新車試乗記 第423回 トヨタ エスティマ ハイブリッド G(7人乗り) Toyota Estima Hybrid G

(2.4L直4+モーター×2・441万円)


日時: 2006年07月15日

     
     
     

    キャラクター&開発コンセプト

    リッター20km/L、EVモードも付いた

    今回の2代目エスティマハイブリッドは、初代ハイブリッド登場から5年経った2006年6月にデビュー。ベースはもちろん半年前に発売された3代目エスティマだが、最も重要なのはハイブリッドシステムが根本から刷新された点だ。

    そのシステムは従来の「THS-C」から、プリウスやハリアー/クルーガーハイブリッド同様の動力配分機構を備えた「THS-II」へとバトンタッチ。前・後モーターとエンジンの強化、ハリアー系ハイブリッドやGS450hで採用したリダクションギア、650Vへの昇圧などによって、リッター20kmもの 10・15モード燃費やハイパワー化を達成。同時に、初代/2代目プリウスにしか無かった「EVモード」(モーター走行)スイッチを付けた。

    バッテリーは前方へ引越し

    従来は車体後部にあったバッテリー(ニッケル水素電池)は小型化され、前席センターコンソール内に移動。これによって現行(3代目)エスティマの特徴であるセカンドキャプテンシートのリムジンモード、サードシートの床下収納を可能とした。生産工場はトヨタ車体・富士松工場で、月間販売目標は700台。

    価格帯&グレード展開

    標準で363万3000円~、充実装備で436万8000円~

    標準グレードの「X」(363万3000円~)、および豪華な「G」(436万8000円~)の2グレード構成。両者の価格差は70万円以上だが、その大半は前後・左右のモニターカメラを含むHDDナビの代金が占める。シート表皮が一般的なファブリック(ダブルラッセル)の「X」に対して、「G」ではアルカンターラとなる点も大きい。レザー仕様はなし。いずれも7人乗りか8人乗り(+4万2000)が選べる。

    パッケージング&スタイル

    見た目の差別化はわずか

    ボディサイズは通常のエスティマとほとんど同じ。外観で目立つ相違点はフロントグリル、フロントバンパー、リアのクリアコンビネーションランプくらい。さらに薄いブルーのヘッドランプレンズや、フロントアンダースポイラーなどもハイブリッド専用だが、一般の人は左右と後ろに貼られたHYBRIDマークを目印にするしかないだろう。GS450hでもそうだったが、差別化はあくまで最小限というのがトヨタの方針だ。

    スープラみたいなコックピット感

    インテリアで目を引くのは、21個のニッケル水素電池を内蔵するセンターコンソールだ。その大きさはちょうど中型のスーツケースくらいあり、よく言えばトヨタ・スープラみたいなコックピット感がある。ミニバンとしてはかなりの圧迫感で、ウォークスルーもこれで100%不可能になった。昔と違って今は左右にスライドドアがあるから、無理して後席へウォークスルーするまでもないのかもしれない。まあ、左右ウォークスルーくらいはできると便利ではあるが。コンソール後ろ側にはAC100V(1500W)のコンセントが付く。

    2列目より後ろはベース車と同じ

    試乗車は7人乗り仕様で、「スーパーリラックスモード」などのシートアレンジはベース車とまったく同じ。先代は床下にバッテリーがあったため、サードシートのアレンジは前後スライドのみだったが、バッテリー移設によって、新型では2列目以降のパッケージングで妥協する必要がなくなった。

    サードシートはもちろんベース車と同じ床下収納が出来る(オプションで電動も選べる)。ラゲッジ右側の壁にもAC100Vコンセント、そして左側の壁には密閉式12Vバッテリー(補器類用)を収納する。

    基本性能&ドライブフィール

    エンジンはアトキンソンサイクル

    5年振りにモデルチェンジした通称「エスハイ」。さすがに、ハイブリッドと言うだけでは目当たらしさも薄まってきたが、始動ボタンを押してもエンジンが動かないのは相変わらず新鮮だ。「READY」の表示を確認してから「D」にシフト、モーターの力でゴロッと転がり、その後エンジンの加勢を得て加速してゆくところはプリウスやハリアー/クルーガーハイブリッド(以下ハリアーハイブリッド)と同種だ。

    通常モデルのエンジン形式が「2AZ-FE」なのに対して、「2AZ-FXE」と呼ばれる 2.4リッター直4は、圧縮比が通常の9.8に対して12.5もあるプリウス同様のアトキンソンサイクル。出力・トルクは通常エンジンより1割以上低いが、燃焼効率に優れるのが特徴だ。

