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スズキ エスクード新車試乗記(第781回)

Suzuki Escudo

(1.6L・6AT・FF・212万7600円)

4代目はハンガリー生まれ。
欧州流コンパクトSUVは
日本でも通用するか?

2016年02月13日

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キャラクター&開発コンセプト

「本格クロカンタイプ」から「SUVタイプ」へ


2013年にフランクフルトショーで発表されたコンセプトモデル「iV-4」(写真は東京モーターショー2013)

2015年10月15日に発売されたスズキの新型「エスクード」は、1988年に発売された初代から数えると4代目。歴代エスクードが副変速機やセンターデフを備えた、スズキ言うところの「本格クロカンタイプ」だったのに対し、新型はFFプラットフォームがベースの「SUVタイプ」に変身している。

また、新型エスクードはハンガリーにある製造子会社マジャールスズキで生産され、欧州やオセアニアでは新型ビターラ(Vitara)として販売される。生産は2015年1月から始まっていて、日本向けの新型エスクードもハンガリーからの輸入車になる。

国内の販売目標は年間1200台(月間100台)。ちなみに先代の目標は2005年発売時が1万5000台、2008年のマイナーチェンジ時が7200台だったから、かなり減ったわけだが、同じくマジャールスズキ製の輸入車でスズキが「クロスオーバータイプ」と呼ぶ「SX4 Sクロス」(2015年2月発売)は年間600台(月間50台)とさらに少ない。

なお、従来の3代目エスクードも引き続き「エスクード 2.4」として販売される。

■外部リンク
■スズキ公式サイト>新型エスクード
スズキ公式サイト>エスクード 2.4
スズキ公式サイト>SX4 Sクロス

【エスクードの歴史】


初代エスクード(1988年)

初代エスクードは1988年にデビュー。頑強なラダーフレーム、副変速機付パートタイム4WDを備えながら、都会的でスタリッシュな外観を採用したモデルは当時少なく、国内はもちろん、北米ではサイドキック、欧州ではビターラの名で大ヒットした。エスクードの登場はトヨタ RAV4より6年も先んじていた。

 

初代エスクード ノマド(1990年)

当初は3ドアのハードトップと幌式のコンバーチブルのみだったが、1990年には待望の5ドアモデル「エスクード ノマド」を追加。1997年に2代目にフルモデルチェンジし、後に3列シートの「グランドエスクード」も追加された。

 

3代目エスクード 2.7XS(2005年)

2005年に登場した3代目は、ビルトインラダーフレーム(ラダーフレーム内蔵式モノコックボディ)を採用。副変速機は継続しつつ、4WDシステムはパートタイムからフルタイムに変更された。当初のエンジンは直4の2.0LとV6の2.7Lだったが、マイナーチェンジでそれぞれ2.4Lと3.2Lに拡大。後に2.4Lのみになった。生産はジムニー等と同じ磐田工場(静岡県磐田市)。

■外部リンク
スズキ>ニュースリリース>新型「エスクード」を発売(2015年10月15日

■過去の新車試乗記
3代目スズキ エスクード 2.0XG/2.7XS (2005年6月掲載)
3代目スズキ エスクード 2.4XG/3.2XS (2008年7月掲載)

 

価格帯&グレード展開

1.6Lの6ATで、212万7600円~

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新型エスクード。車体色は、スズキ車に最近多い「ブラック2トーンルーフ」とセットの新色「アトランティスターコイズパールメタリック」など全4色。

欧州仕様には1.6Lディーゼル(120ps、320Nm)や5MTもあるが、日本仕様は1.6Lガソリン(117ps、151Nm)で、アイシンAW製6ATのみ。エスクード初のFFに加えて、電子制御4WDシステム「オールグリップ(ALLGRIP)」仕様を21万6000高で用意する。

オートライト、オートワイパー、ミリ波レーダー方式の衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポートII」は全車標準で、価格は以下の通り。

