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新車試乗記 第179回 トヨタ エスティマ ハイブリッド Toyota Estima Hybrid

 

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日時: 2001年07月06日

 

キャラクター&開発コンセプト

トヨタ2つ目のハイブリッドシステム「THS-C」を搭載

トヨタのハイブリッドカー第2弾となるエスティマ・ハイブリッドは、プリウスで完成させたハイブリッドシステムとは違う、まったく新しいハイブリッドシステム「THS-C」を搭載する。それだけでなく、後輪を電気モーターで駆動する、量産車世界初の電気式4輪駆動システム「E-Four」も搭載。「最小のエネルギーで、最大のパフォーマンスの発揮」を追求した21世紀のクルマが、エスティマハイブリッドのコンセプトだ。

「THS-C」とはトヨタ・ハイブリッド・システム-CVTの頭文字で、高効率ガソリンエンジン(2.4リットル)、電気モーター、スーパーCVTから構成される。エンジン、フロントモーター、リヤモーターの駆動力を適切に組み合わせることにより、ラージクラスのミニバンとは思えない低燃費・低公害を実現したわけだ。また、「E-Four」はプロペラシャフトを介さず、電気的に制御されたモーターで適切に後輪を駆動させる画期的な4WDシステムだ。

赤字覚悟だったプリウスとは違い、エスティマハイブリッドはしっかり売って、しっかり儲ける、というビジネス展開を狙っている。プリウスはあくまで広告塔であり、新時代のクルマを本気で広める器に選ばれたのがエスティマだった、というわけだ。プリウスの場合「赤字のものを売るな」という米国の無言の圧力(やっかみ?)もあったようで、利益のでるハイブリッドはトヨタにとって命題だったわけだ。

なお、使い勝手はこれまでのエスティマとほとんど差はなく、乗車定員も同じ7人乗りもしくは8人乗りとなっている。

価格帯&グレード展開

純ガソリン車の約60万円高の335万円~363万円

グレードは装備の違いによって、標準仕様とGセレクションの2タイプ。どちらも、セカンドシートがベンチタイプの8人乗り、独立タイプの7人乗りが用意される。価格は標準仕様が335万円、Gセレクションが360万円で、7人乗りは3万円高。従来の純ガソリン車の2.4リッター・4WDと価格を比較すると、およそ60万円高。装備を考えるとハイブリッドならで専用品もあるので、実質的な価格差は50万円ぐらいか。ちなみにエスティマでもっとも高いモデルは、3リッターV6搭載車で334万円。V6プラス1万円で、ハイブリッドカーが買えるから、購入者にとっては悩ましいところ。

Gセレクション専用装備となるのはアルミホイール、ディスチャージヘッドライト、本革&木目調ステアリング、クルーズコントロールなど。またシート表皮がニットからモケットに変更される。ボディカラーは全4色。ホワイトパール、シルバーメタ、ブルーメタ、そしてヴィッツでお馴染みのピンクメタが新色として加わった。試乗車はこの色だったが、スゴイ派手。存在感はかなりのものだ。

モトは何年でとれる? ランニングコスト・シミュレーション

10・15モード燃費を参照に、年間1万kmぐらいの平均的な走行距離で燃料代を割り出すと、ハイブリッドだと年間4万円ほど浮く、という計算になる。価格差はおよそ60万円だから、15年間乗らないとモトがとれないという計算だ。もちろん、これは10・15モード燃費によるものだから、現実は燃費の差=年間の燃料代の差が縮まるので、モトをとるまでに15年以上はかかるはずだろう。

プリウスの場合も、同クラスに対して50万円ほど高く、その分、ランニングコストでモトをとるのは非現実的だったわけだが、エスティマの場合は何といってもベースが燃費が悪いミニバン。現実に毎回支払う燃料代では大きな差がでるわけで、新しいもの好きや環境のためにと思っている人だけでなく、経済性を求めて買うことも考えられるクルマだ。なお、月間目標はプリウスと同様1000台。なんていっても人気のミニバンのため、これを上回る勝算は十分ありとトヨタは見ている。

パッケージング&スタイル

見た目はよりアグレッシブでワルになった。それでいて環境に優しい(笑)