    パワーは先代<新型<ハリアーハイブリッド

    一方で、モーターはリダクションギア付、電源は可変電圧システム(650V)と、エンジンを除いた部分はハリアーハイブリッドに近い。リアモーターもそれからの移植だ。分かりやすくするため、関連モデルのスペックを並べてみると以下のようになる(パワーの低い順)

    ●旧型エスティマハイブリッド
    エンジン(130ps、19.4kg-m)
    前モーター(18ps、11.2kg-m)
    後モーター(24.5ps、11.0kg-m)
    ※2.4リッター直4。システム出力:-
    ●新型エスティマハイブリッド
    エンジン(150ps、19.4kg-m)
    前モーター(143ps、27.5kg-m)
    後モーター(68ps、13.3kg-m)
    ※2.4リッター直4.システム出力:190ps
    ●ハリアー/クルーガーハイブリッド
    エンジン(211ps、29.4kg-m)
    前モーター(167ps、34.0kg-m)
    後モーター(68ps、13.3kg-m)
    ※3.3リッターV6。システム出力:272ps(車速100km/h時)

    3車を比べると、エスハイが新型になってエンジンとフロントモーターを大幅にパワーアップしている一方、エンジンはハリアーハイブリッドほど強力ではないのが分かる。具体的には排気量で約-1リッター、馬力で-61ps、トルクで-10kg-mの差があり、シリンダーも2気筒少ない。

    実際、新型エスハイでは、加速時に直4エンジンの音が高まり、モーターの力で、というより、エンジンの力で加速してゆく感が強くなる。しかし、これはあくまでエスハイのシステムが効率(燃費)を重視している結果だ。むしろパワー特性が過剰な 3.5リッターV6ガソリン車やハリアーハイブリッドより落ち着きがあって、ミニバンという性格に適しているとも言える。

    また、メーカーの発表値を参考にすれば、0→100km/h加速はエスティマ直4・FF車よりやや遅い10.8秒に留まる一方、40→70km/hの追越し加速は逆に0.6秒速く、V6・4WD車の0.2秒遅れまで迫った4.2秒を誇る。つまり出足はそこそこだが、中間加速は速いということだ。

    EVモードは条件を選ぶ

    モーターだけでも走行できるのが、トヨタが誇るシリーズ・パラレル式ハイブリッドの特徴だが、さすがに車重が2トン超もある今回の試乗車では発進の瞬間と減速時以外、それを体感するチャンスは滅多にない。ハイブリッドらしさを感じるのはむしろ減速時で、電車ライクなヒュゥーーン・・・・という回生モードの音がはっきり聞こえて、これがけっこう楽しい。鉄っちゃん(電車マニア)には受けそうな音だ。

    期待の「EVモード」は
    1、徐行に近い低速で、
    2、アクセルの踏み込みが浅く、
    3、バッテリー残量が十分にある時
    以上の条件が揃えば可能だが、路上ではすぐにエンジンが始動してしまう。プリウス以上に作動条件を選ぶと言っていいだろう。深夜、帰宅した時の車庫入れなどには使えるモードだ。

    VDIMで安全マージンを確保

    サスペンションは前ストラット/後トーションビーム、ごく普通のスプリングコイル仕様だが、車重やロングホイールベースもあって、どの席でも乗り心地はいい。交通の流れに乗るだけなら操縦安定性も十分だ。

    少し飛ばすと、さすがにステアリングやブレーキ操作に対する反応が遅れ始め、徹底的に安定サイドの操縦性となる。ワインディングでも同様で、そんな時はもう諦めて大人しく走るしかないのだが、ひょっとするとそれこそがすでにVDIM(ブレーキ、駆動力、電動パワステを統合制御)の介入した結果なのかもしれない。破綻しかけたら何とかするというより、破綻するような速度でコーナーに入らせないという感じだ。

    高速では確実に10km/L以上。一般道では右足次第

    参考までに試乗中の燃費は一般道から高速道路まで約200kmを「遠慮なく」走って約23リッターを消費。満タン法で約8.6km/Lだった。これは車載燃費計の数値ともほぼ同じで、偶然ながら以前クルーガーハイブリッドに試乗した時と同値となった。実質的な最低燃費と言えると思う。

