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ダイハツ エッセ X新車試乗記(第400回)

Daihatsu Esse X

(0.66リッター・4AT・92万4000円)



2006年01月27日

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キャラクター&開発コンセプト

経済性+おしゃれな雰囲気

エッセという車名は「essence(本質)」が由来。その名の通り、軽自動車の本質と言える経済性にこだわった軽自動車だ。価格帯は同社のミラと同等だが、エッセではよりデザインや色使いにこだわっている。新開発のロングストローク型3気筒エンジンも隠れたニュースだ。

販売目標の月間5000台=年間6万台は、ダイハツ軽全体の約1割。昨年、軽自動車の販売台数は約192万台と過去最高だったが、業界トップを33年間も守り続けているスズキ(昨年の販売台数は約62万台、シェア33%)に、ダイハツ(約59万台、30%)が急接近している。スズキの台数も伸びており06年度中の逆転は難しそうだが、ヒット一つで入れ替わる可能性も、ないではない。

価格帯&グレード展開

主力は80万円台

価格は68万2500円~92万4000円(4WDは13万6500円高)だが、一番安い「ECO」は5MTのみ。実際の売れ筋は、3ATでキーレス・オーディオ付きの「L」(82万9500円)あたりだ。いや、もう少し財布のひもを緩めると、4ATのトップグレードに手が届くが‥‥。地域によっては、さらにお買い得な特別仕様車が用意される。

パッケージング&スタイル

シンプルで、シカクまるい

直線基調のミラに対して「シカクまるい」エッセ。全体のシルエットからヘッドライト、バンパーの空気取り入れ口まで、角の丸い長方形で徹底している。丸い部分は給油リッドとタイヤくらいだ。どこかで見たようなモチーフも目に付くが、シンプルなデザインに好感を持つ女性は多いだろう。

フロント以上にシンプルなリアビュー。かつてのダイハツ・リーザ(1986~92年)のように傾斜の強いリアゲートが特徴だ。こうすると荷室容量は減るが、支点が奥になって開閉はしやすくなる。ミラより少し背は低いが、ホイールベースその他の外寸は同じだ。

おしゃれな「鉄板むき出し」

インテリアで驚くのは、ドア上端部やピラー類の鉄板がむき出しなこと。軽トラックや昔の軽自動車、ダイハツではネイキッド、それにフィアット・パンダ(初代)と同じだが、女性向けデザインであえて採用したのはこれが初ではないか。フィアット・バルケッタのようにボディ同色の樹脂パーツという「演出」ではなく「本物の鉄板」という点は今日では画期的か。さらにエッセでは8色あるボディカラーに合わせてシート表皮の一部も同色になる。普通は2種類くらいしか内装色は用意されないから、これは面白い。

Aピラーが立ち気味なので、屋根が低い割に頭上空間は広々。今時の軽自動車ゆえ、小物入れやコンビニフックなどのユーティリティは工夫されているし、バックライト付きのメーターやインジケーターは昼でも夜でもかなり見やすい。ダイハツの得意技である90度まで開く前後ドアもちゃんと採用されている。

子供向け?のリアシート

空間的には十分に広い後席だが、シートの座面長は足りないし、クッションは薄いしで、大人が座るのにはまったく耐えられない。チャイルドシート固定機構付きの3点式ELRシートベルトが備わるほか、ディーラーオプションでISO FIX対応のチャイルドシートおよび取付キットが用意される。

見えないところは割り切って

リアゲートは開閉しやすいが、通常時の空間断面は三角形なので、箱状のものは積みにくい。左右一体の後席背もたれを倒すには、両手でロックを外さねばならず面倒。倒した後も荷室フロアカーペットに構造上たるみが出て美しくないし、樹脂トリムを止めるナット類の頭もカバーされずと、驚くほど割り切った作りだ。

基本性能&ドライブフィール

新型エンジンはロングストローク型

試乗車は最上級のX(4AT)。ダイハツにとって20年振りの新開発エンジン「KF型」(58ps、6.6kg-m)の特徴はトルク重視であることで、ボア×ストロークは従来EF型の68.0×60.5mmというショートストローク型から、63.0mm×70.4mmというロングストローク型へと正反対に方針転換。設計コンセプト自体はダイハツがトヨタにも供給する1リッター3気筒「1KR」と同系らしく、フリクションロスの低減、燃費の向上、軽さ(エンジン単体でクラス最軽量の47kg)が長所となる。10・15モード燃費は、5MT車で26.0km/L、試乗した4AT車でも22.0km/Lだ。

