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ホンダ フィット ハイブリッド新車試乗記(第712回)

Honda Fit Hybrid

(1.5L 直4+モーター・7速DCT・163万5000円~)

12年目の劇的変身!
「フィット3」のハイブリッドで
ニッポンの実力を検証!

2013年11月15日

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キャラクター&開発コンセプト

累計487万台の超グローバルカー


新型フィット ハイブリッド
(photo:Honda)

2001年にデビューし、今や国内ではシビックに代わるホンダの主力コンパクトカーとなったフィット。累計販売台数はこの12年間で、国内だけで200万台以上。また、海外では欧州、北米、中国など123ヶ国で販売され、グローバルでの累計販売台数はすでに487万台(2013年5月時点)に達したという。

そして2013年9月5日に発表、9月6日に国内で発売された今回のフィットは3代目。新型は初代から2代目に引き継がれた、燃料タンクを前席下に置くセンタータンクレイアウトや、それを核とする高効率パッケージングを継承しつつ、車体、パワートレイン、デザインなど全てを一新している。

新開発「スポーツ ハイブリッド i-DCD」を搭載


スポーツ ハイブリッド i-DCDのレイアウト
(photo:Honda)

先代同様、純粋なガソリンエンジン車も用意されるが、注目は今回で第2世代となるハイブリッド車。新開発の1.5リッター直4エンジン、ホンダ独自開発の7速DCT(クラッチは独シェフラー製)、リチウムイオンバッテリーなどで構成される新ハイブリッドシステム「スポーツ ハイブリッド i-DCD(インテリジェント・デュアル・クラッチ・ドライブ)」を採用することで、従来のIMAハイブリッドでは出来なかったモーターだけでのEV発進や広い領域でのEV走行、そして高効率化が可能になった。これによりJC08モード燃費は、これまで国内トップだったアクア(35.4km/L)を上回り、36.4km/Lを達成している。

■外部リンク
シェフラージャパンHP>ホンダの「i-DCD」で活用されるシェフラーの技術

初期受注は過去最高のペース

国内の販売計画台数は、先代の月間1万2000台を上回る1万5000台。生産は鈴鹿工場で始まるが、本格的な生産は7月に稼働開始した寄居工場(埼玉県大里郡寄居町)で行われる。

発売後約1ヵ月(10月7日時点)までの累計受注台数は、目標の約4倍となる6万2000台以上(うち70%はハイブリッド)。ホンダによれば、これは「過去最高ペース」だという。販売実績は10月に2万3281台となり、久々に登録車の販売トップを奪取。ここ1年ほど首位を独占していたプリウス(2万0886台)とアクア(1万9984台)を抑えている。

 

■外部リンク
Honda>埼玉製作所寄居工場のオープンハウスを実施(2013年11月7日)

■過去の新車試乗記
ホンダ フィット シャトル ハイブリッド (2011年8月)
ホンダ フィット ハイブリッド(2010年11月)
2代目ホンダ フィット (2007年12月)
初代ホンダ フィット (2001年7月)

 

価格帯&グレード展開

ハイブリッドは163万5000円~


パワートレインは1.3リッター、1.5リッター直噴、ハイブリッドの3種類。ラインナップは13G、15X、RS、ハイブリッドの4種類

パワートレインは、純エンジンの1.3リッター直4(CVTか5MT)、1.5リッター直4・直噴(CVTか6MT)、そしてハイブリッド(1.5リッター直4+モーター+7速DCT)の計3種類。

価格は1.3リッターが126万5000円~、1.5リッターが158万円~、スポーツグレードのRSが180万円、ハイブリッドが163万5000円~。

ただし、1.3リッター車やハイブリッド車のベースグレードは、オプション選択の余地がほとんどない上、燃料タンク容量が上位グレードより8リッターも少ない32リッターとなるなど、要はJC08モード燃費で国内トップを取るための燃費スペシャルになっている。実際に買う人はやはり少ないようで、ハイブリッドの初期受注を見るとベースグレードの割合は2%しかない。なのでハイブリッドは実質Fパッケージ付の172万円からスタートと考えた方がよい。

 