■エスクード(6AT・2WD) 212万7600円
 ※今回の試乗車

■エスクード(6AT・4WD) 234万3600円

従来エスクードとSX4 Sクロスもある

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継続販売される従来モデルの「エスクード 2.4」

なお、継続販売される従来モデル「エスクード 2.4」の価格は以下の通り。また、あわせて、新型エスクードとプラットフォームやエンジンを共有する(ミッションはCVTになる)SX4 Sクロスの価格も付記する。価格はほとんど横並び。

■エスクード 2.4(5MT・4WD) 218万1600円
■エスクード 2.4(4AT・4WD) 228万9600円
■エスクード 2.4 ランドブリーズ(4AT・4WD) 242万2440円~

 
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スズキ SX4 S-Cross

■SX4 S-Cross (CVT・FF) 204万1200円
■SX4 S-Cross (CVT・4WD) 225万7200円

 

パッケージング&スタイル

脱クロカン。伝統のモチーフは継承


LEDヘッドランプ(ロービーム)や17インチアルミホイールは全車標準

従来型エスクードの残像を持って見ると、すっかりライトになったなぁと感じる新しいエスクード。それでも歴代エスクードのモチーフは受け継いでいて、例えばキリッと締まった目つき、上から覆いかぶさるようなクラムシェル(貝殻)型ボンネット、後ろ上がりのシルエットなどがDNAを感じさせる。欧州ではこのデザインが好評とのこと。意外に欧州製コンパクトSUVにはないデザインかも。

ボディサイズは一回りコンパクトになった。背面スペアタイヤが廃止された2012年以降の従来モデルと比べても、全長は100mmほど短く、全幅は35mmナロー、背は85mm低くなった。

 

試乗車のボディカラーは歴代エスクードのイメージに近いギャラクティックグレーメタリック

全長4175mm×全幅1775mm×全高1610mm、ホイールベース2500mm、最低地上高185mm
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
スズキ イグニス(2016~) 3700 1660 1595 2435 4.7
MINI クロスオーバー(2011~) 4105~4145 1790 1550 2595 5.8
日産 ジューク(2010~) 4135 1765 1565 2530 5.3
新型スズキ エスクード(2015~) 4175 1775 1610 2500 5.2
フィアット 500X(2015~) 4250~4270 1795 1610~1625 2570 5.5
ジープ レネゲード(2015~) 4255~4260 1805 1695~1725 2570 5.5
マツダ CX-3 XD(2014~) 4275 1765 1550 2570 5.3
ホンダ ヴェゼル(2013~) 4295 1770 1605 2610 5.3
スズキ SX4 Sクロス(2015~) 4300 1765 1575 2600 5.3
3代目スズキ エスクード(2005~) 4300~4420 1810 1695 2640 5.5
 

インテリア&ラゲッジスペース

質実剛健、飾り気なし


スポーツカーのようなデザインのエアコンルーバー、メタル調インパネガーニッシュ、飾り気のないメーターが男っぽい

インパネデザインは機能に徹した、質実剛健でオーソドクスなもの。ドライバー正面にはシンプルな2眼メーターと情報ディスプレイ、ダッシュボード中央には軍用ウォッチのようなデザインのアナログ時計を配して道具感を盛り上げる。

質感は決して高くないが、装備は200万円そこそこにしては充実していて、シートの作りも欧州車のようにしっかりしている。チルト&テレスコは標準装備。

 

軍用ウォッチを思わせるセンタークロック

速度計と回転計もシンプルなデザイン
 

後席もさすが“欧州車”。座面・背もたれ共にサイズが大きく、体をしっかり支える

前席は太ももをしっかり支持し、クッションも硬め。表皮は本革&スエード調
 

荷室容量はラゲッジボード装着時(写真)で362L、非装着時で375L

荷室には照明、DC12Vソケット、フック等を装備。床下にはパンク修理キット、工具、小物入れ
 

基本性能&ドライブフィール

排気量以上の力強い走り

試乗したのはFF車(212万7600円)。エンジンはスイフト スポーツ(136ps、160Nm)にも採用されている1.6Lの直4「M16A」型のチューン違い。ハイオク仕様のスイスポと違って、エスクード用はレギュラーガソリン仕様で、最高出力117ps、最大トルク151Nm(15.4kgm)を発揮する。

