キャラクター&開発コンセプト
二代目となって3年余が経過
初代エスティマ(90年発売)は車体中央にエンジンを搭載した革新的なミニバンだった。10年後の2000年1月についに登場した二代目は、一転してオーソドクスなFFレイアウトを採用。先代のワンモーションフォルムを受け継ぎつつ、FFならではの室内の広さ、静粛性の向上、低床化を実現した。発売から3年余が過ぎた2003年5月にマイナーチェンジを受けたが、人気車らしく大掛かりな変更はない。
「アエラス-S」や本革仕様を追加
マイチェンの内容は、フロントバンパーやヘッドランプ、リヤコンビランプなどの外装を小変更、オプティトロンメーターのデザインや内装色変更による質感向上。ただでさえ未来的で斬新なインパネだが、さらにムーディーな仕上がりとなった。
そしてローダウンサスやステアシフトマチックなどを与えたスポーティな「アエラス-S」や本革シート仕様の「G“レザーセレクション”」、ウエルキャブ仕様車を追加。オプションのDVDボイスナビは「G-BOOK」対応になり、後席9型(!)液晶モニターや9スピーカーなどによるシアターシステム、車両前方直下を表示するブラインドコーナーモニターも新設定。2.4リッター車はグリーン税制の減税対象車となった。
ミニバン市場を独占
月販目標台数は6,000台。毎月約1万台という驚異的な台数を2年以上売り抜いたエスティマ。今年に入ってからは6000台前後/月に落ち着いていたが、マイチェン後の6月は9316台と盛り返した。03年上半期(1~6月)のランキングも10位(4万637台)と堂々たるもの。ちなみに3位はウイッシュ(8万4228台)、7位ノア(4万8814台)、9位アルファード(4万4914台)と、現在ミニバンはトヨタの独壇場だ。
価格帯&グレード展開
エンジン2種類、グレード5種類で、229.5~379万円
エンジンは3.0リッターV6と2.4リッター4気筒の2種類。それぞれFFと4WD(プラス24万円)あり。グレードは「J」(229.5万円~)、「X」(249.5万円~)、エアロパーツが付く「アエラス」(269.5万円~)、さらにスポーティな「アエラス-S」(278万円~)、豪華仕様の「G」(293万円~)と5グレード。アエラス-Sは7人乗りだが、他はウエルキャブ仕様を除いて7/8人乗りが選択できる。
基本的にエスティマ「T」がトヨタ店向け、エスティマ「L」がカローラ店向けだが、バッジ以外は共通。
パッケージング&スタイル
アルファードと比べると
全長4780mm×全幅1790mm×全高1770mmと決してコンパクトと言えないボディ。しかし、今やこれくらいがミニバンの主流だ。同じトヨタのアルファードだと、全高がさらに165mmも高くなる。両車はプラットフォームを共有するのでフロア高はほとんど同じ。よってこの数字は室内の天井高の差そのものだ。体感的には3列目の差が大きい。
リアゲートの傾斜が強いエスティマは、室内長もアルファードに比べて少し短い。その分のしわ寄せも3列目と荷室が請け負う。フル乗車でロングドライブに使うなら、やはりアルファードがベターだろう。しかし、ウィッシュではいかにも狭い3列目が、エスティマなら十分広いとも言える。アルファードほどの大型ミニバンが欲しくない場合、ここに魅力を感じる人は多いだろう。
見慣れた現行エスティマだが、初代を意識したモノフォルム、キャブフォワードデザインの完成度は高い。ドアミラー本体からBピラー以降を全てブラックアウトした思い切りの良さは今でも新鮮だ。リアストップランプとインパネのオプティトロンメーターは、今回からLED化された。
両側電動スライドドアはお勧め
今回のマイチェンで設定された「デュアルパワースライドドア」(一部グレードを除き、12万円のオプション)は間違いなく便利だ。電動で左右のスライドドアが開くのはマツダのMPVやホンダ・ラグレイトなども同じだが、その便利さは後戻りできないもの。ドライバーにとって、よく使う右側が電動で開くメリットは大きい。安全面も十分に配慮されている今、右だけ手動にしておく意味は何もない。ちなみにアルファードも7月末に特別仕様車として両側電動スライドドア仕様が追加された。
使えるシート or しまえるシート
エスティマの立派なサードシートは、オデッセイやグランディスのように床下収納は出来ない。荷室を広げる場合は座面をチップアップした後、830mmという前後スライドを使って一番前に寄せる。今回からレバーを追加するなどして操作性を向上させてある。
床下にスマートに収納できた方がいいか、それとも人がちゃんと座れるシートにするかは悩むところだ。アルファードのように「人がちゃんと座れるシートを、サイドに跳ね上げて収納」という方法もある。エスティマはちょうど折衷案のような感じで、その辺りもユーザーのニーズに合うのかもしれない。
基本性能&ドライブフィール
V6と間違えそう
試乗したのは装備充実の「G」の2WD(293万円)。エンジンを掛けるといつも通り静かなアイドリングで、ATのクリープ+αで動く時の滑らかさもトヨタ車ならでは。木目調の豪華な内装もあって「これってひょっとしてV6?」。念のため車検証で2.4リッター「2AZ」エンジンであることを確認。
路上に出てアクセルを踏み込めば、やはりそこは4気筒。静かさや力感は3.0リッターV6に及ばない。しかしそれにしてもよく走る。試乗車の車重は1700kgと重いが、2名乗車で普通に走るだけなら160馬力の2.4リッターでも思ったように加速するし、まったくうるさくない。遮音や制振対策がそうとう入念な感じ。
文句の付けようがない
乗り心地も少なくとも2列目までは快適。昔のワンボックスのようなフワフワとした動きは最新FFミニバンでは過去のものであることがよく分かる。タイヤは静粛性に定評のあるレグノER30。そのせいかロードノイズはまったく気にならない。