ボディサイズは全高4770mm×全幅1790mm×全高1780mm、ホイールベースは2900mm。ボディシェルそのものは純ガソリン車のエスティマと同じで、フロントバンパーやグリル、ヘッドライト、テールランプが専用品。より未来的になり、ひと目で「ハイブリッド版」と分かる差別化が図られている。また少しでも空力特性を良くして、高速走行での燃費向上を狙おうと、フロントバンパーには、専用リップスポイラーが追加され、純ガソリン車に標準のリアスポイラーも専用デザインに変更されている。Cd値は未記載だが、純ガソリン車の0.30よりは良くはなっているはず。なお、細いスポークのアルミホイールとホイールキャップを組み合わせた軽量の「ハイブリッドホイール」は、プリウスと同じ手法だ。

メーター内には小さな宇宙が…、世にも珍しいブルーグラデーションオプティトロンメーター

室内は、独特な造形のセンターメーターを採用するインパネ回り、3列シートのキャビンスペースなど、パッと見はエスティマそのもの。しかし、細部をよく見るとハイブリッドならではの違いを見つけることができる。まず純ガソリン車と最も大きく異なるのが、メーターパネル。タコメーターが廃止され、「REDAY」のワーニングランプが配置される。また、「夜明けの星空」を表現したという青色のグラデーション照明もハイブリッドオリジナル。小さな星がきらめき、プラネタリウムみたいに幻想的で、なかなかシャレた演出だ。

ハイブリッドならでのアイテムとなるのがセンターパネルに標準装備されるマルチインフォメーションディスプレイだ。プリウスでお馴染みとなったハイブリッドシステムの状態をチェックできるエネルギーモニターが表示されるわけだが、4WDなのでグラフィックはプリウスより複雑。運転中は安全のためにも見ないほうがいいかも。

電子レンジの使用もOK、単なるエコカーの枠を超え、福祉・作業用車としてのポテンシャルを秘める

1500Wもの大容量AC100V電源を標準装備するのも注目すべきポイント。コンセントはセンタークラスターとリアラゲッジルームに設置されており、家庭用電源と同じ感覚で使える。例えば走行中、停止中に関わらず、ヘアドライヤーや電子レンジの使用が可能。電動アシスト自転車の充電だってOKだ。これほど大容量の電源を確保するのは、通常のクルマではまず無理。電圧が下がると自動的にエンジンがかかるエスティマハイブリッドならではで、まさに走る発電所といったクルマなのである。

シートアレンジにも若干の違いがある。サードシート下に駆動用バッテリーを配置する関係で、サードシートは固定式。純ガソリン車のような大幅なスライドができない。とはいっても、基本的な居住空間は十分に確保されているので、不自由はしないはず。その他では、サードシートの格納方法もチップアップからタンブル方式に変更され、ラゲッジスペースが多少犠牲にされている。ベンチタイプの8人乗りでは、セカンドシートの回転対座ができない。どれもやむを得ないことばかりで、大きなマイナス面と感じることはないだろう。

基本性能&ドライブフィール

世界初の駆動システムで、10年、いや、もしかすると100年他社の先をいく

「THS-C」と名付けられた今回のハイブリッドシステムは、独立した変速機を持たないプリウスとは違って、2.4リッター直4ガソリンエンジンとモーターを組み合わせて、ベルト式CVTを介して前輪を駆動するシステムとなっている。基本的には日産ティーノハイブリッド、ホンダ・インサイトに近く、構造がシンプルで他車への応用が効くのがメリットだ。

搭載される2.4リッターエンジンは従来のエスティマ用のものをベースに新開発したもの。高膨張比のアトキンソンサイクル化によって、レギュラーガソリンながら12.5の高圧縮比を実現。スペックは130馬力/5600rpm、19.4kgm/4000rpm。これに組み合わせられる新開発のモーターは13kW/1130~3000rpm、11.2kgm/0~1130rpmと、プリウスの約半分のスペックとなっている。馬力に直すと約18馬力だから、トータルで約148馬力。ノーマル2.4リッター(160馬力)よりも劣るが、これはあくまでフロント専用ユニットのみによるもの。エスティマハイブリッドには後輪を駆動させるリア専用モーターを備えており、こちらは約24.5馬力、11.0kgmを発生。結果としてフルパワー時には約172.5馬力となり、ノーマル2.4リッターよりハイパワーとなるわけだ。ただし、車重が130kg程度重くなっているので、動力性能的には2.4リッターよりちょっと劣るかな、というレベルとなる。