フィーリングは高回転型のスイスポと違ってトルク型。FF車で1140kg(4WD車で1210kg)という軽量ボディ、そして1速のギア比を低く設定できる6ATのおかげもあるが、低回転から力強い。少なくともFFの場合は、知らなければ2.0Lか1.8Lかなと思ってしまう。

ちなみに「6速」ATの採用は、意外にもスズキ初とのこと。そう言えば、従来エスクードの2.4は4ATだし、3.2は5ATだったし、キザシ(2015年に生産・販売を終了)はCVTだった。この6ATはアイシンAW製で、輸出先のハンガリーで搭載された後、日本に戻ってきた帰国子女ならぬ帰国ミッション。

肝心の動作はというと、2速へのシフトアップ時に生じるショックが今どき大きめなことや、中間加速でアクセルを深く踏み込むと2段くらいまとめてキックダウンするのが少し気になるが、慣れてくるとそこはアクセルの踏み加減でコントロール可能になる。基本的には燃費を稼ぐため、どんどんシフトアップして低い回転を保つ設定。パドルシフトは付いているが、それほど必要は感じない。

なお、アイドリングストップ機能もあるが、ソリオやイグニスのようなマイルドハイブリッド(軽で言うところのS-エネチャージ)ではないので、始動時にスターター音と若干のタイムラグはある。

欧州車よりも欧州車っぽい

印象的なのはパワートレインより、むしろシャシーの方かも。今どきの欧州車より欧州車らしい、硬めというか、SUVっぽい乗り心地に、先代エスクードの面影を何となく感じる。ただしフラット感は高く、乗り心地はむしろいい部類。何となく、昨年試乗したジープ レネゲードを思い出した。ジープと言えど、あちらも欧州製(イタリア製)になる。

コーナーリングでも姿勢変化は小さく、意外によく曲がる。最終的にはESPが作動して強制的に挙動を抑えるが、安定感は十分。タイヤはオンロード向けの215/55R17(コンチエココタンクト5)、サスペンションは前がストラット、後ろは駆動方式に関わらずトーションビームになる。

【4WD車】「ALLGRIP」を採用

今回は試乗しなかったが、4WD車には軽自動車に多いビスカスカップリング式の4WDではなく、「ALLGRIP(オールグリップ)」と呼ばれる電子制御カップリング式の4WDが採用されている。オールグリップの採用は、SX4 Sクロスに続いて2例目。

仕組みとしてはトヨタのRAV4、日産 エクストレイル、ジープ レネゲードなどの4WDシステムと重なる部分が多く、特に目新しいものではないが、オールグリップの特徴としては、4つのドライビングモードを選択できる「4モード走行切替機能」や、電動パワステと協調制御し、操舵アシストによってアンダーステアやオーバーステアを抑制する「車両運動協調制御システム」を備えている点が挙げられる。

「4モード走行切替機能」には、通常使うオート(主にFFで走るエコモード)、スポーツ(4WDと高回転を積極的に使い、トラクションコントロールの介入は控えめ)、スノー(グリップ重視で空転を抑える)、ロック(Lock:前後直結に近い状態で、LSD効果のためのブレーキ制御も積極的に行う。ヒルディセントコントロールも含む。60km/h以下で作動)からなる。

なお、SX4 Sクロスとの違いは、ロック以外のモードでも、前後対角輪がスリップした場合、積極的にブレーキ制御を行うことくらいだが、最低地上高に関してはエスクードが185mm、SX4 Sクロスが165mmと20mmの差があり、実際にはここが一番の差と言える。

