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日産 フェアレディZ バージョンT新車試乗記(第234回)

Nissan Fairlady Z Version T

2002年09月07日

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キャラクター&開発コンセプト

新型はエンジン・シャーシともに基本は現行スカイライン

2002年7月30日に発売された4代目フェアレディ、新型「Z33」のエンジンはエルグランドやスカイライン350GT-8と基本的に同じVQ35DE。プラットフォームは現行(V35型)スカイラインのホイールベース短縮版となる。販売価格は300~360万円に抑えつつ、日産によれば利益的にも日産に大きく貢献するモデルという。カルロス・ゴーンCEOは某誌で「Zの利益率は他車より高い」と山口京一氏のインタビューに率直に答えている。身を削るような商品は必要ない、と。

発売後1年の販売目標は「グローバル」、つまり北米(8月20日発売)と日本を合わせて年間4万2000台。新聞報道によると発売後1ヶ月の受注台数は国内が約5000台、北米が約8000台と、およそ4:6の比率となる。

初代S30は日米両国で愛されて大ヒット


初代フェアレディZ(S30型)。写真は1971年に登場した「240Z-G」
(photo:日産)

1969年発売の初代Z(S30)は主にアメリカをターゲットにして誕生したスポーツカー。低価格で高性能な「ダットサン240Z」(アメリカ名)は目論見どおり北米で大ヒット。以後、「Z」はS130(1978年)、Z31(1983年)とモデルチェンジ。排ガス規制もあり、次第にGTカー的なマイルドな性格を強めた。

バブル絶頂期にデビューしたZ32(1989年)はV6ツインターボによる高性能(280ps)と斬新なスタイルで大きな話題となったが、北米では高くなり過ぎた価格と自動車保険料の高騰によりZの魅力である「バリュー(お買い得感)」を失い、販売面で失速。対米輸出は1996年に終了し、生産自体も2000年8月に終了していた。

とは言え、Zは累計で国内で22万台、海外で122万台も販売されるなど、現時点では世界で最も多く売れたスポーツカー。アメリカには日本以上に熱烈なファンも多い。今にして思えば、1998年にNDA(日産デザイン・アメリカ)が独自に仕立てたS30イメージのコンセプトカーこそが、Z復活の火付け役だったかもしれない。

価格帯&グレード展開

標準車、豪華仕様、スポーツの3タイプで展開

新型Zのグレードは6つ。ベースグレードの6MT(300万円)と5AT(310万円)。豪華仕様「バージョンT」の6MT(330万円)と5AT(340万円)。そしてスポーツ仕様「バージョンS」の6MT(330万円)と「バージョンST」(豪華仕様付き)の6MT(360万円)。

ここで言う豪華仕様とは、電動本革シート、BOSEサウンドシステム等のこと。スポーツ仕様には18インチタイヤ、ブレンボ製ブレーキ、VDC等が付く。スポーツ仕様の「S」と「ST」にATの設定がないのは、走りを求めるならぜひマニュアルを、という考えからだ。

300万円前半でこれだけの性能とスタイルを持った本格スポーツカーは数少ない。ライバルは日産の目標通り、ずばりポルシェ・ボクスター、BMW・Z3、アウディTTあたり。性能的には互角以上で、値段は半分から3分の2となる。ちなみに新型Zのオープンモデルは来年登場予定だ。

パッケージング&スタイル

どこから見てもZだが、モダンなデザイン

見た目は小さく、低く、ワイド。サイズは全長4310×全幅1815×全高1315mm。先代2人乗りモデルとほぼ同じだが、実物はずっとコンパクト。S2000(4135×1750×1285mm)より一回り大きいが、角が落とされたデザインや小さなキャビンのせいか、Zの方が小さく見える。一方、ホイールベースは異様に長い。V35スカイラインから200mmも短縮されているが、2650mmのホイールベースは先代2×2モデルよりまだ長いほどだ。