    ちなみに高速ではいろいろな走り方を試してみた。あくまで車載メーターで目視した数字だが、80km/hで定速走行すると15km~18km/L、100km/h定速で18km~24km/L、150km/hでは12km~15km/Lといったところ。ただし加速・減速を繰り返すと数字は一気に落ち、アクセル操作に応じて極端に燃費が上下するタイプと言える。とはいえ高速道路を流れに乗って走れば、間違いなく 10km/L以上、大人しく走れば15km/L、つまり航続距離で約1000kmも可能だ。10・15モードの20.0km/Lは難しそうだが、いずれにしても2トン前後のミニバンとしては抜群の数字と言える。ガソリン高騰のこのご時世、ハリアーハイブリッドと違ってレギュラーガソリンなのもメリットだ。

    ここがイイ

    「パワー」ではなく「燃費」の点で現在最も進んだハイブリッドシステムになっている。ミニバンなのにこの走り、この燃費なら、大満足。また、思い切ったバッテリーの移設も正解。スーパーリラックスモードなど、ベース車のせっかくの機能を潰してしまっては、ハイブリッド車と言えどモデルチェンジの意味は半減してしまったはずだ。

    最近のトヨタミニバンらしく、サイドリフトアップシート車がパッケージオプションとして設定されていること。消費税が非課税となり、標準車との差は「X」グレードで9万5000円、「G」グレードでは6万円でしかない。老人のいる家庭では今後マストなアイテムになるだろう。

    G-BOOK ALPHA対応車種のため、5月から始まった永年無料、申し込み不要のフリーサービスが使えること。ブルートゥース対応の携帯電話である必要があるが、最近アダプターが安くなっているのは朗報。こうなると「リモートイモビライザー」などにも早く対応してもらいたい。携帯電話でドアキーが操作できるようになるからだ。このようにトヨタはキャリアの違う携帯電話とクルマをつなぐ事をかなり真剣に考え始めているようだ。

    ここがダメ

    ブルー基調のハイブリッド専用メーターが見にくい。特にセンターメーター左の瞬間燃費計は、走行中にほとんど目に入らない位置でまったく意味がない。また、センターメーター右にある「ガソリンが今何に使われているか」を示すエネルギーメーター(走行系、空調系、電気系の3つバーグラフが並ぶ)も意図は分かるが、直感的に理解しにくい。

    まだまだ高価。単純に7人乗りの「G」で比較すると75万6000円高い。いろいろな計算方法があると思うが、一例として月1000km走るとするなら、ガソリン代では8年で元が取れるという計算が可能だ。3年程度で元が引け、あとはバイブリッドの方が有利となれば、売れ方は大きく変わるはず。40万円のコストダウンは、いつできるだろうか。

    総合評価

    フルチェンジごとに、どんどん目に見えて進化していくハイブリッドカー。エスティマを見ていると、ハイブリッドとトヨタが世界の覇者になるように思えてくる。実際、ルノー日産とGMが合体するようなことになれば、名目世界一はルノーGMとなり、トヨタはGM(米国社会のBuy American 的なもの)に気兼ねすることなく、実質単独世界一を目指すことができるわけだ。エスティマ・ハイブリッドは北米には輸出されないが、もし輸出されれば北米向けのパーソナル「エコ」モービルになりえるだろう。プリウスは欲しいが小さすぎて、という人には相当ウケるはずだ。特にキャプテンシート仕様なら、ミニバンとしての絶対的なボディサイズが北米では小さくとも、セダンと比較すれば室内は大柄な米国人でも満足できる広さなのだから。何よりプリウスで成功したハイブリッドに対する好印象は強力だ。エスティマ・ハイブリッドはトヨタの世界戦略車になりえると思う。

    トヨタは2010年代の早い時期までにハイブリッドの車種を倍増させるという(現行7車種を 14車種くらいに)。台数的には100万台が早期達成目標だ。さらにプラグ・イン・ハイブリッドカー(外部からの充電と外部への電力供給が可能なハイブリッドカー)を早期に出したいともいう。これは家庭用電源で充電でき、その結果EVモードでの走行距離が伸ばせるというものだ。電気自動車が実質的に量産不可能でも、ハイブリッドをさらに電気自動車に近づける事はできるわけで、プラグ・イン・ハイブリッドカーへの期待は大きい。またすでにプリウス+トヨタ住宅の実験棟「PAPI」で実現させたシステム、すなわち災害時にクルマに発電機の役目をさせ、停電した住宅に電気を供給するというものも、内燃機関を持つハイブリッド車だからできる仕組みで、電気自動車では無理なのだ。最初のハイブリッドカー登場から早くも10年が過ぎようとしているが、その当時の夢や希望はどんどん現実のものになっている。モデルチェンジごとに確実に進化していくのは、最近の完成型ガソリン車にはない楽しさだ。