ボディカラーは全11色。写真はティンテッドシルバーメタリック

安全装備に関しては、新開発の「シティブレーキアクティブシステム」(低速域衝突軽減ブレーキ+誤発進抑制機能)と前席サイド&カーテンエアバッグが「あんしんパッケージ」(6万円)というオプションになる。VSA(車両挙動安定化制御システム)はガソリン車も含めて全車標準。

オプションは他に、3Gの通信モジュールを搭載するHonda インターナビ+リンクアップフリーが22万0500円、LEDヘッドライト(ロービーム)が6万5000円(上位グレードは標準装備)など。

 

フィット RS。132psの1.5リッター直噴エンジンを搭載する
(photo:Honda)

■1.3L DOHC i-VTECエンジン(100ps、12.1kgm)
・13G(CVT/5MT)  126万5000円~174万9000円(FF/4WD)

■1.5L直噴DOHC i-VTECエンジン(132ps、15.8kgm)
・15X(CVT)   158万円~186万9000円(FF/4WD)
・RS (CVT/6MT)  180万円(FF)

■1.5L DOHC i-VTECエンジン(110ps、13.7kgm)+モーター(29.5ps、16.3kgm)
・Hybrid(i-DCD)   163万5000円~193万円(FF) ※今回の試乗車

※ハイブリッドの4WDは12月発売予定

 

パッケージング&スタイル

デザイン激変。ボディサイズはほぼキープ

パッケージングは基本キープコンセプトだが、スタイリングの印象は激変。先代はサンダーバード2号みたいな太めの砲弾型で、造形もシンプルだったが、新型はエッジの効いた太めのステルス機風。 中でも今のところ賛否分かれているのがフロントフェイス。ブラックアウトしたグリルはアシモみたいに見えなくはないが、見慣れるまで時間が掛かりそう。

 

全高がアクアより80mmも高いのは空力面で大きなハンディだが、燃費で互角としたのは立派

こういったデザインは、同社の新しいデザインコンセプト「エキサイティング H デザイン!!!」から生まれたもので、ワクワクするデザインを目指し、あえて「チェンジ!」を狙ったようだ。先回取り上げた新型アウディA3とはまさに真逆。

ボディサイズは全長3955mm(+55)×全幅1695mm(同)×全高1525mm(同)、ホイールベース2530mm(+30)。先代より若干長くなったが、全長4メートル未満と5ナンバー枠をキープした。このあたりは、今でも年間20万台売れる国内市場を配慮したものだろう。

 
 
    全長(mm) 全幅(mm) 全高(mm) WB(mm) 最小回転半径(m)
ホンダ フィット ハイブリッド(2010~2013) 3900 1695 1525 2500 4.9
ホンダ フィット ハイブリッド(2013~) 3955 1695 1525 2530 4.9~5.2
VW ポロ(2009~) 3995 1685 1460~1500 2470 4.9
トヨタ アクア (2011~) 3995 1695 1445 2550 4.8~5.7
 

インテリア&ラゲッジスペース

熟成されたセンタータンクレイアウト


質感がぐっと高まったインパネ。写真は合皮&ファブリックシート仕様のLパッケージ

インパネもエクステリア同様に、エッジを効かせたダイナミックな造形。ただ、先代がかなり未来的だったので、新型は割とオーソドクスにも見える。流行りのタッチ式空調パネル(オートエアコン仕様のみ)などはあるが、奇抜なところはない。

広い室内空間や多彩なシートアレンジは相変わらず。燃料タンクを前席下に配置する「センタータンクレイアウト」を踏襲しつつ、プラットフォームを一新。ホイールベースを30mm伸ばし、荷室より後席を重視するといった微修正を行っている。また、燃料タンクがボディ後部にないため、駆動用バッテリーをリアに積むハイブリッドでも、同クラスのガソリン車に居住空間や積載性で負けていない。

 