 

ボリューム抜群のオーバーフェンダー、凹面にえぐられたサイド、縦型アルミ調ドアハンドル、横から見て3角形のルーフラインが特徴。特にルーフラインについては、他に例を見ないもので個性的だ。

スポーティかつ各種工夫が楽しいインテリア

インテリアは中央にタコメーターを配した3連メーターと、ダッシュ中央に配されたS30譲りの小型3連メーター(電圧、油圧、ドライブコンピューター)がいかにもスポーツカー。いかにもZ。メインメーターはステアリングと連動してチルトする。

 

室内側ドアハンドルは本物のアルミ製だ。冷んやりした触感が妙に嬉しい。細かいことを言うと、樹脂パーツの仕上げや素材、小物入れのフタの閉まり方など、質感は高くない。しかしそういったことはこのクルマの場合、些細なことだとも言える。300万円台のスポーツカーとしてケチを付けるべきものでは決してない。最近の日産らしく、モダンでツボを押さえたデザインだ。

視界については個人差がある

視界や居住性については人によって賛否が分かれる部分。アウディTTばりに高いウエストライン、やや目障りなAピラーやドアミラー、小さなサイドウインドウ、絶望的に天地が狭いリアウインドウなどは、スポーツカーに慣れていない人には閉所感があるはず。デイズ社内でも、短時間の試乗で気にならない者、違和感を感じる者と、ほぼ半々に分かれた。これについては「ここがダメ」で後述する。

ホールド性、座り心地抜群のシート

シートポジションはスポーツカーらしく適度に低い。ただし「身長146cmの小柄な女性にも対応」と資料でうたうわりに、座面高はほとんど調節が効かない。もう少し上下調節幅があれば小柄な日本人に親切だったろう。見切りの悪さも改善できる。テレスコが効かないステアリングも、人によっては不満が出そうだ。

シート自体の造りは文句ない(試乗車は本革仕様)。コストコンシャスなインテリアの中で、シートは手抜きなしという感じ。がっちりしたサイドサポートや硬い座面でホールド性が高い一方、サイズも大きくてリラックス出来る。ちなみに助手席は運転席より微妙にリラックス路線のシェイプとなる。

助手席前にグラブボックスが無いのは不便だが、小物入れは豊富。座席後ろのふた付きボックスは意外に容量があり、ちょっとした手荷物なら入ってしまう。

 

身体を捻れば、リアのラゲッジスペースにもアクセス可能。でも荷物を放り込むことはできても、取り出すのは大変だ。そのラゲッジには巨大なストラットタワーバーがあり、積載性を大きく損なっている。

基本性能&ドライブフィール

売れ筋の一つ。5速ATの「バージョンT」

試乗車はバージョンTの5速AT(340万円)。さらにメーカーオプションのDVDナビ(25.5万円)が付き、計365.5万円。本革シート、BOSE製オーディオ、ATの豪華快適快速仕様だ。

適度に低めのシートに腰を降ろして、エンジンを掛けるとクォーンという快音が響く。ゴーンさんも開発エンジニアも、走りを本当に楽しむならマニュアルと口を揃えて言うが、残念ながら?試乗車はAT。しかしこれが売れ筋なのは間違いない。

トルキーで豪快。ゆっくり走っても楽しい

前方にクルマがないことを確かめてアクセルを踏みこむと、VQ35DEエンジン特有の、少し濁点入りのサウンドを放ちながら、新型Zは豪快に加速する。思わず笑いが込み上げる。高回転まで回す必要はなし。いつでも、誰でも、(ほとんど)どこでも、この気持ち良さが味わえる。

豊かなトルク、おおらかな回転フィーリング、豪快な全開加速。これはZのもう一つの故郷であるアメリカで好まれる特性。240ZのL型直6エンジンと共通のキャラクターでもある。これにより新型Zは「ゆっくり走っても楽しいクルマ」になった。