    しかしハイブリッドがエコの唯一の方法ではない。ガソリンにバイオ・エタノールを混ぜることは今や世界的傾向。トヨタはエタノール100%対応フレックス・フューエル・ヴィークル(FFV)を07年春にブラジルに投入するらしいが、現在でもすでにすべてのトヨタ車で3%までの混合率なら問題ないとしている。また10%までなら技術的対応を終えているというほどで、決してエネルギーと環境問題への対応はハイブリッドだけ、とは位置づけていない。ただ、ディーゼルはコストが高いとして積極性を見せてはいない。実際、欧州へは独自のディーゼルモデルを投入するようだが、日本国内への計画はない。ハイブリッドとバイオエタノールでディーゼルを駆逐するのが、当面のトヨタの方針のようだ。

    そのハイブリッドシステムの課題は、リチウムイオン電池のコンパクト化や大量生産によるコストの削減だ。特に大量生産に関しては、他メーカーがトヨタのシステムを導入すればいいのだが、いまだそれは実現していない。ポルシェのハイブリッドスポーツカーの話はそれっきりだし、GMとの提携問題で日産への供給も止まりかねない。ハイブリッドに関するトヨタの独走は、反面、ハイブリッドの世界的普及を遅らせているともいえるかもしれない。聞けばハイブリッドシステムの特許のかなりの部分をトヨタは押さえているらしい。トヨタのいう「サステイナブル・モビリティ(継続可能な自動車社会)」のための環境保全技術が「サステイナブル・トヨタ」だけになって欲しくはないところだ。

    以前にも書いたと思うが、70年代には「排気ガスや石油資源の枯渇によって21世紀にはクルマは乗れなくなるだろう、だから今乗れている間は、できるだけ環境と資源に優しい小型車や軽自動車に乗るべき」という意識が個人的にはあった。「サステイナブル・モビリティ」という言葉こそ無かったが、考え方としては当時すでに意識していたわけだ。幸いにも今はまだ難なくクルマに乗れているが、今後もずっと愛すべきクルマに乗り続けていきたいのであれば、このサステイナブル・モビリティは誰もが考えなくてはならない重要案件のはず。あの頃の軽でも元気よく走れば10km/Lか、良くて13km/Lほどしか走らなかったと思うが、その意味でエスティマ・ハイブリッドが10km/Lで走るという事実は、サステイナブル・モビリティの実践として素晴らしい成果だ。そしてこうした考えでクルマを開発しているかどうかが、自動車メーカーの今後を占うはず。ルノーGMは果たして。

    試乗車スペック
    トヨタ エスティマ ハイブリッド G(7人乗り)
    (2.4L直4+モーター×2・441万円)

    ●形式:DAA-AHR20W-GFXQB●全長4800mm×全幅1800mm×全高1760mm●ホイールベース:2950mm●車重(車検証記載値):2040kg(F:1130+910)※オプション装着時●乗車定員:7名●エンジン型式:2AZ-FXE●2362cc・直列4気筒・DOHC・ 4バルブ・横置●150ps(110kW)/6000rpm、19.4kg-m (190Nm)/4000rpm●カム駆動:タイミングチェーン●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/65L●フロントモーター形式:2JM●交流同期電動機●143ps(105kW)/4500rpm、27.5kg-m(270Nm)/0~1500rpm●リアモーター形式:2FM●交流同期電動機 ●68ps(50kW)/4610~5120rpm、13.3kg-m(130Nm)/0~610rpm●バッテリー:ニッケル水素電池●10・15モード燃費:20.0km/L●駆動方式:電気式4WD(E-Four)●タイヤ:215/60R17(TOYO TRANPATH J48)●試乗車価格:501万5850円(含むオプション:大型ムーンルーフ 8万9250円、音声案内クリアランスソナー 4万2000円、電動サードシート 13万7550円、SRSサイド/ニー/カーテンシールドエアバッグ 8万1900円、パノラミックスーパーライブサウンドシステム+後席9型ワイドディスプレイ 17万2200円、G-BOOK ALPHA 専用DCM 6万8250円、ETCユニット 1万4700円)●試乗距離:約200km ●試乗日:2006年7月

    公式サイト http://toyota.jp/estimahybrid/

     
       
       
       
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