ハイブリッドでも中央の速度計はほぼ同じ。右側に燃費情報やバーグラフ式回転計などを表示可能

ホイールベースは30mm増だが、タンデムディスタンス(前・後席間の距離)は80mm増えた。シート形状も改良され、座り心地も良い

運転席ハイトアジャスターはパッケージオプションに含まれる
 

後席を重視したため、荷室容量はハイブリッドで先代の341リッターから314リッターに減少。それでも同クラスのガソリン車より広い

ハイブリッドの場合、床下収納は折り畳み傘が入る程度

チップアップ(写真)、ダイブダウンといったシートアレンジは歴代フィット譲り
 

基本性能&ドライブフィール

THS IIよりメカメカしている

新開発の1.3リッターや1.5リッターの純エンジン車も気になるが、今回試乗したのはハイブリッド。

ハイブリッドにはスマートキーが全車標準。スタートボタンはステアリングの左側にあり、「フィットってグローバルカーなんだなぁ」と改めて感じながら始動。と言っても、エンジンが掛かるわけではなく、またトヨタ車のようにメロディが流れるわけでもなく、フィットのハイブリッドシステムは静かに目覚める。

メーターで「READY」の表示を確認したら、電制シフトレバーを「右に倒し、下げる」とD(ドライブ)に入る。単に「下げる」だけだとDに入らない。

 

ハイブリッド専用の電制シフトセレクター。操作感はプリウスと似ている

アクセルを踏み込めば、モーターでスムーズに発進。じわじわ踏めば、モーターだけで40km/hくらいまで加速してくれるが、グイと無頓着に踏めばすぐにエンジンが加勢する。とはいえ、エンジンはいつの間にか掛かる感じで、注意していないと分からない。

面白いのはトヨタのTHS IIに比べて、メカメカした感じが強いこと。これはミッションが無段変速ではなく、7速DCTだからだろう。とはいえ、変速はすごく滑らかで、シフトアップの瞬間はやはり注意していないと分からない。せっかくの7速DCTなので、このあたりはぜひメーターにギアインジケーターを標準装備して欲しいところ(できれば常時表示のアナログ回転計も)。なお、ハイブリッドの場合、パドルシフトはRS風のエアロパーツや16インチタイヤを履く「Sパッケージ」(193万円)のみになる。

メカ凝りまくりだが、完成度は最初から高い


フィット ハイブリッドのエンジン性能曲線図。システム出力は137ps。システム最大トルクの170Nm(17.3kgm)は発進直後から約5500回転まで一定に発揮する
(photo:Honda)

先代ハイブリッドはインサイト譲りの1.3リッターエンジンで始まり、後からCR-Z譲りの1.5リッター(ハイブリッド RS)が追加されたが、新型は1.5リッターのみ。しかしエンジンはそれとは別物で、アトキンソンサイクルの新開発1.5リッターDOHC i-VTECエンジン(110ps、13.7kgm)になる。

今回のi-DCDは、それに高出力モーター(29.5ps、16.3kgm)を内蔵したホンダ独自開発の7速DCTと、リチウムイオン電池を組み合わせたもの。さらに回生効率を高める電動サーボブレーキやフル電動のエアコンコンプレッサーも採用され、プリウスやアクア同様、いわゆる「ベルトレス」になった。この超量産車でやれることを全部やり、しかもいきなり自社初の7速DCTをハイブリッドに投入するところが、いかにもホンダらしい。

 

車両協力:ホンダカーズ東海

それでいて完成度は高く、街中を走る限り、気にところは特になし。ステアリングは意外に重め、乗り心地はちょっと硬めかなぁ、と思うくらい。ハイブリッド車の場合、エンジンが静かな分、ロードノイズが目立つものだが、それも気にならないレベル。

逆に言えば、すごく凝りまくったパワートレインの割に「ウォー、すげー」感はないのだが、つまりはそれくらい普通のクルマとして乗れるということ。

 

情報ディスプレイを切り替えて、液晶バーグラフ式の回転計を表示することもできる

気になったのは、駐車する時などに坂道でバックする際、ブレーキを離すと下がってしまい、かといってアクセルを踏むとドンッと唐突に動いてしまうことがあること。ヒルスタートアシストは全車標準なので、前進の坂道発進なら下がらないのだが……。トルコンがない頃の、昔のCVT車(6代目“ミラクル”シビックとか)を思い出した。

ワインディングでもホンダらしく


主要グレードは185/60R15タイヤとスチールホイールが標準(アルミはオプション)。ハイブリッドのSパッケージとRSのみ、185/55R16+アルミが標準になる