VQ35DEは新型Zのためにある

正直言ってエンジン音、加速感、フィールは、新型エルグランドやスカイライン350GT-8とそっくり。ほとんど同じエンジンだから当たり前だが。だからと言って、Zがミニバンやセダンっぽいという意味ではない。むしろVQ35DEエンジンは、Zという最もふさわしい相手とやっと一緒になったと言える。

ちなみに燃費は街中、ワインディング、高速と満遍なく走って5.2km/L。付属の燃費計とまったく同じ数値だった。3.5リッター、1450kgのクルマをATで遠慮なく走らせたことを考えれば悪くない数字ではないだろうか。

スポーツカーとしては十分に快適な乗り心地

前述の優れたシートもあって乗り心地は良好。波打った路面では揺すられるし、荒れた路面ではザラザラ感を伝えるが、それは新型Zがスポーツカーだから。ソフトなGTカー路線はあえて選ばなかったということだろう。

キビキビした走り。ただし飛ばし始めると意外に硬派

「フラットライド・コンセプト」を掲げるZ。ロール、ピッチング(前後方向のシーソー的な姿勢変化)は確かに小さい。その点については日産が開発時の目標としたポルシェをかなり意識した感じがする。ワインディングを流す程度では、ミッドシップのボクスターのようなスムーズでキビキビした運転が楽しめる。

ところが真剣になってスピードを上げて行くと、Zは次第に男っぽい性格を現してくる。ステアリングフィールがグッとダイレクトになって、それにつれて今時珍しいほどハンドルがコーナーで重くなる。腕力がないとこりゃ飛ばせないな、という感じ。マイルドなはずの17インチ仕様にも関わらず、いつものコーナーの段差では普通のセダンではあり得ない直接的な衝撃がステアリングをガンッと一撃。手に汗握る。ハードブレーキング時にリアの接地感がボクスターに比べて心許ないのは、FRだから仕方ないところか。

標準装備のトラクション・コントロールはμの低い路面に片輪がのった時など頻繁に作動する。オフにして走れば低速でリアを流すのはATでも造作ないが、攻め込むには勇気がいる。街中と違って飛ばし始めると、Zは気の抜けないクルマだ。

道を譲ってもらえる

標準仕様でCd値0.30、エアロでは0.29で前後ゼロリフトという空力性能を誇るだけあって、高速での安定性も悪くない。とはいえ、超高速域ではそれなりの緊張感を強いられることも確かだ。ロングホイールベースのスカイラインあたりと比べると、ビシッとした直進性には欠ける。ワインディング同様、軽い緊張感が伴った走りであり、それはスポーティ感と置き換えることもできるだろう。むろん常識的なクルージング速度では、一切の緊張感を伴わず、太いトルクの恩恵で、シフトダウンもしないまま力強い中間加速をみせる。何よりこのルックスが先行車を威圧するらしく、「進路を譲ってもらえる」クルマと言える。

ここがイイ

全速度域で(いい意味で)軽い緊張を伴った走りをみせること。まずそのスタイルを目の前にした時に、日常と違った走りの世界へ入ることを予感させ、軽い緊張感がわくだろう。シートに座るとその緊張感は一段と高まり、エンジンをかけ、走り出すとさらに走りに対する緊張感は増大する。このように「走りを意識させる」ことこそスポーツカーのスポーツカーたる所以。その点において、Zはスポーツカーと言い切っていいと思う。

外観デザインは誰もが評価せざるを得ないだろう。一部の人からは「気持ちが悪い」と評される一連の日産デザインだが、その集大成ともいっていいZのデザインは、独創性とカッコ良さはもちろん、未来への可能性を秘めた秀作だ。行き詰まったかに見えたクルマのデザインに新風を吹き込む日産のデザイン力は、一般受けの悪さを全く意識していないように見えるという意味で、ゴーン改革ゆえのものだろう。何しろゴーン氏の出身はあの日本では全くウケないルノーであり、ルノーデザインの独自性は彼の潜在意識の中に息づいているはず。ゴーンがトップでなかったら、こんな変な形(いい意味で)のスポーツカー、新型Zは生まれなかったはず。

