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フォード フィエスタ Ghia新車試乗記(第333回)

Ford Fiesta Ghia

(1.6リッター・4AT・195万8250円)

 

2004年09月10日

 
 
 

キャラクター&開発コンセプト

累計1000万台以上のベストセラー車

2002年に欧州で発売された小型車「フィエスタ」は、フォーカスの下に位置するコンパクトカー。日本ではなじみが薄いが、欧州では1976年以来、累計1000万台以上を誇る大ベストセラー車だ。

5代目となる新型が日本で発売されたのは2004年4月2日。欧州より導入が2年遅れたのはオートマチックの設定が無かったからだが、今回やっとアイシンAW製の4ATを得て日本上陸となった。開発はドイツとイギリスに拠点をおく欧州フォード。プラットフォームはマツダ・デミオ(欧州名マツダ 2)と共有するが、ヨーロッパに狙いを定めた走行系のセッティング、機能性、デザインで独自性を打ち出している。

コンセプトは“ラテン・スピリット&ジャーマン・ヘッド”。ラテンの情熱とドイツの知性、つまり「コンパクトカーのアクティブでカジュアルな性格と、欧州フォードならではの実用的かつ高い基本性能」(プレスリリース)を兼ね備える、というもの。生産もドイツのケルンとマツダ2と同じスペインのバレンシア工場で行われている。なおフィエスタとはスペイン語で「祝祭」のこと。

価格帯&グレード展開

177万9750円と195万8250円

欧州には3ドアもあってバリエーション豊富だが、日本仕様は5ドア・1.6リッター・4ATモデルのみ。グレードはベーシックな「1600 GLX」(177万9750円)と「1600 Ghia」(195万8250円 ※今回の試乗車)の2種類。Ghiaにはカーテンエアバッグ(計6エアバッグ)、アルミホイール、インダッシュ6連奏CDチェンジャー付きオーディオ、フルカラード前後バンパー、グリルのメッキ縁取り、フォグランプが備わる。

なお、Ghia(ギア)とはイタリアの老舗デザイン工房「カロッツェリア・ギア」のこと。あのカーデザイン界の巨匠、ジウジアーロもイタルデザイン社を興す前に短期間ながら在籍した名門である。ギアは1970年にフォード傘下に入っており、以来フォード車の最上級グレードの証としてそのバッジが使われている。

一方、エントリーグレードのGLXは、フロント2ピーカーだけの完全なオーディオレス。2DINなので、好みのオーディオやナビを使いたい人にはいいかも。しかし外観に関しては黒い樹脂パーツが目立ち、カタログ上でさえあまりに華がない。営業車用?という感じだ。

パッケージング&スタイル

デミオとほぼ同じだが、背は妙に低い

ボディカラーは全部で8色あり、試乗車は「フレアメタリック」という赤みの強いオレンジだ。サイズは全長3915mm×全幅1685mm×全高1445mm。デミオとほぼ同じ大きさだが、全高は100mmほど低い。ハッチバックと言えば昔はこの程度が普通だったが、ミニバンを見慣れた目にはやけに低く感じられる。

クリーンなスタイリング

ホイールベースは2485mm。デミオの2490mmと5mmしか違わないから、足まわりの取付位置といった微妙なところの差だろう。横から見ると無駄の無いクリーンなスタイリングがよく分かる。フォーカスや「ka」(欧州ではまだ現役)では斬新なデザインに挑戦した欧州フォードだが、フィエスタについては多少の反省もあってか手堅くまとめたようだ。

インテリア&ラゲッジスペース

デミオとインパネ骨格は同じ

インパネはごくあっさりとシンプル。丸い空調吹き出し口が4つ並ぶのが印象的。デミオのインパネとは各種スイッチやレバーの位置が同じで、基本骨格が同じであることが分かる。前席は見た目こそ平凡だが、長時間乗っても疲れない。

 

