル台中盤(中型FFセダンと同等)というところか。

たいへんシンプルで出来がよく、個人的にはいたく感心した幌だが、国産オープンカーのようなクローズド時の密閉感や遮音性を期待すると、あれっと思う。ロードノイズもエンジンノイズも静かだが、なぜかドライバーで言えば斜め後ろ、ちょうどリアフェンダーあたりから「ゴオーーー」という風きり音(のようなもの)が発生する。最初は窓が開いているのかと何度もパワーウインドウを閉め直してしまったほどだ。他の音が静かなだけにちょっと惜しいと思った。

総合評価

経済的に許されるのなら

クルマという商品は走る、曲がる、止まるのほかに、乗車定員、快適性、燃費、環境性能、さらにプレミアム性など、様々な付加価値を加えることで商品を形作ってきた。そして現在の多彩なラインアップができたのだが、販売を競った結果として、一台で多様に使える「お買い得なクルマ」、つまりミニバンあたりに量産の落としどころができてしまったように思う。走りだけに特化できたら、とても面白いクルマができるのだが、それはお買い得ではない。だから売れない。それゆえ作らない、というのが量産メーカーの立ち位置となる。

量産でなければ走りに特化したクルマが作れるわけで、それがエリーゼだ。量産車でないだけに簡素な作りも許され(それがまた「味」になったりする)、価格も高くていい(少量・高価であれば、それがまた新たな価値を生む)。日常の足としてではなく、走ることそのものを楽しむ人だけが買うクルマ。普段は公共交通機関を使う都会に住む人のファーストカーであり、普段からクルマを使う人にとってはセカンドないしサードカー。経済的に許されるのであれば、エリーゼはクルマ好きなら誰もが欲しい類のクルマだ。

エリーゼを日常の足として使う

そんなクルマゆえ、乗ればとにかく楽しい。特に公道で常識的な速度域を走っていても楽しいのがいい。しかしこれを所有して走り込んでいくとエンジンに関する不満はやはり高まるようで、実際には一握りのようだが、ホンダVTECエンジンに換装するコアなエリーゼ乗りも少なくないらしい。そしてもちろんサーキットでも速い。クルマ好きなら一度は所有し、おもちゃにしたいと思う。

しかし現実には、この「走りのためだけに存在している」クルマに大金をはたける身分ではないと、多くの人は気付く。それでも欲しいのであれば、このクルマを日常の足として使うしかないが、実はそれは難しいことではない。乗降性はかなり良くなったし、エアコンは効くし、雨もしのげる(屋根付き車庫は必需品だろうが)。乗り心地も意外にいい。それは多分アドバン・ネオバというタイヤによるところも大きいと思う。デイズのポルシェ911(997)も、工場装着タイヤからネオバに代えたら乗り心地がずいぶん良くなった。1DINの汎用オーディオを外してカーナビにすることも可能だ。

「売れないから作らない」ではなく

そんなエリーゼを試乗中、とある駐車場でトヨタのMR-Sと並んだのだが、この二台は同じようなコンセプトでありながら、今はまったく違う境遇にある。かたやクルマ好きに向けて限られた台数を継続してデリバリーしているマニアックで高価なクルマ。かたや量販車でも数が出ず、低価格にもかかわらず惜しまれながら消えていったクルマ。MR-Sはけして嫌いなクルマではないだけに、少し悲しい気持ちになった。せっかく世に出したクルマなのだから、「売れないからもう作らない」ではなく、少量を継続生産して採算をとっていく。そういったビジネスモデルは、日本では絶対に無理なのだろうか。MR-Sにしても、そんな今の傾向にしても「もったいない」と思う人は少なくないだろう。

試乗車スペック
ロータス エリーゼ SC
(1.8Lスーパーチャージャー・6MT・680万円)

●初年度登録:2008年5月●形式:- ●全長3800mm×全幅1720mm×全高1130mm ●ホイールベース:2300mm ●最小回転半径:-m ●車重(車検証記載値):910kg( -+- ) ●乗車定員:2名●エンジン型式:2ZZ-GE ● 1795cc・直列4気筒・DOHC・4バルブ・スーパーチャージャー付・ミッドシップ横置 ● 220ps(162kW)/ 8000rpm、21.6kgm (212Nm)/ 6800rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/40L ●10・15モード燃費:-km/L ●駆動方式:後輪駆動(ミッドシップ) ●サスペンション形式:前 ダブルウイッシュボーン/後 ダブルウイッシュボーン ●タイヤ:前 175/55R16 / 後 225/45R17( Yokohama Advan Neova AD07 LTS ) ●試乗車価格:693万6500円( 含むオプション:メタリックペイント<アスペンホワイト> 13万6500円 )●試乗距離:約290km ●試乗日:2008年5月 ●車両協力:AC マインズ

 
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