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トヨタ エスティマハイブリッド新車試乗記(第792回)

Toyota Estima Hybrid

(2.4L直4 ハイブリッド+E-Four・431万1163円~)

デビューから10年!
「エスティマ愛」の方に贈る
3代目 最終完成型?に試乗!

2016年07月22日

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キャラクター&開発コンセプト

初代は1990年にデビュー

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初代トヨタ エスティマ (1990年)

初代エスティマは1990年に登場。ミニバンでありながらエンジンをミッドシップ、つまり床下に搭載する斬新な設計コンセプトで、「トヨタの天才タマゴ」というキャッチコピーも使われた。海外ではプレビアの名で販売される一方、日本国内では全幅を5ナンバーに抑えた兄弟車エスティマ ルシーダ、エスティマ エミーナと合わせて10年間販売された。

2000年にはホンダ オデッセイに追随する形でFFベースとなった2代目にフルモデルチェンジ。同じくFFベースの初代ノア/ヴォクシー(2001年発売)、初代アルファード(2002年発売)と共に、トヨタ ミニバン王国の土台を築いた。2001年にはハイブリッドも設定されている。

現在、国内ミニバン市場は、ノア/ヴォクシーやアルファード/ヴェルファイアのような箱型トールタイプが主流だが、エスティマはトヨタによれば「丸みを帯びたワンモーションフォルムを特徴とする」「先進・洗練を追求したミニバン」であり、「他のミニバンとは一線を画すスタイリッシュなクルマとして、独特のこだわりを持つファミリー層をはじめ、多くの方々に支持されてきた」モデルということになる。

11年目を迎えてマイナーチェンジ


2016年6月のマイナーチェンジで発売された3代目エスティマ

10年前の2006年、エスティマは3代目にフルモデルチェンジしており、今年6月6日に発売されたモデルは、その3代目の何度目かのマイナーチェンジモデルである。

改良内容は主に内外装の質感アップで、具体的にはヘッドライト(Bi-Beam LEDヘッドランプを新採用)、ボンネット、フロントグリル、フロントフェンダーなどを変更してフロントデザインを一新したほか、外板色にトヨタのミニバンで初のツートーン仕様を新設定。内装には新たに「ブランノーブ」というヌバック調ファブリック(TBカワシマの登録商標)やサテン調加飾を採用した。また、衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C(TSSC)」を全車標準としている。

月販目標は2000台

従来通り、生産はトヨタ車体の富士松工場(愛知県刈谷市)で、販売はトヨタ店とトヨタカローラ店。

月販目標台数は、10年前のガソリン車7000台+ハイブリッド車700台から、今回は計2200台に修正された。その背景にはエスティマがモデル末期であることに加えて、現行ノア/ヴォクシー/エスクァイアの3兄弟車が目標の計1万2000台を大幅に上回る実績で推移しており、さらに現行アルファード/ヴェルファイア(目標計7000台)も好調という状況がある。なお、ノア/ヴォクシー/エスクァイアは、エスティマと同じ富士松工場で生産されている。

■過去の参考記事
新車試乗記>トヨタ アルファード ハイブリッド (2015年3月掲載)
新車ニュース>新型ミニバン「エスクァイア」を発売 (2014年10月掲載)
新車試乗記>トヨタ アルファード 350G (2008年6月掲載)
新車試乗記>トヨタ エスティマ ハイブリッド (2006年7月掲載)
新車試乗記>トヨタ エスティマ G (2006年2月掲載)

 

価格帯&グレード展開

ガソリンは327万1418円~。ハイブリッドは431万1163円~

今回から3.5L V6エンジンは廃止され、2.4L直4ガソリン(FFのみ)と2.4L ハイブリッド(後輪をモーターで駆動する電気式4WDのE-Four)の2種類になった。8人乗りもあるが、主力は2列目キャプテンシートの7人乗り。また、全車スポーティな外観の「AERAS(アエラス)」のみになっている。

価格は2.4L ガソリンが327万1418円~。ハイブリッドはそれより約100万円高い431万1163円~。ナビ・オーディオは最近のトヨタ車で多いディーラーオプションになる。

