デイズ ITS DAYS 911DAYS

新車試乗記 第110回 トヨタ エスティマ Toyota Estima

 

日時: 2000年02月11日

 

キャラクター&開発コンセプト

タマゴ型スタイルはそのまま。画期的なメカニズムを捨て、フツーのFFミニバンへ

90年の登場以来、先進的なデザインとパッケージングで長らく愛されてきたエスティマ。後に加わった5ナンバーボディのエミーナ/ルシーダとともに、ミニバン市場における大ヒットモデルの一角を占めてきた。その従来型は、エンジンを横倒しにして床下にミッドシップレイアウトすることで、広い居住性と高い走行性を両立しており、ミニバンがワンボックス全盛だった当時としては革新的な発想だった。しかし、これは一方でより大きなエンジンが搭載できず、ライバルが進化する中で性能向上が不可能という弱点ともなった。また床下のエンジンによってフロアが高く、騒音が室内に侵入しやすいという問題もあった。これらを全てを克服するために、先進的な内外装に加え、エンジンをフロントに置いたFFレイアウトに一新したのが、新型エスティマ最大の特徴だ。

開発テーマは「使う心地よさと走る心地よさの両立」という従来型のコンセプトに加え「次世代の高級ミニバン」を提案。ボディサイズは一回り小さくなりながらも、FFレイアウトの恩恵で、低いフロアと高い室内高を実現。加えてリアドアを両側スライド式とすることで、乗降性と居住性を向上させている。

エンジンは2.4リッター直4に加えて3.0リッターV6を新設定。乗車定員は2-3-3の8人乗りと、2列目シートを独立タイプとした7人乗りの2タイプを用意する。

なお、東京モーターショーで出展されていたハイブリッド4WDの搭載は、2001年1月に登場予定だ(関係者談)。

価格帯&グレード展開

価格はエミーナ/ルシーダ並。2.4リッター・直4が229.0~310.0万円、3.0リッター・V6が272.0~334.0万円

従来型の価格は269.8~333.8万円(ノーマルルーフ)だから、大幅に安くなっている。エミーナ/ルシーダと同じ装備内容で比較しても、わずか3~5万円のアップにすぎない。従来型のように大幅な値引きは期待できないが(ワンプライス制ではない)、十分納得できるプライスといっていいだろう。

グレードは下から「J」「X」「G」とエアロ仕様「アエラス」の4タイプ。乗車定員は8人乗りが基本で、豪華装備となる「G」のみ7人乗りが用意される。また、エンジンは全グレード、2.4リッター直4と3.0リッターV6(Jのみ設定なし)が用意されており、それぞれ2WD/4WDの選択が可能だ。

主力グレードは2.4リッター・2WDの「X」で価格は248.0万円。同グレードでV6にしたければ24万円高、4WDも24万円高となる。「G」は「X」の装備に加え、本革ステアリング、イージークローザー付きスライドドア、オプティロンメーター、CDプレーヤー、キーレスエントリー、アルミホイールが追加される。なお、DVDナビ、ツインムーンルーフは全車オプションで、価格はそれぞれ33.8万円、10.5万円となる。

エスティマを1BOX型と考えるか、ステーションワゴン型と考えるかは難しいところだが、とりあえず最大のライバルとなるのはホンダ・オデッセイ(212.5~334.5万円)だろう。

パッケージング&スタイル

オデッセイよりも若干小さいが、存在感は群を抜く

ボディサイズは全長4750mm×全幅1790mm×全高1770mm、全幅と全高がそれぞれ10mm縮小されている。エミーナ/ルシーダ・ユーザーの乗り換えも配慮したサイズといっていいだろう。ホイールベースは逆に40mm延長され、2900mm。意外なことに、全長と全幅が若干ではあるが新型オデッセイよりも小さい。

「天才タマゴ」の所以でもある従来型のワンモーションフォルムは、一応、新型にも引き継がれている。トヨタデザイントレンドの吊り目系ヘッドライト、エッジを効かせたサイドライなど、かなり前衛的なルックスだが、これは確かにエスティマの形をしている。個人的にはサイドビューのアクセントとなっていた幅広のBピラーやCピラーは残して欲しかったところであり、10年経過した今なお色あせてない従来型のデザイン力は、改めて感心させられる。

FF化によりフロアは70mm低くなり、室内高は大幅に向上。両側スライドドアを採用

室内は、長さが+150mmの2950mm、高さが+45mmの1265mmと大幅に拡大。特にフロアは70mmも低くなっており、これにより乗降性は圧倒的によくなっている。小さな子供やお年寄りを乗せる機会が多くなるミニバンにとって、これは大きなセールスポイント。また、FF化の恩恵で室内高を増すことは容易だと思うが、室内長をかせぐのに有利なミッドシップよりも室内長が長いというのは特筆に値するものだ。

