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日産 フェアレディZ バージョン ST新車試乗記(第547回)

Nissan Fairlady Z Version ST

(3.7リッターV6・6MT・435万7500円)

Z33を熟成進化!
ニッポンのスポーツカー、
Z34が自動車不況を救う!?

2009年02月27日

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キャラクター&開発コンセプト

ホイールベースを100mm短縮。エンジン&変速機もアップデート

初代「S30」型(1969年)の登場から約40年。累計170万台を誇る「フェアレディZ」(海外ではシリーズを総称して「Z-car」)が2008年12月1日、6代目「Z34」型にフルモデルチェンジした。

コンセプトは先代Z33型(2002年)を受け継ぐが、プラットフォームはV36型スカイラインクーペをベースに一新。先代よりホイールベースを100mm(スカイラインクーペより300mm)短縮して、スポーツカーらしい運動性能とスタイルを追求している。

エンジンは従来の3.5リッターV6(VQ35DE、モデル末期は改良型のVQ35HR)から、現行V36型スカイラインクーペ譲りのVQ37VHRに変更。変速機はマニュアルで世界初となるシンクロレブコントロール付きの6速MT(愛知機械製)および7速AT(ジヤトコ製)を採用。7速ATは海外向けインフィニティFX50に続くもので、日産ブランド車では初となる。

国内目標は月間500台

「縮小傾向にあるスペシャリティカー市場」(日産リリース)を反映して、国内の販売目標は月間500台。広告キャッチフレーズは「クルマは、人がつくる。」。テレビCMは2003年に「現代の名工」に選ばれた日産・車両実験部のテストドライバー、加藤博義氏にスポットを当てたものだ。

北米では2009年1月に発売され、追って欧州など全世界で販売される。海外での車名はもちろん「Nissan 370Z」だ。世界同時不況の最中となり、新型Zにとっては逆風下での船出となった。

日産自動車>プレスリリース>新型フェアレディZを発売(2008年12月1日) http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2008/_STORY/081201-01-j.html

価格帯&グレード展開

362万2500円からスタート

ラインナップは従来同様、ベースグレード(6MTと7AT)、装備充実の「バージョンT」(7ATのみ)、スポーツ性重視の「バージョンS」(6MTのみ)、全部のせの「バージョンST」(6MTと7AT)の4グレード。

カーウイングスHDDナビは全車メーカーオプションとなる。また、「バージョンT」と「バージョンST」はBOSEサウンドシステムを標準装備するが、ベースグレードと「バージョンS」ではオーディオもオプション(販売店装着)となる。

■フェアレディZ          362万2500円(6MT) / 372万7500円(7AT)
■フェアレディZ Version T    399万円(7AT)
■フェアレディZ Version S    409万5000円(6MT)
フェアレディZ Version ST   435万7500円(6MT) / 446万2500円(7AT)  
★今週の試乗車

なお、先代には1年遅れで追加された「ロードスター」は、おそらく新型でも同じようなタイミングで追加されるはず。北米では先代ロードスターがしばらく併売されるようだ。

一番人気は「バージョンST」(7AT)の白、カーウイングス付


「Z」と言えば、初代S30のテーマカラーだったオレンジが印象的だが、新型には「プレミアム アルティメイト イエロー」なる黄色を用意

発売2週間後の12月15日に発表された受注累計は1051台。初期受注なのであくまで参考だが、グレードの一番人気は最上級の「バージョンST」(50%)。またボディカラー(全8色)はブリリアントホワイトパール(28%)、ダイヤモンドブラック(20%)、ブレードシルバー(20%)の順だ。ミッションはやはり7ATが68%と多数を占めるが、6MTも32%と頑張っている。HDDナビの装着率は8割以上とのことだ。今後は一般的なパターンとして、ベースグレードや7ATの比率がもっと上がってくるだろう。

購入年齢層は40~49歳が32%、50~59歳が26%、30~39歳が17%と、やはり40~50代が中心となっている。60歳以上も15%いる。

日産自動車>プレスリリース>新型フェアレディZ受注状況(2008年12月15日) http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2008/_STORY/081215-01-j.html

パッケージング&スタイル

ホイールベースを100mmカット!