ボディカラーには「ミニバン初」を謳うツートーンカラーを3色用意したほか、新色のダークシェリーマイカメタリック(試乗車)やレッドマイカメタリックなど全10色を用意した。また、全ボディカラーで小さなすり傷を自己修復するクリア塗装「セルフリストアリングコート」を採用している。

 

パッケージング&スタイル

フロントデザインを一新

端的に言えば、今回のマイナーチェンジでオーリス顔になったエスティマ。全体のプロポーションは従来通りだが、フロントにはLEDクリアランスランプと一体のBi-Beam LEDヘッドランプやデイライト機能付LEDアクセサリーランプを採用。大きく口を開けたアンダーグリルや切れ長ヘッドライトによって、今のヴィッツやアクアあたりにも通じる、いわゆるキーンルックを採用した。違和感なく見えるのは、もともとエスティマがスポーティなワンモーションフォルムだからだろう。

 

リアは従来と大差ないが、細かく言えばリアコンビランプにもLEDライン発光ストップランプと面発光テールランプを採用し、光の質感を高めている。

そして何より印象的なのがブラックルーフの2トーンカラーや質感の高いボディカラーだろう。ブラックルーフは塗装工程が増えるため、特に大型ミニバンでは採用しにくいようだが、今までなかったのが不思議なほどエスティマのデザインを引き立てている。

 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転
半径(m)
トヨタ ノア/ヴォクシー/エスクァイア (2014~) 4695~4710 1695~1730 1825~1870 2850 5.5
トヨタ エスティマ (2016~) 4820 1810 1730~1760 2950 5.7~5.9
ホンダ オデッセイ (2013~) 4830 1800~1820 1685~1715 2900 5.4
トヨタ アルファード/ヴェルファイア (2015~) 4915~4935 1850 1880~1950 3000 5.6~5.8
 

インテリア&ラゲッジスペース

質感は確かに高まった

現行ユーザーが新型で一番変わったと思うのがインパネまわりだろう。アクセントステッチの加飾を施した合成皮革でダッシュを包み、その上に4.2インチTFTカラー情報ディスプレイ付のオプティトロンメーターを配置。ステアリング、シフトノブ、ドアアームレストにはウッド調パネルやサテン調加飾を施している。フェイク感をよしとするか否かは分かれるが、質感は確かに高まった(と思う)。

 

ダッシュボードやセンターコンソールのあちこちに小物入れを用意

全面ブラックアウトされたセンタークラスターには、9インチディスプレイも収まる2DINワイドスペースを用意。空調スイッチ類は静電式スイッチに変更されている。走行中の操作性には疑問が残るが(スイッチが下の方にあり、ブラインド操作しにくい)、デザイン性の良さを重視したのだろう。

最上級グレードのプレミアムGでは、シートセンター部の表皮に、トヨタ紡織や川島織物セルコンの合弁会社であるTBカワシマ(本社:滋賀県)の「ブランノーブ」(ヌバック調ファブリック)を標準設定。スエード調ではなくヌバック調と称するのはスエード調よりキメが細かいという意味か? 確かに触り心地は滑らか。

■外部リンク
TBカワシマ株式会社

 

セカンドシートは前後ロングスライドおよび横スライドが可能

プレミアムGのシートはブランノーブ(ヌバック調ファブリック)+合成皮革
 

サードシートは床下収納式だが、座り心地はまずまず

サードシートからの眺め。7人乗りなら2-3列目のウォークスルーが可能
 

サードシートはフル電動で床下収納および展開が可能

サードシートを格納し、セカンドシートを前に寄せた状態
 

基本性能&ドライブフィール

走り自体は大きく変わらず

試乗したのは最上級グレードのハイブリッド プレミアムG。オプション込みで約560万円の「エスティマで一番高いやつ」。

結論っぽいことを先に言うと、走り自体はあんまり変わってないな、という印象。エスティマハイブリッドに試乗するのは10年ぶりだったが、その印象は慣れ親しんだトヨタ製ハイブリッド車のそれ。それもそのはず、今回のエスティマハイブリッドは、パワートレインもプラットフォームも基本的には従来のまま。サスペンションのチューニング最適化など「走りの質感向上」を目指した改良は行われたようだが、率直なところ「変わった」というより「変わってない」という印象の方が強い。