スライドドアが片側から両側になったことも嬉しいところで、しかも左側は電動開閉機能付き。これは10万円オプションではあるが、その分の価値と驚きはある。ただし、室内幅だけは従来型よりも75mmも狭くなっている。

シートポジションは従来型よりも低く乗り込みやすいようになったが、まだまだ1BOXくささを残している。乗用車感覚という点ではオデッセイに劣るが、居住性に関しては1BOXデザインの延長上にあるエスティマが絶対的に有利だ。特に3列目の差は歴然。頭上高、足元空間ともに全く問題なし。強いて欠点を言えばシートが少し小柄なことぐらい。1BOXカーのように回転対座モード(Jを除く8人乗りのみ)ができるのもエスティマの魅力だ。

ユニークなインパネを採用。居住性は広さは、さすが1BOX発展型

photo_3.jpg

インパネはトヨタが積極的に拡大しているセンターメーターを採用する。センターパネルは円形で、渦を描いたような有機的なデザインであり、未来感覚に溢れている。それでいてナビを上部に配置するなど、使い勝手は犠牲にされていない。

ATシフトはグリップを縦にしたコラム式で使いやすい。パーキングブレーキは足踏み式でこれまた使いやすい。もちろんフロアは完全フラットで、ウォークスルーは前後左右ずいぶん楽にできるようになった。ここは旧型との大きな違い。

目新しい装備としては舵角に合わせて進路を予想するバックガイドモニター(ナビとセットでオプション)があるが、これはハズレの商品か。というのも試乗中、結局慣れることができず、これに気を取られていてフロント部をぶつけそうになった。後ろが見やすいという意味で補助的には悪くないが、テールゲートのミラーの方が現実的に思えた。また雨が降ると水滴がカメラレンズに付き、とても見にくくなったのも悪印象。

シートアレンジの工夫はさすが最新型。3列目の収納方法も大きく変わっており、旧来の左右分割で跳ね上げタイプから、座面を跳ね上げ前方にスライドさせるタイプとなった。ロングスライド可能の2列目と合わせれば、楽に巨大なラゲッジスペースを作り出せる。基本的にセカンド、サードシート共に同じレールの上に乗っており、取り外しができるスペーサーを外せば、サードシートはセカンドシート位置より前まで移動できる。つまり、セカンドシートが外せれば、サードシートはどこにでも固定できるわけで、アレンジは一気に増えるだろう。セカンドシートの取り外し機構はぜひ欲しかった。なお、2列目シート(G・7人乗りのみ)のオットマン(足置き)は極楽気分。

基本性能&ドライブフィール

3.0リッターV6は220馬力、2.4リッター直4は160馬力。軽量化とあいまって動力性能は大幅にアップ

床下中央からフロントへ移行したエンジンは3.0リッターV6と2.4リッター直4の2種類を用意。ギアボックスはどちらも4速ATが組み合わせられる。

V6はウインダムにも搭載されているもので、専用チューンにより最高出力220PS/5800rpm、最大トルク31.0kgm/4400rpmを発生する。

直4は新開発で、最高出力160馬力/5600rpm、最大トルク22.5kgmを発生。従来型は同じ排気量で過給器(スーパーチャージャー)をつけてやっと160馬力。一方、新型はNA(立派!)。しかも車重は約100kgも軽くなっているので、スペックを見るだけでも動力性能が高くなっていることが伺える。

サスペンション型式は前のストラット式は従来型と同じで、後ろはダブルウィッシュボーン(4WDは4リンクで従来と同じ)に変更されている。もちろん型式が同じだけで、新設計だ。なお、「アエラス」は硬いセッティングとした「ユーロサスペンション」が採用される。

最小回転半径はロングホイールベース化されているのにも関わらず、0.1m小さい5.6mとなっている(エミーナ/ルシーダと同じ)。オーバーハングは短くなっているわけだから、実際の取り回しの向上は期待できる。

ミッドシップからFFに移行したことにより、ハンドリングが危惧されるところだが、広報資料によれば、ダブルレーンチェンジ性能、旋回性能、直進安定性と3つの項目全てで、新型が従来型を上回っている。新型の走行性能の高さを実証するのに、10年前のデータを持ち出すのも、どうかと思うのだが。

ミニバンとしては申し分ない動力性能。オデッセイほど過激な走りはできないが

直4は3月発売ということで、試乗できたのはV6のみ。 オデッセイよりもパワーは10馬力上で、車重は30kg重いから、両車のパワーウエイトレシオはほぼ同じ。発進加速でも似たようなものと思われたが、体感的にはオデッセイの直4モデルに近いもの。それはちょっと残念だったが、それでもミニバンとしては贅沢といえるほどパワーで、どのシチュエーションからの加速でも十分な威力を発揮する。従来型からの乗り換えなら、絶対満足できるはずだ。ただV6でこれだと直4ではややパワー的に不安があるが。