「E-Four」と呼ばれる電気式4WDのリアアクスルは、モーターとデフの一体構造となっている。後輪を駆動させるのは電力のみ。つまりプロペラシャフトやトランスファーを必要としない。大幅な軽量化が可能となる、画期的な構造だ。駆動トルク配分は必要に応じて前100:後0~前50:後50のスタンバイ4WDとして作動する。こうした超最新技術によって10・15モード燃費は18.0km/lを達成。ノーマルエスティマのおよそ倍、1.3リッターのヴィッツ並だ。このクラスの4WDミニバンにとって夢のような低燃費を実現しながら、排ガスレベルは最高ランクの★3つを獲得しているのも見逃せないポイント。人気絶頂の小泉政権の石原大臣は発売早々、私用車としてこれを買った模様。今後、ワイドショーやニュース番組での露出が増える…かも?

パワステはプリウスやカローラのような100%電動式ではなく、電動ポンプによって発生した油圧でアシストする新開発「EHPS」を採用する。MR-Sでも似た構造のものが採用されているが、エスティマハイブリッド用のものは、パワステ用ポンプとCVT用オイルポンプを共用することで、軽量コンパクト化が図られているのが特徴。実際の操舵フィールは、やや軽めながら違和感がない完成度の高い仕上がりとなっている。

クルマ側が6つの走行パターンをドライバーの知らないところで勝手に切り替える

THS-Cの動きは、エンジン、フロントモーター、リアモーターの3つの組み合わせによる6パターン。具体的に説明すると、まず停止時には基本的にエンジンはストップ。アクセルオンにより前後モーターでスタートし、一定速度での巡航時になるとエンジンのみに切り替わる。効率がいい回転域をCVTが引き出すわけだ。そして全開時はエンジン+前後モーターでフルパワーを発揮。さらに雪道などの低ミュー路では、前輪のスリップをフロントモーターの発電抵抗で制御しつつ、発電された電気でリアモーターを駆動し4WDとなるという離れ業を披露する。もちろん減速時は前後モーターを発電機としてエネルギーを回収するのはプリウスと同様だ。

大雑把に言ってしまうと、主役はあくまでエンジンで、モーターは始動時や走りの不足を補う黒子的存在。プリウスよりもモーターの出番は少ないというわけだ。

CVTのクセはあるが走りそのものには大きな不満はない

さて、試乗。キーをひねるとメーター内のREDAYランプが点灯する。このときエンジンはかかっていないが、スタート準備はOK。アクセルを踏むとすぐエンジンがかかる。プリウスのようにモーターだけでは走らない。ただし、アクセルを踏んだ瞬間、ズッズッと突いたようなCVT独特の小さなショックは伝わってくる。今どきのCVT搭載車としては珍しいぐらい。慣れではすまされない不快感だけに、これだけは至急改善して欲しいところだ。またトルコンがないため、急坂では後ずさりもする。これは慣れていないと驚くだろう。

バッテリーのサポートで出足のトルクは太いのだが、途中エンジンだけになるとトルク感が細くなる。そこではエンジン回転が上がり、速度が追いついていくCVTならではの感覚がかなり感じられた。シフトショックのない終始滑らかな走りは、ハイブリッドらしい未来的なものと納得ができるものの、ガソリン車的パワフル感がないだけに、もっさりとしたおとなしい走りを強いられる。むろん街乗りでの絶対的な動力性能に不満があるわけではないが、速いクルマではない。

モーターや駆動用バッテリーなど重いものが下半身に集中しているので、腰高感も払拭されている。しかも細かな制御をする電気式4WDシステムの介入によって、コーナリングはオンザレール感覚。オーバースピード気味にコーナーへ侵入するとややオーバーステア気味になるが、いずれにしてもVSCが介入してくるので、絶対的には安全だ(というかラインに引き戻される)。頼りない省燃費タイヤを履いているのにも関わらず、この高い操縦安定性は評価すべき点だ(もちろん省燃費タイヤゆえコーナーではよく鳴くし、運転していて楽しくはない)。またブレーキのタッチも、効きがやや悪いかなといった感覚があるものの、回生ブレーキだからという違和感は特にない。

60km/hあたりからの中間加速はいまひとつ。1.5リッタークラスぐらいの加速感だ。しかもアクセルの踏み初めから加速がでるまでのタイムラグが大きく、どうしてもアクセルを深く踏み込んでしまう。スピードがのれば150km/hくらいの巡航は快適だが、そこまで行くまでにややまだるっこい。とはいえ法定速度の巡航なら、まったく問題はない。