ボディサイズ(先代Z33比)は、全長4250mm(-65)×全幅1845mm(+30)×全高1315mm(同)。ホイールベースは2550mm(-100)。一にも二にもボディが大きくなるこのご時世で、何はともあれホイールベースを100mm縮めたのがスゴイところ。社内外から「どうしてそこまで?」という声があったはずだが、それでも断行したのはやはり運動性能の向上が第一のようだ。

その結果として先代のGT的なスタイリングから、S30以来とも言える?正統FRスポーツらしい「ショートデッキ」が復活。横から見た時の乗員と後輪の近さに注目したい。

911ターボに迫る?ワイドフェンダー。ブーメラン型ライトが「踏み石」?

リアフェンダーの張り出しはかなりアグレッシブで、ポルシェ911ターボもかくや、という感じ。開発者によると「ドアミラーを見たときにリアフェンダーがしっかり見えるようにしたかった」とのこと。サイド面の抑揚が激しくなったことで、先代よりもさらに凝縮感が出た。出るところが出て、引っ込むところが引っ込んだわけだ。

この中で唯一好みが分かれるのが、ブーメラン型のヘッドライトとリアコンビランプか。これはスタイリング全体を引き締めるべく、書道でいう「とめ、はね、はらい」でもあるらしい。とはいえ、2日間ほど実車に接しているうちに、最初の違和感はほとんどなくなった。真正面からだと、プロジェクターランプが初代S30の丸目風に見えてくる。

 

インテリア&ラゲッジスペース

「質感が低い」なんてもう言わせない

インテリアの質感は大幅に向上。先代では大きな課題だった部分で、マイナーチェンジでもかなり改良されてはいたが、新型ではついに400万円前後のスポーツカーとして誰もが納得できるレベルとなった。適材適所で素材を使い分けて、上質感と「Zらしさ」のある硬派な雰囲気を実現している。このクラスで随一の質感を誇るアウディTTにも見劣りしないと思う。

 

素材面で特にアピールされるのが、Zで初めて採用される新開発の合成皮革「ソフィレス」。センタークラスター(シフトノブの周辺)を覆い、ダブルステッチで仕上げてあるが、施工はなんと手作業だという。

 

毛足が短かくフェルト状のスエード調クロス、その名も「フォルトスエード」をドアアームレストや本革シート表皮の一部に使用。また先代では本アルミを使用しながら、アルミっぽく見えずに損をしていたインナードアノブは、樹脂+塗装に変更。見た目も操作感も決して悪くない。

インテリジェントキー&プッシュスターターをZでは初めて採用。スターターはステアリング右側にあったスカイラインクーペとは異なり、レクサスと同じ左側だ。

 

ダッシュ中央の三連サブメーターは「Z」のお約束。左からデジタル時計、バッテリー電圧計(状況によってけっこう上下する)、油温計(従来は油圧計だった)。特に油温計は70~150度Cまで目盛りを細かく刻んだもので、かなり正確そう。試乗中(渋滞時など)は一時100度Cくらいに達した。スポーツカー好きには嬉しい装備だ。

2人乗りだが、実用性もよく考えられている

シート高は手動だが、ダイアルが前後に2つあり、角度の調整が可能。先代より着座位置は10mm下がっている。ステアリングにテレスコ(伸縮調整)はないが、チルト(上下調整)は可能。先代やスカイライン系と同様にメータークラスターごと動くものだ。これらの調整機構によってドライビングポジションはおおむね好み通りになるが、身長160センチ台以下ならもう少し視点を高くして見晴らしをよくしたいと思うだろう。良くも悪くも、少し埋もれる感じがある。

 

試乗した「バージョンST」(およびバージョンT)は、運転席・助手席ともに電動スライド&リクライニングが可能。先代同様、スイッチは座面のセンターコンソール側にあるため、運転席からでも助手席のシート位置が調整できる。これはなかなか便利だ。