対地クリアランスについては、以下の通り。新型エスクードの数値は、従来型エスクードには叶わないが、FFベースのクロスオーバーSUVとしては標準的なもの。一般的な積雪路や整備された林道なら、十分だろう。

 
    アプローチ
アングル(度)
ランプブレーク
オーバーアングル(度)
ディパーチャー
アングル(度)
最低地上高(mm)
従来スズキ エスクード(2005~) 29 19 27 200
新型スズキ エスクード 18.2 17.7 28.2 185
ジープ レネゲード トレイルホーク 30.5 25.7 34.3 200
スズキ ジムニー(JB23W) 49 32 50 210
 

■外部リンク
スズキ>ALLGRIP(CG動画による説明。約5分40秒と長め)

ミリ波レーダー付の「RBS II」を標準装備

欧州で徹底的に走りこんだとのことで、高速巡行も不満なくこなす。排気量1.6Lにして、100km/h巡行時のエンジン回転数はわずか約1800rpm。シャシー的には100km/hなどまだ序の口という感じで、本来は欧州車らしく、もっと高い速度域で本領を発揮するのだろう。UK仕様の最高速は180km/h(MT/AT、FF/4WD共通)。

また、新型エスクードには、ミリ波レーダー方式の衝突被害軽減システム「レーダーブレーキサポート(RBS)II」が標準装備されている。RBS IIには、自動ブレーキ(先行車に対して約5~100km/hで作動)や前方衝突警報ブレーキ機能(警告のため軽くブレーキをかける)などが備わる。

ちなみに軽に多く採用されている「II」じゃないRBSは赤外線レーザーレーダー(自動ブレーキは主に30km/h以下で作動)、RBS IIはミリ波レーダー(最大約100km/hまで作動)を使うということで、名称は似ているが、性能的にはまったく異なる。

ただしRBS II には、新型ソリオやイグニスの「デュアルカメラブレーキサポート(DCBS)」のような画像認識用カメラがないので、歩行者、障害物、車線を認識する機能はなく、歩行者に対する自動ブレーキや警報、アクセル踏み間違い等に備えた誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、先行車発進お知らせ機能といったものは備わらない。

またエスクードには、ミリ波レーダーで前方車両との距離を測って自動で加減速するアダプティブクルーズコントロール(ACC)も付いてくる。約40~約100km/h(メーター上は115km/h)で設定可能(ただし停止・発進までカバーする全車速対応ではない)。今のところDCBSにはACC機能がないため、RBS IIとDCBSのどっちがいいかという話は悩ましいところ。

試乗燃費は13.5km/L。JC08モード(FF車)は18.2km/L

今回はトータルで約110kmを試乗。参考ながら試乗燃費は、一般道と高速道路を走った区間(約60km)が13.5km/Lだった。JC08モード燃費はFFで18.2km/L、4WDで17.4km/Lだが、実燃費は欧州車っぽくそこそこ良さそう。ちなみにCVTのSX4 Sクロスはそれぞれ18.2km/L、17.2km/Lでほぼ互角。

燃料タンク容量は47Lで、指定燃料はレギュラーになる。

 

ここがイイ

スタイリング、価格、希少性

ありそうで最近意外にない、けれんみのないSUVスタイリング。ボディもパワートレインも従来エスクードとはまったく違うが、カッコよさは継承していると思う。プレスリリースにある通り、「ジムニーやエスクードで培ってきた本格四輪駆動車やSUVとしての資質を受け継ぎながら、幅広いユーザーの期待と時代のニーズに応えるべく」登場したモデルという印象。

オートライト、オートワイパー、オートエアコン、LEDヘッドランプ(ロービーム)、4輪ディスクブレーキ、ミリ波レーダー、6ATなどを標準装備としつつ、FF車で約213万円、4WD車で約234万円という価格は、けっこうお買い得。おそらくスズキにとっては、日本市場の反応を見るための実験的な投入という意味あいが強いのでは。