ここがダメ

後方視界の悪さには閉口した。普通のクルマの半分ほどしか見えず、特に後ろのクルマの屋根のあたりが見えない。覆面パトの餌食になるZが増えそう。後方をナビ画面に表示できる仕掛けを考えるべき。さらにこれはシートポジションにもよると思うが、サイドウインドウ越しの斜め前方視界もAピラーやサイドミラーに妨げられ、死角がかなり大きい。

シートの上下リフターがないのは絶対におかしい。身長の違う人は座ったときのアイポイントが当然異なるからだ。スポーツカーを運転する上でのベストポジションを想定し、そこへサイズの違う人間を導くというのが正しいポジションの取り方ではないだろうか。そうなるとステアリングに連動してメーターが動くというのも理にかなわない。テレスコは必要だがチルトは本来不要なはずなのだ。当然メーターは固定でかまわない。またシートスライドも最小限に押さえ、代わりにペダルを前後に可動できるようにするべきだろう。

総合評価

日産の説明によればターゲットユーザーは45歳から54歳。なるほど、若い頃Zにあこがれていたが金がなくて買えなかった(昔の)青年たちだ。ただし、今はそれなりに収入もあり、子供に手もかからなくなって、奥さん(昔の彼女)と二人で再デートを楽しむことができる層、ということになる。つまり中年のデートカーなわけだ(笑)。そしてその年齢はぴたりゴーン氏に当てはまる。つまりZはゴーン氏が自分で欲しかったクルマを作らせた「私利私欲」の結晶なのではないか(笑)。そうであったとしてもゴーン氏に感謝せねばならないだろう。こんなすばらしいクルマを世に出してくれたのだから。

確かにその作りはお手軽だ。シャシーもエンジンも寄せ集めで、それに気の利いたスキンを被せただけ、内装は高級とは呼べず、スポーツカーとして一級ではあるものの、スーパースポーツを追求したものではなく、あくまでGTカー的要素が強い性格にまとめられている。売れ筋がAT車となることは日産も予測していたようで、それならなんとかスカイラインGT-8の8速CVTあたりを載せて先進性をアピールしてもらいたかった(まもなく登場するスカイラインクーペとのバッティングを避けたのだろうか)。しかし、市街地の低速走行からワインディングまで、そこそこ走る楽しさを与えてくれるという点で、ターゲットユーザーはスポーツカーとして満足できるはずだ。メンテナンスも輸入車のようには必要がないだろうし、価格の割には存在感、ブランド力があるため、所有することの満足感も高いだろう(S2000はそこが弱い)。

試乗中に声をかけられた中には、男性はもちろん、中年女性もいた。オバさんが乗るZが増えるのはなんだか辛いが、中年男性には奥さんから購入の許しがもらいやすいという点で追い風だろう。また知り合いの60歳過ぎの男性は、これまでクルマにあまり興味がなかったのだが、今回わざわざディーラーに出向いてカタログを手に入れたという。おそらく買うはず。日産のマーケティングよりも興味を持つ年齢はさらに上へ広がっている。

反面、若者はあまり興味を示さない。300万円台の価格は、若者にも手が届かないわけではないと思うが、まるで関心がないみたいだ。確かに彼らにとってはケータイに金をかけた方がいいし、第一、今のファッションにこのZは似合わない。もし同じおカネをクルマにかけるなら、カスタムミニバンの方がいい、というのは理解できなくもない。つまり、昔はスポーツカーといえば若者のものだったが、ここにきてスポーツカーは「昔の」若者のものになったわけだ。「時代は変わる」(ボブ・ディラン)のである。

公式サイトhttp://www2.nissan.co.jp/Z/

 
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