 

また背もたれの後ろには手荷物が置ける棚がある。先代にあったフタ付きよりも使いやすい。純粋な2シーターの場合、助手席に人を乗せた時はここが貴重な手荷物スペースとなるため、日常性という点では割と重要な部分だ。

衝突安全装備も充実。2シーターにしてエアバッグはフロント2個、腰部や胸部を守るサイド2個、頭部を守るカーテンシールド2個と計6個。むち打ち対策用のアクティブヘッドレストも全車標準となるなど、高級車に遜色ない。

タワーバーを廃して、荷室も進化。

ラゲッジ容量は先代と同じ235Lだが、使いやすさは大幅に向上している。先代ではサスペンション頭頂部を結ぶ極太アーチ状のストラットタワーバーがラゲッジルームのド真ん中を走っていたが、これを廃止。これよって先代でも何とか積めたらしいゴルフバッグ2個を、新型では楽に収納できるようになった。1個は荷室手前に横倒しして積み、もう一つは対角線上に積むと、うまく収まるようだ。このあたりは同じFRスポーツでも実用的な積載スペースを持つシボレー・コルベットに対抗したものか。なおリアゲートはちゃんと後ろからでもリクエストスイッチで開けることができる。

一方、ボディ剛性はモノコック開口部周辺を補強することで確保したという。乗員の背もたれ背後にあるアルミ製バーは主に側面衝突対策用で、ボディ剛性にはあまり関係ないようだ。

ベースグレード以外はスペアタイヤレスとなり、床下にはパンク修理キットや工具が収まる(ジャッキはない)。また「バージョンST」と「バージョンT」は、BOSEサウンドシステムを標準装備するため、巨大なサブウーファーも収まる(写真)。先代の場合、このサブウーファーは運転席の背後にあった。

基本性能&ドライブフィール

V36クーペ譲りのVQ37VHR。PWRは4.5kg/ps!

試乗したのは「バージョンST」の6MT。適度に踏みごたえのあるクラッチペダルを踏み込み、スタートボタンを軽くプッシュ。するとタコメーター、スピードメーター、三連メーターの針がブゥーンと振り切れながら、「ギュルギュルギュル」と重々しくスターターが回り、「ゴワン」と無骨にエンジンが掛かる。スカイラインクーペよりエンジンからの透過音は明らかに大きい。停止したままアクセルを煽っても、スロットル制御が入るためドローンとしか吹け上がらない。

エンジンは現行V36型スカイラインクーペ譲りの3.7リッターV6で、「VVEL」(ブイベル=バルブ作動角・リフト量連動可変システム)付の「VQ37VHR」。排気系などの関係で、V36クーペ比で3ps増しの336ps/7000rpm、0.2kgm増しの37.2kgm/5200rpmを発揮する。スペック的には3.4リッターのポルシェ・ケイマンS(320ps、37.7kgm)か、3.6リッターの昨年までの911カレラ(直噴化される前の997型前期、325ps、37.7kgm)に匹敵するもの。ポルシェの印象からすると、そうとう刺激的なものが想像される。パワーウエイトレシオも911並みの4.5kg/psと、ついに5kg/psを切った。

しかし実際に走り出してみると、スペックが期待させるほどエンジンはレスポンシブではなく、印象はすいぶん重々しい。1速、2速とトラクションコントロールの介入を受けながら、3速にシフトアップ。季節柄タイヤも路面もかなり冷えており、2速でも加速中にトラクションコントロールのランプが一瞬光るが、意外にも「ものすごく速い」感はない。高回転でも鋭さを増さず、トルクで押し切るような回り方が一因だろうか。

4000回転から5000回転あたりでは水平対向6気筒を思わせる野太い音が響き、このあたりのサウンドチューニングはポルシェを研究した感がある。一方、高回転はVQ独特の「ザァーーン」というサウンドで、突き抜けるような音の高まりがない。軽快感なら従来のVQ35DEの方があったような気がする。