ワインディングを走ると、足回りが硬めである理由がよく分かる。ホンダ車らしく、ロール感は小さく、スイスイ曲がるのが面白い。意図的に鋭くステアリングを切っても、ちゃんと曲がるのは、全車標準のVSAの成せる技だろう。おかげでエコタイヤ(ヨコハマのブルーアース)のグリップにも不足を感じなかった。一方で、腰高感はそれなりにあるし、ドイツ車みたいにボディがガッチリというわけでもないが、欧州Bセグメントのライバル車と比べても、操縦安定性に不満はないと思う。

100km/h巡航時は、メーターを見るとだいたい2000回転くらいで回っている。高速走行時に少し気になったのは、ある程度の速度域から、フロントガラス越しにザワザワと風切り音が高まること。これが静かだと「いいモノ感」が一気に高まりそうなのだが。

試乗燃費は17.4~29.5km/L。JC08モード燃費は31.4~36.4km/L


バイオ混合ガソリン対応のステッカーを我々が見たのは、少なくとも日本車では初めて

今回はトータルで約200kmを試乗。参考までに試乗燃費(車載燃費計)は、いつもの一般道、高速道路、ワインディングを走った区間(約90km)が17.4km/L。一般道で、無駄な加速を控えて走った区間(約30kmを2回計測)が26.2km/Lと29.5km/Lで、計2日間のトータル(撮影のための移動を含む)は19.3km/Lだった。

ちなみに、1年半前に試乗したアクア(16インチタイヤ仕様)の試乗燃費は16.8~23.2km/Lで、370km走ってのトータル燃費は18.3km/Lだった。僅差でフィット ハイブリッドが勝ったが、とりあえず互角と言っていいと思う。

 

たまたま信号で並んだボルボ V40と2ショット

客観的な評価としてJC08モード燃費は、フィッ トハイブリッドが36.4km/L(標準グレード)~33.6km/L(中間グレード)~31.4km/L(Sパッケージ)。これに対してアクアは、35.4~33.0km/Lで、やはり互角と言っていいだろう。

なお、ハイブリッドの燃料タンク容量は、標準グレードが32リッターで、それ以外のグレードが40リッターになる(1.5リッターガソリン車や1.3リッターの4WD車などと同じ)。40リッターなら、航続距離は平均燃費20km/Lとしても約800kmに及ぶ。

 

ここがイイ

燃費だけじゃないこと


初代から始まったセンタータンクレイアウトは新型フィットでも継承されている
(photo:Honda)

相変わらず他車を寄せ付けない優れたパッケージング。後席をチップアップした時の、高さが128センチもある空間、あるいは後席をダイブダウンした時の広大な荷室空間、そしてシートアレンジの簡単さなどは、基本的に初代から変わっていないが、実際これ以上改良しようがないほどシンプルで使いやすい。最近は何かと燃費ばかりが注目される新型車だが、フィットの場合は燃費だけでなく、こうした高効率パッケージングが商品力に大きく貢献している。

ここがダメ

燃費スペシャルによる無意味な燃費競争

ちょっとすっきりしないのは、ハイブリッドのベースグレード(1.3リッターガソリンのベースグレードである13Gもそうだが)の燃料タンク容量が32リッターしかないこと。装備的には運転席ハイトアジャスターやドアミラー電動格納、後席分割などがないこと以外、ま、これでいいか、と思えるグレードだが、わざわざタンク容量を8リッター減らしたのは、JC08モード燃費対策以外の何ものでもない。実はハイブリッドの場合、ベースグレードはパッケージングオプション付の主力グレードより、諸々の軽量化で50kgも軽くなっている。これにより、ハイブリッド(のベースグレード)のモード燃費は国内最高の36.4km/Lとなったわけだが、そこまでする意味があるのか。標準グレードを買おうとする場合は、おそらく店頭で説明があるはずだが、これが将来、中古車になった場合に、買ってから初めてタンク容量が少ないことに気付く人もいるだろう。いくら燃費が良くても、32リッターは少ないと思う。

 

本文で触れたように、坂道だとバックでの微調整がしにくいこと。今から思えばサイドブレーキを使うと良かったかもしれないが、そんな技が使えない一般ドライバーのことを考えれば、改良ポイントの一つだと思う。