後席は平板だが、このクラスとしては座り心地が良く、ヘッドレストも3つ備わる。デミオより全高が低くても、天井高は十分だ。GHIAは前席&サイドエアバッグに加えて、前・後席用カーテンエアバッグを標準装備する。

 

目を引いたのがサイドシルの形状。側面衝突対策だろうか、Bピラーの付け根が異様に太い。またリアドア下のシルも乗降性を損なわない程度に太くされている。

後席サイドウインドウが「手回し」なのは、このクラスの欧州車では当たり前。フィエスタの場合もそうだが、気になったのはガラスが真ん中辺りまでしか開かないこと。まあこの方が子供が頭や手を出す危険性は低いが…。

コンセプトの違い

デミオのリアシートは前後に160mmもスライドし、さらにタンブル(背もたれを倒し、座面ごと跳ねあげる)するタイプだが、フィエスタは普通のダブルフォールディング。「マウンテンバイクがそのまま2台積める」デミオの荷室には負けるが、それはコンセプトが違うから仕方ない。フィエスタもこのクラスとして十分な通常時284リッターの荷室容量を誇る。

一つ困るのはリアゲートにオープナーが備わらないこと。盗難防止対策だと思うが(信号待ちで盗難に遭う可能性が海外ではある)、日本では不便だ。ただし、オープナースイッチはダッシュボードにあり、ドアの外からでも押しやすい。

基本性能&ドライブフィール

力強いエンジン

1.1トンにジャスト100馬力のパワーバランスはこのクラスの標準。デミオやベリーサと比べても、数値的に大差はない。しかし実際に運転した感じはまさに「欧州コンパクト」。ハイオクを使って圧縮比を11.0まで上げたエンジンは、マツダ車とはひと味違って低速から力強い。マツダのMZR系エンジンも悪くないが、フィエスタのエンジンはシリンダーブロックが厚いようながっしり感が魅力だ。低速でアクセルを踏み込んだ時はちょっとうるさいが、トルクがフラットで質感の高い走りは素晴らしい。回すとノイズや振動が逆に小さくなる感じで、つまり高速走行ではパワーをフルに使って走るのが向いている。こうなると5速MTが欲しい。

とは言え、アイシンAW製の4速ATも違和感なし。ボディもコンパクトな上に見切りがよく、運転するのに気を使う点はほとんどない。

欧州直輸入の走り

乗り心地は国産コンパクトと比べると固めだが、ボディがしっかりしているので不快感はない。剛性感はVWポロもかくやと思うほどで、ツギハギだらけの荒れた舗装路を強行突破してもタタタタンと軽くやり過ごす。

このボディだから、ハンドリングもガシッとしている。正確な油圧パワステを一定の角度で切ったまま、アクセル全開でコーナーを抜けることが可能。足まわりの無駄な上下動もほとんどなく、段差でバンッという衝撃がステアリングに伝わるのを許すところも国産車と違う点だ。サーボを抑えたブレーキはタッチが良く、スピード・コントロールがしやすい。

高速走行もお手の物。100km/h巡航は2800回転くらいで、このあたりなら十分静か。パワーをフルに使ってメーター読み160km/hあたりまで試しても不安感はない。まさに欧州直輸入の高速安定性が味わえる。メーカー発表の最高速は欧州仕様(同じ1.6リッター、 4AT)で179km/hとある。

ここがイイ

力強く、気持ちのいい中低速域。変速ショックがなく、適切な変速プログラムのAT。リアはドラム式だが、問題なくじわりと効くブレーキ。高い衝突安全性。一見どうということはないが、よく見るとなかなかカッコいいスタイリング。今や多くのドイツ車が失った、欧州直輸入の質実剛健さを感じられる点。

ここがダメ

一見かなりチープな内装。右ハンドル化でやや左にオフセットしたペダル類。シーケンシャルモードのない4ATで、シフトインジケーターもインパネにないこと。フィエスタのゲートは一直線で、一般的なODスイッチがシフトレバーに付くが、そのインジケーター照明が暗くて、日中ほとんど役に立たなかったのには少々困った。またダッシュボード上のトランクオープナーボタンは押しやすいものの、間違えて押す可能性も高い。ガソリンが高い昨今、このクラスでハイオク仕様はつらい。