一般道では原則VDCオン

そこでつい手を伸ばしてしまうのがVDCのオフスイッチだ。走行中でも押せるように、ステアリングのすぐ右手にあるのが日産らしい。VDCオフでもブレーキ制御は残るらしいので、実質的にはトラクションコントロールオフか。

重々しいエンジン特性は変わらないが、油断は禁物。さっきまでセーブされていたパワーが野放しになるため、いとも簡単にトラクションを失う。エンジン特性ゆえかシャシー特性ゆえか、慣れるまでリアタイヤの状況が分かりにくいので、特に後輪駆動車に慣れていない人は(そして慣れている人も)、VDCオフモードはまずサーキットで試したいところ。限界が高い分、万一ブレークすると厄介だ。一般道では原則VDCオン。それが一番安全で、なおかつ安心して性能を発揮できる。

MT初のシンクロレブコントロール。下手な人でも上手く、上手い人はそれなりに

マニュアル車で世界初のシンクロレブコントロールは、シフトノブ横のスイッチを押せば作動オン。そうするとMTでもメーター内に表示されるシフトポジションの横に「S」の表示が出る。

その実力はシフトをわざとゆっくりやるとよく分かる。例えば3速から2速にシフトダウンする場合、クラッチを切ったまま1速-2速の間のニュートラルで止めると、車両側はその時の車速と2速のギアリングにちょうど合う回転数をピタリと保持。あとはそのまま2速に入れてクラッチをつなぐだけ。もちろんシフトショックは皆無だ。

ではそこから2速を飛ばして1速にシフトダウンしたらどうなるか? 1速方向にシフトレバーを押し出した瞬間、やはり回転を合わせてスムーズにシフトダウンが完了する。シフトアップも同じだ。やはりギアをエンゲージする直前に、次のギアと車速にあった回転数を保持する。

マニュアル車に乗り慣れた人がこれに乗ると、無意識に自分でアクセルを煽って回転を合わせてしまうので、最初はあまり有り難みが感じられない。しかしおそらくサーキットでは、ステアリング操作やブレーキング操作に専念できる分、有利だろう。もちろんATでもDSGでもないから、シフトダウン時のオーバーレブには注意が必要だ。

6MT自体のシフトフィーリングはストロークも短く、剛性感があり、ゲート感覚も明瞭。操作力は重めだが、シフトミスはまずない。バックは真下に押し込んで右下だ。

乗り心地良し。小回りも効く


フロントフェンダーの「Z」エンブレムは、ウインカーを兼用

サスペンションは先代とほぼ同じフロント:ダブルウィッシュボーン、リア:マルチリンク。それなりに硬めの足で、筋骨隆々、いかにもスポーツカーという剛性感が味わえるが、乗り心地は悪くない。ショックアブソーバーはデュアルフローパス、リバウンドスプリング、高応答リップルコントロールを採用したものだ。

速度感応式の油圧パワステは据え切りで重めだが、最小回転半径は19インチ仕様で5.2メートル、18インチなら5.0メートルとびっくりするほど小回りが効く。左後方の視界が悪い点と、視点が低くて見晴らしが良くない点を除けば、街中でもかなり運転しやすいクルマと言える。

またスポーツカーにしてはバンパーオーバーハング部の地上高がけっこうあるので、コンビニやガソリンスタンドの段差、クルマ止めにも気を使わずに済むのがありがたい。

クイックな身のこなし。徹底した軽量化

ワインディングでは、重いV6が載っているとは思えないほどノーズが軽く、アンダーな感じは一切ない。ショートホイールベースのFRスポーツらしい、クイックな旋回性が味わえる。ちなみに「バージョンST」と「バージョンS」のタイヤはフロントに245/40R19、リア275/35R19の超極太・超偏平。アルミホイールはレイズ製の鍛造で、フロントが19×9J、リアが19×10Jの超ワイドだ(18インチはエンケイ製の鋳造)。そして7ATも含めて全車にビスカス式のLSDが標準となる。