ハンドリングを云々するクルマではないが、山道でも普通のセダンに遜色ないペースで走る。2.4リッター車にVSC & TRC(トラクションコントロール)は備わらないが、意地悪な操作をしても不安な動きは一切なかった。V6より鼻先が80kg軽くなるのはいろいろな点でやはり有利だ。とにかく快適性も安定性も、文句の付けようがない。
ここがイイ
いまだ独自性を保つスタイリング。日本のミニバンとしてちょうどいい大きさ(米国向けには小さすぎて輸出されない)。そして便利な両側電動スライドドア。
静かでスムーズなエンジンがもたらす軽快で安定感のある走り。4気筒でもまったく不満がない。広く豪華な室内。斬新さを失っていないインパネ。世界初のフロント直下も見えるブラインドコーナーモニター。
大幅な値引き。諸費用分くらいはチャラになるから250万円前後で幸せが買える。
ここがダメ
セカンド・サードシートの取り外しは結局できないままなので、サードシートはやはり跳ね上げ式にして、収納可能にしてほしかった。床面積が狭いため、大物を積むのは無理だ。
すでに30万台以上! が走っており、個性的なデザインなのに個性的じゃないという状況。であればエスティマハイブリッドの「モバイルオフィス」(658万円)もマイチェンしたことでもあるし、ガソリン車のモバイルオフィスなど、ウェルキャブ以外にも様々な内装バリエーションを安価で出せないものだろうか。
総合評価
床下ミッドシップのレイアウトをとる先代エスティマは、開発時期がバブル期だったことも幸いして、世界にも稀な、豪勢な開発費が投じられたクルマだった。そしてクルマ業界ではある意味、見下された存在であったワンボックス型ワゴンを、ミニバンという国民車へ昇格させた立役者だった。先代エスティマの存在なしに、現在のミニバンブームはあり得ないし、その出来の良さ、走りの良さが、クルマ社会のセダン離れを決定づけたといってもいいだろう。
同じ地上面積のクルマなら、より広いワンボックス型がいいに決まっているが、それによって走りも、格好も、ステイタス感もなかったというのがエスティマ以前のクルマ社会。エスティマはこれらのネガティブをすべてひっくり返したもので、繰り返し書くが、89年のモーターショー登場時の感動は、それはそれは忘れがたいものだった。
さて、先日デイズで使っていたエスティマ(エミーナ・ガソリン車)が事故によって廃車となった。車検10日前のことで、新車からの使用期間はまる9年、走行15万5000㎞の生涯を閉じた。このクルマではエスティマの偉大さを実感した、といってもいい。とにかく丈夫で(メンテナンスは1万キロごとのオイル交換、1回のベルト類交換、ブレーキやタイヤなどの消耗品交換程度で、ATFは無交換、チェーンドライブのためタイミングベルトも交換不要。修理らしい修理はエアコンを一度やっただけ)、内装のヤレもほとんどなく、9年もの間、その上質さは維持され続けた。デイズとしてはもう一度車検を取り、あと数万㎞乗るつもりだったし、同じ年式のエスティマがまだまったく古さを感じさせず走り回っているのもよく見かける。最近は燃費の悪さが気になったが、それ以外に大きな不満はなかったと言ってもいい。そのため事故で動かなくなったことは大変悲しかった。名車に合掌。
二代目エスティマはFFとなってしまったが、スタイリングや上質さは引き継がれており、それが絶好調の販売を支えてきたといってもいい。2001年は年間販売順位が4位、2002年が7位、2003年上半期が10位というダントツの売れ行きは、このクルマが日本人の琴線に触れる何かを持っているということだろう。それはずばり、カタチだと思う。多くのミニバンがいわゆるミニバンルックである中、唯一エスティマはカッコいい独自デザインのエクステリアを持っている。日本人はメカニズムやパッケージングなど理詰めでクルマを選ぶことはない、というのはデイズの持論だが、エスティマに関してはまさにそのとおりだと思われる。同じプラットフォームのアルファードが広いセダンだとすれば、エスティマはいわばハードトップ。ちょっと狭いがカッコいいのだ。この部分が売れ続けている秘密だと思う。
今回のマイナーチェンジは、実質的にはシャコタン走り系(ステアシフトマチックまでついた)モデル「アエラス-S」と豪華革シートバージョンの「G“レザーセレクション”」の追加という意味合いが強い。カッコよくてよく走る、カッコよくて豪華、それらはかつて日本で主流であった4ドアハードトップが行った手法でもある。つまりエスティマは現代のマークIIなのだ。
試乗車スペック
トヨタ エスティマ G
(2.4リッター・2WD・293万円)
●形式:UA-ACR30W●全長4780mm×全幅1790mm×全高1770mm●ホイールベース:2900mm●車重(車検証記載値):1700kg(F:970+R:730)●エンジン型式:2AZ-FE●2362cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●160ps(118kW)/5700rpm、22.5kgm (221Nm)/4000rpm●使用燃料:レギュラーガソリン●10・15モード燃費:11.0km/L●駆動方式:前輪駆動●タイヤ:215/60R16(ブリヂストン製 REGNO ER30)●価格:293万円(試乗車:366.2万円 ※オプション:DVDボイスナビ付きシアターシステム 46.7万円、両側電動スライドドア 12万円、ツインムーンルーフ 10.5万円、音声案内クリアラスソナー 4.0万円)
公式サイトhttp://www.toyota.co.jp/Showroom/All_toyota_lineup/estima/index.html