ちなみに昨年出た新型アルファード/ヴェルファイアは、2.5Lの新型エンジンを搭載し、プラットフォームも大幅に改良されているが、エスティマの方は従来の2.4Lエンジンのままで、シャシーもリアサスがトーションビームの従来タイプだ。

 

「2AZ-FE」と呼ばれる2.4Lの純ガソリン車用エンジンに対して、「2AZ-FXE」と呼ばれるアトキンソンサイクルのハイブリッド用エンジンは従来通り、150psと190Nm (19.4kgm)を発揮。フロントモーターは143psと270Nm(27.5kgm)、リアモーターは68psと130Nm(13.3kgm)を発揮する。システム最高出力で190psで、ガソリン車の170psを上回っている。

ただしハイブリッドの車重は、ガソリンのFF車に比べて200kgも重く、ガソリンの4WD車と比べても130kgほど重い。試乗車は、オプション込みで2010kgもある。発進や発進直後は主にモーターで加速するが、プリウスのようなトルク感はなく、予備知識なしで乗るとハイブリッド車ということに気付かないかも。ただ、アイドリングストップからのエンジン始動がスムーズなのは、駆動用モーターがスターターを兼ねるハイブリッドならでは。

乗り心地やハンドリングも大差なし

今回のマイナーチェンジでは、上位グレードに「フロントパフォーマンスダンパー」を採用し、「走行中のボディに発生する小さなたわみや微振動を速やかに吸収し、よりシャープなハンドリングを実現」(プレスリリース)したとあるが、試乗車の場合は、なにしろ車重が2トンもあるせいか、現行ノア/ヴォクシーのように「意外によく走るなぁ」と感心することはなかった。率直なところ、荒れた路面や段差でバタバタッと一瞬ボディが震えるあたりには、設計年次の古さを感じてしまった。ただし、いい意味でトヨタ車らしい中庸な乗り味に親しみを感じる人も多いだろう。なんと言っても国内で一番売れているのはトヨタ車なのだから。

 

100km/h巡行時のエンジン回転数は約2000rpm。今回の改良ではリヤコンビランプ側面に例のエアロスタビライジングフィンを付けて走行安定性を高めた、とあるが、これも有り無しで乗り比べないと効果のほどは分からない。トヨタの開発者は口を揃えて「テストコースで乗り比べればはっきり体感できる」と言うのだが。

高速道路で今一つ物足りなかったのは静粛性。速度の高まりに応じてオーディオのボリュームを上げたり、後席乗員との会話がしづらくなったり、パワーウインドウを念のため閉め直したりすることが何度かあった。何となく遮音性というか機密性が低い感じ。これも設計年次のせいだろうか。

Toyota Safety Sense Cを標準装備


Toyota Safety Sense Cのセンサー部(上左が単眼カメラ、上右2つがレーザー受光部、下がレーザー発光部)

そんなわけで、基本性能では従来型と大差ない感じの改良型エスティマだが、明らかに進化したのが衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense C(TSSC)」を全車標準としたこと。

TSSCの内容は、ヴィッツやオーリス等で先行採用されたものとほぼ同じ。赤外線レーザーレーダーと単眼カメラをフロントウインドウ上部に搭載することで、

  • 衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ
    (警報は約15km/h~140km/hの車速域で作動、ブレーキアシストは約30km/h~80km/hで作動、自動ブレーキは約10km/h~80km/hで作動)
  • レーンディパーチャーアラート
    (約50km/h以上で走行中に作動)
  • オートマチックハイビーム
    (LEDヘッドランプ1灯でハイビームとロービームを切り替えられるBi-Beam LED)

以上をセットで装備する。また付帯機能として、前のクルマの発進を教えてくれる先行車発進告知機能も備わる。

今回の試乗中には、ごくたまにプリクラッシュセーフティの警告(音と表示)やレーンディパーチャーアラートが作動。オートマチックハイビームはBi-Beam LEDが明るいこともあって便利だったし、先行車発進告知機能にも何度かお世話になった。ただし、ミリ波レーダーを積んだToyota Safety Sense P(TSSP)ではないため、レーダークルーズコントロールが備わらないのは残念なところ。