車重はスカイライン・クーペより150kg近く軽く、先代と同等の1520kg。エンジン排気量や安全装備の増加などを考えると、これはそうとう軽い。ホイールベースの短縮や補強の最適化、高張力鋼板の使用率アップなども効いているようだが、分かりやすいところではやはり材料置換だろう。先代でもすでにボンネット外板やサスペンションアーム&メンバーの一部がアルミ製だったが、新型ではさらにボンネット内側、ドアパネル、リアハッチゲートもアルミ化されている。材料が高騰傾向にある昨今、この価格帯でここまでアルミをふんだんに使ったクルマはそうそうない。ちなみに600万~800万円台のポルシェ・ケイマンでも、ドアやリアゲートはスチール製だ。

コントロールしやすいブレーキ(しかも汚れない)

「バージョンST」と「バージョンS」用のブレーキは、先代のブレンボに代えて、曙(あけぼの)ブレーキ社製の4輪アルミキャリパー対向ピストンブレーキ(フロント4ポッド、リア2ポッド)を採用している。これは踏んだ瞬間にキュッと制動力が立ち上がるタイプではなく、踏力に応じてリニアに制動力が増すタイプだ。ブレーキング時の姿勢も非常に安定しており、FR車にありがちなノーズダイブやリアの接地性減少を意識することはまずない。効きそのものも十分で、少なくともブレンボに未練を感じさせるものではない。

このブレーキ、それ以上に嬉しいのがブレーキダストの発生が少ないこと。この手の高性能車では、国産車でもホイールが汚れてしまうことが多く、輸入車ならおしなべて真っ黒になる。曙ブレーキの採用についてはコストのほか、「ブレンボは確かにアウトバーンやサーキットのような超高速域での性能はいいが、ダストやブレーキ鳴きに関してはなかなか対応してくれない」という事情もあったようだ。なお曙ブレーキは2007年からF1のマクラーレンチームにブレーキを供給している。

高速で流すのも楽しい。試乗燃費は5.9km/L

高速道路ではV36型スカイラインクーペにも通じるフラットライド感が味わえる。クーペほど乗り心地はスムーズではないが、Zのキャラクターにはちょうどいい骨太感がある。状況さえ許せば、メーター上限でもリラックスしたまま巡航できそうだが、どちらかといえば法定速度+αくらいでユルユル流すのが楽しい。100km/h巡航はオーバードライブ的な6速トップで約2200回転ほど。5速、3000回転くらいで走った方がトルク感があって楽しい。

今回は一般道から高速まで約240kmを試乗。参考までに試乗燃費は5.9km/Lだった。もちろん高速道路で淡々と流せば2ケタ台も可能だろう。過去に10・15モード燃費が同等のスカイラインクーペ370GT(5AT)に試乗した時は、東京・名古屋間で11km/L台をマークしている。ちなみにバージョンST・6MTの10・15モード燃費は9.5km/L、7ATは9.4km/L。その他のグレード(6MTと7AT)は9.8km/L。7ATでも燃費はかなり優秀だ。

指定燃料はプレミアムガソリン。ショートホイールベース化によって新設計された燃料タンクは先代の80Lから8L減って72Lとなっている。

ここがイイ

スタイル、軽量化、日常性、快適性、価格、内装

スタイリング。やはりFRスポーツカーはロングノーズ、ショートデッキが美しい。ショートホイールベース化したこともカッコよさに貢献している。S30へのリスペクトもあり、その意味ではポルシェ911やフィアット500にも近い復古型モデルチェンジだ。

軽量化。重くなるのが当たり前の昨今、一生懸命、軽くしていることは素晴らしい。スポーツカーは軽いことが何より。こうなるとドライバーもがんばって減量したいものだ。

日常性。軽く流すくらいで走ると、気持ちいいこと。ポルシェ911もそうだが、いつ何どきも気持ちいいことがスポーツカーを駆って、うれしいことだと思う。パワーは相当あるのだけど、それをあまり感じさせず、あくまで手の上で(自分の能力で)、動かしている感じがある。硬いけれど突き上げがない乗り心地も快適な部類。