また、販売目標は年1200台と、まさにマイナー輸入車レベルゆえ、オーナーとなっても同じクルマとすれ違うことは稀だろう。年600台が目標のSX4 Sクロスには負けるが。

ここがダメ

内装質感など。すべて最新とは言えない部分。従来エスクードとは似て非なる

日本製スズキ車ではありえない質実剛健な内装や乗り味は、好みが分かれそう。

新型車なのにマイルドハイブリッドではないこと。また、衝突被害軽減システムはミリ波レーダー式ではあるが、高速道路を頻繁に利用しないならステレオカメラ方式のDCBSの方がいいかも。また、試乗車には販売店オプションのメモリーナビが付いていたが、かなり使いにくかった。

従来エスクードとは似て非なるクルマ。当面は「本格クロカンタイプ」の従来エスクードも併売されるようだが、従来エスクードのミッションは4ATか5MTで、4ATのJC08モード燃費は9.6km/Lと新型の約半分。道路環境が過酷な海外はともかく、国内で商品力を保つには相当なテコ入れが必要と思われる。いずれフルモデルチェンジ、あるいは後継の上級クロカンSUVが登場するのか。エスクードファンの悩みは、スズキの悩みでもある。

総合評価

2015年度予想は過去最高益

2016年2月10日、長年続いたスズキとフォルクスワーゲンの係争に関して和解が成立したと発表された。VW側がスズキへの損害賠償請求を取り下げるかわりに、スズキが和解金を3月末までに支払う、ということのよう。「業績に与える影響は軽微」とのことなので、スズキの業績を見てみると、4月-12月期の連結決算では、売上が前年比9.9%増の2兆3555億円、純利益が前年比28%増で過去最高の1022億円となっている。このあと2016年3月期の通年の業績予想は、売上が3兆1000億円、純利益が1200億円で、和解金を支払ってもびくともしないということのようだ。

ちなみにトヨタの完全子会社になることが決まったダイハツは、通期の売上高予想がスズキの半分ほどの1兆7000億円で前年比マイナス6.4%、利益は470億円でマイナス31%となっていて、国内軽市場の不調が響いている。円安、原油安、そして金利が下がれば(もう一つ人件費削減も加えると)企業の利益は上がるわけで、グローバルに展開するスズキと、今や海外展開がほとんどないダイハツとの差は歴然としている。こうなると今期の年間売上予想27兆5000万円、利益予想2兆2700億円というグローバル企業トヨタが、利益470億円ばかりのダイハツを完全子会社化してしまおうというのもわかるような気がする。ちなみに好調な富士重工は3兆2100億円と4140億円、マツダは3兆3700億円と1555億円の通期予想で、スズキ、富士重工、マツダの3社は、今となっては似たような規模だ。

 

和解したVWとの争いは、スズキがディーゼルエンジンをVWからではなく、勝手にフィアットから買ったことが契約違反、というものだが、今になっては例の排ガス規制偽装問題もあり、スズキの鈴木俊宏社長が2015年11月4日の決算発表会見で「買わなくてよかった」と語ったのは、まあ本音だろう。裏でどんな事情があったのかはわからないが、結局VWとの決裂という鈴木修会長の判断は、最後まで結果オーライだったということだ。

欧州向けSX4 Sクロスや新型ビターラには1.6L ディーゼルターボ車があり、それが現在もフィアット製のエンジンになっている。これがVW製だったら今頃どうなっていたことか。経営者というのは運も実力の内だが、修会長はやはり強運だ。それとも今回の不正の情報を事前に何処かから手に入れてのことだったのだろうか。それはそれでまた実力ということになるが。