総合評価

日本ではかつて、売れないクルマの代表として5ドアハッチバックがあった。80年代の赤いファミリアも3ドアがメインで、5ドアは全く売れなかったものだ。しかし今やコンパクト5ドアハッチバックの隆盛は驚くほど。8月の販売実績ではフィットがまたトップとなっている。

逆に欧州では主力がずっと5ドアハッチバック。代表的なゴルフも当然そうで、現行の新型ゴルフにおいてもそれは同じ。合理的に乗る限り、5ドアハッチバックこそコンパクトカーの主流なのだ。ゴルフと同じくらい長い歴史をもつフィエスタもその点は全く同じで、まさに正統派の5ドアハッチバックだ。

この手のクルマは伝統的に走りがしっかりしている。フィエスタも同様で、走りの質感が高いことは、AT仕様の日本車でも十分感じられる。走って実に心地よいのだ。さらにユーロNCAPで4つ星の衝突安全性など、完全に質実剛健の方に振られている。

その結果というか、そうした基本性能に注力されたがために、内装は実にシンプルで、正直なところチープ。変に飾られていない分、広々としてはいるが、日本車の仕上がりや質感からは相当遠いところにある。これは初期のヴィッツにも共通することで、欧州コンパクトハッチバックとしては不思議ではないが、少し弱いのは否めない。

つまり、フィエスタはまさに30年近い歴史に基づく、典型的な欧州コンパクトハッチバックそのものなのだ。一方、日本で売れている5ドアハッチバックの多くは、ミニバンの要素を含むもので(というか今やミニ・ミニバンそのもの)、そのコンセプトは大きく異なる。例えば先回試乗記のポルテとフィエスタでは全長・全幅サイズにほとんど差がないが、全高の差は275㎜もあり、ポルテはさらに片側スライドドアという手法で5ドアでなくても使いやすく出来ることを証明した。両車のコンセプトの差はかくも大きい。

しかし、走りの質は確実にフィエスタが上。つまり乗って気持ちいいフィエスタか、使って「異常に」便利なポルテか、という選択肢となる。日本ではウケなかった5ドアハッチバックもミニバン的な要素を入れることで爆発的に売れるようになったのだが、元々5ドアハッチバックが売れている欧州では伝統をより昇華させる方向に進化したわけだ。とはいえ、伝統と革新の戦いのどちら側につくかは、人によって簡単に結論が出るはず。

フィエスタにとって、クルマの出来とは別にあまりに弱いところはやはりブランド力だ。欧州フォードというのはとにかく日本での知名度が低いし、マニアウケもない。ここは日本でも人気上昇中のWRCあたりをうまく使って、よりブランド力を高めるセールスプロモーションを展開して欲しいところ。なにせWRCで上にいるのは、あのシトロエンなのだから。伝統の製品はブランド力があってこそ、と思う。

試乗車スペック
フォード フィエスタ Ghia
(1.6リッター・4AT・195万8250円)

●形式:GH-WF0FYJ●全長3915mm×全幅1685mm×全高1445mm●ホイールベース:2485mm●車重(車検証記載値): 1130kg(F:670+R:460)●乗車定員:5名●エンジン型式:FYJ●1595cc・DOHC・4バルブ・直列4気筒・横置●100ps (74kW)/6000rpm、14.9kgm (146Nm)/4000rpm●使用燃料/容量:プレミアムガソリン/45L●10・15モード燃費:12.0km/L●駆動方式:前輪駆動(FF)● タイヤ:175/65R14(Continental EcoContact EP)●価格:195万8250円(試乗車:195万8250円 ※オプション:なし)●試乗距離:約150km

公式サイトhttp://www.ford.co.jp/fiesta/index.htm

 
 
 
 
 

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