価格。Zの伝統にのっとり、本格FRスポーツカーとしては圧倒的に安いこと。高性能やFRを中産階級に開放し、夢ではなく「目標」になっている。また今でも十分カッコいい旧モデル(Z33)が型落ちとなって、ますます手に入れやすくなるはず。

内装と装備。コクピット(懐かしい言い方だ)のデザインは古典的だが、その上質さはケイマン以上。手に触れる部分の感触はどこも心地よい。日産のインテリアは一時期コストダウンが気になったが、今回のZは大丈夫だ。プッシュボタンスターターも今風。平均燃費のわかる車両情報ディスプレイもちゃんとあるし、収納スペースやラゲッジ容量も増えている。ブルートゥース携帯がすぐにつながったHDDナビを含めて、各所の使い勝手がとてもいい。

ここがダメ

エンジンのピックアップ、シートのホールド性、音関係

パワーはあるが、打っても響かないエンジン。タコメーターの針が踊ることこそスポーツカー、と思って乗ると、ちょっとがっかり。シンクロレブコントロールやVDCの絡みがあるのかもしれないが、もう少し何とかして欲しかったところ。アクセルとエンジンが直結していない感覚がついて回る。この抑制感はVDCを切ると少し改善され、ステアリングまでが軽くなり、回頭性すらよくなるような気がする。

シートのホールド性。北米向けに大柄なシートとなっており、小柄な人の場合はサイドサポートがかなり甘い。その対策として、シートは上級グレードでもフルレザーではなく、スエード調クロスとのコンビになっているが、Zのコーナリング性能に対しては役不足。センターコンソールのニーパッドもちょっと遠い。このあたりも含めて、リアルスポーツというよりGT的な性格であることを理解すべき。

クラッチを切って駆動力の伝達が途切れた時に駆動系から出る、かすかではあるが「パタン」という音。特に渋滞時のストップ&ゴーではクラッチを踏み込む度にパタン、パタンとけっこう気になる。またエンジンノイズもロードノイズもかなりうるさいという意味では、快適なGTカーではない。そのあたり、もうちょっとどちらかへ振ってもよかったのでは。

総合評価

GT-RもZも、911もケイマンも全部欲しい

好きなことを仕事にする。それは理想の生き方かもしれないが、好きゆえにうまくいかなくなったときには、冷静な判断を失い、迷走しがちになる。それゆえクルマ好きはクルマを仕事にしない方がいいかもしれない。冷徹に商品として売れるか売れないかを判断する前に、いいものは売れる、いや売れないと、と思ってしまう。クルマ好きとして知られる日産のゴーン社長は先代Zを残したとき、はたして冷徹なビジネス判断のみで決断したのだろうか。そして、どういう計算の元にスカイラインクーペ、GT-R、Zといった怒濤のスポーツカー攻勢により、日産をまるでスポーツカーメーカーのような今の姿にしたのだろうか……。

新型Zはクルマ好きのハートにビンビンくるマシンだ。日本的なハイテク感のあるGT-Rに対して、グローバルな古典的カッコよさで迫るZ。お金があったら、どっちも欲しいと思う。いや、こうなるとポルシェ911もケイマンも全部欲しくなってくる。儲かる職業につき、とっかえひっかえ買い換え、仕事の合間にスポーツカーに乗る、それがクルマ好きの理想だろう。そんな人にとって、昨今の新型車攻勢はたまらないものがあるのでは。

しかしながらそんな人は多くはないので、Zは普通の人に買ってもらわないといけない。価格はけして高くないと思う。株価が右肩へ上がっていくような状況があるなら、どんどん売れるはずだ。しかし今は……。