オプションのLEDヘッドライトはとても明るいが(装着率も高いようだ)、ハイビームは普通のマルチリフレククター式ハロゲン。おかげで色合いや照度でLEDとの落差が激しく、ハイビームにする度にガッカリしてしまう。6万5000円と安いので文句は言えないが、買ってから早々にハイビーム側を“ライトチューン”する人が増えそう。

総合評価

「一番じゃなくちゃダメなんですか」

最近、新車がまたまた良くなってきている。ちょっと前、フィットだと6年前に2代目が出たあたりで、もうクルマとしては十分じゃないかと思ったりしたものだが、ここに来て新型フィットはさらにもう一段、いや三段くらい上がってきた。正直なところ、普通の人なら先代でも特に不満はないはずだ。しかし、燃費がもっといいクルマが他社から出てきたというあたりが、分かりやすく2代目への不満になってしまう。それゆえ、とにかく燃費競争に勝利することが、メーカーにとっても分かりやすい商品価値の訴求方法になってしまっているのが昨今だ。燃費を向上させるためには、全てを新開発するしかない。ということで、今回はハイブリッドシステムをすっかり変更し、ガソリンタンクを小さくする裏技を使ってまで、燃費競争に勝利した。しかし記録が塗り替えられるのも世の常で、すぐにライバルが巻き返してくる。こうなると「一番じゃなくちゃダメなんですか」と言いたくなる。

 

まあ企業としては一番を取ろうとしないと、どんどん取り残されていってしまう。その結果、昨今クルマはすべてが素晴らしい燃費を誇るようになってきた。めでたし、めでたし。が、しかしほんとにそうなのか、とついへそ曲がりになってしまうのは、どうも欧州のクルマが燃費スペシャルではなく、クルマの本質を追求する方向で、どんどん良くなっていることを実感しているからだ。フィットもたぶん、ポロあたりに負けないように意識して開発しただろう。確かにポロより優れているところは多いが、乗ってすぐに、これはいいクルマだなあ、と直感的に思えるまでには至っていない。

名車シティの末裔として

まあそうはいっても、クルマはそんな感覚的な商品ではなく、実利でなんぼという商品でもある。このサイズで、これだけの居住空間を持つパッケージングの巧みさは、古今東西で随一と言えるものだし、DCTと組み合わされたハイブリッドシステムも、オリジナリティにあふれている。むろん燃費の良さは他の追随を許さない。走りだって、同クラスでは一、二を争うだろう。燃費を気にせずにガンガン走ると、さすがホンダというスポーティさがちゃんとある。クルマのすべてが高いところでまとめられているのだ。これ1台で日常使いから長距離移動まで不満なくこなし、人も5人乗れて、荷物も相当に積める。体を斜めにすれば、荷室で車中泊だってできそうだ。このサイズに、実用車に必要なすべてが詰まっていると言えるだろう。

 

初代ホンダ シティ(1981年)
(photo:Honda)

ところでフィットは、前身であるロゴの後継車だが、ロゴは2代目シティの後継車だ。つまり3代目フィットはシティの末裔ということになる。初代シティは、欧州でもジャズの名で販売されたようだが、フィットも欧州ではジャズという名で販売されている(北米ではフィット)。1981年に登場した初代シティのインパクトはすごかった。「トールボーイ」なるコンセプトで、それは3代目フィットにも通じているのだが、シティが出た頃のホンダのデザインは独創的で、日本車としてはぶっとんだものだった。

そんな昔のホンダデザインと比べると、新型フィットのデザインは頑張っているのだろうけれど、今ひとつに見える。キープコンセプトで、サイズ制約があって、これ以上どうしろというのか、というのも分かるが、例えばリアのオーバーハングが真横からだと長くなったように見えて、リアビューが重たく見えるあたりが気になってしまう。シティは2代目、そしてロゴと代を重ねるごとに、スタイリングの魅力を失っていったが、フィットも3代目であれば、逆にホンダらしい飛び抜けた個性を見せて欲しかった。ホンダの場合、ヒット作の3代目はパッケージングから大きく変えてくることが多かったが、今回そうでないのはホンダが変わったのか、それとも受け入れる市場が変わったのか。あるいはその両方かもしれない。