日本の常識は世界の非常識

ディーゼルこそないが、その新型ビターラに日本でも乗れる。今回試乗してみると、かつてスプラッシュでも感じた輸入車(欧州車)感が強烈だ。スズキの日本向け車両は、内装の質感が素晴らしく高いが、それと比べるとかなり「並」な質感。そしてシートの掛け心地は、日本車とは違ってあきらかに欧州車っぽい。トランスミッションはさすがに日本ではMTという訳にはいかず、かと言って同じマジャールスズキ製のSX4 SクロスのようなCVTでもなく、トルコン6ATなわけだが、今時なぜかシフトショックも感じられ、なんだかまだ熟成されていない感じはあった。

しかしそれらがトータルとして、なるほどこれが欧州で勝負するコンパクトSUVなのかと思ったのも事実。そして日本向けの軽自動車が、いかに「上質過ぎる」のかを思い知らされた。今回、同時に試乗した日本専用車ソリオも、ものすごく上質。欧州でこんな上質感を出したら、コストと販売価格のバランスが取れないということになるのだろう。

そんな欧州戦略車に、今時の安全装備を装備して、日本でも競争力のある価格を実現したのが日本で売られるビターラ、つまり新型エスクードということになる。かつてスズキは、クルマや部品を欧州に輸出する船の帰り便にハンガリーワインを積んできて売っていたが、今は完成車を積んでくるわけだ。昨今、世界でも日本でも、とにかく人気なのがSUV。日本でジャストなサイズや手頃な価格のエスクードなら、ちょっと違うSUVに乗りたいというマニア心をくすぐる。目標月100台という規模なら個性があってその方がよろしい、と言えそう。

さて、スズキが圧倒的なシェアを持つインドでは、優遇措置のとられた小さなサイズ規格の中で、かつての日本の軽のように安くて性能がいいことが求められてきたようだ。まさにスズキが得意とする土俵での勝負であり、今でも横綱を張っている。ただ、そろそろ上質さも求められているようで、今後は安さと上質のバランスをどう取っていくかが、新興国市場の難しさになる。そのあたりの匙加減を一番わかっているのが、日本で長年それに取り組んできたスズキということだろう。

 

トヨタにはそれこそが欲しいものかもしれない。現在は否定されているトヨタとの提携話をふくめ、今後スズキがどうなっていくかは、強運な修会長ではなく、後身に託された。ともあれ現在の欧州で、そして日本でも人気があるのは、やはりSUVタイプだ。いくらソリオやワゴンRのようなコンパクトカーこそ、ジャパンオリジナルなクルマと言ってみても、マーケットが求めなければ所詮は絵に描いた餅。世界が今求めているのは、上質なソリオではなく、お値打ちで流行りのSUVであるエスクードなわけで、日本の常識は世界の非常識であることを思い知らされる。日本向けの上質なコンパクトカーを脳天気にほめてばかりいたが、欧州車そのもののエスクードに乗って、なるほどもはや日本だけではどうしようもない時代だったのだ、と温暖で平和な日本の田舎、浜松の地で試乗しながら再認識させられた。

 

試乗車スペック
スズキ エスクード
(1.6L 直4・6AT・FF・212万7600円)

●初年度登録:2015年10月
●形式:DBA-YD21S
●全長4175mm×全幅1775mm×全高1610mm
●ホイールベース:2500mm
●最低地上高:185mm
●最小回転半径:5.2m
●車重(車検証記載値):1140kg(720+420)
●乗車定員:5名

●エンジン型式:M16A
●排気量:1586cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:78.0×83.0mm
●圧縮比:11.0
●最高出力:86kW(117ps)/6000rpm
●最大トルク:151Nm (15.4kgm)/4400rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料:レギュラーガソリン
●容量:47L

●トランスミッション:6速AT
●JC08モード燃費:18.2km/L

●駆動方式:前輪駆動(FF)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:215/55R17 (Continental ContiEcoContact 5)

●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:- -円
●ボディカラー:ギャラクティックグレーメタリック

●試乗距離:約100km
●試乗日:2016年1月
●車両協力:スズキ株式会社

 
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