このコストパフォーマンスは享受すべき

いや、否定的なことを考えるのはもうよそう。我々はクルマが好きだ。もちろんカッコいいスポーツカーが好きだ。Zはもう誰が見ても、明らかにカッコいい。しかも安い。開発陣の仮想敵はポルシェ・ケイマンで、北米などでは価格的にもぶつかるはずだが、こと日本においてはZが圧倒的に安い。素のケイマンは5速MTで633万円、Zの場合は6MTで362万2500円。GT-Rと同じく、似たような性能がほぼ半値だ。しかもこれだけ安いのに、GT-RもZも乗っていて輸入スポーツカーに何ら引け目を感じることはない。そしていつも書くことだが、購入価格から売却価格を引いて所有期間で割った月当たりの「値落ち」は、この不況ゆえケイマンの方が圧倒的に大きいはず。このコストパフォーマンスは享受すべきだろう。

ゴーン社長がクルマ好きだったがために、今こうしてZがここにある。我々としてはクルマが好きでこういう仕事をしているから、Zにも試乗でき、その素晴らしい性能を堪能できた。あとは一生懸命クルマのよさをアピールして、それでもってお金を稼いで、Zを買いたいもの。とにかく最近の不況とクルマの衰退を同一視するのは、まずよそうと思う。たまたま今回はシンクロしてしまったが、クルマは衰退しつつも、商品そのものはどんどん魅力的になってきている。最近はそれぞれが本当に様々な工夫を凝らし、個性的で独自の商品となってきている。さらに、進化するテクノロジーがより多くの人に快適かつ安全にクルマを楽しませてくれる。資本主義である限り、不況はいずれ終わる。人類が生きている限り、エネルギー問題も環境問題もいずれは解決され、バラ色とまでは行かないがせめてこれまでくらいの自動車生活は今後も保たれるはずと信じたい。いや、信じよう。

クルマを買うことで景気は上向く

お金が少しある人は世の風潮に流されず、積極的にZを買って欲しい。リアルスポーツじゃないかもしれないけど、日常性はピカイチ。なんならもっと尖ったスポーツカーをさらにもう一台買えばいい。そうしてクルマを買うことで、景気は上向いていくはず。北米と違い、日本の場合は皆が消費をすることで、何とかなるはずだ。外需はしばらくダメなので、内需を大きくするしかないだろう。定額給付金で1万円ほどもらったって、皆使いはしない。だったらクルマを買う人に補助金を出せばいい。取得税や消費税など購入時の税金を一時的に撤廃すればいい。一部の都市部を除き、日本は基本的にクルマなしでは生活できないのだから、クルマはいずれ必ず買い換えられる。ならば、より安全性や環境性能の高い新型モデルに早く買い換えさせる政策を実行すべきだ。クルマという基幹産業を助けなくては日本は沈没する。派遣労働者を再雇用できる社会にするには、クルマ産業復活しかないと思う。バイ・アメリカン(Buy American)に対抗するわけではないが、バイ・ジャパニーズ、バイ・ニッサンで内需拡大だ。がんばれ日産。

試乗車スペック
日産 フェアレディZ バージョン ST
(3.7リッターV6・6MT・435万7500円)

●初年度登録:2008年12月●形式:CBA-Z34 ●全長4250mm×全幅1845mm×全高1315mm ●ホイールベース:2550mm ●最小回転半径:5.2m ●車重(車検証記載値):1520kg( 830+690 )●乗車定員:2名●エンジン型式:VQ37VHR ● 3696cc・V型6気筒・DOHC・4バルブ・縦置 ●ボア×ストローク:95.5×86.0mm ●圧縮比:11.0 ● 336ps(247kW)/ 7000rpm、37.2kgm (365Nm)/ 5200rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/72L ●10・15モード燃費:9.5km/L ●JC08モード燃費:-km/L ●駆動方式:後輪駆動(FR) ●サスペンション形式:前 ダブルウィッシュボーン/後 マルチリンク ●タイヤ:F 245/40R19 / R 275/35R19( Bridgestone Potenza RE050A )●試乗車価格:473万2350円( 含むオプション:カーウイングス HDDナビゲーションシステム+ETC 32万2350円、バックビューモニター 5万2500円 )●試乗距離:240km ●試乗日:2009年2月 ●車両協力:日産プリンス名古屋販売株式会社

 
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