乗り心地も不快ではないものの、ガソリン車のシットリとした上質な味わいが薄れており、ゴツゴツとした感じがちょっと、安っぽい。ただこれは多人数乗車をすればおそらく変わると思う。室内の静粛性が高いのは素晴らしい点だ。運転席ではエンジン音は比較的聞こえるが、2列目では気にならない。超高速域では風切り音がかなりするが、ふだんは静かな室内で談笑できるはず。

さて、気になる実走燃費は、市街地、郊外を中心に走って7.4km/l。カタログ値の半分以下という、ずいぶん冴えない結果だった。もちろんこれには理由があって、試乗した2日間が猛暑で、常にエアコン全開、15分ほどのアイドルストップ、さらに1時間ほどの大渋滞(名古屋としては大渋滞)にも見舞われるという、かなり過酷な条件だったのだ。バッテリーの負担が大きいようで、エンジンがストップするはずの停止中でもエンジンが止まることがほとんどなく、エンジンとモーターの役割配分は感覚的には9対1といったところ。見方を変えれば、これだけ条件が厳しかったのにも関わらず、平均的な条件下での純ガソリン車並の燃費が達成できるわけで、「最低でも7km/l」という捉え方をして欲しい。燃費に何ら支障のない走りなら、10km/lあたりはマークできるだろう。

今回挙げた些細な気になる箇所は、プリウスがわずか2年で見違えるように成長したように、このエスティマハイブリッドも2年後にはキレイサッパリと払拭されていることだろう。

ここがイイ

走りを追求するスポーツカーではないため、この快適性ならもはや言うことはない。プリウスもそうだが、普通に乗っていて不満は何一つでないだろう。ハイブリッドはもはやごく普通のクルマになった。トヨタ恐るべし。

運転席ばかりでなく、キャプテンシートの2列目にも乗ったが、足下の広さ、シートの快適性、室内の静粛性など、最高だった。やはりここがミニバンの特等席だと再度実感。新幹線のような簡易テーブルがあれば、飛行機のビジネスクラス並の快適さだろう(乗ったことないけど)。リモコン操作できる天井設置のディスプレイは高い(20万円もする)だけあって、使い勝手がたいへんいい。ナビも写るし、後付では望めない快適さゆえ、リアに乗る機会が多いならこれはぜひ欲しい。

ここがダメ

燃費を稼ぐ意味でグリップの悪いタイヤなのだが、それはまあいいとしても、デザイン的にリアのタイヤがプア。オフセットを変えてもう少し張り出すとカッコイイのに。ハイブリッドの場合、足回りを変更することは意味のないことだと思うので、ドレスアップしなくても、素のままでカッコイイスタイルであることが重要なのでは。

総合評価

ハイブリッドを量販すれば、量産効果で価格が下がり、さらにたくさん売れ、量産できるという好循環を作り出して、街をトヨタハイブリッドで埋め尽くそうという、遠大な戦略車だ。所詮カローラクラスのセダンであるプリウスでは量販は望めないが、一番人気のミニバンのエスティマなら大ヒットも考えられるわけで、「2005年には世界中でハイブリッド車を年間30万台以上売りたい」とトヨタ首脳は言う。

ハイブリッド車の価格アップがいくらまでなら買うか、というマーケティングも済んでおり、それによると、ガソリン車の30万円高なら2割の人が、20万円高なら5割の人が、10万円高なら何と8割の人がハイブリッドを買ってもいいというらしい。エスティマハイブリッドのシステムは他車に流用が効くし、システムとして量産ができると、価格は劇的に下がるはず(ABSがその好例)。従って、あと3年もすればハイブリッド車はノーマル車より10~30万円高いだけのごく普通のグレードの一つになる可能性がある。環境にいいのはもちろん、燃費でモトを引くため、ユーザーは皆一斉にハイブリッドに走るはず。これはもうトヨタ恐るべしとしか言いようがない。

CVTやハイブリッドのシステムはトヨタの自前だが、唯一他社から買っているのがバッテリー。パナソニック製だ。トヨタF1は「パナソニック・トヨタ」となるが、そのわけの一つがこれ。海外でハイブリッド車(エスティマも輸出される)を売りたいトヨタの思惑がそこにある。

 

公式サイトhttp://toyota.jp

 
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