というようなことはあまり意識せずに試乗したのだが、確かにこのエンジンは低・中回転で、かったるさがほとんどない。4ATで1~3速(正確には最終減速比)のギア比が低いせいもあるが、どこでもほとんど不満なく走れてしまう。車重が試乗車で720kgと軽いのも理由の一つだろう。

意外に静か、しなやかな足回り

不思議なのはこれだけ内装が簡素なのに、意外に静かなこと。3気筒だからアイドリング時の音・振は確かに大きいし、アクセルを床まで踏んでぶん回せば当然うるさいが、流している時はエンジン音もロードノイズも気にならない。特にオーバードライブ的な4速トップの巡航は静かだ。たまにでも高速に乗る機会があるのならば4ATがお勧めだが、量販グレードは3ATしかないのが残念。高速で今や普通車と同じ速度で走ることが許されている軽自動車らしく、直進安定性も案外良く、余裕で流れにのって走れる。

柔らかい足回りはしなやかに伸び縮みして路面をよくなぞり、凸凹の激しいところでも底付き感がない。ロールはかなり大きいが、動きがゆったりしているので逆に安心して楽しめるほどだ。パワステは今時のスモールカーでは珍しく油圧式だが(これもコスト対策か)、それゆえ自然な感じの原因となっているようだ。街中の簡単な試乗では分かりにくいが、郊外の曲がりくねった国道や高速道路などスピードレンジが高い場所でも心拍数が上がらず、けっこうな速度を無理なく維持できる。

ここがイイ

乗っていて遙か昔のスバル360を思い出してしまったほど、プリミティブな軽自動車感が心地よいクルマだ。軽自動車の本質に迫ったシンプルな作り。乗り心地よく、安定性よく、経済的という大衆車の本質に沿っている。こうなると確かに樹脂パネルなんか要らないかも。「フルトリム」が当たり前になる80年代以降、軽自動車は豪華になることで本質を失ってきたのかもしれない。ダイハツはネイキッドでトリムなしの味を思い出したのかも。

92万4000円のXで、4AT、ドアミラーターンランプ、スモークガラス、オートエアコン、キーレスエントリー、CDなど満足できる性能と装備を備えていること。世界初をうたうスーパーインテリジェント触媒による排ガス浄化で4つ星性能。取得税は9000円安い。

軽い。最新の衝突安全性と十分な快適装備がありながら700~720kg(FF車)。これがおそらく低コストや乗り心地にも効いている。リアの窓がほぼ全開するのも、チャイルドシートをつけた場合に便利だ。

視認性の良い計器類は各グレード共通。一番安いECO(5MTのみ)でもカラードバンパー、フルホイールキャップなので、ビジネスモデルには見えない。マニュアル免許の人はこれを買うといい。68万2500円(オーディオレス)だから、10年乗ると月額の償却は6000円弱。年間6000㎞走るとして、リッター15㎞走るならガソリン代は月4000円ほど。合計月額1万円。これは安い。かつて初代アルトが統一価格47万円で大ヒットしたのは、もう25年も前のこと。それより20万円ほど高いが、それなりに物価も上がっているし、エアコンもついている。エッセは現代の激安カーとして打ち出すと、もっと話題になるクルマでは。

ここがダメ

ABSが標準装備されないこと(全車3万1500円のオプション)。これはぜひ標準化を望みたい。いくら軽いとはいえ、12インチタイヤで、雨天、しかもタイヤが減っている時、急制動や緊急回避は(現代の水準として)大丈夫なのだろうか? デュアルエアバッグは標準だが。

前述のように、意外に知名度が低い。黒木瞳のCM採用もクルマの性格から考えるとミスマッチな感じ。スタイリングに個性があるとは言えないので、もっと人目を引く方法を考えないと。