試乗燃費は12.2~15.6km/L。JC08モード燃費は17.0~18.0km/L

今回は5日間で計570kmを試乗。参考までに試乗燃費は、一般道と高速道路を走った区間(約470km)が12.5km/L。一般道をエコ運転で走った区間(約60km)が約15.6km/L。570kmトータルでの試乗燃費は12.2km/Lだった。他のトヨタ製ハイブリッド車と同じように、高速道路より一般道の方が燃費がいいという印象を受けた。

JC08モード燃費は、ガソリン車が11.4~11.6km/L(4WDは10.8~11.2km/L)であるのに対し、ハイブリッドは17.0~18.0km/Lと約1.5倍ほど良好。いずれも指定燃料はレギュラーで、タンク容量は65L。ハイブリッドなら700~800kmは無給油で普通に走れそう。

 

ここがイイ

エスティマ好きにとって嬉しいテコ入れ

フルモデルチェンジから10年も経っているので、最新の同クラス車と比べるとさすがに古さは否めないが、エスティマならではのスタイリング(ミニバンでありながら背が低め)に魅力を感じる人にとっては、キーンルックでカッコよくなって、TSSCも装備されたエスティマを新車で買えるのは嬉しいことでは。トヨタ車体の富士松工場はノア/ヴォクシー/エスクァイア3兄弟の生産で大忙しのはずで、販売終了という選択肢もあったと思うが、あえて手の込んだマイナーチェンジを行った心意気は買いたいところ。

ここがダメ

基本設計の古さは否めない

なにぶん基本設計は10年前のままなので、何となく「ひと昔前のトヨタ車」感があるのは否めない。見た目の質感は上がったが、高速走行時の静粛性は今ひとつだし、試乗したプレミアムGでも豪華さで最新のアルファード/ヴェルファイアに見劣りしてしまう。また、後席サイドウインドウに、今やミニバンでは必須の収納式ブラインドがないのも設計年次の古さゆえだろう。ただ、それを補うためかトヨタ車で初めて360度全ての窓ガラス(とオプションのムーンルーフ)に約99%UVカットガラスが採用されているが。

TSSCは全車標準になったが、やはり400万円~500万円クラスとして考えると、ミリ波レーダーによる自動ブレーキやレーダークルーズコントロールが付くTSSPが欲しかった。ちなみに現行アルファード/ヴェルファイアには全車速対応のレーダークルーズコントロールが用意されている。

燃費の良さ、イメージ、それにエコカー減税などの特典を考えるとハイブリッドを選びたくなるが、それだとガソリン車より100万円も高くなってしまうこと。また、同じ7/8人乗りのハイブリッドミニバンという点では、身内にヴォクシー/ノア/エスクァイア、そしてアルファード/ヴェルファイアがあるし、ホンダのオデッセイハイブリッド(356万円~)もある。実用性や経済性といった理詰めで選ぶというより、エスティマ(のカッコ)が好きという人向け。

総合評価

ミニバンのスペシャリティカー

思い起こせば1989年、国産メーカーから数々の名車が登場した年の東京モーターショーで、キャブオーバーワンボックスに代わる新しい“ミニバン”として、車体中央床下にエンジンを横に75度寝かせて搭載するという斬新なパッケージングのエスティマが鮮烈にデビューした。発売当初はその先進性や大柄なボディサイズ(全幅は1800mmあった)が受け入れられなかったが、日本向けに5ナンバーサイズのエスティマ エミーナ/ルシーダが1992年に登場すると、ようやくヒット車に。今、25歳前後の年齢層で、このクルマで育ったという人はかなりいるのではないか。

そんなエスティマも「天才タマゴ」と銘打たれた丸い形ゆえ、スペース効率はイマイチで、ミッドシップレイアウトゆえに制約も多く、10年後に出た2代目はFFベースになった。そして大衆人気は2001年以降、よりスペース効率のいいトール型のノア/ヴォクシーに移っていった。ただし2代目エスティマは発売後、割とすぐにハイブリッド車が投入されたこともあって先進的なイメージをキープ。その後、3代目になってもスタイリングは大きく変わらず、エスティマは誰が見てもエスティマのまま、ここ10年販売され続けた。