アクセルやペダルの操舵感は若干緩く、ミニバンらしい味付け。乗り心地はどちらかといえば硬めだが、段差による突き上げは上手く抑えられている。高回転の伸びがイマイチのところもあるが、運転の楽しさよりも乗員の快適さを重視すれば、適切な配慮といえるもの。エンジンのフィーリングも含めて、トヨタが問うところの「次世代高級車ミニバン」ということが実感できる。

特に静粛性の向上は目を見張るべきものがある。何でもウインダムと同じくらい静かだとか。この静けさだけでも、代替えしたくなるはずだ。Cd値が0.30というミニバンとしては脅威な好数値をかせいでいるために、風切り音も小さい。ちなみに開発者によると「最高速は確実に180km/hはクリアしますよ」とのこと。確かに150km/h巡航は楽勝だった。

ハンドリングは、従来型と比べればノーズの重さを感じるものの、とりたててアンダー傾向が大きいということもない。フツーに乗る限り、ミッドシップとFFの差はほとんど感じられないといっていいだろう。ただし、インチアップされたタイヤにより踏ん張るものの、ロールは乗用車よりは大きい。ミニバンとしては妥当なレベルだ。オデッセイのような走りにふりきったミニバンとは違い、先代よりずっと安定してコーナーを走りぬけられるという程度。VSCはかなり過敏に作動するから、スイッチを入れている限り、まったく安全。

ここがイイ

ワンボックス型とステーションワゴン型の中間くらいのコンセプトは他のミニバンになく、エスティマ独自のスタンスで、最も好ましく思われる。室内高が十分あるのはいいし、左右のスライドドアは便利、しかも窓が大きく開くのはこれまた便利。天井からのエアコン吹き出し口は各シートに有るし、カップホルダーや小物入れも各シートに充実してついている。インパネは斬新でカーナビは見やすいし、サードシートもリアハッチぎりぎりまでスライドして、室内の広さに貢献している。当然動力性能も問題ない。旧エミーナユーザーの当編集部としては、全面的に絶賛をおくるしかないでしょう。

220kmの試乗の燃費は6.2km/l。5名乗車、エアコン常時ONでこの燃費はエミーナ並。排気量の差を考えると、悪くはないと思う。

ここがダメ

比較対象が旧エミーナだけに、ダメポイントがつけ辛い。強いていうとボディサイズ。いつも5ナンバーのエミーナでは行けるところへ敢えて乗りこんでみたが、やっぱり通れなかった。5ナンバー車を出すことはないと思うが、現在のサイズでは残念ながらうちは買えないです。

総合評価

photo_2.jpg

FFへの移行、若干であるもののボディサイズをコンパクト化するなど、なかなか思い切ったコンセプトの転換を図ったことにより、従来型のネガ部分はきれいに解消されている。確かにFF化にしたことで、フツーのミニバンになってしまったが、新型エスティマには1年後、ハイブリッド四駆という画期的なシステムが搭載されていることが決定されており、それを思えば、先代同様やっぱり偉大。1BOX型とステーションワゴン型の長所を両取りした、一粒で2度オイシイ、ミニバンだ。 なお、試乗車にはハイテクのレーダークルーズコントロールがついていたので補記したい。

この装置はクルーズコントロール走行中、前方走行車をレーダーで捕らえ、そのクルマのスピードに自動的に減速して等車間距離をとりながら追尾するシステム。実際に使ってみるとたいへんおもしろい。本当に前のクルマに犬のように従って走るのだ。これはなかなか感動的。減速すれば自動的にスピードが落ちるし、先行車がいなくなると加速していく。ただ先行車が急減速すると警告音がなるのでブレーキを踏む必要がある(ほっておけば追突する)。

とはいえ実際には設定速度の上限が108km/hなので、実用にはまったくむかない。この設定だと80km/hくらいの流れにしか乗れないが、走行車線をこれくらいで走っているクルマについていくのはストレスが有りすぎ。せめて120km/hくらいに設定できれば、加速したり減速したりしながら100km/h平均で流れるクルマについていけるのだが。

この装置はトヨタの夢見るITS(高度道路交通システム)のタマゴと言えるだろう。もうちょっと改良すれば、夢の手放し縦列走行もできそうだ。10年後、新しいエスティマが登場する頃には、それも実現しているだろう。

 

公式サイトhttp://toyota.jp/

 
トヨタのことならこのお店にお任せ!
     
    Google

    トラックバック

    このエントリーのトラックバックURL:
    http://www.motordays.com/days/adm_tools/mt/mt-tb.cgi/674

     

    最新の試乗記5件

     

    現在の位置:ホーム > 新車試乗記 > トヨタ エスティマ