確かにスーパーカブ的ではある

さて、今回のフィットはホンダによると、4輪のスーパーカブだという。北米では1960年代に、ビーチボーイズのブライアン・ウイルソンがスーパーカブをイメージした「リトルホンダ」という曲を書いて、自身のバンドや他のバンドの演奏でヒットさせている。当時の北米でスーパーカブがどういうイメージの乗り物だったのかはよく分からないが、今の日本でスーパーカブと言えば、タフで便利な日常の足というイメージだろう。「最初に手に入れた原動機のついた乗り物はスーパーカブだった」と書けるとカッコイイのだが、個人的にはそれはスズキ バーディーだった。自分が乗ったバーディーは2サイクルだったが、コンセプトはスーパーカブと同じといっていい。16歳の少年は、ロータリー式3段シフトを駆使し、荷台にたくさん荷物を縛り付けて、どこへでもこのバイクで出かけたものだ。当時はノーヘルでも合法。スピードは出ないが、その自由さと風をきる気持よさは忘れられない。

当然ながらフィットはそれよりはるかに、移動するリーズナブルな道具として完璧な乗り物だ。そしてファン・ファン・ファンな雰囲気もある。その点はたしかにスーパーカブだ。ただしクラスを超えた品質感や走りの感動を求めた商品ではないわけで、そこを間違えてはいけないだろう。欧州車の一部には、すでにクラスを越えてしまっているものもある。それに比べてフィットは、良くも悪くもスーパーカブ的スタンスのクルマということ。

 

走り、燃費、パッケージングなどなど、総合点においては、こと日本では他の追随を許さない出来だ。6万円という比較的安価な価格で、大衆車クラスに自動ブレーキが設定されたこともめでたい。結果、購入した多くの人が満足するだろう。そのあたりのこと全てが、欧州車とは違う日本車・ホンダ車としてのアイデンティティだと言われれば、その通り。プレミアムコンパクトではないのだから、震え上がるような出来の良さを期待するほうが間違っている。ただ、世界の小型車が燃費よりクラスレスな良さを追求する方向へ向かっているかに見えるだけに、つい心配になってしまう。価格を考えろ、クラスを考えろ、というのはよく分かるのだが……。

 

試乗車スペック
ホンダ フィット ハイブリッド Lパッケージ
(1.5L 直4+モーター・7速DCT・183万円)

●初年度登録:2013年9月●形式:DAA-GP5 ●全長3955mm×全幅1695mm×全高1525mm ●ホイールベース:2530mm ●最小回転半径:4.9m ●車重(車検証記載値):1140kg(720+420) ●乗車定員:5名

●エンジン型式:LEB-H1 ●排気量・エンジン種類:1496cc・直列4気筒DOHC・4バルブ・横置 ●ボア×ストローク:73.0×89.4mm ●圧縮比:13.5 ●最高出力:81kW(110ps)/6000rpm ●最大トルク:134Nm (13.7kgm)/5000rpm ●カム駆動:タイミングチェーン ●使用燃料/容量:レギュラーガソリン/40L ※標準車のみ32L

●モーター形式:H1 ●モーター種類:交流同期電動機(永久磁石式同期型モーター) ●定格電圧:173V ●最高出力:22kW(29.5ps)/1313-2000rpm ●最大トルク:160Nm(16.3kgm)/0-1313rpm ●バッテリー:リチウムイオン電池

●システム最大出力:101kW(137ps)/-rpm ●システム最大トルク:170Nm(17.3kgm)/-rpm ●10・15モード燃費:-km/L ●JC08モード燃費:33.6km/L ※標準車は36.4km/L

●駆動方式:FF(前輪駆動) ●サスペンション形式:前 マクファーソンストラット+コイル/後 車軸式+コイル ●タイヤ:185/60R15(Yokohama BluEarth E50)

●試乗車価格(概算):-円 ※オプション:LEDヘッドライト 6万5000円、あんしんパッケージ 6万円、ナビ装着用スペシャル・パッケージ 4万円、ナビゲーションシステム(販売店オプション) -円 ●ボディカラー:ティンテッドシルバー メタリック ●試乗距離:約200km ●試乗日:2013年10月 ●車両協力:株式会社ホンダカーズ東海

 
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