 

ノア/ヴォクシーより上級だが、アルファード/ヴェルファイアほど大型でも豪華でもなく、いわばミニバンのスペシャリティカーといったポジションには、それなりに存在意義があった。昔で言えばセダンやワゴンに対する4ドアハードトップ的な立ち位置であり、カッコよさがウリのミニバンだったわけだ。10年間フルモデルチェンジがなかったのも、その立ち位置が一定の支持を集めてきたという証だろう。

現行モデルで、おそらく最後のお色直しとなるだろう今回のモデルチェンジでは、そのスタイリングにさらに磨きがかかった。エスティマがエスティマたる流れるようなワンモーションフォルムはそのままに、昨今のトヨタ顔になったことで、外観の魅力はさらにアップ。最近はゴツいメッキグリルによる押しの強いミニバン全盛だが、そういうのはどうも、という人に選択肢が残されたことは喜ばしい。

今回のマイナーチェンジで、新たに先進安全装備が標準装備されたのは素晴らしいが、本文に書いた通り、ミリ波レーダー方式ではないのには不満が残る。それはフルモデルチェンジを待つべきだが、さて、それは果たして行われるのだろうか。ラインナップを考えると、販売的にはアルファード/ヴェルファイアやヴォクシー/ノア/エスクァイアがあれば十分に思えるから、エスティマの立ち位置は微妙だ。エスティマの新車に乗れるのは、これがラストチャンスかもしれない。

 

10年前に出たエスティマに今乗ると、どうなのか。今回は往復500kmほどのロングドライブに出てみた。まずいつもの試乗コースを80kmほど元気に走りまわってみると、燃費は10.6Km/Lとほぼ想像通りだったが、そこからは、じわじわ伸びて最終的には12km/Lを超えた。思えば初代エスティマの2.4Lガソリン車は、せいぜい6km/Lくらいだった記憶があるから、ハイブリッドシステムを得たことで、四半世紀の間に燃費性能は倍に進化している。2トンもの車重で、この燃費は素晴らしい。ただ、試乗車の場合、走りに力強さはなく、今となっては可もなく不可もなくという印象。軽快な加速感や圧倒的な燃費といったものを期待するとやはりちょっと苦しい。

レーダークルーズコントロールがないのも、今となっては苦しいところ。地方に多い片側一車線の高速道路を通常のクルーズコントロールで走っていると、前のクルマに追いつくたびにリセットしなければならない。いっそレーダークルーズの便利さなど知らなければ、何とも思わないのだろうが、実際には渋滞にハマるとますます欲しくなってしまうほど、レーダークルーズコントロール(もしくはACC)はもう当たり前の装備に思えてしまう。人はこうして、いわゆる自動運転にも慣れていくのだろう。

楽しい思い出が記憶に残る

トヨタ車のナビ(と言っても販売店オプションだが)は、フリック操作で地図を動かせるから、かなり使いやすい。しかし目的地設定などはやはり面倒なままだ。今回、VICSが表示されない自動車専用道路があって、渋滞にハマってしまったが、Googleマップを見ると、その道はしっかり赤く染まっていた。また、持って行ったCDを聞き飽きた後は、Bluetoothで接続したスマホからGoogleプレイミュージックを聞いていたのだが、好みの音楽がいろいろ勝手に流れてくるのはロングドライブのBGMに最適だ。こうなると、いわゆるカーナビには、もはや勝ち目はないと思わざるをえない。

いや、一つだけカーナビにもいいところがあった。それは地デジのテレビ。とても感度がよく、走行中に都道府県が変わっても、きちんと追従して山間部でもほとんど映っていた。このクルマがデビューした10年前はやっと地デジチューナーが載ったころで、感度はいまいちだったが、ここは本当に時代と共に進化した部分。とはいえ走行中に見て楽しめるのは後席の話で、運転席や助手席では見られないのだが。ちなみに後席用の11インチディスプレイが後方視界を妨げるのはちょっと気になった。

 