総合評価

まったく予備知識なしで見ると、なんて安っぽいんだろうとがっかりするはず。でも価格の安さを聞けば、まあ納得できる。100万円をはるかに超える軽自動車と比べればフルトリムじゃないのも許せるし、簡素化は軽量化にもつながっているはず。インパネ自体はそう安っぽくないし、センターメーターも見やすい。試乗車にはそこそこの音がする(低音エフェクトもできる)ステレオも付いているから、しばらく乗っていると別に不満はなくなる。高級感を売り物にするクルマじゃないんだから、チョイ乗りなら確かにこれで十分だ。

シートに座ってみてもやはり軽のシート感がひしひしと伝わってくる。シートリフターはないから着座位置は低く、もう少し高めに座りたくもなる。ただしそのおかげで頭上の空間はたっぷりあるし、フロントスクリーンはずいぶん前の方にあって、セダンタイプでは珍しい、顔の前方空間の広々感がある。もちろんタントほど広くはないが、印象的にはタントみたい。前席に座っている限りムーブのようなミニバンタイプの居住空間に劣っている感はなく、かえって広く感じるほど。

走り出すと印象は一変。力強さ、変速のスムーズさ、騒音の低さ、しなやかな乗り心地には驚くほかない。第一印象が安っぽかっただけに、この走りの上質さには感動さえ覚えた。もちろん、剛性感が高いとか、締まったスポーティな足とか、クルマ好きが口にしがちな感覚は一切ないが、混んだ街中から空いた郊外へ、さらには高速道路へと走らせていくと、どのシーンでもまったく不足感がない。ストップ&ゴーは力強く、CVTではないが変速はスムーズでショックもなく、パワステは適度に手応えがある。全域に渡って静かなのもいい。アイドリング時における3気筒特有の振動だけが気になる部分で、それ以外は軽として出色の出来だ。

小型車並の性能を獲得した軽は、その多くが立派で豪華になった。もちろん価格も立派になった。100万円を超える軽自動車はサイズ以外、小型車と遜色はないのだが、かつての国民車(それゆえ今も税制的に優遇されている)の志からは、かなり離れてしまっている。誰もがクルマ選択自由な昨今、今さら国民車でもないと思うが、今ひとつ好景気感のない時代だからこそ、シンプルでむだのないクルマが見直されてもいいのかもしれない。初代アルトのような軽の原点回帰をこのエッセには感じるが、それをトヨタグループのダイハツがやってきたことに、トヨタグループ恐るべしと思わざるを得ない。ということはスズキのトップの座がいよいよ危ういかも。軽は10年5万㎞乗る足クルマ、と割り切ってしまえばエッセで十分だからだ。

最近はコンビニが撤退する理由に、近所にできた生鮮食品のある99円ショップ(ショップ99など)を原因とすることが増えてきた。同じ生活物資を買うならコンビニより99円ショップの方が明らかにお得。99円ショップの品物も、もはや安かろう悪かろうではない。生活物資としてはコンビニの商品とほとんど差はない。軽自動車はもはや生活物資の一つといっていいのだから、100万円を超える軽はコンビニ商品、エッセは99円ショップの商品と例えることができるのでは。

安いから99円ショップに行くのではなく、むだなお金を使いたくない人が虚飾を廃した99円ショップに行く、そんな風潮になってきた。そこで、妙にオシャレで高額なフルトリムの軽より、鉄板むき出しのエッセで十分。99円ショップを利用するように、生活物資の軽自動車エッセを買うのが頭のいいお金の使い方、なんて風潮も今後出てくると思う。それゆえエッセは年を追うごとに売れるクルマになっていく、と予想しておきたい。

試乗車スペック
ダイハツ エッセ
(0.66リッター・4AT・92万4000円)

●形式:DBA-L235S●全長3395mm×全幅1475mm×全高1470mm●ホイールベース:2390mm●車重(車検証記載値):720kg(F:470+R:250)●乗車定員:4名●エンジン型式:KF-VE●658cc・DOHC・4バルブ・直列3気筒・横置●58ps(43kW)/7200rpm、6.6kg-m (65Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/36L●10・15モード燃費:22.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)●タイヤ:155/65R13(YOKOHAMA ASPEC A349)●試乗車価格:92万4000円●試乗距離:90km ●試乗日:2006年1月 ●車両協力:名古屋ダイハツ株式会社

公式サイトhttp://www.daihatsu.co.jp/showroom/lineup/esse/index.htm

 
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