試乗を終えてみると、10年前にデビューしたモデルとはいえ、クルマとしてはおおむね不満はないと思った。クルマ自体より、あそこへ行った、ここへ行ったという楽しい思い出が記憶に残るクルマだなあと思った。昔、個人的にエミーナに10年近く乗っていたが、エミーナでの家族の様々な思い出は、今も鮮明に記憶に残っている。カッコいいだけでなく、トラブルが少なくて丈夫で、思い出が残るあたりがエスティマの良さかもしれない。それもまたクルマのあり方の一つだ。

エスティマで育ち、大人になってクルマに乗らない今の若い人たちも、家族ができたらぜひミニバンを買って、子どもと出かけてほしいと思う。クルマに興味はなくても、クルマのあるファミリー・ライフは楽しいし、世界が広がる。子どもだってそのことは覚えているはずだ。ミニバンがクルマ好きという人種を減らしたと言う人もいるが、ミニバンはクルマのある「楽しい」生活を提示してきた。クルマ好きが減ったと嘆くより、こういうクルマで少しでも多くの「今の」子どもたちが楽しい時間を過ごすことの方が昨今、大切な気がする。

 

試乗車スペック
トヨタ エスティマハイブリッド AERAS PREMIUM-G
(2.4L直4 ハイブリッド+E-Four・492万8727円~)

●初年度登録:2016年6月
●形式:DAA-AHR20W-GFXZB
●全長4820mm×全幅1810mm×全高1760mm
●ホイールベース:2950mm
●最低地上高:160mm
●最小回転半径:5.7m
●車重(車検証記載値):2010kg(1110+900)
●乗車定員:7名

●エンジン型式:2AZ-FXE
●排気量:2362cc
●エンジン種類:直列4気筒DOHC・4バルブ・横置
●ボア×ストローク:88.5×96.0mm
●圧縮比:12.5
●最高出力:110kW(150ps)/6000rpm
●最大トルク:190Nm (19.4kgm)/4000rpm
●カムシャフト駆動:タイミングチェーン
●使用燃料:レギュラーガソリン
●燃料タンク容量:65L

●モーター形式(フロント):2JM
●モーター種類:交流同期電動機
●最高出力:105kW(143ps)/-rpm
●最大トルク:270Nm(27.5kgm)/-rpm

●モーター形式(リア):2FM
●モーター種類:交流同期電動機
●最高出力:50kW(68ps)/-rpm
●最大トルク:130Nm(13.3kgm)/-rpm

●駆動用バッテリー種類:ニッケル水素電池
●トランスミッション:電気式無段変速機

●システム最高出力:140kW(190ps)
●JC08モード燃費:18.0km/L
※オプション装着により車両重量が2000kg以上の場合は17.0km/L

●駆動方式:E-Four(電気式4輪駆動)
●サスペンション形式(前):マクファーソンストラット+コイルスプリング
●サスペンション型式(後):トーションビーム+コイルスプリング
●タイヤ:215/60R17 (Toyo Tranpath J48)

●試乗車価格(概算):563万9151円
※オプション:ブラック×ダークシェリーマイカメタリック+17インチ切削高輝アルミホイール ブラック塗装 5万4000円、クリアランスソナー&バックソナー 4万3200円、SRSサイドエアバッグ(フロントシート)&ニーエアバッグ(運転席)&カーテンシールドエアバッグ(1~3列目) 8万1000円、盗難防止システム+イモビライザー・オートアラーム 5400円、8スピーカー 6480円、T-Connectナビ9インチモデル DCMパッケージ(販売店オプション) 28万4580円、マルチビューバックガイドモニター(販売店オプション) 3万0240円、11型後席ディスプレイ(販売店オプション) 9万7200円、ITSスポット対応DSRCユニット・ナビ連動タイプ(ETC・VICS機能付)(販売店オプション) 3万2724円、フロアマット(ラグジュアリータイプ)エントランスマット付(販売店オプション) 8万2080円

●ボディカラー:ブラック×ダークシェリーマイカメタリック(外板色ツートーン仕様)
●試乗距離:570km

●試乗日:2016年7月
●車両協力:トヨタ自動車株式会社

 
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